就活ハラスメント防止体制の作り方|採用ルール・相談窓口・通報経路の整備

法令・情報基準日:2026年9月11日

就活ハラスメントの防止は、「気をつけましょう」という注意喚起や、社内規程を1本作るだけでは機能しません。とくに2026年(令和8年)10月1日から、男女雇用機会均等法に基づく「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」への防止措置が事業主に義務付けられます。施行日は、令和8年政令第17号により2026年10月1日と確定しています。

この記事では、経営者・役員・人事責任者・法務責任者の方に向けて、就活ハラスメント防止体制をどの順番で、どの部門が、何を担って作るかを、採用ルール・相談窓口・通報経路・初動対応・記録管理・再発防止・部門別役割分担・チェックリストまで具体的に整理します。

なお、「就活ハラスメント」は実務上、就活セクハラだけでなく、高圧的な面接、いわゆる就活パワハラ、妊娠・出産等に関するハラスメントに類する言動などを含めて広く使われることがあります。しかし、2026年10月1日から新たに法律上の措置義務となるのは、男女雇用機会均等法13条に基づく求職者等セクハラ対策です。この記事では、法定義務と、それ以外の望ましい取組・社内統制を区別して説明します。

これは全15話シリーズ「就活ハラスメント実務ガイド15選」の第12話です。第11話で就活ハラスメントを経営リスク・採用ブランドの問題として整理したのを受け、本記事はそのリスクを具体的にどう防ぐかに焦点を当てます。

【法律上必須】男女雇用機会均等法13条および厚生労働省告示第52号に基づき、2026年10月1日以降、事業主が講ずべき措置。

【法令上の努力義務】男女雇用機会均等法14条等により、「努めなければならない」とされる事項。

【指針上の望ましい取組】厚生労働省告示第52号が「望ましい」としている取組。

【LegalGPTが推奨する社内統制】法令に一律の形式で直接定められたものではないものの、事故予防・証拠化・利益相反管理などの観点から企業で採用を検討したい運用。

※本記事は2026年9月11日時点の公的資料に基づく一般的な情報提供です。男女雇用機会均等法13条の新たな措置義務は2026年10月1日に施行されます。したがって、2026年9月11日時点では新制度の施行前ですが、10月1日以降、法の適用場面で告示第52号が求める措置を履行していない場合には、法13条1項の措置義務との関係が問題となります。個別事案では事実関係や労働契約の成立状況等により法的評価が異なるため、重要案件は必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。

1. 導入|「規程を作って終わり」では機能しない

体制整備というと、まず社内規程やマニュアルを作ることを思い浮かべがちです。しかし、2026年10月1日以降の求職者等セクハラ対策では、社内規程を作っただけでは措置義務への対応は完了しません。

厚生労働省告示第52号は、会社内部の方針・ルール整備だけでなく、求職者等に対するルールの周知、求職者等が利用できる相談窓口の設定・周知、相談後の事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止、プライバシー保護までを一連の措置として定めています。

つまり、面接官がルールを知っているだけでも、相談窓口が社内イントラにだけ載っている状態でも足りません。求職者が会社指定の面談ルールを知り、社外から相談窓口へアクセスでき、相談後に実質的な対応が動くところまで設計する必要があります。

2026年10月1日は「予定」ではありません 令和7年法律第63号の施行期日は、令和8年政令第17号により2026年10月1日と定められています。厚生労働省告示第52号、関係省令、2026年4月24日付の解釈事項もすでに公表されています。本記事では、施行日を確定事項として整理します。

2. 就活ハラスメント防止体制とは何か

就活ハラスメント防止体制とは、実務上は採用活動や職業選択に関係する場面で、学生・求職者等に対する不適切な言動を予防し、相談・調査・是正まで行う社内の仕組みを意味します。

ただし、法律上の整理では、「就活ハラスメント」全般と「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」を同一視してはいけません。

求職活動等におけるセクシュアルハラスメント
位置付け 【法律上必須】2026年10月1日から、男女雇用機会均等法13条1項に基づく防止措置義務の対象。
基本的な対象 求職活動等において、事業主が雇用する労働者による性的な言動により、求職者等の求職活動等が阻害されること。
高圧的面接・就活パワハラ等
位置付け 【指針上の望ましい取組】告示第52号6は、求職活動等におけるパワーハラスメントに類する行為、妊娠・出産等に関するハラスメントに類する行為、育児休業等に関するハラスメントに類する行為について、方針を併せて示し、相談時には必要に応じ適切に対応することが望ましいとしています。
企業としての就活ハラスメント一体管理
位置付け 【LegalGPTが推奨する社内統制】法律上の区分を維持したまま、採用ハラスメント全般を共通の採用ルール・相談窓口・エスカレーション体制で管理する運用。

法定義務の対象となる「求職者等」には、求人への応募者だけではなく、男女雇用機会均等法施行規則2条の3により、事業主が実施する労働者の採用に資する活動に参加する者、教育実習・看護実習その他の実習を受ける者も含まれます。

また、告示第52号は、求職活動等について、採用面接、就職説明会、企業が雇用する労働者への訪問、インターンシップ、教育実習・看護実習等を例示し、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上の活動も含むとしています。

図1:就活ハラスメント防止体制の全体像
就活ハラスメント防止体制
経営方針
採用ルール
社員への周知・教育
求職者への外部周知
相談窓口
通報・エスカレーション
事実確認・初動対応
被害者・行為者対応
記録・プライバシー管理
再発防止・見直し

法定措置と会社独自の統制を組み合わせ、採用活動全体で運用します。

3. まず経営者が決めるべき方針

体制づくりの出発点は、経営層が方針を明確にすることです。ただし、「就活ハラスメントを許さない」という一文だけで、告示第52号4の措置をすべて満たすわけではありません。

