非上場会社の買収・スタートアップ出資と外為法|1株取得でも確認が必要な理由
次の案件で使える形に。
非上場会社やスタートアップへの出資は、上場会社への市場投資に比べると規模が小さく見えるため、外為法の確認が後回しになりやすいものです。しかし、外国投資家が日本の非上場会社の株式・持分を取得する場合も、外為法上の対内直接投資等(第3話)として確認が必要になり得ます。本記事(第7話)では、外国投資家による非上場会社の買収・スタートアップ出資に焦点を当てて整理します。
ここで最も大切なのは、非上場会社では、上場会社のような1%基準とは異なり、「1株取得」でも確認対象になり得るという点です(第6話の上場会社とはここが大きく違います)。「1株だけだから」「シード投資だから」「少額だから」といって外為法確認を省略してよいとは限りません。
さらにスタートアップでは、まだ売上が小さくても、ソフトウェア、AI、サイバーセキュリティ、半導体、宇宙、医療、エネルギーなどの技術・事業内容によって、指定業種・コア業種(第4話)の確認が必要になることがあります。加えて、外国投資家どうしで非上場株式を譲渡する場合には、「特定取得」という別の枠組みも問題になります。本記事では、これらを初心者にもわかるように整理します。
本記事は、外為法の対内直接投資規制における非上場会社の買収・スタートアップ出資について、企業法務担当者が初期確認を行うための一般的な整理です。実際の判定は、投資家の属性、株式・持分取得の方法、取得比率・議決権比率、対象会社・子会社の事業内容、指定業種・コア業種該当性、特定取得該当性、投資契約上の権利、免除制度の利用可否、最新の法令・告示・当局実務によって変わります。個別案件では、必ず最新の公的資料(財務省・日本銀行・経済産業省)を確認し、必要に応じて外為法・M&A実務に詳しい専門家に相談してください。
非上場会社への出資で外為法が問題になる理由
非上場会社への出資も、外為法の判定軸(第2話〜第5話)に沿って確認します。非上場会社特有のポイントは、上場会社の1%基準のような入口基準とは異なり、1株取得でも外為法確認の対象になり得ること、取得の形(株式譲渡・増資・特定取得)が多様なこと、そして上場会社リストのような公表整理がないことです。
| 順番 | 確認すること | 非上場会社でのポイント | 関連するシリーズ記事 |
|---|---|---|---|
| 1 | 投資家は外国投資家か | VC・ファンド・SPCの背後関係まで確認(日本法人でも該当し得る) | 第2話 |
| 2 | 非上場会社の株式・持分取得か | 1株(1口)でも対内直接投資等に該当し得る | 第3話 |
| 3 | 株式譲渡か、増資引受か、特定取得か | 他の外国投資家からの譲受は「特定取得」(別枠) | 本記事・第3話 |
| 4 | 対象会社・子会社が指定業種・コア業種に該当するか | 定款・HPだけでなく技術・開発内容まで確認 | 第4話 |
| 5 | 事前届出免除制度を使えるか | 役員派遣・技術アクセス前提だと免除を使いにくい | 第5話 |
| 6 | 事前届出・事後報告・手続不要を整理したか | 指定業種か・比率により結論が変わる | 第5話 |
| 7 | クロージング日・払込日・登記日程に反映したか | 待機期間が払込・登記に影響 | 第8話 |
| 8 | 投資契約・株主間契約に反映したか | 権利内容が免除可否・行為時届出に影響 | 第9話 |
非上場会社では「1株取得」でも確認が必要になり得る
上場会社では取得後の議決権比率1%が入口でしたが、非上場会社では株式・持分の取得自体が広く対内直接投資等に該当し得ます。出資比率の閾値が設定されていないため、ざっくり言えば「1株(1口)の取得でも入口に入る」と考えておくのが安全です。少数株でも、非上場会社では株主数が少なく、経営関与・情報アクセス・技術流出の観点で重要性を持ち得るためです。
