表明保証条項とは何か|どこまで確認すべきかを整理
次の案件で使える形に。
表明保証条項とは何か|どこまで確認すべきかを整理
契約書には、「甲は、乙に対し、次の事項を表明し保証する」といった条項が入っていることがあります。初心者には少し分かりにくいですが、表明保証条項は、当事者が一定の事実や状態について「正しい」と契約上述べる重要条項です。
形式的に見えても、違反すると解除や損害賠償につながることがあります。第1〜12話では、リーガルチェックの基本から個人情報まで整理しました。第13話では、表明保証条項の意味、よくある表明保証事項、どこまで確認すべきか、確認できない場合の考え方を整理します。
表明保証条項とは何か
結論として、表明保証とは、一定の事実・権限・状態について、契約当事者が相手方に対して「正しい」と表明し、保証する条項です。
たとえば、「自社は契約締結権限を有している」「反社会的勢力ではない」「第三者の知的財産権を侵害していない」などがあります。表明保証は、契約の前提となる事実確認の意味を持ち、単なる説明や努力目標ではなく、違反した場合の責任につながることがあります。ただし、違反時の効果は契約書の定めや事案によるため、機械的には判断しません。
| 項目 | 意味 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 表明 | 一定の事実を述べること | 何を述べているか確認 |
| 保証 | その内容が正しいと約束すること | 違反時の責任につながる |
| 表明保証事項 | 保証する具体的な内容 | 事項ごとに確認 |
| 基準時 | いつの時点で正しいか | 締結時か期間中か |
| 違反時の効果 | 違反した場合の扱い | 解除・賠償・補償等 |
| 確認範囲 | どこまで確認した前提か | 確認可能性を意識 |
| 限定表現 | 責任範囲を調整する文言 | 「知る限り」等の有無 |
| 相手方に表明保証させる意味 | リスクを確認させる | 確認したいリスクの整理 |
| 自社が表明保証する意味 | 自社が正しいと約束する | 確認できる事実か |
表明保証条項はなぜ重要なのか
結論として、表明保証条項は、契約の前提となる重要事実を確認する役割があります。
相手方の権限、法令遵守、反社該当性、権利侵害リスク、許認可などは、契約書の他の条項だけでは分からないことがあります。表明保証違反があると、契約を締結した前提が崩れることがあります。表明保証は、リスクを相手方に確認させる機能と、違反時の責任根拠を整理する機能を持ちます。ただし、表明保証を入れればリスクが消えるわけではありません。たとえば、法令遵守を表明保証してもらっても、それだけで法令違反リスクが完全になくなるわけではありません。
| 起きやすい問題 | 具体例 | 実務上の影響 |
|---|---|---|
| 契約締結権限が不明確 | 権限のない者が署名 | 契約の有効性に疑義 |
| 必要な許認可がない | 無許可で業務 | 履行・適法性に問題 |
| 反社会的勢力との関係を確認していない | 反社チェック未実施 | 取引上の重大リスク |
| 知的財産権侵害リスクを見落とす | 第三者権利の侵害 | 第三者請求のリスク |
| 個人情報の適法取得を確認していない | 取得経路が不明 | 取扱いの適法性に疑義 |
| 紛争・行政処分の存在を見落とす | 係争中の事案 | 取引前提が崩れる |
| 財務状態に重大な問題がある | 信用不安 | 支払・履行リスク |
| 表明保証違反時の効果が不明 | 違反時の定めがない | 救済が不明確 |
| 自社が確認できない事項まで保証している | 無限定の保証 | 過大な責任を負う |
| 相手方に必要な表明保証を求めていない | 対象が狭すぎる | リスクヘッジ不足 |
まず確認すべき表明保証条項の全体像
結論として、表明保証条項は「誰が」「誰に」「何を」「いつの時点で」「どこまで確認した前提で」「違反時にどうなるか」に分けて見ると分かりやすくなります。
長い表明保証条項を一文で読むのではなく、要素に分解して確認します。自社が表明保証する側なのか、相手方に表明保証させる側なのかで見方が変わります。