法律上明確化が必要な方針

  • 【法律上必須】求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容と、これを行ってはならない旨を明確化する。
  • 【法律上必須】性的な言動を行った者について厳正に対処する方針と、その対処内容を明確化する。就業規則その他の服務規律等を定めた文書との整合も確認する。
  • 【法律上必須】求職活動等に関するルールをあらかじめ定める。労働者だけでなく、求職者等にも周知する。
  • 【法律上必須】相談者・行為者等のプライバシーを保護する。さらに、その旨を労働者・求職者等へ周知する。

就活ハラスメント全般を一体管理する場合

  • 【指針上の望ましい取組】高圧的言動などのパワーハラスメントに類する行為、妊娠・出産等や育児休業等に関するハラスメントに類する行為についても、セクハラ禁止方針と併せて方針を示す。
  • 【LegalGPTが推奨する社内統制】求職者が相談・申告をしたこと自体を理由として選考上不利益に扱わないという会社方針を明文化する。
  • 【LegalGPTが推奨する社内統制】面接官・リクルーター・OB・OG・インターン担当者・役員など、求職者と接点を持つ者を採用コンプライアンスの管理対象として整理する。
「求職者が相談したことを理由とする不利益取扱い禁止」の書き方に注意 男女雇用機会均等法13条2項が明文で禁止しているのは、事業主による求職者等からの相談への対応に協力して事実を述べた「労働者」に対する解雇その他の不利益取扱いです。告示第52号4(4)ロも、事実確認への協力や労働局への相談等を行った労働者について、不利益取扱いをしない旨を定めて周知することを求めています。

一方、「求職者本人が会社へ相談したことを理由として選考上不利益に扱ってはならない」という同じ形の明文規定が13条2項に置かれているわけではありません。もっとも、求職者が安心して相談できる制度とするため、会社独自の採用方針として、相談・申告を理由に不利益に取り扱わない旨を明示することを本記事では推奨します。法定の不利益取扱い禁止と会社の推奨運用を混同しないことが重要です。

公正な採用選考も別の軸で確認する

採用 ハラスメント対策とあわせて、公正な採用選考にも注意が必要です。厚生労働省は、応募者の基本的人権を尊重し、応募者の適性・能力に基づいて採用選考を行うことを基本とし、本籍・出生地、家族に関すること、思想・信条等、本人の適性・能力に関係しない事項を把握することは就職差別につながるおそれがあるとして注意を求めています。

また、職業安定法5条の5は、求職者等の個人情報の収集・保管・使用を、募集業務等の目的達成に必要な範囲で行うことを求めています。したがって、「不適切な質問=すべて求職者等セクハラ」という整理ではなく、セクハラ、公正採用、男女差別、個人情報という複数の法的論点を分けて確認することが必要です。

採用方針の記載例

当社は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを許容しません。採用面接、説明会、OB・OG訪問、リクルーター面談、インターンシップその他の求職活動等について会社所定のルールを定め、採用関係者へ周知・教育するとともに、求職者等にも必要な事項を周知します。相談があった場合には、相談者・行為者等のプライバシーに配慮し、必要な事実確認・対応・再発防止を行います。

なお、当社は採用コンプライアンス上の方針として、求職者等が相談・申告を行ったこと自体を理由に選考上不利益に取り扱わないものとします。

4. 防止体制に必要な整備項目

2026年10月1日以降の求職者等セクハラ対策では、次の措置を一体として整備する必要があります。

表1:防止体制に必要な整備項目

① セクハラ禁止方針の明確化・周知啓発
法的位置付け 【法律上必須】
内容 求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容と、これを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者へ周知・啓発する。
② 行為者への厳正な対処方針
法的位置付け 【法律上必須】
内容 性的な言動を行った者について厳正に対処する旨と、その対処内容を就業規則その他の服務規律等を定めた文書に規定し、労働者へ周知・啓発する。
③ 求職活動等に関する採用ルール
法的位置付け 【法律上必須】
内容 面談時間・場所、実施体制、求職者等とのやり取りに用いるSNSの種類などを含むルールをあらかじめ明確化し、労働者と求職者等へ周知・啓発する。
④ 求職者等向け相談窓口
法的位置付け 【法律上必須】
内容 相談窓口をあらかじめ定め、ホームページやパンフレット等を通じて求職者等へ周知する。形式的な窓口ではなく、実質的な対応が可能な体制とする。
⑤ 相談窓口の実効的対応
法的位置付け 【法律上必須】
内容 現実にセクハラが生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、セクハラに該当するか微妙な場合を含めて広く相談へ対応する。相談者の心身の状況や受け止めにも配慮する。
⑥ 迅速かつ正確な事実確認
法的位置付け 【法律上必須】
内容 相談者と行為者とされる者の双方から事実関係を確認し、主張が一致せず十分に確認できない場合には、必要に応じ第三者から聴取するなどの措置を講ずる。
⑦ 被害者への配慮・行為者への措置
法的位置付け 【法律上必須】
内容 事実が確認された場合、速やかに被害者への配慮措置を行い、行為者について就業規則等に基づく必要な懲戒その他の措置を適正に行う。
⑧ 再発防止
法的位置付け 【法律上必須】
内容 方針の再周知・再教育等、再発防止に向けた措置を講ずる。セクハラの事実が確認できなかった場合にも、同様の再発防止措置を講ずる。
⑨ プライバシー保護
法的位置付け 【法律上必須】
内容 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者および求職者等へ周知する。
⑩ 事実確認等に協力した労働者への不利益取扱い禁止
法的位置付け 【法律上必須】
内容 求職者等からの相談への対応に協力して事実を述べた労働者等について、所定の事実確認等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしない旨を定め、労働者へ周知する。
「年1回以上の見直し」は法定頻度ではありません 告示第52号は、求職者等セクハラ対策について「年1回以上見直さなければならない」という一律の頻度を定めているわけではありません。本記事で年次点検を推奨する場合、それは【LegalGPTが推奨する社内統制】です。採用サイクルや事案発生状況に応じ、少なくとも採用開始前や制度変更時に点検し、定期採用を行う会社では年1回以上を目安に全体レビューする運用が実務上有効です。