ただし、厳密には「対内直接投資等に該当すること」と「事前届出が必要なこと」は別です。非上場会社の場合、手続の結論はおおむね次のように分かれます(日本銀行Q&A、財務省資料に基づく整理。詳細は第5話)。
- 対象会社が指定業種を営む場合:1株の取得でも事前届出の要否を検討します。もっとも、非上場会社への対内直接投資等では、免除制度を利用できない外国投資家を除く外国投資家は、コア業種以外の指定業種に限り事前届出免除制度を利用できる場合があり、この場合は出資比率・議決権比率にかかわらず事後報告が必要です。コア業種に該当する場合は、非上場会社への対内直接投資等では免除制度を利用できず、原則どおり事前届出を検討します。
- 対象会社が指定業種を営まない場合(非指定業種):非上場会社株式・持分の取得に係る対内直接投資等の文脈では、指定業種該当性を理由とする事前届出には進まない方向です。事後報告については、取得後の議決権比率が密接関係者と合わせて10%以上となる場合に必要となり、10%未満であれば報告不要と整理される類型があります。ただしこれは対内直接投資等の文脈での説明であり、特定取得、事前届出免除制度を利用する場合、実行報告、支払等報告などは別途確認が必要です。
つまり、「非上場だから不要」も「1株でも必ず事前届出」も、どちらも正確ではありません。正しくは「1株から確認の必要はあるが、結論は指定業種該当性と比率次第」です。また、取得比率だけでなく、役員指名権、拒否権、情報提供権、技術情報アクセス、株主間契約上の権利も確認すべきです。
| 理由 | 具体例 | 外為法上の注意点 |
|---|---|---|
| 株主構成への影響 | 株主数が少なく、少数株でも比重が大きい | 非上場会社では、上場会社の1%基準とは異なり、1株取得でも外為法確認の入口になり得る |
| 経営関与の可能性 | 少数株でも取締役を送る | 役員選任同意は対象取引になり得る |
| 役員指名権 | 投資契約で役員指名権を取得 | 免除基準(役員不就任)に抵触し得る |
| 拒否権・同意権 | 重要事項への拒否権 | 実質的な経営関与として確認 |
| 非公開情報へのアクセス | 情報提供権・閲覧権 | 免除可否・関与度の判断材料 |
| 技術情報へのアクセス | 指定業種事業の非公開技術に触れる | 免除基準(技術アクセス禁止)に抵触し得る |
| 共同投資家との関係 | 複数の外国投資家で共同出資 | 密接関係者・合算・共同保有を確認 |
| 将来ラウンドでの追加取得 | フォローオン投資で比率上昇 | 将来の届出・報告も視野に入れる |
| 指定業種・コア業種との関係 | 開発技術が指定業種に関係 | 1株でも事前届出を検討 |
株式譲渡・増資引受・第三者割当増資の違い
非上場会社・スタートアップへの出資には、いくつかのパターンがあります。既存株主から株式を取得する株式譲渡、会社が新株を発行して外国投資家が引き受ける増資引受・第三者割当増資、スタートアップ投資で多い種類株式(優先株式)の発行、新株予約権や転換社債型新株予約権付社債(CB)を使う投資などです。いずれも、株式取得時点だけでなく、将来の転換・行使・追加取得を見据える必要があります。また、払込日・クロージング日・株主名簿書換日・登記日程と、事前届出が必要な場合の待機期間との関係も確認します。
特に、種類株式やJ-KISS等の将来株式取得型のスキームでは、ダウンラウンドや希薄化防止条項(アンチ・ダイリューション)の発動によって転換比率が上昇し、当初の想定を超えて議決権比率が高まる(事後報告・事前届出の要否が変わる)ことがあります。投資契約の段階で、将来の最大転換比率(キャップ発動時など)も織り込んで外為法上の影響を確認しておくと安全です。
| 出資パターン | 具体例 | 外為法上の確認ポイント | 契約・スケジュール上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 株式譲渡 | 既存株主から株式を取得 | 譲渡元が日本人か外国投資家か(特定取得か) | クロージング条件に外為法クリアランス |
