就活ハラスメント防止体制の作り方|採用ルール・相談窓口・通報経路の整備
法令・情報基準日:2026年9月11日
就活ハラスメントの防止は、「気をつけましょう」という注意喚起や、社内規程を1本作るだけでは機能しません。とくに2026年(令和8年)10月1日から、男女雇用機会均等法に基づく「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」への防止措置が事業主に義務付けられます。施行日は、令和8年政令第17号により2026年10月1日と確定しています。
この記事では、経営者・役員・人事責任者・法務責任者の方に向けて、就活ハラスメント防止体制をどの順番で、どの部門が、何を担って作るかを、採用ルール・相談窓口・通報経路・初動対応・記録管理・再発防止・部門別役割分担・チェックリストまで具体的に整理します。
なお、「就活ハラスメント」は実務上、就活セクハラだけでなく、高圧的な面接、いわゆる就活パワハラ、妊娠・出産等に関するハラスメントに類する言動などを含めて広く使われることがあります。しかし、2026年10月1日から新たに法律上の措置義務となるのは、男女雇用機会均等法13条に基づく求職者等セクハラ対策です。この記事では、法定義務と、それ以外の望ましい取組・社内統制を区別して説明します。
これは全15話シリーズ「就活ハラスメント実務ガイド15選」の第12話です。第11話で就活ハラスメントを経営リスク・採用ブランドの問題として整理したのを受け、本記事はそのリスクを具体的にどう防ぐかに焦点を当てます。
【法律上必須】男女雇用機会均等法13条および厚生労働省告示第52号に基づき、2026年10月1日以降、事業主が講ずべき措置。
【法令上の努力義務】男女雇用機会均等法14条等により、「努めなければならない」とされる事項。
【指針上の望ましい取組】厚生労働省告示第52号が「望ましい」としている取組。
【LegalGPTが推奨する社内統制】法令に一律の形式で直接定められたものではないものの、事故予防・証拠化・利益相反管理などの観点から企業で採用を検討したい運用。
1. 導入|「規程を作って終わり」では機能しない
体制整備というと、まず社内規程やマニュアルを作ることを思い浮かべがちです。しかし、2026年10月1日以降の求職者等セクハラ対策では、社内規程を作っただけでは措置義務への対応は完了しません。
厚生労働省告示第52号は、会社内部の方針・ルール整備だけでなく、求職者等に対するルールの周知、求職者等が利用できる相談窓口の設定・周知、相談後の事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止、プライバシー保護までを一連の措置として定めています。
つまり、面接官がルールを知っているだけでも、相談窓口が社内イントラにだけ載っている状態でも足りません。求職者が会社指定の面談ルールを知り、社外から相談窓口へアクセスでき、相談後に実質的な対応が動くところまで設計する必要があります。
2. 就活ハラスメント防止体制とは何か
就活ハラスメント防止体制とは、実務上は採用活動や職業選択に関係する場面で、学生・求職者等に対する不適切な言動を予防し、相談・調査・是正まで行う社内の仕組みを意味します。
ただし、法律上の整理では、「就活ハラスメント」全般と「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」を同一視してはいけません。
法定義務の対象となる「求職者等」には、求人への応募者だけではなく、男女雇用機会均等法施行規則2条の3により、事業主が実施する労働者の採用に資する活動に参加する者、教育実習・看護実習その他の実習を受ける者も含まれます。
また、告示第52号は、求職活動等について、採用面接、就職説明会、企業が雇用する労働者への訪問、インターンシップ、教育実習・看護実習等を例示し、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上の活動も含むとしています。
法定措置と会社独自の統制を組み合わせ、採用活動全体で運用します。
3. まず経営者が決めるべき方針
体制づくりの出発点は、経営層が方針を明確にすることです。ただし、「就活ハラスメントを許さない」という一文だけで、告示第52号4の措置をすべて満たすわけではありません。
法律上明確化が必要な方針
- 【法律上必須】求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容と、これを行ってはならない旨を明確化する。
- 【法律上必須】性的な言動を行った者について厳正に対処する方針と、その対処内容を明確化する。就業規則その他の服務規律等を定めた文書との整合も確認する。
- 【法律上必須】求職活動等に関するルールをあらかじめ定める。労働者だけでなく、求職者等にも周知する。
- 【法律上必須】相談者・行為者等のプライバシーを保護する。さらに、その旨を労働者・求職者等へ周知する。
就活ハラスメント全般を一体管理する場合
