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リーガルチェック結果の書き方|修正案・コメント・リスク説明の実務

リーガルチェックでは、契約書の修正案を入れるだけでなく、なぜ修正が必要なのか、どのリスクを避けるためなのか、依頼部門は何を判断すべきなのかを伝える必要があります。

修正案だけでは、依頼部門が交渉方針を立てられないことがあります。逆に、コメントが長すぎたり専門的すぎたりすると、依頼部門に伝わりません。

第1〜18話では、契約条項や社内手続の確認ポイントを整理しました。第19話では、リーガルチェック結果の書き方として、修正案・コメント・確認質問・リスク説明の実務を整理します。

実務メモ
この記事の内容を、毎回ゼロから考えないために。
法務実務で効くのは、知識そのものよりも"再現できる型"です。記事で読んだ確認観点・依頼文・回答メモ・マスキングを次の案件でそのまま引き出せる形に残しておくと、判断と説明の質が一段安定します。
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リーガルチェック結果はなぜ「書き方」が重要なのか

結論として、法務が見つけたリスクは、伝わらなければ実務で活かされません。

依頼部門は、修正の理由、交渉優先度、譲歩可能性、残るリスクを知りたいと考えています。決裁者は、重大なリスクがあるのか、事業判断として受け入れられるのかを知りたいと考えています。相手方は、なぜ修正を求められているのか、どのような代替案なら合意できるのかを知りたいと考えています。したがって、法務コメントは「法律的に正しい」だけでなく「実務で使える」必要があります。

表1リーガルチェック結果の書き方で起きやすい問題
起きやすい問題具体例実務上の影響
修正理由が分からない赤字だけ入っている交渉方針が立たない
どの修正が必須か分からない優先度がない交渉が混乱する
依頼部門が次に何をすべきか分からない結論が不明確対応が止まる
相手方にそのまま送れないコメント社内表現が混在誤送信リスク
専門用語が多すぎる法律用語の多用伝わらない
リスクの大きさが伝わらない「リスクあり」のみ判断できない
交渉上の優先順位がない全部同列交渉が非効率
法務が責任を背負いすぎる表現「保証します」責任範囲の誤解
「問題ありません」の範囲が曖昧無限定の回答確認範囲の誤解
リスク受容の記録が残らない口頭で済ます後で説明できない

まず整理したいリーガルチェック結果の種類

結論として、リーガルチェック結果には、修正案、コメント、確認質問、リスク説明、交渉方針、社内確認依頼、決裁者向け説明などがあり、それぞれ目的が違います。

初心者は、すべてを同じコメントに詰め込まず、用途ごとに整理すると伝わりやすくなります。

表2リーガルチェック結果の種類
種類目的誰に向けて書くか書き方のポイント
契約書本文の修正案文言を変える相手方・依頼部門具体的な文言
契約書コメント修正理由を示す依頼部門・相手方簡潔に理由
依頼部門への確認質問前提を確認する依頼部門具体的に質問
相手方への説明コメント交渉する相手方合理的な理由
社内向けリスク説明リスクを伝える依頼部門・上長影響・対応案
決裁者向け説明判断材料を渡す決裁者要点と残るリスク
交渉方針メモ方針を整理する社内優先順位・譲歩
リスク受容メモ判断を記録する社内判断者・前提
専門部署への確認依頼専門確認を求める専門部署確認事項を明確に
弁護士確認依頼専門判断を求める弁護士論点・前提を整理

確認事項1:修正案とコメントを分ける

結論として、修正案は「文言をどう変えるか」、コメントは「なぜ修正するのか」を示すものです。

修正案だけだと理由が伝わらず、コメントだけだと具体的な修正が進みません。契約書上のコメントは簡潔にし、詳細なリスク説明は別途メールや社内メモに分けることもあります。相手方に見せるコメントと、社内だけのコメントを混同しないようにします。

表3修正案とコメントの違い
項目修正案コメント
目的文言を変える理由を伝える
書く場所契約書本文コメント欄・メモ
読む人相手方・依頼部門依頼部門・相手方
内容具体的な条文修正理由・リスク
長さ条文として簡潔要点を簡潔に
注意点意図の明確化社内外の区別
悪い例理由なく削除「危険です」のみ
良い例代替文言を提示理由+対応案