| 第三者割当増資 | 会社が新株を発行し外国投資家が引受 | 新株取得も対象。指定業種・免除を確認 | 払込日・登記期限と待機期間の整合 |
| 種類株式発行 | 優先株式によるスタートアップ投資 | 議決権の有無・内容、将来の支配関係 | 種類株式の内容と議決権比率を確認 |
| 新株予約権発行 | ワラント・ストックオプション類似 | 行使後の議決権影響 | 将来の比率変動を見込む |
| 転換社債型新株予約権付社債(CB) | 転換権付き社債 | 社債性と将来の株式転換の両面 | 社債としての論点も確認 |
| SAFE・J-KISS等の将来株式取得型スキーム | 将来の株式取得を約する投資 | 権利行使・株式取得の時点で確認が必要になり得る | 将来の転換・取得時のスケジュールに留意 |
| 株主間契約による権利付与 | 役員指名権・同意権等の付与 | 経営関与の有無が免除可否に影響 | 契約締結時・権利行使時の両方を確認 |
| 追加出資・フォローオン投資 | 次回ラウンドでの追加取得 | 累積比率・密接関係者合算 | 各ラウンドで再確認 |
特定取得とは何か|外国投資家間の非上場株式譲渡に注意
同じ「非上場株式の取得」でも、誰から取得するかによって枠組みが変わります。日本人株主や外国投資家でない者から取得する場合は「対内直接投資等」ですが、他の外国投資家から日本の非上場会社の株式・持分を譲り受ける場合は、「特定取得」として規定されています(特定取得は外為法26条3項に定義され、事前届出は法28条、事前届出免除は法28条の2によります)。
特定取得は、海外ファンド間のセカンダリー取引、SPV(特別目的事業体)持分の譲渡、ファンド持分の譲渡、既存外国株主から新規外国投資家への譲渡などで問題になります。特定取得に該当する場合でも、事前届出・事後報告の要否は、指定業種(特定取得に係る指定業種・コア業種告示)・投資家属性・免除制度・最新の法令資料を確認する必要があります。なお、特定取得が居住者・非居住者間で行われる場合には、資本取引としての手続が問題になるケースもあります(日本銀行Q&A)。
日本企業側は、外国投資家どうしの譲渡では直接の当事者ではないように見えますが、株主変更・支配関係変更・情報提供依頼が来る可能性があり、無関係とは言えません。
| 区分 | 典型例 | 誰から取得するか | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 対内直接投資等 | 創業株主からの買収、第三者割当増資の引受 | 日本人株主・外国投資家でない者・新株発行 | 指定業種なら1株でも事前届出を検討 |
| 特定取得 | 海外ファンド間の非上場株式譲渡 | 他の外国投資家 | 特定取得の告示・免除基準を確認(別枠) |
| 対象外と整理され得る取引 | 相続・遺贈による取得など | — | 報告不要類型に当たるかを確認(直投令等) |
| 場面 | 具体例 | 確認すべきこと | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 外国投資家Aから外国投資家Bへの非上場株式譲渡 | 海外株主の入替え | 特定取得該当性・指定業種 | 対内直接投資等ではなく特定取得 |
| 海外ファンド間のセカンダリー取引 | ファンドの保有株式を別ファンドへ売却 | 投資家属性・指定業種・免除 | セカンダリーでも確認が必要 |
| SPV持分の譲渡 | 投資ビークルの持分を譲渡 | 背後の対象会社株式の取得に当たるか | 実質的な支配の移転を確認 |
| 海外親会社の変更に伴う間接的な支配関係変更 | 海外グループ再編 | 間接保有・支配関係の変動 | 間接的でも影響を確認 |