- 【指針上の望ましい取組】高圧的言動などのパワーハラスメントに類する行為、妊娠・出産等や育児休業等に関するハラスメントに類する行為についても、セクハラ禁止方針と併せて方針を示す。
- 【LegalGPTが推奨する社内統制】求職者が相談・申告をしたこと自体を理由として選考上不利益に扱わないという会社方針を明文化する。
- 【LegalGPTが推奨する社内統制】面接官・リクルーター・OB・OG・インターン担当者・役員など、求職者と接点を持つ者を採用コンプライアンスの管理対象として整理する。
一方、「求職者本人が会社へ相談したことを理由として選考上不利益に扱ってはならない」という同じ形の明文規定が13条2項に置かれているわけではありません。もっとも、求職者が安心して相談できる制度とするため、会社独自の採用方針として、相談・申告を理由に不利益に取り扱わない旨を明示することを本記事では推奨します。法定の不利益取扱い禁止と会社の推奨運用を混同しないことが重要です。
公正な採用選考も別の軸で確認する
採用 ハラスメント対策とあわせて、公正な採用選考にも注意が必要です。厚生労働省は、応募者の基本的人権を尊重し、応募者の適性・能力に基づいて採用選考を行うことを基本とし、本籍・出生地、家族に関すること、思想・信条等、本人の適性・能力に関係しない事項を把握することは就職差別につながるおそれがあるとして注意を求めています。
また、職業安定法5条の5は、求職者等の個人情報の収集・保管・使用を、募集業務等の目的達成に必要な範囲で行うことを求めています。したがって、「不適切な質問=すべて求職者等セクハラ」という整理ではなく、セクハラ、公正採用、男女差別、個人情報という複数の法的論点を分けて確認することが必要です。
採用方針の記載例
当社は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを許容しません。採用面接、説明会、OB・OG訪問、リクルーター面談、インターンシップその他の求職活動等について会社所定のルールを定め、採用関係者へ周知・教育するとともに、求職者等にも必要な事項を周知します。相談があった場合には、相談者・行為者等のプライバシーに配慮し、必要な事実確認・対応・再発防止を行います。
なお、当社は採用コンプライアンス上の方針として、求職者等が相談・申告を行ったこと自体を理由に選考上不利益に取り扱わないものとします。
4. 防止体制に必要な整備項目
2026年10月1日以降の求職者等セクハラ対策では、次の措置を一体として整備する必要があります。
表1:防止体制に必要な整備項目
5. 採用活動ルールの対象範囲
採用ルールは、公式面接だけを対象にすると実務上の管理漏れが生じます。ただし、「社員と求職者が接触すれば、公式・非公式を問わず一律にすべて法律上の求職活動等になる」という整理も正確ではありません。
厚生労働省の2026年4月24日付「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」問30では、ある場面が「求職活動等」に該当するかについて、次のような事情を合わせて考慮するとされています。
- 労働者の職務との関連性
- 求職活動等との関連性
- 労働者と求職者等との関係性
- 参加者
- 参加や対応が強制的か任意か
- 求職活動等の開始以前から、部活動その他の私的活動等による面識があったかなどの事情
したがって、人事部門が設定していないOB・OG訪問、社員と学生とのSNS上の接触、懇親の場なども、実質的に採用に資する活動の延長と評価されれば対象となり得ます。一方、求職者との接触であるというだけで当然に法的対象となるわけではありません。
社内統制上は広く管理対象を棚卸しつつ、「求職活動等」への法的該当性は個別事情を踏まえて判断します。
法律上、採用ルールで押さえる項目
告示第52号4(1)ハおよび2026年4月24日Q&A問33は、求職者等との面談等に関するルールの例として、次の事項を挙げています。
- 【法律上必須】面談時間および場所の指定
- 【法律上必須】実施体制(複数人で対応すること等)
- 【法律上必須】求職者等とのやり取りに用いるSNSの種類の指定
これらは「例示」であり、企業は自社の採用形態に応じて具体化する必要があります。また、ルールを社内で定めるだけではなく、労働者に周知・啓発し、求職者等にも面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等で周知することが必要です。
表2:採用ルールに入れる内容と法的位置付け
採用ルール例
・求職者等との面談は、会社が指定または承認した時間帯・場所・方法で行う。
・面談の実施体制をあらかじめ定め、一対一で実施する場合には会社所定の管理方法に従う。
・求職者等との連絡は、会社が指定するメール、採用システム、SNSその他の手段を使用する。
・会社が認めていない個人アカウントを利用した継続的な私的連絡、採用上の優遇を示唆する言動、性的な質問・誘いその他求職者等の求職活動を阻害し得る言動を行わない。
・ルール違反またはハラスメントのおそれを把握した場合は、所定の人事・コンプライアンス窓口へ速やかに報告する。