確認事項2:必須修正・推奨修正・確認事項を分ける

結論として、すべての修正が同じ重要度ではありません。

法令違反や重大なリスクに関わる必須修正と、交渉上可能なら入れたい推奨修正を分けます。事実関係が不明なものは、修正ではなく確認事項として出します。依頼部門が交渉優先順位を判断できるようにします。「これは必須」「これは交渉可能」「これは確認後判断」といった分類が実務上有効です。なお、何が必須かは取引内容によって変わるため、「この条項は絶対に受け入れてはいけない」といった個別事情を無視した断定は避けます。

表4修正・コメントの優先度分類
分類意味依頼部門への伝え方
必須修正強く修正が必要重大リスク対応必須として明示
強く推奨する修正できる限り入れたい不利の大きい条項優先度高で提示
推奨修正交渉可能なら入れたい表現の明確化交渉余地として提示
確認事項事実確認が必要業務範囲の確認質問として提示
交渉可能事項譲歩の余地期間・金額譲歩ラインを共有
事業判断事項事業側が判断取引可否判断を委ねる
専門部署確認事項専門確認が必要個人情報・税務確認先を示す
決裁者判断事項決裁者が判断重大リスク受容判断者を示す
相手方説明用コメント相手方に説明修正理由交渉文として整える
社内限定コメント社内だけで共有率直なリスク相手方に出さない

確認事項3:依頼部門向けコメントの書き方

結論として、依頼部門向けコメントでは、法律論だけでなく、次に何を確認・判断・交渉すべきかを明確にします。

長すぎる説明ではなく、結論、理由、対応案を分けます。「この条項は危険です」だけではなく、「どのような場合に、どのような不利益があるか」を説明します。依頼部門を責める表現は避けます。事業判断が必要な事項は、法務判断と分けて伝えます。

表5依頼部門向けコメントの基本構成
要素書く内容文例の方向性
結論何を伝えたいか「修正を提案します」
修正理由なぜ修正するか「〜のリスクに備えるため」
想定リスク起きうる不利益「〜の場合に〜の負担」
依頼部門に確認したいこと必要な情報「〜を教えてください」
交渉方針どう交渉するか「まず〜を提案」
譲歩可能性譲れる範囲「〜なら受け入れ可」
決裁者判断の要否上位判断の要否「決裁者の判断が必要」
専門部署確認の要否専門確認の要否「個人情報担当に確認」
期限いつまでに「〜までにご回答を」
添付・参照資料関連資料「別紙をご参照」

確認事項4:相手方向けコメントの書き方

結論として、相手方向けコメントは、交渉文書として読まれます。

攻撃的・断定的・一方的な表現を避けます。修正理由を簡潔に示し、合理的な代替案を提示します。「当社としては」「本件取引の性質上」「双方の責任範囲を明確にするため」などの表現が使いやすいです。社内事情や社内規程をどこまで相手方に伝えるかは慎重に考えます。社内限定コメントを誤って相手方に送らないよう注意します。

表6相手方向けコメントで避けたい表現・使いやすい表現
場面避けたい表現使いやすい表現理由
相手方条項を修正したい「この条項はおかしい」「双方の責任を明確にするため修正を提案」対立を避ける
損害賠償上限を入れたい「上限は当然必要」「取引規模を踏まえ上限の設定をご検討いただきたい」合理性を示す
秘密保持期間を調整したい「長すぎる」「実務上の管理可能性を踏まえご相談したい」理由を添える
再委託条件を確認したい「勝手に再委託するな」「再委託の範囲について確認させていただきたい」確認として伝える
個人情報条項を追加したい「不備がある」「個人情報の取扱いを明確にするため条項追加を提案」前向きに示す
管轄を変更したい「そちらの裁判所は不可」「対応可能性を踏まえ管轄についてご相談したい」協議として示す
解除事由を狭めたい「広すぎて危険」「軽微な事由での解除を避けるため範囲のご相談をしたい」目的を示す
表明保証を限定したい「保証できない」「確認可能な範囲に表明保証を整理させていただきたい」範囲を示す
社内規程上受けられない「うちの規程で無理」「社内手続上、確認が必要なため調整させていただきたい」事情を出しすぎない
事実確認が必要「事実が不明」「前提を確認のうえ改めてご相談したい」確認として伝える