| 既存外国株主から新規外国投資家への譲渡 | 株主構成の入替え | 特定取得該当性 | 日本企業側にも情報依頼が来得る |
| M&A前の株主整理 | クロージング前の株式集約 | 各譲渡の枠組み(対内直投/特定取得) | スキーム全体で確認 |
スタートアップ出資で指定業種・コア業種を確認する方法
スタートアップでは、定款・登記簿・会社HPだけでは事業内容が十分にわからないことが多いものです。第4話で述べたとおり、指定業種該当性は実際の事業活動で判断するため、ピッチ資料、技術資料、事業計画、製品ロードマップ、特許・知財、データ処理の内容、顧客候補などを確認する必要があります。重要なのは、売上がまだなくても、開発中の技術・サービスが指定業種・コア業種に関係する可能性があることです。さらに、スタートアップは事業転換(ピボット)も多いため、投資契約時点の事業内容と将来計画の両方を整理しておくことが大切です。
| 分野 | 具体例 | 確認すべき資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| AI・機械学習 | AIモデル・解析エンジンの開発 | 技術資料・用途・顧客候補 | 用途(防衛・監視等)で慎重確認 |
| ソフトウェア・情報処理 | SaaS・データ処理基盤 | 機能仕様・FAQ該当性 | 該当範囲が細かく所管省庁FAQを確認 |
| サイバーセキュリティ | セキュリティ製品・サービス | 製品内容・取引先 | コア業種に関係し得る |
| 半導体・電子部品 | 設計・製造・装置 | 製品・製造工程 | 重要物資・コア業種に関係し得る |
| ドローン・ロボティクス | 無人機・自律制御 | 用途・技術内容 | 航空機(無人航空機)はコア業種 |
| 宇宙・航空 | 衛星・ロケット・部品 | 技術・契約先 | 宇宙関連はコア業種に位置づけられる |
| 医療機器・医薬 | 高度管理医療機器・医薬品 | 薬事・製品分類 | 感染症医薬品・高度管理医療機器はコア業種 |
| エネルギー・電力 | 発電・蓄電・電力制御 | 事業内容・出力規模 | 電気業はコア業種に関係し得る |
| 通信・データ処理 | 通信基盤・大規模データ処理 | 事業内容・許認可 | 通信事業は指定業種・コア業種に関係し得る |
| 官公庁・重要インフラ向けサービス | 政府・インフラ事業者向け製品 | 取引先・契約内容 | 取引先の性質が判断材料になる |
海外VC・CVC・ファンド・日本SPCで注意すべきこと
第2話で述べたとおり、外国投資家は海外企業だけではありません。海外VC・海外CVC・海外ファンドが直接出資する場合はもちろん、海外ファンドが日本SPCを設立して出資する場合、外国親会社を持つ日本法人がCVC投資をする場合、複数の外国投資家が共同投資する場合などでも、投資家属性の確認が必要です。投資家が日本法人でも、外国親会社・外国株主・外国ファンド・最終支配者を確認する必要があり、「日本SPCを使えば外為法は関係ない」というのは誤解です。外国政府・国有企業・公的ファンド・制裁対象・懸念先が関与する場合は、免除制度の利用可否や審査の観点で特に慎重な確認が必要です。
複数の外国投資家が共同で投資する場合は、同じ運用者(GP)が管理する別ファンドや、議決権の共同行使に合意している投資家などが、外為法上の「密接関係者」(直投令2条19項)として合算されることがあります。シードやシリーズAで海外VCが共同で入るときなど、単独の取得比率は小さくても、合算により事後報告・(指定業種であれば)事前届出のハードルを超えることがある点に注意してください。
| 投資家類型 | 具体例 | 外為法上の確認ポイント | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 海外VC | 外国のベンチャーキャピタル | 外国投資家該当性・役員派遣の有無 | 役員派遣前提だと免除を使いにくい |