5. 採用活動ルールの対象範囲

採用ルールは、公式面接だけを対象にすると実務上の管理漏れが生じます。ただし、「社員と求職者が接触すれば、公式・非公式を問わず一律にすべて法律上の求職活動等になる」という整理も正確ではありません。

厚生労働省の2026年4月24日付「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」問30では、ある場面が「求職活動等」に該当するかについて、次のような事情を合わせて考慮するとされています。

  • 労働者の職務との関連性
  • 求職活動等との関連性
  • 労働者と求職者等との関係性
  • 参加者
  • 参加や対応が強制的か任意か
  • 求職活動等の開始以前から、部活動その他の私的活動等による面識があったかなどの事情

したがって、人事部門が設定していないOB・OG訪問、社員と学生とのSNS上の接触、懇親の場なども、実質的に採用に資する活動の延長と評価されれば対象となり得ます。一方、求職者との接触であるというだけで当然に法的対象となるわけではありません。

図2:採用コンプライアンス上、棚卸しすべき接点
求職者等との接点
採用面接
就職説明会
OB・OG訪問
リクルーター面談
インターン
内定者向け説明会・懇親会
SNS・メッセージ
オンライン面談

社内統制上は広く管理対象を棚卸しつつ、「求職活動等」への法的該当性は個別事情を踏まえて判断します。

法律上、採用ルールで押さえる項目

告示第52号4(1)ハおよび2026年4月24日Q&A問33は、求職者等との面談等に関するルールの例として、次の事項を挙げています。

  • 【法律上必須】面談時間および場所の指定
  • 【法律上必須】実施体制(複数人で対応すること等)
  • 【法律上必須】求職者等とのやり取りに用いるSNSの種類の指定

これらは「例示」であり、企業は自社の採用形態に応じて具体化する必要があります。また、ルールを社内で定めるだけではなく、労働者に周知・啓発し、求職者等にも面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等で周知することが必要です。

表2:採用ルールに入れる内容と法的位置付け

面談時間・面談場所
法律上 【法律上必須】面談時間・場所を指定するルールを整えることが例示されている。
推奨運用 【LegalGPTが推奨する社内統制】深夜・早朝の面談を避ける、会社指定のオープンな場所を基本とする、密室化を避けるなど、自社の具体的基準を置く。
実施体制
法律上 【法律上必須】実施体制をルール化する。Q&Aは「複数人で対応することとする等」を例示している。
推奨運用 【LegalGPTが推奨する社内統制】一対一の面談を行う場合の承認、場所、報告方法などを定める。
SNS・連絡手段
法律上 【法律上必須】求職者等とのやり取りに使用するSNSの種類を指定することがルール例として示されている。
推奨運用 【LegalGPTが推奨する社内統制】個人LINE・個人SNSを禁止または制限し、会社管理下の連絡手段へ集約する。個人LINEの一律禁止自体が法令に直接書かれているわけではない。
OB訪問・リクルーター面談
法的整理 OB・OG訪問は厚生労働省Q&Aで求職活動等の例として明示されている。ただし、個々の接触が求職活動等に当たるかは職務との関連性、採用との関連性、私的関係の有無等を踏まえて判断する。
推奨運用 【LegalGPTが推奨する社内統制】夜間面談、飲酒を伴う一対一面談、ホテル客室などプライベート性の高い場所での面談を制限し、実施後に簡潔な面談記録を残す。
インターン
法的整理 インターンシップは求職活動等の例として告示・Q&Aに明示されている。採用に資する活動の参加者は「求職者等」に含まれ得る。
推奨運用 【LegalGPTが推奨する社内統制】担当者、時間、懇親会の扱い、連絡方法、相談先をインターン開始前に明示する。
面談・連絡の記録
法的整理 告示第52号は、すべてのOB訪問や面談について特定様式の記録を残すことを一律に義務付けてはいない。
推奨運用 【LegalGPTが推奨する社内統制】日時、場所、参加者、目的など最低限の記録を残し、会社が非公式接点を把握できるようにする。

採用ルール例

・求職者等との面談は、会社が指定または承認した時間帯・場所・方法で行う。

・面談の実施体制をあらかじめ定め、一対一で実施する場合には会社所定の管理方法に従う。

・求職者等との連絡は、会社が指定するメール、採用システム、SNSその他の手段を使用する。

・会社が認めていない個人アカウントを利用した継続的な私的連絡、採用上の優遇を示唆する言動、性的な質問・誘いその他求職者等の求職活動を阻害し得る言動を行わない。

・ルール違反またはハラスメントのおそれを把握した場合は、所定の人事・コンプライアンス窓口へ速やかに報告する。

6. 相談窓口の作り方

2026年10月1日以降は、求職者等セクハラについて、相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知することが法律上必要です。

重要なのは、社内向けハラスメント窓口が存在するというだけでは足りない点です。求職者等が社外から利用でき、その存在と連絡先を知り、実際に相談したとき適切に処理される必要があります。