| 確認項目 | 確認する内容 | 見落とすと起きやすい問題 |
|---|---|---|
| 表明保証する主体 | 誰が保証するか | 責任主体が不明 |
| 表明保証の相手方 | 誰に対してか | 対象関係が不明 |
| 表明保証事項 | 何を保証するか | 事項の見落とし |
| 基準時 | いつの時点か | 時点の取り違え |
| 契約期間中の継続性 | 継続保証か | 継続性の誤解 |
| 限定表現 | 責任範囲の調整 | 限定の見落とし |
| 確認資料 | 何で確認するか | 確認資料が不明 |
| 違反時の効果 | 違反時どうなるか | 効果が不明確 |
| 損害賠償との関係 | 賠償の扱い | 上限例外の見落とし |
| 解除との関係 | 解除事由か | 無催告解除の見落とし |
| 補償条項との関係 | 補償の有無 | 補償範囲が不明 |
| 社内確認先 | 誰に確認するか | 確認漏れ |
確認事項1:契約締結権限・法人の有効性
結論として、契約当事者が適法に設立・存続し、契約を締結する権限があることを表明保証することがあります。
会社名、法人格、代表者、署名者、代理権、社内決裁、必要な承認などと関係します。自社が表明保証する側の場合、社内決裁や締結権限が本当に整っているかを確認します。相手方に表明保証させる側の場合、相手方が契約を有効に締結できる前提を確認する意味があります。詳細は第5話の契約当事者確認、第18話の社内規程・決裁権限でも扱います。
| 確認項目 | 確認する理由 | 確認資料・確認先 |
|---|---|---|
| 法人の正式名称 | 当事者の特定 | 登記事項証明書 |
| 法人格 | 適法な存続 | 登記情報 |
| 代表者 | 代表権の確認 | 登記事項証明書 |
| 署名者 | 署名権限 | 役職・委任状 |
| 代理権 | 代理の有無 | 委任状 |
| 委任状 | 権限の裏付け | 委任状の確認 |
| 社内決裁 | 社内承認の有無 | 稟議・決裁記録 |
| 取締役会承認 | 重要取引の承認 | 議事録 |
| 稟議 | 社内手続 | 稟議記録 |
| 定款・社内規程 | 権限ルール | 定款・規程 |
| 登記事項証明書 | 法人情報の確認 | 法務局・登記情報 |
| 契約締結権限 | 締結できる前提 | 社内規程・決裁 |
確認事項2:法令遵守・許認可
結論として、当事者が法令を遵守し、必要な許認可を有していることを表明保証する条項があります。
業法、許認可、行政処分、制裁、コンプライアンス違反などが関係します。「すべての法令を遵守している」と広く表明保証する条項は、表明保証する側にとって重い場合があります。業務に必要な範囲に限定する、重要な点に限定するなどの調整が必要になる場合があります。法務だけで全法令の遵守を確認できるわけではないため、事業部門・コンプライアンス部門・所管部署への確認が重要です。第17話の法令違反リスクでも扱います。
| 確認項目 | 表明保証する側の注意点 | 表明保証を受ける側の注意点 |
|---|---|---|
| 法令遵守 | 広すぎる保証に注意 | 重要な範囲を確保 |
| 業法遵守 | 該当業法の確認 | 業法の特定 |
| 必要許認可 | 保有状況の確認 | 許認可の有無 |
| 行政処分の有無 | 処分歴の確認 | 重大処分の確認 |
| 制裁・輸出規制 | 該当性の確認 | 規制対象の確認 |
| 労務コンプライアンス | 労務状況 | 重大違反の有無 |
| 贈収賄・腐敗防止 | 方針の遵守 | 方針の有無 |
| 個人情報保護 | 取扱いの適法性 | 適法取得の確認 |
| 下請・取引適正化 | 取引慣行の確認 | 適正性の確認 |
| 環境規制 | 該当規制 | 規制対応の確認 |
| 安全規制 | 安全基準 | 基準遵守の確認 |
| 重要な点への限定 | 限定の検討 | 限定が強すぎないか |
確認事項3:反社会的勢力排除
結論として、反社会的勢力ではないこと、反社会的勢力と関係がないことを表明保証する条項があります。