確認事項5:リスク説明の書き方

結論として、リスク説明では、単に「リスクがあります」と書くだけでは足りません。

何が起きるリスクか、どの程度起こりそうか、起きた場合の影響は何か、対応策は何かを整理します。法務が判断できるリスクと、事業部門が判断すべきリスクを分けます。重大リスク、通常リスク、軽微リスクを分類します。リスクが残る場合は、誰がリスク受容するのかを明確にします。

表7リスク説明で書くべき要素
要素書く内容文例
リスクの内容何が起きるか「〜が生じる可能性」
発生場面どんな場面か「〜の場合に」
発生可能性起こりやすさ「一般に高くないが」
影響起きた場合の結果「〜の対応が必要に」
金銭的影響費用・賠償「上限なく負担の可能性」
業務上の影響業務への支障「業務停止の可能性」
レピュテーション影響信用への影響「公表リスク」
対応案どう備えるか「上限設定を提案」
代替案別の選択肢「〜なら受け入れ可」
残るリスク残存するリスク「〜は残ります」
判断者誰が判断するか「事業判断が必要」
記録方法どこに残すか「稟議に記録」

確認事項6:確認質問の書き方

結論として、リーガルチェックでは、契約書だけでは分からない前提を依頼部門に確認することが多くあります。

確認質問は、短く、具体的に、何を返してほしいか明確に書きます。「問題ないですか?」ではなく、「誰が」「何を」「どの範囲で」「いつまでに」確認したいのかを書きます。質問の背景を一言添えると、依頼部門が答えやすくなります。質問が多い場合は、優先順位をつけます。

表8確認質問の悪い例・良い例
確認したいこと悪い例良い例改善ポイント
業務範囲「業務範囲は大丈夫?」「実際の作業範囲を箇条書きで教えてください」具体化する
成果物「成果物は問題ない?」「納品物は何を、いつ、どの形式で納めますか」要素を分ける
支払条件「支払は平気?」「支払時期・回数・前払の有無を教えてください」項目を示す
契約期間「期間はこれでいい?」「希望する契約期間と更新の想定を教えてください」判断材料を求める
再委託「再委託ある?」「再委託の予定の有無と、ある場合の委託先を教えてください」条件を聞く
個人情報「個人情報は?」「どの個人情報を、どの範囲で扱うか教えてください」範囲を聞く
知的財産「著作権は大丈夫?」「成果物の権利を、どちらに帰属させたいか教えてください」希望を聞く
損害賠償「賠償は問題ない?」「想定される損害規模と、許容できる範囲を教えてください」判断材料を求める
解除条件「解除はこれでいい?」「どのような場合に解除したいか教えてください」目的を聞く
社内決裁「決裁は取った?」「稟議・決裁は取得済みか、状況を教えてください」状況を聞く
反社チェック「反社は確認した?」「取引先の反社チェックは実施済みか教えてください」実施状況を聞く
広告表示「広告は問題ない?」「関連する広告やLPがあれば共有してください」資料を求める

確認事項7:代替案・譲歩案の書き方

結論として、契約交渉では、法務の第一希望が通らないことがあります。

そのため、第一案、第二案、最低限確保したい案を整理することが実務上有効です。代替案を示すことで、依頼部門が交渉しやすくなります。ただし、譲歩案を相手方に最初から出すかどうかは、交渉方針によります。社内向けには譲歩可能ラインを示し、相手方向けには必要に応じて段階的に提示します。

表9代替案・譲歩案の整理方法
分類意味使う場面
第一希望案最も望ましい案上限を低く設定最初の提案
第二希望案次善の案上限をやや上げる交渉の中盤
最低限案確保したい最低ライン上限の明記は維持譲歩の限界
受け入れ不可ラインこれ以上は不可上限なしは不可社内で共有
相手方提示用案相手方に出す案整えた提案相手方交渉
社内交渉方針案社内の方針譲歩順序社内共有
決裁者判断事項上位判断が必要重大な譲歩決裁者に確認
リスク受容案リスクを受け入れる案条件付き受諾記録を残す
留保付き承認案条件付きで進める追加確認を前提前提を明示
継続協議案後日協議とする覚書で対応合意しにくい時

確認事項8:「問題ありません」と書くときの注意点

結論として、法務が「問題ありません」とだけ返すと、確認範囲が広く誤解されることがあります。

契約書の文言確認として問題ないのか、法令・社内規程・事業判断まで含めて問題ないのかを分ける必要があります。「いただいた契約書案の文言上、現時点で重大な修正必須事項は見当たりません」など、範囲を明確にする表現が有用です。未確認事項がある場合は、前提条件として明示します。なお、法務が問題ないと述べても、それが事業判断・決裁判断まで完了したことを意味するわけではありません。この点は第20話の責任範囲につながります。