| 海外CVC | 外国事業会社のコーポレートVC | 事業提携・技術アクセスの有無 | 戦略投資は確認が深くなる |
| 海外PEファンド | 外国のプライベートエクイティ | 支配取得・経営関与の有無 | マジョリティ取得は事前届出を検討 |
| 外国親会社を持つ日本法人 | 外資系日本法人のCVC | 議決権50%以上保有関係(3号該当) | 日本法人でも外国投資家に当たり得る |
| 海外ファンドが設立した日本SPC | 買収用の日本SPC | SPCの出資者・支配関係 | 箱ではなく出資者を見る |
| 外国政府系ファンド | SWF・公的年金基金等 | 外国政府等との関係・認証の有無・免除可否 | 認証を受けたSWF・公的年金基金等は一般免除を利用できる場合があり、最新資料で個別確認 |
| 国有企業・外国政府等に関係する投資家 | 外国政府等に支配・影響される法人、情報収集義務者、特定外国投資家・準ずる者等 | 免除制度の利用が制限される場合がある | 「国有企業だから一律」「SWFだから一律」と単純化せず投資家属性を個別確認 |
| 複数外国投資家による共同投資 | 共同ラウンド | 密接関係者・合算・共同保有 | 単独では基準未満でも合算で問題に |
| 既存外国株主による追加投資 | フォローオン | 累積比率・特定取得該当性 | 各回で再確認 |
投資契約・株主間契約で確認すべき権利
スタートアップ投資では、投資契約・株主間契約に投資家保護条項(役員指名権、オブザーバー権、拒否権・同意権、情報提供権、技術情報アクセス権、優先交渉権、追加投資権など)が多く入ります。外為法では、取得比率だけでなく、投資後にどのような関与をするかが重要になる場合があります。特に、役員就任・指定業種事業への関与・非公開技術情報へのアクセスは、事前届出免除制度(第5話)の免除基準に直結します。経営関与が弱い純投資か、事業提携・技術提携を伴う戦略投資かで、確認の深さが変わります。契約書レビューでは、外為法手続とクロージング条件を連動させることが重要です。
| 権利・条項 | 具体例 | 外為法上の注意点 | 契約実務上の対応 |
|---|---|---|---|
| 役員指名権 | 取締役を1名指名できる | 役員就任は免除基準に抵触し得る | 事前届出・行為時届出を検討 |
| オブザーバー権 | 取締役会へのオブザーバー参加 | 関与度・コア業種の意思決定への関与を確認 | 関与範囲を明確化 |
| 拒否権・同意権 | 重要事項への拒否権 | 実質的な経営関与として確認 | 対象事項を整理 |
| 重要事項承認権 | 一定額以上の取引の承認 | 経営への影響度を確認 | 関与の強さを記録 |
| 情報提供権 | 月次・四半期の情報提供 | 非公開情報アクセスの範囲 | 技術情報の扱いに注意 |
| 非公開技術情報へのアクセス | 研究開発情報の共有 | 指定業種事業の非公開技術なら免除基準に抵触し得る | アクセス範囲を限定・確認 |
| 事業提携条項 | 協業・販売提携 | 戦略投資として確認が深くなる | 提携内容も外為法の観点で確認 |
| 技術提携条項 | 共同開発・技術供与 | 技術アクセス・指定業種該当性 | 免除可否・届出内容に反映 |
| 優先交渉権 | 追加取得の優先交渉 | 将来の取得・比率上昇 | 将来の届出を視野に |
| 追加投資権 | 次回ラウンド参加権 | 累積比率・特定取得 | 各回で再確認 |
| 譲渡制限・共同売却権 | タグアロング・ドラッグアロング | 将来の株主変更・特定取得 | 出口時の枠組みも確認 |
| 将来ラウンドの参加権 | プロラタ権 | 将来の取得・比率変動 | 将来の手続を見込む |
クロージング・払込日・登記日程への影響