反社条項は独立した条項として置かれることもあり、表明保証条項の中に入ることもあります。表明保証の対象が、役員、実質的支配者、従業員、委託先、親会社・子会社まで及ぶかを確認します。自社が表明保証する側の場合、どこまで確認できるかを意識します。相手方に表明保証させる側の場合、解除条項・無催告解除・損害賠償との関係を見ます。詳細は第15話の反社会的勢力排除条項で扱います。
| 確認項目 | 確認する理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 当事者本人 | 本人の該当性 | 基本の対象 |
| 役員 | 役員の該当性 | 対象範囲の確認 |
| 実質的支配者 | 背後関係 | 把握の難しさ |
| 従業員 | 従業員の関与 | 確認可能範囲 |
| 親会社・子会社 | グループの関係 | 対象に含むか |
| 委託先 | 委託先の関係 | 確認の限界 |
| 再委託先 | 再委託先の関係 | 把握の難しさ |
| 反社チェック | 確認の実施 | チェック方法 |
| 暴力的要求行為 | 禁止行為の確認 | 該当行為の明記 |
| 解除条項との関係 | 違反時の解除 | 無催告解除の有無 |
| 損害賠償 | 違反時の責任 | 上限例外との関係 |
| 確認可能な範囲 | どこまで確認できるか | 無限定保証に注意 |
確認事項4:知的財産権・第三者権利非侵害
結論として、成果物やサービスが第三者の知的財産権を侵害しないことを表明保証する条項があります。
発注者側では、成果物を安心して使うために重要な表明保証になります。受注者側では、すべての第三者権利を絶対に侵害しないと無限定に保証するのは重い場合があります。発注者提供資料、指定素材、第三者素材、OSS、AI生成物などによる侵害は誰が責任を負うかを確認します。「知る限り侵害していない」「合理的に調査した限り」などの限定表現が問題になることがあります。第11話の知的財産権でも扱いました。
| 確認項目 | 発注者側の視点 | 受注者側の視点 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 成果物の非侵害 | 保証を求めたい | 無限定保証に注意 | 範囲の確認 |
| 使用素材 | 素材の適法性 | 利用条件の確認 | 素材の特定 |
| 第三者素材 | 許諾の確認 | 保証範囲を限定 | 第11話と連動 |
| OSS | ライセンス確認 | 条件の把握 | 技術部門確認 |
| AI生成物 | 侵害リスク | 利用申告 | 断定しない |
| 発注者提供資料 | 提供物の責任 | 起因侵害を除外 | 起因の切り分け |
| 発注者の指示 | 指示の責任 | 指示起因を除外 | 記録の有無 |
| 既存著作物 | 権利の確認 | 除外の整理 | 定義の明確化 |
| 商標・ロゴ | 商標権の確認 | 使用許諾 | 登録の確認 |
| ソースコード | 権利の確認 | OSSとの関係 | 一覧の確認 |
| 第三者請求 | 対応の確保 | 責任範囲の限定 | 補償条項と連動 |
| 賠償上限との関係 | 上限例外にしたい | 上限を維持 | 第9話と連動 |
確認事項5:個人情報・データの適法取得・取扱い
結論として、個人情報やデータを扱う契約では、個人情報を適法に取得・利用し、必要な同意や通知を行っていることを表明保証する場合があります。
データ提供契約、広告・マーケティング、SaaS、分析業務、共同利用、第三者提供などで問題になりやすいです。自社が表明保証する側の場合、取得経路、利用目的、同意、プライバシーポリシー、第三者提供の整理を確認します。相手方に表明保証させる側の場合、データの適法性を確認するリスクヘッジとして意味があります。ただし、表明保証だけで個人情報保護法対応が完了するわけではありません。第12話の個人情報・データ取扱いでも扱いました。
| 確認項目 | 確認する理由 | 確認資料・確認先 |
|---|---|---|
| 取得経路 | 適法な取得か | 取得記録・事業部門 |
| 利用目的 | 目的の特定 | 利用目的の記載 |
| 本人同意 | 同意の有無 | 同意取得の記録 |
| 通知・公表 | 所定事項の周知 | 通知・公表の記録 |
| プライバシーポリシー | 記載との整合 | ポリシーの確認 |