6. 相談窓口の作り方
2026年10月1日以降は、求職者等セクハラについて、相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知することが法律上必要です。
重要なのは、社内向けハラスメント窓口が存在するというだけでは足りない点です。求職者等が社外から利用でき、その存在と連絡先を知り、実際に相談したとき適切に処理される必要があります。
表3:相談窓口設計のポイント
既存の社員向けハラスメント相談窓口を使う場合
既存の社員向け相談窓口を求職者等にも利用させる設計は考えられます。ただし、「社内に窓口があるから対応済み」とは判断せず、少なくとも次の4点を確認します。
- ① 社外から利用可能か。社員専用イントラや社内電話からしかアクセスできない窓口になっていないか。
- ② 求職者等へ周知されているか。採用サイト、募集案内、インターン案内等から部署・担当者・連絡先を確認できるか。
- ③ 実質的な相談対応が可能か。求職者等からの相談を受けても「社員向け窓口なので扱えない」とならないか。
- ④ 事後対応部門へ連携できるか。相談受付後、人事・法務・コンプライアンス等へ必要な範囲で迅速に連携できるか。
採用サイト・募集案内に何を載せるか
求職者への外部周知では、少なくとも、求職活動等に関するルールを踏まえた面談等の留意事項と、相談窓口の部署・担当者等の連絡先を確認できる状態にします。
求職者向け案内の記載例
当社では、採用活動、OB・OG訪問、リクルーター面談、インターンシップ等におけるハラスメント防止のため、面談方法・連絡方法等に関するルールを定めています。社員との連絡には会社が指定する方法をご利用ください。
採用活動中の性的な言動その他の不適切な言動について、気になることや相談したいことがある場合は、下記相談窓口へご連絡ください。明確にハラスメントに該当するか判断できない段階でも相談いただけます。
相談窓口:[部署・担当者]
連絡先:[メールアドレス・フォーム・電話番号等]
7. 通報経路・エスカレーション基準
告示第52号は、社内で「人事→法務→経営層」という特定のエスカレーション経路そのものを一律に指定しているわけではありません。一方で、相談窓口が適切に対応できる体制、迅速かつ正確な事実確認、被害者・行為者への対応、再発防止は法律上必要です。
そのため、相談を受けた後に誰へ連携するのかを明確にしておくことは、措置を実際に履行するための重要な社内統制となります。
具体的な社内ルートは会社ごとに設計します。利益相反がある場合には通常ルートから切り離すことも必要です。
表4:エスカレーション基準の例
8. 初動対応フローを整備する
求職者等から相談を受けた場合、告示第52号は、相談者の心身の状況等へ配慮しつつ、迅速かつ正確に事実関係を確認し、必要な事後対応を行うことを求めています。
相談受付時
【法律上必須】 相談窓口は、明らかにセクハラである場合だけを受け付ける制度にしてはいけません。発生のおそれがある場合や、該当性が微妙な場合についても広く相談へ対応し、相談者の心身の状況や当該言動を受けた際の認識にも配慮します。
事実確認
【法律上必須】 相談者と行為者とされる者の双方から事実関係を確認します。双方の主張に不一致があり、十分に事実確認できない場合には、必要に応じて第三者から事実関係を聴取するなどの措置を講じます。
被害者への配慮・行為者への措置
【法律上必須】 セクハラの事実が確認された場合には、事案の内容・状況に応じ、被害者と行為者を引き離すための対応、行為者の謝罪、人事担当者による相談対応等、被害者に対する配慮措置を適正に行います。
行為者についても、就業規則その他の服務規律等に基づき、必要な懲戒その他の措置を適正に行います。事実関係を確認する前に結論を決めるのではなく、適正な調査・判断手続を踏むことが重要です。
事実が確認できなかった場合も再発防止を行う
【法律上必須】 告示第52号は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの事実が確認できなかった場合にも、方針の再周知・啓発等の再発防止措置を講ずることを求めています。「証拠不足だったので何もしない」という運用にはしないことが重要です。
相談者の「共有しないでほしい」という希望への対応
相談者の希望や懸念は早い段階で確認します。一方、適正な事実確認や再発防止のために一定の情報共有が必要となる場合もあるため、無条件に「誰にも伝えない」と約束するのではなく、共有目的・共有範囲を説明し、プライバシーを保護しながら必要最小限の情報共有を行う運用が適切です。
初動対応の詳しい進め方は、第9話「学生から相談が来たときの初動対応|事実確認・記録・関係者対応の進め方」もあわせてご覧ください。
9. 部門ごとの役割分担
防止体制を実際に機能させるには、誰が何を担うかを明確にする必要があります。ただし、法律上「相談窓口は必ず法務部」「必ず人事部以外」と決められているわけではありません。