表10「問題ありません」の代わりに使いやすい表現
場面避けたい表現使いやすい表現注意点
契約書文言上の問題が少ない「問題ありません」「文言上、重大な修正必須事項は見当たりません」範囲を限定
軽微修正のみ「OKです」「軽微な修正のみで、主要な懸念は限定的です」程度を示す
事業判断が残る「進めて大丈夫」「法務面の確認は完了、事業判断はご検討ください」判断を分ける
社内決裁が未確認「締結可能です」「条項面は確認済み、社内決裁の状況をご確認ください」手続を分ける
個人情報確認が未了「問題なし」「個人情報の取扱いは別途確認が必要です」未確認を明示
法令調査が未了「適法です」「個別法令は未調査のため、必要に応じ確認します」範囲を限定
相手方信用確認が未了「相手方は大丈夫」「相手方の信用・反社確認は別途必要です」確認を分ける
弁護士確認が必要「法務確認済み」「論点により弁護士確認をご検討ください」専門確認を示す
期限が短く限定確認「確認しました」「短時間での一次確認です。主要論点のみ確認しました」範囲を明示
依頼資料に基づく確認「問題ありません」「いただいた資料に基づく確認です」前提を明示

確認事項9:社内限定コメントと相手方開示コメントを分ける

結論として、契約書コメントには、相手方にも見えるコメントと、社内だけで共有すべきコメントがあります。

「この条項は相手方に有利すぎます」「この条件は当社にかなり不利です」などは、相手方にそのまま見せるべきではない場合があります。社内向けにはリスクを率直に書き、相手方向けには交渉上適切な表現に変えます。Wordコメント、メール、別紙メモ、チャットでの共有など、媒体ごとに注意します。誤送信・コメント残りにも注意します。

表11社内限定コメントと相手方開示コメントの違い
項目社内限定コメント相手方開示コメント
目的率直なリスク共有交渉・説明
読み手社内・依頼部門相手方
書き方率直・具体的合理的・中立的
書ける内容交渉方針・譲歩ライン修正理由・代替案
避けるべき内容社内事情・譲歩ライン
「最低ラインは上限明記」「上限の設定をご相談したい」
注意点相手方に出さない誤送信・残りに注意

確認事項10:リスク受容の記録

結論として、法務がリスクを指摘しても、事業判断として受け入れる場合があります。

その場合、どのリスクを、誰が、どの前提で受け入れたのかを記録することが重要です。リスク受容は、法務が責任を放棄することではなく、判断プロセスを明確にすることです。決裁者・依頼部門・管理部門に判断を仰ぐべき事項を分けます。記録は、メール、稟議コメント、法務回答メモ、契約管理システムなどで残します。

表12リスク受容メモで整理すること
項目書く内容文例
指摘したリスク法務が指摘した点「上限なしの賠償リスク」
修正希望内容提案した修正「上限設定を提案」
相手方の反応交渉結果「相手方は応じず」
残るリスク受け入れるリスク「上限なしのまま」
代替対応別の手当て「保険で一部手当て」
事業上の必要性受け入れる理由「重要取引のため」
判断者誰が決めたか「○○部長が判断」
判断日いつ決めたか「○年○月○日」
前提条件受容の前提「次回更新時に見直し」
今後の対応フォロー事項「運用で注意」
契約更新時の見直し再検討の時期「更新時に再交渉」
記録場所どこに残すか「稟議・法務メモ」

確認事項11:修正履歴・コメント管理

結論として、契約書レビューでは、修正履歴やコメントの管理も重要です。

誰がどの修正を入れたのか、相手方がどこを戻したのか、未解決コメントが残っていないかを確認します。最終版に社内コメントが残っていないか、相手方に見せるべきでないコメントが残っていないかを確認します。PDF化、Wordの変更履歴、コメント削除、比較版作成などの実務もあります。ここではツール解説ではなく、法務実務上の注意点にとどめます。