| 委託 | 委託の整理 | 個人情報担当 |
| 共同利用 | 共同利用の要件 | 個人情報担当 |
| 第三者提供 | 提供の整理 | 記録・同意 |
| 外国提供 | 越境の有無 | 個人情報担当・弁護士 |
| 安全管理措置 | 管理水準 | 情報システム部門 |
| 漏えい履歴 | 事故の有無 | 関係部門 |
| 社内の個人情報担当 | 専門的確認 | 個人情報担当 |
確認事項6:紛争・行政処分・クレームの不存在
結論として、相手方に重大な紛争、行政処分、クレーム、調査、訴訟がないことを表明保証する場合があります。
M&A契約ほど詳細でなくても、重要な取引や継続取引では問題になることがあります。表明保証する側にとっては、「すべての紛争がない」と無限定に保証するのは重い場合があります。「本契約の履行に重大な影響を及ぼすもの」に限定するなどの調整が考えられます。法務だけで全社的な紛争・行政処分を把握できない場合は、関係部門への確認が必要になります。
| 確認項目 | 表明保証する側の注意点 | 表明保証を受ける側の注意点 |
|---|---|---|
| 訴訟 | 係属中の把握 | 重大訴訟の確認 |
| 仲裁 | 仲裁の有無 | 影響の確認 |
| 行政処分 | 処分の把握 | 重大処分の確認 |
| 行政調査 | 調査の有無 | 進行中の確認 |
| 重大クレーム | クレームの把握 | 重大性の確認 |
| 取引停止 | 停止の有無 | 取引影響 |
| 契約違反 | 他契約の違反 | 波及の確認 |
| 労務紛争 | 労務問題 | 重大性の確認 |
| 知財紛争 | 権利紛争 | 成果物への影響 |
| 個人情報事故 | 事故の有無 | 影響の確認 |
| 重大な影響への限定 | 限定の検討 | 限定が強すぎないか |
| 確認部署 | 社内の確認先 | 関係部門への確認 |
確認事項7:財務状態・信用状態
結論として、財務状態や支払能力について表明保証する条項があります。
破産、民事再生、会社更生、支払停止、信用不安などが問題になります。相手方の信用状態は、支払条件、前払、継続取引、長期契約で重要になります。自社が表明保証する側の場合、財務状態について広く保証しすぎていないか注意します。相手方に表明保証させる側の場合、信用不安時の解除や期限の利益喪失との関係を見ます。第14話の解除条項・期限の利益喪失条項でも扱います。
| 確認項目 | 確認する理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 支払能力 | 履行の前提 | 過大な保証に注意 |
| 債務超過 | 財務の健全性 | 把握の難しさ |
| 支払停止 | 信用不安の兆候 | 解除との関係 |
| 手形不渡り | 信用状態 | 期限の利益喪失 |
| 破産申立て | 倒産手続 | 解除事由 |
| 民事再生 | 再生手続 | 取引影響 |
| 会社更生 | 更生手続 | 取引影響 |
| 取引停止 | 取引上の問題 | 影響範囲 |
| 信用不安 | 継続取引のリスク | 与信との関係 |
| 与信審査 | 信用の確認 | 経理・財務と連携 |
| 解除条項との関係 | 違反時の解除 | 第14話と連動 |
| 期限の利益喪失との関係 | 一括請求 | 第14話と連動 |
確認事項8:契約履行に必要な資料・情報の正確性
結論として、契約締結や業務遂行にあたり提供する資料・情報が正確であることを表明保証する条項があります。
仕様書、見積条件、データ、顧客情報、図面、技術資料、財務資料などが対象になり得ます。発注者提供資料に誤りがある場合、受注者の履行や成果物に影響します。受注者が提出する提案資料・仕様書が正確かも問題になります。資料の正確性をどこまで保証するか、合理的に確認できる範囲かを整理します。
| 対象資料・情報 | 確認する理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 仕様書 | 履行の前提 | 版・正確性 |
| 見積条件 | 金額の前提 | 前提条件の明記 |
| 顧客データ | 業務の前提 | 適法性・正確性 |
| 図面 | 制作の前提 | 最新版の確認 |