2026年4月24日Q&A問34は、人事担当者以外を相談窓口担当者にすることも考えられるとする一方、例外なく人事担当者以外でなければならないわけではないと明示しています。重要なのは、相談に実質的かつ適切に対応でき、必要な部門へ連携できることです。
表5:部門ごとの役割分担例
10. 記録保管ルールの作り方
記録は、事実確認と説明責任の土台になります。一方、告示第52号が「すべての面談について特定様式の記録を作成し、一定年数保管する」といった一律の記録様式・保存年限を定めているわけではありません。
したがって、面談記録や相談記録の作成・保管期間は、【LegalGPTが推奨する社内統制】として、自社の採用プロセス、事実確認の必要性、個人情報の管理、紛争対応の可能性などを踏まえて設計します。
表6:記録保管ルールの例
採用情報の管理については、第14話「採用活動と個人情報管理|学生情報を悪用させないための社内ルール」もあわせて確認してください。
11. 小規模企業でも|まず着手する3項目と、施行時までに必要な措置一式
専任の法務部・コンプライアンス部門がない中小企業でも、まずは次の3項目から着手できます。ただし、この3項目だけで2026年10月1日以降の法定措置義務がすべて満たされるという意味ではありません。
これは着手順の提案です。法定措置の「3点セット」ではありません。
- ① 採用活動ルール。面談時間・場所、実施体制、SNS・連絡手段を含む基本ルールを作る。
- ② 求職者向け相談窓口。社外からアクセス可能な連絡先を定め、採用サイト等から求職者等へ周知する。
- ③ 初動対応・記録フォーマット。相談受付、事実確認、被害者配慮、行為者対応、再発防止までの責任者と手順を決める。
告示第52号4に基づき、方針の明確化・周知啓発、行為者への厳正な対処方針、求職活動等ルールと求職者への周知、相談窓口と実質的対応体制、迅速かつ正確な事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止、プライバシー保護、所定の労働者への不利益取扱い禁止の周知等を一体として確認する必要があります。
定期採用をしていない会社はどうするか
2026年4月24日Q&A問37は、定期的な採用活動を行っておらず、かつ、求職者等と労働者が接する機会がない場合には、告示第52号4の措置をすべて常時講じていなくても差し支えないとしています。
ただし、2026年10月1日以降に採用活動を開始し、求職者等に対する説明会や面接を実施することとなれば、その時点で全ての措置義務を履行する必要があります。
12. 体制整備でよくある失敗
2026年10月1日の施行対応では、「何か文書を作った」ことではなく、法定措置が実際に機能する状態になっているかを確認する必要があります。
表7:体制整備でよくある失敗と改善策
13. 2026年10月1日施行|求職者等セクハラ対策義務化を正確に整理
施行日は2026年10月1日で確定
令和7年法律第63号「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」により、男女雇用機会均等法に新たな13条が設けられました。
その施行期日は、令和8年政令第17号により、2026年(令和8年)10月1日とされています。したがって、「施行予定」「制度設計中」「施行日は変更され得る」といった表現ではなく、2026年9月11日時点では確定した施行日として対応する必要があります。
法律上の措置義務は「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」
男女雇用機会均等法13条1項は、求職者等の求職活動等において、当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、求職者等からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを事業主に義務付けています。
企業規模による適用除外は設けられていません。ただし、定期採用を行わず求職者等と労働者との接点もない企業については、Q&A問37の整理に留意する必要があります。
「求職者等」の範囲
令和8年厚生労働省令第18号による男女雇用機会均等法施行規則2条の3では、「求職者」に加えて、次の者が「求職者等」に含まれます。
- 事業主の実施する労働者の採用に資する活動に参加する者
- 教育実習、看護実習その他の実習を受ける者
2026年4月24日Q&A問29は、採用に資する活動の例として、就職説明会、インターンシップ、OB・OG訪問等を示しています。他方、専ら教育を目的とする社会科見学や企業による講演会等の参加者は、それだけでは「労働者の採用に資する活動に参加する者」には含まれないとしています。
「求職活動等」の範囲は一律ではない
告示第52号は、採用面接、就職説明会、労働者への訪問、インターンシップ、教育実習・看護実習等を例示し、SNS等のオンラインを介した活動も含むとしています。また、会社のオフィス内に限られません。