表13修正履歴・コメント管理で確認すること
確認項目確認する理由注意点
変更履歴修正の把握履歴の記録
コメント意図の伝達残り確認
未解決コメント未対応の確認解消の確認
社内限定コメント誤開示の防止送付前に削除
相手方修正戻しの確認差分の確認
先祖返り旧版への戻り版の確認
比較版差分の確認比較の作成
最終版確定版の特定版の管理
PDF化確定の固定体裁の確認
押印版締結版の管理原本の管理
電子契約版電子データ管理保存・検索
ファイル名版の識別命名ルール
保存場所管理の所在保存ルール
送付前確認誤送信の防止最終チェック

確認事項12:期限が短い場合のコメントの書き方

結論として、実務では、確認期限が短い案件もあります。

短時間で確認した場合は、確認範囲や前提を明確にします。「短時間での一次確認」「主要論点のみ確認」「添付資料未確認」など、前提を残します。ただし、責任逃れのような書き方ではなく、実務上の制約を正確に伝えます。重大な未確認リスクがある場合は、締結前に追加確認が必要であることを明示します。

表14短納期レビューで使いやすいコメント
場面コメント例注意点
一次確認のみ「短時間での一次確認の結果です」範囲を明示
主要条項のみ確認「主要条項を中心に確認しました」対象を示す
添付資料未確認「別紙・仕様書は未確認です」未確認を明示
事業前提未確認「取引前提は依頼部門にご確認ください」確認を促す
個人情報未確認「個人情報の取扱いは別途確認が必要です」追加確認を促す
法令調査未実施「個別法令は未調査です」範囲を限定
相手方信用未確認「相手方の信用・反社確認は別途必要です」確認を分ける
社内決裁未確認「社内決裁の状況をご確認ください」手続を促す
弁護士確認未了「論点により弁護士確認をご検討ください」専門確認を示す
締結前追加確認が必要「締結前に〜の追加確認が必要です」重要点を明示

確認事項13:法務コメントで避けるべき表現

結論として、法務コメントには、避けた方がよい表現があります。

断定しすぎる表現、責任を広げすぎる表現、相手方を刺激する表現、依頼部門を責める表現、曖昧すぎる表現を整理します。特に「法務として保証します」「完全に問題ありません」「絶対に大丈夫です」「違法です」といった表現は慎重に扱います。個別案件では断定が必要な場面もありますが、その場合でも根拠・前提・範囲を明確にします。

表15法務コメントで避けたい表現と代替表現
避けたい表現問題点代替表現
完全に問題ありません範囲が無限定「文言上、重大な懸念は限定的です」
絶対に大丈夫です断定しすぎ「現時点の確認範囲では懸念は限定的です」
違法です断定しすぎ「〜の点で法令上の懸念があり、確認が必要です」
法務が保証します責任の過大化「法務の確認範囲では〜です」
営業側で判断してください丸投げの印象「事業判断が必要な点を整理しました」
相手方が悪いです対立的「双方の責任を明確にするため調整したい」
この条項はありえません断定的・感情的「この条項は当社に不利のため修正を提案します」
必ず削除してください個別事情を無視「削除を提案します。難しい場合は〜を検討」
何となく危ないです曖昧すぎ「〜の場合に〜のリスクがあります」
当社責任ではありません断定しすぎ「責任範囲を明確にするため整理が必要です」
確認しておいてください誰が何をか不明「〜部門に〜を確認してください」
法務確認済みです範囲が誤解される「条項面の確認は完了しています」

確認事項14:メール・チャット・Wordコメントの使い分け

結論として、リーガルチェック結果は、媒体ごとに向いている内容が異なります。

Wordコメントは条項ごとの修正理由に向いています。メールは全体方針・重要リスク・依頼事項の整理に向いています。チャットは簡易確認には向いていますが、重要判断は記録に残る形にする必要があります。稟議コメントは決裁者が読むため、要点と残るリスクを簡潔に書きます。

表16コメント媒体の使い分け
媒体向いている内容注意点
Wordコメント条項ごとの修正理由社内限定の残り
修正履歴文言の変更点履歴の管理
メール全体方針・依頼事項要点を整理
チャット簡易な確認重要判断は記録化
稟議コメント要点と残るリスク簡潔に
法務回答メモ確認範囲・前提記録を残す
契約管理システム確認記録の保存検索性
比較表差分の確認版の明確化
交渉メモ交渉経緯社内共有
弁護士相談メモ専門判断の記録論点を整理