| 技術資料 | 開発の前提 | 正確性の範囲 |
| 財務資料 | 信用の前提 | 作成時点 |
| 業務フロー | 運用の前提 | 実態との一致 |
| システム情報 | 連携の前提 | 正確性の確認 |
| 既存契約 | 整合の前提 | 矛盾の有無 |
| 提案資料 | 提案の前提 | 反映の有無 |
| 発注者提供資料 | 誰の責任か | 起因の切り分け |
| 受注者提出資料 | 提出物の正確性 | 保証範囲 |
確認事項9:表明保証の基準時
結論として、表明保証は、いつの時点について正しいと保証するのかが重要です。
契約締結日、契約開始日、納品日、実行日、契約期間中、各個別契約締結時などがあります。契約締結時だけ正しければよいのか、契約期間中ずっと維持する必要があるのかを確認します。期間中に変化する可能性がある事項は、継続表明保証にできるかを慎重に見ます。違反や変更があった場合の通知義務を入れることもあります。
| 基準時 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 契約締結日 | 締結時点の事実 | 締結後の変化 |
| 契約開始日 | 開始時点 | 締結日との差 |
| 実行日 | 取引実行時 | クロージング型 |
| 納品日 | 納品時点 | 成果物の状態 |
| 検収日 | 検収時点 | 検収との連動 |
| 個別契約締結時 | 個別契約ごと | 基本契約との関係 |
| 契約期間中継続 | 継続保証 | 負担の重さ |
| 支払時 | 支払時点 | 信用状態 |
| 情報提供時 | 提供時点 | 正確性の時点 |
| 変更発生時 | 状態変化時 | 通知義務との関係 |
| 通知義務あり | 変化を知らせる | 通知の手続 |
確認事項10:「知る限り」「重要な点において」などの限定表現
結論として、表明保証条項には、「知る限り」「合理的に知り得る限り」「重要な点において」などの限定表現が入ることがあります。
これらは、表明保証する側の責任範囲を調整する意味を持ちます。表明保証を受ける側では、限定が強すぎてリスクヘッジにならない場合があります。表明保証する側では、確認不能な事項まで無限定に保証しないために有用な場合があります。なお、「知る限り」などの限定表現は、常に入れるべき、または常に削るべき、と一律には言えません。どちらが正しいというより、事項の性質と確認可能性に応じて判断します。
| 限定表現 | 意味のイメージ | 表明保証する側の効果 | 表明保証を受ける側の注意点 |
|---|---|---|---|
| 知る限り | 認識している範囲で | 責任を限定しやすい | 限定が強すぎないか |
| 合理的に知り得る限り | 調査して分かる範囲で | 一定の調査を前提 | 調査の程度 |
| 重要な点において | 重要な事項に限り | 軽微事項を除外 | 重要性の判断 |
| 本契約の履行に重大な影響を及ぼす範囲で | 履行への影響に限り | 影響範囲に限定 | 影響の判断 |
| 法令上必要な範囲で | 法令が求める範囲で | 範囲を明確化 | 必要範囲の確認 |
| 自社が管理する範囲で | 管理下の事項に限り | 管理外を除外 | 管理範囲の確認 |
| 自社の責めに帰すべき事由により | 自社の責任による場合 | 帰責性を要件化 | 帰責性の判断 |
| 重大な違反がない | 重大な違反に限り | 軽微違反を除外 | 重大性の判断 |
| 現在係属中のものはない | 係属中に限定 | 過去・将来を除外 | 対象期間の確認 |
| 書面で開示済みのものを除く | 開示済みは対象外 | 開示で責任回避 | 開示内容の確認 |
確認事項11:違反時の効果
結論として、表明保証違反があった場合、損害賠償、補償、解除、期限の利益喪失、契約不履行、是正義務などにつながることがあります。
違反時の効果が明記されているか、他条項に委ねられているかを確認します。表明保証違反が解除事由になっているか、損害賠償上限の対象になるのか上限例外になるのかを確認します。軽微な違反でも直ちに重大な効果が発生する条項になっていないかにも注意します。なお、「表明保証違反なら必ず解除できる」「必ず損害賠償できる」と一律には言えず、効果は契約の定めや事案によります。第9話の損害賠償、第14話の解除条項でも扱います。