表3:相談窓口設計のポイント

窓口をあらかじめ定める
法的位置付け 【法律上必須】相談担当者をあらかじめ決める、相談制度を設ける、外部機関に相談対応を委託する等の方法が認められている。
形式的ではなく実質的な対応を可能にする
法的位置付け 【法律上必須】2026年4月24日Q&A問34は、相談窓口について「形式的に設けるだけではなく、実質的な対応が可能な相談窓口」とする必要があるとしています。
求職者等への外部周知
法的位置付け 【法律上必須】ホームページやパンフレット等を通じ、窓口の部署または担当者等の連絡先を示すなどして求職者等に周知する。
人事担当者以外を窓口にするか
法的整理 人事担当者以外でなければならないという義務はない。Q&A問34は、求職者が採用担当である人事担当者への相談をためらうことも想定されるため、人事以外の担当者を指定することも考えられるとしています。
推奨運用 【LegalGPTが推奨する社内統制】採用担当者自身が相談対象となるケースに備え、法務・コンプライアンス・外部窓口等の代替経路を用意する。
幅広い相談への対応
法的位置付け 【法律上必須】セクハラが現実に発生している場合だけでなく、発生のおそれがある場合や該当性が微妙な場合も広く相談へ対応する。
相談担当者へのマニュアル・研修
法的位置付け 告示・Q&Aは、適切な対応ができる体制の例として、人事部門との連携、対応マニュアル、相談担当者への研修を示している。

既存の社員向けハラスメント相談窓口を使う場合

既存の社員向け相談窓口を求職者等にも利用させる設計は考えられます。ただし、「社内に窓口があるから対応済み」とは判断せず、少なくとも次の4点を確認します。

  • ① 社外から利用可能か。社員専用イントラや社内電話からしかアクセスできない窓口になっていないか。
  • ② 求職者等へ周知されているか。採用サイト、募集案内、インターン案内等から部署・担当者・連絡先を確認できるか。
  • ③ 実質的な相談対応が可能か。求職者等からの相談を受けても「社員向け窓口なので扱えない」とならないか。
  • ④ 事後対応部門へ連携できるか。相談受付後、人事・法務・コンプライアンス等へ必要な範囲で迅速に連携できるか。

採用サイト・募集案内に何を載せるか

求職者への外部周知では、少なくとも、求職活動等に関するルールを踏まえた面談等の留意事項と、相談窓口の部署・担当者等の連絡先を確認できる状態にします。

求職者向け案内の記載例

当社では、採用活動、OB・OG訪問、リクルーター面談、インターンシップ等におけるハラスメント防止のため、面談方法・連絡方法等に関するルールを定めています。社員との連絡には会社が指定する方法をご利用ください。

採用活動中の性的な言動その他の不適切な言動について、気になることや相談したいことがある場合は、下記相談窓口へご連絡ください。明確にハラスメントに該当するか判断できない段階でも相談いただけます。

相談窓口:[部署・担当者]
連絡先:[メールアドレス・フォーム・電話番号等]

採用サイトだけでなく、実際に求職者が見る導線へ 【LegalGPTが推奨する社内統制】 採用サイトの奥深いページに1か所掲載するだけでなく、募集案内、面接案内メール、インターン案内、OB・OG訪問案内等から相談窓口へ到達できるようにしておくと、実効性が高まります。

7. 通報経路・エスカレーション基準

告示第52号は、社内で「人事→法務→経営層」という特定のエスカレーション経路そのものを一律に指定しているわけではありません。一方で、相談窓口が適切に対応できる体制、迅速かつ正確な事実確認、被害者・行為者への対応、再発防止は法律上必要です。

そのため、相談を受けた後に誰へ連携するのかを明確にしておくことは、措置を実際に履行するための重要な社内統制となります。

図3:相談窓口・通報経路の設計例
学生・求職者等
求職者向け相談窓口・外部相談窓口
相談担当者・人事責任者
法務・コンプライアンス
必要に応じ経営層・広報等
事実確認・対応・再発防止

具体的な社内ルートは会社ごとに設計します。利益相反がある場合には通常ルートから切り離すことも必要です。

表4:エスカレーション基準の例

性的言動・身体接触・性的誘い
報告先の例 人事責任者・法務・コンプライアンス。重大性に応じ経営層。
理由 求職者等セクハラに該当し得るため、法定の相談・事後対応フローへ接続する必要がある。
高圧的言動・人格否定・長時間拘束
報告先の例 人事責任者・法務・コンプライアンス。
法的整理 【指針上の望ましい取組】就活パワハラに類する相談についても、求職者等セクハラ防止措置を参考に必要に応じ適切に対応することが望ましい。
同一人物・同一部署で繰り返す事案
報告先の例 人事責任者・法務・コンプライアンス・必要に応じ経営層。
理由 個人の問題にとどまらず、採用プロセスや管理監督の構造的問題である可能性がある。
SNS拡散・大学・報道機関等からの問い合わせ
報告先の例 経営層・広報・人事・法務・コンプライアンス。
注意点 外部対応を急ぐあまり、相談者・行為者等のプライバシーや事実確認を軽視しない。
握りつぶさない仕組みにする 【LegalGPTが推奨する社内統制】 「この類型は必ず人事・法務へ上げる」「役員・採用責任者が行為者とされる場合は別ルートへ移す」といった基準をあらかじめ定め、担当者個人の判断で相談が止まらないようにします。

8. 初動対応フローを整備する

求職者等から相談を受けた場合、告示第52号は、相談者の心身の状況等へ配慮しつつ、迅速かつ正確に事実関係を確認し、必要な事後対応を行うことを求めています。

図4:相談受付後の初動対応フロー
相談受付
相談者の心身状況・安全面への配慮
相談内容・希望・必要な共有範囲の確認
相談者・行為者双方から迅速かつ正確に事実確認
主張不一致時は必要に応じ第三者聴取
被害者への配慮・行為者への適正な措置
再発防止・方針再周知