修正案・コメント作成を補助する関連ツール

リーガルチェック結果は、修正案だけでなく、理由、リスク、確認質問、相手方への説明まで整理する必要があります。プロンプトや過去相談を活用して、コメントのたたき台を作り、人による確認を前提に整えることで、レビュー結果を伝えやすくなります。

いずれも、最終的な判断は人が行うことが前提の補助ツールです。コメント作成の補助、論点整理、過去相談の検索などに役立ちます。

契約書AIレビュー プロンプト集

契約書レビューの論点整理、修正理由、依頼部門への確認質問、相手方へのコメント案のたたき台を作るためのプロンプト集です。人による確認を前提に、レビューコメントの型をそろえたい場合に向いています。

詳しく見る

法務AIプロンプト集100選

契約レビュー、社内説明、リスク整理、法務相談など、法務実務全般の文章作成を補助するプロンプト集です。コメントや説明文のたたき台を幅広く作りたい場合に向いています。

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LegalOS 法律相談

過去の法律相談や回答メモを検索し、類似案件のコメント例や判断経緯を確認するための補助ツールです。過去の社内判断やリスク説明を参照したい場合に向いています。

詳しく見る

リーガルチェック結果の確認フロー

結論として、リーガルチェック結果は、修正箇所の洗い出しから最終版のコメント残り確認まで順番に押さえると、伝わりやすく抜けにくくなります。

1

修正箇所を洗い出す

気になる箇所を整理します。

2

修正理由を整理する

なぜ修正するか整理します。

3

必須修正・推奨修正・確認事項に分類する

優先度を分けます。

4

依頼部門向けコメントを書く

次の行動を示します。

5

相手方向けコメントを書く

交渉文として整えます。

6

事業判断が必要なリスクを分ける

判断者を明確にします。

7

社内規程・決裁権限の確認事項を分ける

社内手続を整理します。

8

未確認事項・前提条件を明示する

確認範囲を示します。

9

リスク受容が必要な事項を記録する

判断を記録します。

10

最終版の修正履歴・コメント残りを確認する

誤開示を防ぎます。

法務コメントの文例集

結論として、場面ごとに型を持っておくと、コメント作成が早く、伝わりやすくなります。以下は社内向け・相手方向けを分けた文例です。いずれも、たたき台として、案件に応じて調整してお使いください。

文例1:損害賠償上限を入れたい場合

社内向け損害賠償の上限がないため、想定外の損害を全額負担するリスクがあります。取引規模を踏まえ、上限の設定を提案したいです。許容できる上限の目安があれば教えてください。
相手方向け本件取引の規模を踏まえ、双方の予見可能性を高めるため、損害賠償額の上限について設定をご相談させていただきたく存じます。

文例2:間接損害・逸失利益を除外したい場合

社内向け間接損害・逸失利益が賠償範囲に含まれると、負担が大きく広がる可能性があります。除外を提案したいです。
相手方向け賠償範囲を明確にするため、間接損害・逸失利益の取扱いについて整理させていただきたく存じます。

文例3:秘密保持期間を調整したい場合

相手方向け秘密情報の実務的な管理可能性を踏まえ、秘密保持義務の存続期間についてご相談させていただきたく存じます。

文例4:個人情報条項を追加したい場合

社内向け本件で個人情報を扱う場合、委託・再委託・安全管理措置などの条項確認が必要です。扱うデータの範囲を教えてください。個人情報担当の確認も検討します。
相手方向け個人情報の取扱いを明確にするため、委託や安全管理に関する条項の追加についてご相談させていただきたく存じます。

文例5:成果物の著作権帰属を確認したい場合

社内向け成果物の権利帰属が明確でないため、確認が必要です。成果物をどこまで自社で利用・改変したいか教えてください。希望に応じて条項を調整します。

文例6:再委託の有無を確認したい場合

社内向け再委託の有無で確認すべき点が変わります。再委託の予定があるか、ある場合は委託先を教えてください。
相手方向け業務の実施体制を確認させていただきたく、再委託の有無と範囲についてお教えいただけますでしょうか。

文例7:解除事由が広すぎる場合

社内向け解除事由が広く、軽微な違反でも解除される可能性があります。範囲を限定する修正を提案したいです。
相手方向け軽微な事由での契約終了を避け、安定した取引とするため、解除事由の範囲についてご相談させていただきたく存じます。

文例8:表明保証が広すぎる場合

社内向け表明保証の範囲が広く、確認しきれない事項まで保証する内容になっています。確認可能な範囲に整理したいです。
相手方向け確認可能な範囲で正確にお約束するため、表明保証の対象について整理させていただきたく存じます。