| 違反時の効果 | 確認する理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 損害賠償 | 賠償の有無 | 範囲の確認 |
| 補償 | 補償条項の有無 | 補償範囲 |
| 解除 | 解除事由か | 事案による |
| 無催告解除 | 催告なし解除 | 重大性の要否 |
| 是正義務 | 是正の機会 | 是正期間 |
| 通知義務 | 違反時の通知 | 通知期限 |
| 期限の利益喪失 | 一括請求 | 連動の確認 |
| 支払停止 | 支払の保留 | 要件の確認 |
| 取引停止 | 取引の停止 | 影響範囲 |
| 表明保証違反の重大性 | 重大性の要否 | 軽微違反の扱い |
| 賠償上限との関係 | 上限の対象か | 第9話と連動 |
| 上限例外 | 例外になるか | 例外範囲の確認 |
確認事項12:自社が表明保証する側の見方
結論として、自社が表明保証する側の場合、その事実を本当に確認できるかを重視します。
法務だけで確認できない事項を無条件に保証していないかに注意します。社内のどの部門に確認すべきかを整理します。確認困難な事項は、限定表現、開示済み事項の除外、重要性の限定、対象範囲の限定を検討します。ただし、過度に限定しすぎると相手方に受け入れられない場合もあります。なお、法務がすべての表明保証事項を確認できるわけではありません。
| 確認項目 | 見る理由 | 確認先・対応 |
|---|---|---|
| 本当に確認できるか | 無条件保証の回避 | 確認可能性の整理 |
| 法務だけで確認可能か | 確認範囲の把握 | 確認先の振り分け |
| 事業部門確認が必要か | 業務実態 | 事業部門 |
| 管理部門確認が必要か | 管理情報 | 管理部門 |
| 経理・財務確認が必要か | 財務情報 | 経理・財務 |
| 情報システム確認が必要か | セキュリティ等 | 情報システム部門 |
| 個人情報担当確認が必要か | 個人情報の適法性 | 個人情報担当 |
| 限定表現の要否 | 責任範囲の調整 | 事項の性質で判断 |
| 開示済み事項の除外 | 既知事項の整理 | 開示リストの作成 |
| 重要性の限定 | 軽微事項の除外 | 重要性の基準 |
| 弁護士確認の要否 | 専門的判断 | 顧問弁護士 |
確認事項13:相手方に表明保証させる側の見方
結論として、相手方に表明保証させる側の場合、自社が本当に確認したいリスクをカバーできているかを見ます。
相手方の契約締結権限、法令遵守、許認可、知財非侵害、個人情報の適法取得、反社非該当などが重要になることがあります。表明保証の対象が狭すぎるとリスクヘッジになりません。ただし、過度に広い表明保証を求めると交渉が難しくなる場合があります。重要リスクと交渉可能性を踏まえて優先順位をつけます。
| 確認したいリスク | 求める表明保証の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 契約締結権限 | 有効に締結できること | 署名権限の確認 |
| 必要許認可 | 必要な許認可の保有 | 業法の特定 |
| 法令遵守 | 重要な法令の遵守 | 範囲の調整 |
| 反社非該当 | 反社会的勢力でないこと | 対象範囲 |
| 知財非侵害 | 第三者権利の非侵害 | 限定表現に注意 |
| 個人情報の適法取得 | 適法な取得・利用 | 取得経路の確認 |
| データ提供の適法性 | 提供の適法性 | 提供根拠の確認 |
| 紛争不存在 | 重大な紛争がないこと | 重要性の限定 |
| 財務状態 | 信用不安がないこと | 把握の難しさ |
| 再委託先管理 | 再委託先の管理 | 連鎖の把握 |
| 第三者素材 | 素材の適法利用 | 利用条件の確認 |
| 行政処分の不存在 | 重大処分がないこと | 重要性の確認 |
表明保証条項と他条項の関係
結論として、表明保証条項は、他の条項と密接に関係します。
表明保証条項だけを見ても足りず、違反時の効果や関連条項をセットで確認する必要があります。