事前届出が必要な場合、払込日・株式譲渡実行日・株主名簿書換日・登記日程に影響します。第三者割当増資では、払込期間や登記期限と外為法の待機期間の整合性を確認する必要があります。株式譲渡では、クロージング条件として外為法クリアランスを置くことがあります。スタートアップ投資では、資金繰りや次回ラウンドとの関係でスケジュール遅延が致命的になり得ます。外為法確認を投資契約締結直前に始めると、クロージング遅延につながる可能性があるため、早めに着手することが重要です。
| タイミング | 確認事項 | 遅れると困ること | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| LOI・投資意向表明 | 投資家属性・対象事業の概観 | 後工程で前提が崩れる | 早期に外国投資家該当性を確認 |
| DD開始 | 事業・子会社・技術・許認可 | 指定業種該当の見落とし | 外為法観点をDD項目に追加 |
| 投資契約ドラフト | 役員指名権・技術アクセス等の権利 | 免除可否の判断が遅れる | 権利内容と免除基準を照合 |
| 取締役会決議 | 増資・割当の決議 | 会社法手続と外為法の不整合 | スケジュールを連動 |
| 株主総会決議 | 種類株式・募集事項の決議 | 日程の手戻り | 待機期間を織り込む |
| 事前届出提出 | 届出書・添付資料 | 提出遅れでクロージング遅延 | 早めに準備・提出 |
| 待機期間 | 禁止期間の満了 | 払込・実行ができない | 短縮・延長の可能性を見込む(第8話) |
| 払込日 | 待機期間満了後か | 無届実行のリスク | 待機期間満了を確認して実行 |
| 株式譲渡実行日 | クリアランス完了か | 契約違反・無届リスク | 前提条件の充足を確認 |
| 登記 | 登記期限との整合 | 登記遅延・過料リスク | 登記日程を逆算 |
| 事後報告 | 報告期限(対内直接投資等・特定取得の該当様式では実行日/特定取得日から45日以内。報告類型ごとに様式を確認) | 報告漏れ・罰則リスク | 期限を管理し期限内に提出 |
非上場会社・スタートアップ側が準備すべき資料
| 資料 | 確認する理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 定款 | 事業目的(出発点) | 実態との一致を確認 |
| 登記事項証明書 | 会社の基本情報・資本 | 最新を取得 |
| 株主名簿 | 既存株主・外国株主の有無 | 特定取得・合算の判断材料 |
| 資本政策表 | 増資後の比率・将来計画 | 累積比率・将来ラウンドを確認 |
| 種類株式の内容 | 議決権・優先権 | 議決権ベースで確認 |
| 新株予約権一覧 | 潜在的な議決権 | 行使後の比率を見込む |
| 投資契約書案 | 出資内容・付随権利 | 役員指名権・同意権の有無 |
| 株主間契約書案 | 議決権行使・共同保有の合意 | 合算・共同保有の要否 |
| ピッチ資料 | 事業の方向性・技術 | 実態とのずれに注意 |
| 事業計画 | 現在と将来の事業 | 将来の事業化予定も確認 |
| 製品・サービス説明資料 | 実際の提供内容 | 指定業種関連機能の有無 |
| 技術資料 | 開発中の技術 | 売上がなくても技術で問題になり得る |
| 特許・知財一覧 | 重要技術の所在 | 知財から事業の性質を把握 |
| 許認可一覧 | 規制業種の有無 | 許認可が該当を示唆し得る |
| 子会社・関連会社一覧 | 傘下会社の事業 | 子会社・議決権半数子会社まで確認 |
| 主要取引先 | 官公庁・重要インフラ取引 | 取引先の性質が判断材料 |
| 官公庁・重要インフラ取引の有無 | 安全保障との関わり | 慎重な確認が必要 |
| 研究開発ロードマップ | 将来の技術・事業展開 | 将来の該当・届出を見込む |
| 投資家の属性資料 | 外国投資家該当性・最終支配者 | 買主から取得 |
| クロージングスケジュール | 払込・登記・報告の日程 | 待機期間を織り込む |
非上場会社出資の外為法確認フロー