相談受付時

【法律上必須】 相談窓口は、明らかにセクハラである場合だけを受け付ける制度にしてはいけません。発生のおそれがある場合や、該当性が微妙な場合についても広く相談へ対応し、相談者の心身の状況や当該言動を受けた際の認識にも配慮します。

事実確認

【法律上必須】 相談者と行為者とされる者の双方から事実関係を確認します。双方の主張に不一致があり、十分に事実確認できない場合には、必要に応じて第三者から事実関係を聴取するなどの措置を講じます。

被害者への配慮・行為者への措置

【法律上必須】 セクハラの事実が確認された場合には、事案の内容・状況に応じ、被害者と行為者を引き離すための対応、行為者の謝罪、人事担当者による相談対応等、被害者に対する配慮措置を適正に行います。

行為者についても、就業規則その他の服務規律等に基づき、必要な懲戒その他の措置を適正に行います。事実関係を確認する前に結論を決めるのではなく、適正な調査・判断手続を踏むことが重要です。

事実が確認できなかった場合も再発防止を行う

【法律上必須】 告示第52号は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの事実が確認できなかった場合にも、方針の再周知・啓発等の再発防止措置を講ずることを求めています。「証拠不足だったので何もしない」という運用にはしないことが重要です。

相談者の「共有しないでほしい」という希望への対応

相談者の希望や懸念は早い段階で確認します。一方、適正な事実確認や再発防止のために一定の情報共有が必要となる場合もあるため、無条件に「誰にも伝えない」と約束するのではなく、共有目的・共有範囲を説明し、プライバシーを保護しながら必要最小限の情報共有を行う運用が適切です。

初動対応の詳しい進め方は、第9話「学生から相談が来たときの初動対応|事実確認・記録・関係者対応の進め方」もあわせてご覧ください。

9. 部門ごとの役割分担

防止体制を実際に機能させるには、誰が何を担うかを明確にする必要があります。ただし、法律上「相談窓口は必ず法務部」「必ず人事部以外」と決められているわけではありません。

2026年4月24日Q&A問34は、人事担当者以外を相談窓口担当者にすることも考えられるとする一方、例外なく人事担当者以外でなければならないわけではないと明示しています。重要なのは、相談に実質的かつ適切に対応でき、必要な部門へ連携できることです。

表5:部門ごとの役割分担例

経営者・役員
主な役割 方針の承認、体制整備の決定、重大事案・構造的問題への対応。
注意点 【法令上の努力義務】男女雇用機会均等法14条3項は、事業主・法人の役員自身も求職者等への言動に必要な注意を払うよう努めることを求めている。
人事責任者
主な役割 採用ルールの整備・運用、求職者への周知、採用関係者教育、相談・事後対応体制の統括。
注意点 相談対象が人事担当者自身である場合に備え、代替ルートを設ける。
採用担当者
主な役割 日常の採用運用、求職者へのルール周知、相談・違反兆候を把握した場合の報告。
注意点 相談を自分だけで処理せず、エスカレーション基準に従う。
法務・コンプライアンス
主な役割 法令・指針との整合確認、調査支援、処分・対応方針の法的確認、利益相反管理、再発防止策のレビュー。
現場面接官
主な役割 採用ルールに沿った面接、適性・能力に基づく質問・評価、不適切な言動を行わないこと。
リクルーター・OB・OG
主な役割 面談時間・場所・実施体制・SNS等に関する会社ルールの遵守。問題や相談を把握した場合の所定ルートへの報告。
推奨管理 【LegalGPTが推奨する社内統制】リクルーター任命時にルールを個別確認し、非公式なOB・OG訪問についても会社との関係性を整理する。
相談窓口担当者
主な役割 幅広い相談受付、相談者の心身状況等への配慮、必要な部門との連携、プライバシー保護。
体制 人事、法務、コンプライアンス、外部機関等から自社に適した方法を選択できる。ただし実質的対応が可能でなければならない。
役員・事業主自身による性的言動 男女雇用機会均等法13条1項の求職者等セクハラは、条文上、当該事業主が雇用する労働者による性的な言動を対象としています。一方、告示第52号は、事業主や法人の役員による性的な言動についても、必要に応じ適切な対応を行うよう努めることが望ましいとしています。企業の採用コンプライアンスとしては、役員を防止ルールの対象外にしない運用が適切です。

10. 記録保管ルールの作り方

記録は、事実確認と説明責任の土台になります。一方、告示第52号が「すべての面談について特定様式の記録を作成し、一定年数保管する」といった一律の記録様式・保存年限を定めているわけではありません。

したがって、面談記録や相談記録の作成・保管期間は、【LegalGPTが推奨する社内統制】として、自社の採用プロセス、事実確認の必要性、個人情報の管理、紛争対応の可能性などを踏まえて設計します。

表6:記録保管ルールの例

面接・面談記録
保管内容の例 日時、場所、参加者、面談目的、評価記録、OB・OG訪問・リクルーター面談の実施記録。
注意点 不必要な私生活情報や機微情報を書き込まない。採用業務の目的との関係を確認する。
相談・対応記録
保管内容の例 相談受付記録、ヒアリング記録、事実確認資料、判断経緯、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止措置。
法的注意 【法律上必須】相談者・行為者等のプライバシー保護のため、アクセス権限と共有範囲を管理する。
保管期間・削除ルール
法的整理 告示第52号には一律の年数指定はない。職業安定法5条の5その他の個人情報管理上のルールも踏まえて設定する。
推奨運用 【LegalGPTが推奨する社内統制】記録類型ごとに保存目的、保存場所、閲覧権限、保存期間、廃棄方法を決める。

採用情報の管理については、第14話「採用活動と個人情報管理|学生情報を悪用させないための社内ルール」もあわせて確認してください。

11. 小規模企業でも|まず着手する3項目と、施行時までに必要な措置一式

専任の法務部・コンプライアンス部門がない中小企業でも、まずは次の3項目から着手できます。ただし、この3項目だけで2026年10月1日以降の法定措置義務がすべて満たされるという意味ではありません。