ただし、飲食店でのOB・OG訪問や懇親会など、採用活動そのものと私的活動との境界にある場面については、Q&A問30に従い、職務との関連性、求職活動等との関連性、当事者の関係性、参加者、参加・対応の強制性または任意性等を合わせて判断します。
内定者は「内定者」という名称だけで判断しない
2026年4月24日Q&A問28は、内定者について重要な整理を示しています。
したがって、社内マニュアルで「内定者はすべて求職者」「内定者はすべて社員」と機械的に分類するのではなく、当該内定によって労働契約が成立しているかを法的に確認する構成とする必要があります。
法律上の不利益取扱い禁止の対象
男女雇用機会均等法13条2項は、求職者等からの相談への対応に労働者が協力し、その際に事実を述べたことを理由として、その労働者に解雇その他不利益な取扱いをすることを禁止しています。
この点は、求職者本人について「相談したことを理由とする不利益取扱い禁止」が13条2項に直接規定されている、という説明とは区別する必要があります。
【LegalGPTが推奨する社内統制】 もっとも、相談制度の実効性を確保し、相談が選考判断へ不適切に影響することを防ぐ観点から、会社独自の採用方針として「相談・申告を理由に求職者を不利益に取り扱わない」旨を明示し、相談情報と選考情報のアクセス権限を必要に応じ分離することを推奨します。
就活パワハラ等は「望ましい取組」
【指針上の望ましい取組】 告示第52号6は、高圧的面接等のパワーハラスメントに類する行為、妊娠・出産等に関するハラスメントに類する行為、育児休業等に関するハラスメントに類する行為についても、セクハラ禁止方針と同様の方針を併せて示し、相談があれば求職者等セクハラ防止措置を参考に必要に応じ適切に対応することが望ましいとしています。
さらに、性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的言動、本人の了解を得ない機微な個人情報の暴露、開示の強要・禁止等についても、必要に応じ適切な対応を行うよう努めることが望ましいとされています。
教育機関等との連携
【指針上の望ましい取組】 大学・専門学校等の相談窓口担当者や教員等から、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに関する情報提供があった場合には、情報提供元と連携し、適切に対応することが望ましいとされています。
求職者本人は、企業の相談窓口だけでなく、大学等のキャリアセンター・相談窓口や都道府県労働局へ相談することも可能です。
LegalGPTでは、企業の法務・人事・コンプライアンス担当者向けに、ハラスメント対応で使える有料プロンプト集を提供しています。採用活動ルール、面接官向け注意喚起文、リクルーターガイドライン、相談受付票、初動対応方針、再発防止策などのたたき台を作成する際の補助としてご活用いただけます。
ハラスメント対応プロンプト集を見る※AIの出力をそのまま使用せず、自社の事情・事実関係・最新法令を踏まえて必ず修正・確認してください。本ツールは社内検討・文書作成・体制づくりの補助を目的とするもので、法的な安全性や問題の解決を保証するものではありません。
14. このシリーズで次に読むべき記事
本記事では、防止体制の全体像と2026年10月1日の義務化対応を整理しました。次回・第13話「OB訪問・リクルーター制度の管理責任|現場任せにしない運用ルール」では、とくにトラブルが起こりやすいOB訪問・リクルーター制度について、面談時間・場所・実施体制・個人連絡等をどこまで管理するかを掘り下げます。
採用担当者・面接官の教育内容を整える場合は、第10話「採用担当者・面接官向け研修で何を教えるべきか|就活ハラスメント防止教育の作り方」もあわせて確認してください。
15. まとめ|2026年10月1日前の実務チェックリスト
2026年10月1日に向け、定期的に採用を行っている会社、または施行日以降も採用活動が続く会社は、少なくとも次の項目を確認しておきましょう。定期採用を行っておらず、求職者等と労働者との接点もない会社については、採用活動を開始する時点で措置一式を履行できるよう、採用開始時の確認手続を準備しておくことが重要です。
- 2026年10月1日の就活セクハラ 義務化は確定事項。令和8年政令第17号により施行日は確定している。
- 新たな法律上の措置義務は、求職者等セクハラ対策。就活パワハラ等をすべて同じ法定義務として扱わない。
- 「社内規程を作った」だけでは足りない。求職者へのルール周知、相談窓口の外部周知、事後対応まで必要になる。
- OB訪問・SNS等も対象となり得るが、一律判断ではない。職務との関連性、求職活動との関連性、私的関係、参加の任意性等を総合考慮する。
- 相談窓口は実質的に機能する必要がある。外部委託も可能で、人事担当者以外を置くこともできるが、「必ず人事以外」という義務ではない。
- 事実が確認できなくても再発防止は必要。方針の再周知・教育等を行う。
- 内定者は名称で判断しない。採用内定によって労働契約が成立しているかで適用する枠組みが変わる。
- 採用頻度の低い企業にも特有の実務がある。採用を開始する時点で措置一式を履行できる仕組みを作っておく。
