インターン中におかしいと感じたら|長時間拘束・飲み会・社員扱いへの対応
次の案件で使える形に。
インターンシップは、仕事や会社のことを知るうえで、とても有益な機会です。一方で、実際の職場の中に入るぶん、就活生は「これも社会経験だから我慢すべきかな」「断ったら評価が下がるかな」と感じやすくなります。 この記事では、長時間拘束・飲み会・社員のような扱い・私的連絡・性的/威圧的な言動などについて、就活生がどう受け止め、記録し、相談すればよいかをやさしく整理します。あわせて、企業の人事・法務・運営担当者がインターン運営ルールを見直すための視点もまとめました。
これは全15話シリーズ「就活ハラスメント実務ガイド15選」の第4話です。第1話で全体像、第2話で面接、第3話でOB訪問・リクルーター面談を扱いました。今回は、インターンシップ中に起こりやすい場面を取り上げます。
1. 導入|「職場の中」に入るからこそ、我慢しやすくなる
インターンシップは、会社や仕事を知り、自分に合うかを確かめられる貴重な場です。本記事はインターンを否定するものではありません。ただ、面接やOB訪問と違うのは、実際の職場に入り、社員と一緒に時間を過ごすという点です。そのぶん、次のような気持ちが生まれやすくなります。
- 「ここで評価されれば選考に有利になるかもしれない」
- 「社員のように振る舞わないと浮いてしまうかもしれない」
- 「断ったら空気を悪くしてしまうかもしれない」
こうした気持ちから、就活生は長時間残ってしまったり、飲み会を断れなかったりします。本記事では、就活生が自分を守る方法と、企業がインターン運営で整えるべきことを整理します。
2. インターンシップとは何か
インターンシップは、学生が在学中に、自分の専攻や将来のキャリアに関連した就業体験を行う、キャリア形成支援の取り組みです。仕事理解・企業理解・自己理解に役立ち、入社後のミスマッチを減らす効果も期待されています。
近年、インターンシップのルールは整理されました。経済産業省・文部科学省・厚生労働省の三省合意(インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方)が2022年に改正され、2025年卒以降、学生のキャリア形成支援プログラムは大きく4つのタイプに整理されました。
- タイプ1:オープン・カンパニー(業界・企業の情報提供が中心。超短期)
- タイプ2:キャリア教育(教育的な位置づけのプログラム)
- タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ(一定期間以上の就業体験が必須。「インターンシップ」と呼べる類型)
- タイプ4:高度専門型インターンシップ(大学院生向けなど)
ポイントは、一定の要件を満たすインターンシップ(タイプ3・4)では、そこで得た学生情報を、採用活動の開始以降に活用できるようになったことです。つまり、学生が「インターンは評価や選考につながっている」と感じるのは、気のせいではなく実態としても起こり得るということです。だからこそ、学生は断りにくさを感じやすく、企業側にはより丁寧な配慮が求められます。
3. なぜインターン中にハラスメントが起きやすいのか
インターン中に違和感のある出来事が起きやすいのには、構造的な理由があります。下の図のように、「職場の中に入る」ことから生まれる複数の要因が重なります。
(職場の中に入り、社員と過ごす)
これらが重なると、学生は「我慢すべき」「断れない」と感じやすくなります。
とくに、担当社員やメンターとの力関係は見落とされがちです。学生にとって、メンターは「自分を評価するかもしれない人」に見えます。そのため、メンターからの誘いや要求を断りにくくなります。これは学生の性格の問題ではなく、立場の違いから自然に生まれる構造です。
4. 注意すべき場面を見分ける
大切なのは、すべての負荷や緊張が直ちにハラスメントになるわけではないということです。仕事には一定の緊張感が伴いますし、適切な指導は学びになります。問題は、それが教育・就業体験の範囲を超えているかどうかです。まずは、信号機のイメージで全体像をつかみましょう。
- 事前説明どおりの内容・時間で進む
- 開始・終了時刻が管理されている
- 業務体験・会社説明が中心
- 相談先が明示されている
- 終了時間が曖昧で、帰りにくい
- 懇親会への参加を強く勧められる
- 連絡が個人LINEに移行していく
- 事前説明と内容が大きく違う
- 私生活に踏み込む質問がある
- 飲酒を強要される
- 深夜・長時間の拘束がある
- 性的・人格否定的な発言がある
- 二人きり・密室化する
- 「断ると選考に響く」と示唆される
- 体調不良を言い出せない雰囲気がある
次の表で、就活生が出会いやすい具体的なサインと、その対応を整理します。スマートフォンでも読みやすいカード形式にしています。
表1:インターン中に注意すべきサイン
5. 参加前に確認しておきたいこと
トラブルの多くは、事前の情報があるだけで防ぎやすくなります。参加前に次の流れで確認しておきましょう。
表3:インターン参加前チェックリスト
6. その場で困ったときの断り方・切り返し
その場で強く拒否する必要はありません。コツは、事前説明や業務を根拠に、やわらかく区切ることです。以下の例はそのまま使う必要はなく、自分の言葉に直して構いません。