図5:小規模企業向け「まず着手する3項目」
まず着手する3項目
① 採用活動ルール
② 求職者向け相談窓口
③ 初動対応・記録フォーマット

これは着手順の提案です。法定措置の「3点セット」ではありません。

  • ① 採用活動ルール。面談時間・場所、実施体制、SNS・連絡手段を含む基本ルールを作る。
  • ② 求職者向け相談窓口。社外からアクセス可能な連絡先を定め、採用サイト等から求職者等へ周知する。
  • ③ 初動対応・記録フォーマット。相談受付、事実確認、被害者配慮、行為者対応、再発防止までの責任者と手順を決める。
施行後、法が適用される採用活動を行う会社が履行すべきものは3項目だけではありません。

告示第52号4に基づき、方針の明確化・周知啓発、行為者への厳正な対処方針、求職活動等ルールと求職者への周知、相談窓口と実質的対応体制、迅速かつ正確な事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止、プライバシー保護、所定の労働者への不利益取扱い禁止の周知等を一体として確認する必要があります。

定期採用をしていない会社はどうするか

2026年4月24日Q&A問37は、定期的な採用活動を行っておらず、かつ、求職者等と労働者が接する機会がない場合には、告示第52号4の措置をすべて常時講じていなくても差し支えないとしています。

ただし、2026年10月1日以降に採用活動を開始し、求職者等に対する説明会や面接を実施することとなれば、その時点で全ての措置義務を履行する必要があります。

採用頻度の低い会社ほど「採用開始チェック」を作る 【LegalGPTが推奨する社内統制】 「採用を始めることが決まったら、人事または管理部門が、ルール・相談窓口・外部周知・調査フロー等の措置一式を確認する」という採用開始時チェックを設けておくと、Q&A問37に沿った実務運用がしやすくなります。

12. 体制整備でよくある失敗

2026年10月1日の施行対応では、「何か文書を作った」ことではなく、法定措置が実際に機能する状態になっているかを確認する必要があります。

表7:体制整備でよくある失敗と改善策

社内規程だけ作り、求職者へ周知していない
なぜ問題か 告示第52号は、求職活動等のルールを求職者等へ周知すること、相談窓口も求職者等へ周知することを求めている。
改善策 採用サイト、募集案内、インターン案内等に面談留意事項と相談窓口の連絡先を掲載する。
社員向け相談窓口があるので対応済みと考える
なぜ問題か 求職者が社外から利用できず、窓口の存在も知らないのであれば、求職者等向けの窓口として機能しない。
改善策 外部アクセス、外部周知、実質的対応能力、事後対応部門との連携を確認する。
就活パワハラまで全部「法律上の措置義務」と説明する
なぜ問題か 2026年10月1日に新設される男女雇用機会均等法13条の措置義務は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメント対策である。
改善策 高圧的面接等は告示第52号6の「望ましい取組」と区別しながら、採用コンプライアンス上は一体管理する。
社員と学生の接触はすべて自動的に法的対象と考える
なぜ問題か Q&Aは、職務との関連性、採用との関連性、当事者の関係性、参加者、強制性・任意性等を総合的に考慮するとしている。
改善策 法的該当性は個別判断としつつ、社内統制上はOB・OG訪問やSNS接触まで広く棚卸しする。
個人LINE禁止・夜間面談禁止を「法律に書いてある」と説明する
なぜ問題か 告示・Q&Aが例示するのは、面談時間・場所、実施体制、使用するSNSの種類などのルール化であり、個人LINEや夜間面談を全国一律に禁止する条文ではない。
改善策 法律上必要なルール整備と、自社が選択する具体的リスク低減策を区別する。
「最低限の3点」で法定義務が完了すると考える
なぜ問題か 告示第52号4は、相談後の事実確認、被害者・行為者対応、再発防止、プライバシー保護等まで求めている。
改善策 3項目は着手順と位置付け、施行時には措置一式を確認する。
「相談があったが証拠がない」で終了する
なぜ問題か 告示第52号は、事実が確認できなかった場合でも再発防止措置を講ずることを求めている。
改善策 方針の再周知、教育、ルールの再確認等を行う。
年1回の見直しを法定義務と説明する
なぜ問題か 告示第52号に一律の「年1回」という法定頻度は定められていない。
改善策 年次レビューは社内推奨運用として位置付け、採用開始前・制度変更時・事案発生後など必要なタイミングでも点検する。

13. 2026年10月1日施行|求職者等セクハラ対策義務化を正確に整理

施行日は2026年10月1日で確定

令和7年法律第63号「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」により、男女雇用機会均等法に新たな13条が設けられました。

その施行期日は、令和8年政令第17号により、2026年(令和8年)10月1日とされています。したがって、「施行予定」「制度設計中」「施行日は変更され得る」といった表現ではなく、2026年9月11日時点では確定した施行日として対応する必要があります。

法律上の措置義務は「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」

男女雇用機会均等法13条1項は、求職者等の求職活動等において、当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、求職者等からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを事業主に義務付けています。

企業規模による適用除外は設けられていません。ただし、定期採用を行わず求職者等と労働者との接点もない企業については、Q&A問37の整理に留意する必要があります。

「求職者等」の範囲

令和8年厚生労働省令第18号による男女雇用機会均等法施行規則2条の3では、「求職者」に加えて、次の者が「求職者等」に含まれます。

  • 事業主の実施する労働者の採用に資する活動に参加する者
  • 教育実習、看護実習その他の実習を受ける者

2026年4月24日Q&A問29は、採用に資する活動の例として、就職説明会、インターンシップ、OB・OG訪問等を示しています。他方、専ら教育を目的とする社会科見学や企業による講演会等の参加者は、それだけでは「労働者の採用に資する活動に参加する者」には含まれないとしています。