就活ハラスメント実務ガイド15選|全15話
- 就活ハラスメントとは?就活生が最初に知っておきたい基本
- 面接で違和感を覚えたら|聞かれたくない質問への受け答えと記録の残し方
- OB訪問・リクルーター面談で危ないサイン|食事・個別連絡・密室化に注意する
- インターン中におかしいと感じたら|長時間拘束・飲み会・社員扱いへの対応
- 内定辞退を止められたら|オワハラ・囲い込み・辞退妨害への対応
- 面接で聞いてはいけない質問|採用担当者が避けるべきNG質問リスト
- 就活セクハラの具体例|容姿・恋愛・食事誘導・SNS連絡の危険ライン
- 就活パワハラの具体例|圧迫面接・人格否定・長時間拘束のリスク
- 学生から相談が来たときの初動対応|事実確認・記録・関係者対応の進め方
- 採用担当者・面接官向け研修で何を教えるべきか|就活ハラスメント防止教育の作り方
- 経営者が知るべき就活ハラスメントリスク|採用活動が会社の信用を失わせるとき
- 就活ハラスメント防止体制の作り方|採用ルール・相談窓口・通報経路の整備(この記事)
- OB訪問・リクルーター制度の管理責任|現場任せにしない運用ルール
- 採用活動と個人情報管理|学生情報を悪用させないための社内ルール
- 就活ハラスメント防止チェックリスト|就活生・法務・経営者が確認すべき15項目
-
厚生労働省「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73075000&dataType=0&pageNo=1 -
厚生労働省「令和7年の労働施策総合推進法等の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html -
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)条文・理由
https://www.mhlw.go.jp/content/001502753.pdf -
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」(令和8年政令第17号)
https://www.mhlw.go.jp/content/001662631.pdf -
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令」(令和8年厚生労働省令第18号)
https://www.mhlw.go.jp/content/001662620.pdf -
厚生労働省「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73076000&dataType=0&pageNo=1 -
厚生労働省「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73ac0815&dataType=0&pageNo=1 -
厚生労働省「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(2026年4月24日・2026年10月1日適用)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695619.pdf -
厚生労働省「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」(令和8年7月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf -
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/ -
厚生労働省「あかるい職場応援団|求職者等に対するセクシュアルハラスメントとは」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/harassment_list/kyushoku_sexual-hara/ -
厚生労働省「公正な採用選考の基本」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/newpage_56780.html -
厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html -
厚生労働省「職業安定法」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=75001000&dataType=0 -
厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者等がその責務等に関して適切に対処するための指針」(平成11年労働省告示第141号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00005680&dataType=0&pageNo=1
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