| 関連条項 | 関係するポイント | 確認すること |
|---|---|---|
| 契約当事者 | 締結権限の前提 | 第5話と連動 |
| 社内決裁・権限 | 権限の裏付け | 第18話と連動 |
| 法令遵守 | 遵守の表明 | 第17話と連動 |
| 秘密保持 | 情報の取扱い | 第10話と連動 |
| 知的財産 | 非侵害の表明 | 第11話と連動 |
| 個人情報 | 適法取得の表明 | 第12話と連動 |
| 損害賠償 | 違反時の賠償 | 第9話と連動 |
| 補償 | 第三者請求への補償 | 補償範囲の確認 |
| 解除 | 違反時の解除 | 第14話と連動 |
| 反社条項 | 反社非該当の表明 | 第15話と連動 |
| 期限の利益喪失 | 信用不安時の対応 | 第14話と連動 |
| 社内規程 | 社内ルールとの整合 | 第18話と連動 |
表明保証条項の見落としを減らす関連ツール
表明保証条項は、権限、法令遵守、知財非侵害、個人情報、反社非該当など、多くの論点が集まる条項です。レビューの初動で論点を洗い出し、過去の類似相談や確認コメントを参照しながら進めることで、確認漏れを減らしやすくなります。
いずれも、最終的な判断は人が行うことが前提の補助ツールです。一次チェックの型づくり、論点のたたき台、過去相談の検索、法令更新の確認などに役立ちます。
契約書 論点アラートツール(無料)
契約書レビューの初動で、表明保証、契約締結権限、法令遵守、知財非侵害、個人情報などの重要論点を見落とさないための補助ツールです。人による確認を前提に、一次チェックの型を作りたい場合に向いています。
使ってみる契約書AIレビュー プロンプト集
表明保証条項、限定表現、違反時効果、確認質問などを整理し、レビューコメントや依頼部門への確認文のたたき台を作るためのプロンプト集です。人による確認を前提に、レビューの型をそろえたい場合に向いています。
詳しく見るLegalOS 法律相談
過去の法律相談や回答メモを検索し、類似案件の確認に使える補助ツールです。表明保証、法令遵守、知財非侵害、個人情報など、過去に社内で判断した論点を探したい場合に向いています。
詳しく見る法令遵守や許認可の表明保証を確認する際は、関連法令や制度の更新もあわせて見ておくと安心です。LegalOS 法改正アラートは、法令・制度の更新情報を確認するための補助ツールです。人による確認を前提に、法令更新の見落としを減らしたい場合に役立ちます。
表明保証条項の確認フロー
結論として、表明保証条項は、立場の確認から修正案・リスク説明の作成まで順番に進めると抜けにくくなります。
自社が保証する側か、相手方に保証させる側かを確認
立場を確認します。
表明保証事項を一覧化する
事項を洗い出します。
各事項の確認可能性を確認する
確認できる事実かを見ます。
社内確認先・確認資料を整理する
誰に何を確認するか整理します。
基準時を確認する
いつの時点の保証か確認します。
限定表現の有無を確認する
責任範囲の調整を確認します。
違反時の効果を確認する
解除・賠償・補償等を確認します。
損害賠償・解除・補償との関係を確認する
関連条項との整合を確認します。
重要な未確認事項は依頼部門・管理部門・専門家に確認する
確認できない点を相談します。
修正案またはリスク説明を作る
結果を整理して共有します。
法務から依頼部門への確認質問例
結論として、表明保証について確認するときは、責めずに、判断材料を集めるために聞きます。質問は短く、具体的に、何を返してほしいかを明確にします。以下はそのまま使える文例です。
文例1:自社が表明保証する事項を確認できているか聞きたい場合
確認結果が分かると、限定表現の要否などを整理できます。
文例2:契約締結権限・社内決裁を確認したい場合
状況が分かると、締結権限に関する表明保証を確認できます。
文例3:必要な許認可・業法確認をしたい場合
状況が分かると、法令遵守・許認可の表明保証を整理できます。
文例4:知財非侵害について確認したい場合
状況が分かると、知財非侵害の表明保証の範囲を整理できます。
文例5:個人情報・データの適法取得を確認したい場合
状況が分かると、データに関する表明保証を整理できます。