「求職活動等」の範囲は一律ではない

告示第52号は、採用面接、就職説明会、労働者への訪問、インターンシップ、教育実習・看護実習等を例示し、SNS等のオンラインを介した活動も含むとしています。また、会社のオフィス内に限られません。

ただし、飲食店でのOB・OG訪問や懇親会など、採用活動そのものと私的活動との境界にある場面については、Q&A問30に従い、職務との関連性、求職活動等との関連性、当事者の関係性、参加者、参加・対応の強制性または任意性等を合わせて判断します。

内定者は「内定者」という名称だけで判断しない

2026年4月24日Q&A問28は、内定者について重要な整理を示しています。

採用内定により労働契約が成立したと認められる場合
対応枠組み 男女雇用機会均等法11条1項の通常の「職場におけるセクシュアルハラスメント」防止措置の対象として、セクハラ防止指針に則って対応する必要がある。
補足 学生の内定者については、入社までの説明会・懇親会や大学の相談窓口利用等も想定されるため、求職者等セクハラ防止指針の内容も参考にすることが望ましい。
採用内定によって労働契約が成立したと認められない場合
対応枠組み その内定者は「求職者等」に該当するため、求職者等セクハラ防止指針に基づく措置を講ずる必要がある。

したがって、社内マニュアルで「内定者はすべて求職者」「内定者はすべて社員」と機械的に分類するのではなく、当該内定によって労働契約が成立しているかを法的に確認する構成とする必要があります。

法律上の不利益取扱い禁止の対象

男女雇用機会均等法13条2項は、求職者等からの相談への対応に労働者が協力し、その際に事実を述べたことを理由として、その労働者に解雇その他不利益な取扱いをすることを禁止しています。

この点は、求職者本人について「相談したことを理由とする不利益取扱い禁止」が13条2項に直接規定されている、という説明とは区別する必要があります。

【LegalGPTが推奨する社内統制】 もっとも、相談制度の実効性を確保し、相談が選考判断へ不適切に影響することを防ぐ観点から、会社独自の採用方針として「相談・申告を理由に求職者を不利益に取り扱わない」旨を明示し、相談情報と選考情報のアクセス権限を必要に応じ分離することを推奨します。

就活パワハラ等は「望ましい取組」

【指針上の望ましい取組】 告示第52号6は、高圧的面接等のパワーハラスメントに類する行為、妊娠・出産等に関するハラスメントに類する行為、育児休業等に関するハラスメントに類する行為についても、セクハラ禁止方針と同様の方針を併せて示し、相談があれば求職者等セクハラ防止措置を参考に必要に応じ適切に対応することが望ましいとしています。

さらに、性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的言動、本人の了解を得ない機微な個人情報の暴露、開示の強要・禁止等についても、必要に応じ適切な対応を行うよう努めることが望ましいとされています。

教育機関等との連携

【指針上の望ましい取組】 大学・専門学校等の相談窓口担当者や教員等から、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに関する情報提供があった場合には、情報提供元と連携し、適切に対応することが望ましいとされています。

求職者本人は、企業の相談窓口だけでなく、大学等のキャリアセンター・相談窓口や都道府県労働局へ相談することも可能です。

経営・法務・人事向け 有料ツール
就活ハラスメント防止体制・社内文書づくりを効率化したい方へ

LegalGPTでは、企業の法務・人事・コンプライアンス担当者向けに、ハラスメント対応で使える有料プロンプト集を提供しています。採用活動ルール、面接官向け注意喚起文、リクルーターガイドライン、相談受付票、初動対応方針、再発防止策などのたたき台を作成する際の補助としてご活用いただけます。

ハラスメント対応プロンプト集を見る

※AIの出力をそのまま使用せず、自社の事情・事実関係・最新法令を踏まえて必ず修正・確認してください。本ツールは社内検討・文書作成・体制づくりの補助を目的とするもので、法的な安全性や問題の解決を保証するものではありません。

14. このシリーズで次に読むべき記事

本記事では、防止体制の全体像と2026年10月1日の義務化対応を整理しました。次回・第13話「OB訪問・リクルーター制度の管理責任|現場任せにしない運用ルール」では、とくにトラブルが起こりやすいOB訪問・リクルーター制度について、面談時間・場所・実施体制・個人連絡等をどこまで管理するかを掘り下げます。

採用担当者・面接官の教育内容を整える場合は、第10話「採用担当者・面接官向け研修で何を教えるべきか|就活ハラスメント防止教育の作り方」もあわせて確認してください。

15. まとめ|2026年10月1日前の実務チェックリスト

2026年10月1日に向け、定期的に採用を行っている会社、または施行日以降も採用活動が続く会社は、少なくとも次の項目を確認しておきましょう。定期採用を行っておらず、求職者等と労働者との接点もない会社については、採用活動を開始する時点で措置一式を履行できるよう、採用開始時の確認手続を準備しておくことが重要です。