文例9:管轄・準拠法を変更したい場合

相手方向け万一の紛争時の対応可能性を踏まえ、管轄裁判所(および準拠法)についてご相談させていただきたく存じます。

文例10:社内決裁・稟議確認が必要な場合

社内向け条項面の確認は進めていますが、締結には社内の稟議・決裁が必要と思われます。稟議の取得状況を教えてください。金額や条件が稟議時から変わっている場合は、再稟議の要否も確認させてください。

文例11:法令違反リスクについて専門部署確認が必要な場合

社内向け本件は〜の法令が関係する可能性があります。個別の適否は専門的な判断が必要なため、〜部門(または弁護士)への確認を提案します。確認に必要な前提情報を教えてください。

文例12:相手方修正を受け入れるがリスクが残る場合

社内向け相手方の修正を受け入れる場合、〜のリスクが残ります。発生可能性は高くないと考えられますが、起きた場合の影響は〜です。事業上の必要性を踏まえ、受け入れるかどうかをご判断ください。判断内容は記録に残させていただきます。

初心者向け:リーガルチェック結果の書き方チェックリスト

結論として、この記事の内容は、レビュー中・依頼部門返信時・相手方返信時・最終確認時の4段階に整理できます。法務だけでなく、依頼部門の方も使える内容です。

表17リーガルチェック結果の書き方チェックリスト
タイミングチェック項目確認
レビュー中修正理由を整理した
レビュー中必須修正を分けた
レビュー中推奨修正を分けた
レビュー中確認事項を分けた
依頼部門返信時依頼部門が次にやることを書いた
依頼部門返信時事業判断事項を分けた
依頼部門返信時社内決裁確認を入れた
相手方返信時相手方に送れる表現にした
相手方返信時代替案を示した
最終確認時コメント残りを確認した
最終確認時社内限定コメントを削除した
最終確認時リスク受容を記録した

リーガルチェック結果の書き方でよくある失敗

結論として、リーガルチェック結果の書き方には典型的な失敗パターンがあります。知っておくと、同じ失敗を避けやすくなります。

表18リーガルチェック結果の書き方でよくある失敗と防止策
よくある失敗起きやすい理由防止策
修正案だけ入れて、理由を書かない赤字で完結させるから理由をコメントで添える
すべての修正を同じ重要度で返す優先度を考えないから必須・推奨を分ける
依頼部門が次に何をすべきか分からない結論を書かないから次の行動を明示
相手方に見せるべきでない社内コメントを残す社内外を区別しないから送付前に削除確認
「問題ありません」とだけ返して範囲が曖昧無限定に返すから確認範囲を明示
リスクの内容・影響・対応案を整理しない「リスクあり」で止めるから要素を分けて書く
事業判断事項まで法務判断のように書く線引きが曖昧だから判断者を分ける
確認していない事項まで確認済みのように書く範囲を示さないから前提・範囲を明示
短納期レビューなのに確認範囲を明示しない制約を書かないから一次確認と明示
リスク受容の記録を残していない口頭で済ますから記録に残す

まとめ|リーガルチェック結果は「次の行動」が分かるように書く

リーガルチェック結果は、修正案だけでなく、理由・リスク・確認事項・交渉方針をセットで伝えます。

修正案、コメント、確認質問、リスク説明、相手方向け説明、決裁者向け説明は目的が異なります。

必須修正、推奨修正、確認事項、事業判断事項を分けると、依頼部門が動きやすくなります。

相手方向けコメントでは、攻撃的・断定的な表現を避け、合理的な理由と代替案を示します。

「問題ありません」とだけ返すと、確認範囲や責任範囲が曖昧になりやすいため、範囲を明示します。

リスクが残る場合は、リスクの内容、影響、対応案、判断者、記録場所を明確にします。

次回はいよいよ最終回です。リーガルチェックの限界、法務が「確認済み」と言う前に整理すべき責任範囲を解説します。コメントの書き方は、この責任範囲の整理と直結します。

▶ NEXT|シリーズ第20話(最終回) リーガルチェックの限界|法務が確認済みと言う前に整理すべき責任範囲
リーガルチェックの基礎20選|シリーズ一覧
第19話:リーガルチェック結果の書き方|修正案・コメント・リスク説明の実務今読んでいる記事
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