文例6:紛争・行政処分・重大クレームの有無を確認したい場合
状況が分かると、紛争不存在の表明保証の範囲を整理できます。
文例7:表明保証の限定表現を入れるべきか確認したい場合
確認可能な範囲が分かると、限定表現の要否を判断できます。
文例8:表明保証違反時の効果を事業判断として受け入れるか確認したい場合
判断が分かると、誰がどの前提で受け入れたかを記録して進められます。
初心者向け:表明保証条項チェックリスト
結論として、この記事の内容は、契約締結前・社内確認時・交渉時の3段階に整理できます。法務だけでなく、営業・事業部門・管理部門の方も使える内容です。
| タイミング | チェック項目 | 確認 |
|---|---|---|
| 契約締結前 | 表明保証事項を確認したか | ☐ |
| 契約締結前 | 自社が保証する側かを確認したか | ☐ |
| 契約締結前 | 相手方に保証させる側かを確認したか | ☐ |
| 契約締結前 | 契約締結権限を確認したか | ☐ |
| 契約締結前 | 法令遵守を確認したか | ☐ |
| 契約締結前 | 許認可を確認したか | ☐ |
| 契約締結前 | 反社非該当を確認したか | ☐ |
| 契約締結前 | 知財非侵害を確認したか | ☐ |
| 契約締結前 | 個人情報の適法性を確認したか | ☐ |
| 契約締結前 | 紛争・行政処分を確認したか | ☐ |
| 社内確認時 | 確認資料を集めたか | ☐ |
| 社内確認時 | 確認部署に確認したか | ☐ |
| 交渉時 | 限定表現を確認したか | ☐ |
| 交渉時 | 基準時を確認したか | ☐ |
| 交渉時 | 違反時の効果を確認したか | ☐ |
| 交渉時 | 損害賠償・解除との関係を確認したか | ☐ |
表明保証条項でよくある失敗
結論として、表明保証条項には典型的な失敗パターンがあります。知っておくと、同じ失敗を避けやすくなります。
| よくある失敗 | 起きやすい理由 | 防止策 |
|---|---|---|
| 表明保証条項を定型文として読み飛ばす | 形式条項に見えるから | 事項ごとに確認する |
| 自社が確認できない事項まで無条件に保証する | 確認可能性を見ないから | 確認可能性を整理 |
| 「すべての法令を遵守」と広すぎる保証をする | 範囲を意識しないから | 重要な範囲に限定を検討 |
| 知財非侵害や個人情報の適法取得を確認しない | 専門領域だから | 関係部門・専門家に確認 |
| 表明保証の基準時を見落とす | 時点を意識しないから | 基準時を確認 |
| 「知る限り」などの限定表現の意味を確認しない | 文言を読み流すから | 限定の効果を確認 |
| 違反時の効果を確認しない | 効果が別条項にあるから | 関連条項と横断確認 |
| 表明保証違反が無催告解除事由になっていることに気づかない | 解除条項を見ないから | 解除条項と連動確認 |
| 損害賠償上限の例外になっていることを見落とす | 賠償条項を見ないから | 上限例外を確認 |
| 法務だけで確認できない事項を依頼部門に確認しない | 法務で完結させようとするから | 確認先を振り分ける |
まとめ|表明保証条項は「確認できる事実か」を見極める
表明保証条項は、一定の事実・権限・状態が正しいことを契約上確認する重要条項です。
定型条項に見えても、違反すると解除・損害賠償・補償などにつながることがあります。
契約締結権限、法令遵守、反社非該当、知財非侵害、個人情報、許認可、紛争不存在などが典型的な確認対象です。
自社が表明保証する側では、確認できない事項を無条件に保証していないか注意します。
相手方に表明保証させる側では、本当に確認したいリスクをカバーできているかを見ます。
基準時、限定表現、違反時の効果、損害賠償・解除との関係を確認します。
法務だけで確認できない事項は、依頼部門・管理部門・専門家に確認します。
次回は、解除条項・期限の利益喪失条項の見方として、契約を終わらせる条件を整理します。表明保証違反は、解除や期限の利益喪失と関係する重要論点です。
🔍 関連ガイドへ進む
この記事と関連度の高い実務ガイドをまとめています。次に読むならこちら。