□
求職者等との接点を棚卸ししたか 【LegalGPTが推奨する社内統制】面接、説明会、OB・OG訪問、リクルーター、インターン、SNS、懇親会等を把握する。
□
面談時間・場所に関するルールを定めたか 【法律上必須】告示・Q&Aが採用ルールの具体例として示す事項。
□
面談の実施体制を定めたか 【法律上必須】複数人対応等を含め、自社の採用形態に応じて設計する。
□
SNS・連絡手段を指定したか 【法律上必須】使用するSNSの種類等を採用ルールで明確化する。個人LINE禁止等の具体策は自社のリスク管理として決める。
□
求職者等セクハラを行ってはならない旨の方針を明確にしたか 【法律上必須】内容と禁止方針を管理監督者を含む労働者へ周知・啓発する。
□
行為者への厳正な対処方針と対処内容を明確にしたか 【法律上必須】就業規則その他の服務規律等との整合を確認する。
□
社員・採用関係者へ方針・ルールを周知したか 【法律上必須】管理監督者を含め、実際に採用に関係する社員がルールを理解できる状態にする。
□
採用関係者向け研修・講習等を実施できる状態か 告示は周知・啓発手段として研修等を例示し、Q&A問33も採用ルールの周知・啓発のための研修・講習等を示している。男女雇用機会均等法14条2項には研修その他の必要な配慮について努力義務もある。法令に一律の「年1回」という研修頻度はない。
□
求職者等へ採用ルール・面談時の留意事項を周知したか 【法律上必須】ホームページ・パンフレット等の広報手段を利用する。
□
求職者等向け相談窓口をあらかじめ定めたか 【法律上必須】担当者、制度、外部委託等から実効性のある方法を採用する。
□
相談窓口へ社外からアクセスできるか 【法律上必須】求職者等が実際に利用できる連絡先となっているか確認する。
□
窓口の部署・担当者等の連絡先を求職者等へ示したか 【法律上必須】ホームページやパンフレット等による周知を確認する。
□
相談担当者が実質的に対応できるか 【法律上必須】人事等との連携、対応マニュアル、相談担当者研修等を整える。
□
「該当性が微妙な相談」も受け付ける運用になっているか 【法律上必須】現実の発生だけでなく、発生のおそれや境界事案も広く扱う。
□
迅速かつ正確な事実確認フローがあるか 【法律上必須】相談者・行為者双方からの聴取、必要に応じ第三者聴取を行えるようにする。
□
相談者・行為者等のプライバシー保護措置があるか 【法律上必須】必要な措置を講じるだけでなく、その旨を労働者・求職者等へ周知する。
□
被害者への配慮措置を決めているか 【法律上必須】事実確認後、事案に応じた引き離し、相談対応等を速やかに行えるようにする。
□
行為者への適正な措置を実行できるか 【法律上必須】就業規則・服務規律等に基づく懲戒その他の措置との接続を確認する。
□
再発防止措置を決めているか 【法律上必須】方針の再周知・再教育等を行う。事実が確認できなかった場合も再発防止を行う。
□
事実確認等に協力した労働者への不利益取扱い禁止を規程・周知に反映したか 【法律上必須】男女雇用機会均等法13条2項・告示第52号4(4)ロの対象者を正確に反映する。
□
求職者本人への不利益取扱い防止を会社方針として定めたか 【LegalGPTが推奨する社内統制】法13条2項の明文義務とは区別した上で、相談情報が選考へ不適切に影響しない運用を設ける。
□
OB・OG訪問を管理対象としているか 法的な「求職活動等」への該当性は個別事情で判断するが、Q&AはOB・OG訪問を典型例として明示している。
□
リクルーター制度のルールを整備したか 【LegalGPTが推奨する社内統制】会社との関係、面談時間・場所、SNS、報告ルートを明確にする。
□
インターン参加者へのルール・相談窓口周知を確認したか インターンシップは告示・Q&Aで求職活動等の例として明示されている。
□
内定者について労働契約の成立状況で適用枠組みを判断できるか 労働契約が成立していれば通常の職場セクハラ防止措置、成立していなければ求職者等セクハラ防止指針に基づく措置を基本とする。
□
高圧的面接など就活パワハラに類する行為も方針・相談運用へ反映したか 【指針上の望ましい取組】法定の求職者等セクハラ措置義務とは区別して管理する。
□
大学・専門学校等から情報提供を受けた場合の連携先を決めたか 【指針上の望ましい取組】教育機関の相談窓口等との連携に備える。
□
定期採用を行わない会社は、採用活動再開時の確認手続を用意したか 2026年10月1日以降、説明会・面接等を開始する時点で告示第52号4の措置義務をすべて履行できるようにする。
□
採用ルール・窓口・研修・運用を定期的にレビューする仕組みがあるか 【LegalGPTが推奨する社内統制】法定の「年1回義務」ではない。定期採用企業では年1回以上を目安とする社内運用も検討する。
  • 2026年10月1日の就活セクハラ 義務化は確定事項。令和8年政令第17号により施行日は確定している。
  • 新たな法律上の措置義務は、求職者等セクハラ対策。就活パワハラ等をすべて同じ法定義務として扱わない。
  • 「社内規程を作った」だけでは足りない。求職者へのルール周知、相談窓口の外部周知、事後対応まで必要になる。
  • OB訪問・SNS等も対象となり得るが、一律判断ではない。職務との関連性、求職活動との関連性、私的関係、参加の任意性等を総合考慮する。
  • 相談窓口は実質的に機能する必要がある。外部委託も可能で、人事担当者以外を置くこともできるが、「必ず人事以外」という義務ではない。
  • 事実が確認できなくても再発防止は必要。方針の再周知・教育等を行う。
  • 内定者は名称で判断しない。採用内定によって労働契約が成立しているかで適用する枠組みが変わる。
  • 採用頻度の低い企業にも特有の実務がある。採用を開始する時点で措置一式を履行できる仕組みを作っておく。

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参考情報・一次資料(2026年9月11日確認)
※本記事の法令・行政資料の確認基準日は2026年9月11日です。2026年10月1日の施行日は令和8年政令第17号により確定しています。本記事で「LegalGPTが推奨する社内統制」と表示した事項は、法令・告示に一律の形式で直接義務付けられている事項とは区別して記載しています。個別案件では、最新の法令・告示・通達・厚生労働省Q&A等を確認してください。