表2:その場で使える断り方・切り返し例
7. 違和感を覚えた後に記録・相談する方法
記録は「相手を攻撃するため」のものではありません。目的は、あとで自分や相談相手が事実を冷静に確認できるようにすることです。感情的に書くのではなく、起きたことを淡々と残すのがコツです。
表4:記録に残すべき項目
相談先
- 大学のキャリアセンター。インターン先とのやりとりの経験があり、間に入ってもらえることもあります。
- 信頼できる教員・家族・社会人。気持ちを整理し、客観的な意見をもらえます。
- 企業の人事・相談窓口。2026年10月以降、就活セクハラについては相談窓口の設置・周知が企業に求められます。
- 公的な相談窓口。厚生労働省「あかるい職場応援団」などが情報・相談先を案内しています。
- 弁護士などの専門家。深刻なケースや法的対応を検討したい場合に相談できます。
8. 企業側が整備すべきインターン運営ルール
ここからは、人事・法務・インターン運営担当者、経営者の方に向けた内容です。インターン中の問題の多くは、担当社員個人の悪意というより、運営が現場任せになっていることから生まれます。つまり、これはインターン運営の設計と管理の問題として組織で解決できます。
背景として、2026年(令和8年)10月1日からは、改正労働施策総合推進法・改正男女雇用機会均等法により、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)の防止措置が、企業規模を問わずすべての事業主の義務となります(指針:令和8年厚生労働省告示第51号・第52号)。インターンに参加する学生も「求職者等」に含まれ得るため、インターン運営はこの義務とも密接に関わります。
表5:企業側のNG運用と改善策
整理すると、企業側が整えるべきことは次の通りです。インターン運営ルールの文書化/担当社員・メンターの研修/開始・終了時刻の管理/飲み会・懇親会の任意性の徹底/個人連絡・SNS利用のルール化/学生への事前説明/相談窓口の明示/事故・ハラスメント発生時の初動対応/記録・報告・再発防止/そして現場任せにしない管理体制です。
9. このシリーズで次に読むべき記事
インターンや選考が進むと、今度は「辞退しにくい雰囲気」が生まれることがあります。内定や内々定の後に、辞退を引き止められたり、他社の選考をやめるよう促されたりする、いわゆる「オワハラ(就活終われハラスメント)」です。
次回・第5話「内定辞退を止められたら|オワハラ・囲い込み・辞退妨害への対応」では、囲い込みや辞退妨害への対応を整理します。インターン後・内定後にも同じ「断りにくさ」の構造が働くため、あわせて読んでおくと安心です。
10. まとめ
- インターンは有益な機会。ただし職場の中に入るぶん、学生は断りにくい場面に置かれやすい。
- 長時間拘束・飲酒・密室・私的連絡・人格否定・性的発言は注意すべきサイン。7つの判断軸で見分ける。
- 就活生は、事前確認・記録・相談で自分を守れる。断れなくても自分を責めない。安全を最優先に。
- 企業は、運営を現場任せにしない。ルール・研修・時間管理・相談窓口を整え、採用コンプライアンスとして設計する。
違和感を覚えたあなたの感覚は、大げさなものではありません。我慢せず、記録し、相談する──それが自分を守る一番の方法です。
Legal GPTでは、企業法務・コンプライアンス・契約実務に関する実務記事を発信しています。採用活動に関する法務・コンプライアンスの基本を知りたい方は、トップページから関連記事をご覧ください。
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- 採用担当者・面接官向け研修で何を教えるべきか|就活ハラスメント防止教育の作り方
- 厚生労働省「あかるい職場応援団」就活ハラスメント(求職者の方へ) https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/syukatsu_hara/
- 厚生労働省「あかるい職場応援団」就活ハラスメント(企業向け) https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/syukatsu_hara/enterprise/
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/newpage_56780.html
- 厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html
- 厚生労働省「令和8年10月1日からカスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」 https://www.mhlw.go.jp/content/001662630.pdf
- 文部科学省・厚生労働省・経済産業省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001163112.pdf
※法令・指針・三省合意の内容や施行日は今後変更される可能性があります。実務対応の際は、必ず最新の公的資料をご確認ください。
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