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 非上場会社なら外為法はあまり関係ない | 外国投資家による非上場株式取得は対内直接投資等になり得る | 上場会社より確認の入口がむしろ広い |
| 1株だけなら確認不要である | 非上場は閾値がなく1株でも対内直接投資等に該当し得る | 結論は指定業種・比率次第だが確認は必要 |
| 少額出資・シード投資なら外為法は関係ない | 金額の多寡だけで判断できない | 「少額」と「対象か」は別問題 |
| スタートアップは売上が小さいので指定業種ではない | 売上がなくても開発技術が指定業種に関係し得る | 技術内容・将来計画を確認 |
| 定款に書いていない事業は確認不要である | 実際に行っている事業・開発技術で判断する | 定款は出発点にすぎない |
| 日本SPCを使えば外為法は関係ない | 外国法人等が50%以上保有する日本SPCは外国投資家に当たり得る | SPCの出資者・支配関係を確認 |
| 海外ファンドの出資者までは確認不要である | 組合型ファンドは出資割合・業務執行組合員の構成が判断要素 | 必要な範囲で投資家構成を確認 |
| 種類株式や新株予約権は外為法と無関係である | 将来の議決権・支配関係への影響を確認する | 転換・行使後の比率を見込む |
| 投資契約上の情報提供権や役員指名権は外為法と無関係である | 免除基準(役員不就任・技術非アクセス)に直結し得る | 権利内容を免除基準と照合 |
| 外国投資家間の株式譲渡は日本企業側には関係ない | 特定取得として確認が必要。株主変更で情報依頼が来得る | 当事者でなくても無関係ではない |
| 外為法確認は投資契約締結後に始めればよい | 事前届出が必要だと締結後では遅く、クロージングが遅延する | DD段階から外為法観点を入れる |
この記事のまとめ
- 外国投資家による非上場会社の株式・持分取得は、外為法上の確認が必要になり得る。
- 非上場会社では、上場会社の1%基準とは異なり、1株取得でも確認対象になり得る。ただし「該当=必ず事前届出」ではなく、指定業種か非指定業種か・比率(非指定業種は密接関係者合算10%が事後報告の目安)で結論が変わる。
- 株式譲渡、増資引受、種類株式、新株予約権、転換社債、投資契約上の権利まで確認する。
- 外国投資家どうしで非上場株式を譲渡する場合、特定取得(外為法26条3項に定義)が問題になり得る。
- スタートアップでは、売上が小さくても、技術・事業内容によって指定業種・コア業種の確認が必要になる。
- 日本SPCや海外ファンドを使う場合でも、投資家属性・支配関係・ファンド構造を確認する。
- 外為法確認は、払込日・株式譲渡実行日・登記日程・投資契約条項に影響する。最終的な実務確認は第10話のチェックリストも参照。
- 次回・第8話では、「外為法の待機期間」を、30日・2週間・5営業日・最大5か月の考え方とともに扱う。
シリーズ記事一覧
本シリーズ「外為法・対内直接投資の実務10選」の全10話は次の通りです(リンクは順次公開)。
| 回 | 記事タイトル | 主なテーマ | リンク |
|---|---|---|---|
| 第1話 | 外為法の対内直接投資とは?日本企業への出資・M&Aで最初に見るべき規制 | 全体像・4つの判定軸 | 第1話を読む |
| 第2話 | 外国投資家とは誰か|海外企業・外国ファンド・日本法人子会社の判定ポイント | 外国投資家の定義・間接保有 | 第2話を読む |
| 第3話 | 外為法の対象になる取引とは?株式取得・増資・事業譲受・合併・会社分割を整理 | 対象取引の類型 | 第3話を読む |
| 第4話 | 外為法の指定業種・コア業種とは?M&Aで対象会社・子会社まで確認する方法 | 指定業種・コア業種の確認 | 第4話を読む |
| 第5話 | 外為法の事前届出・事後報告・手続不要の違い|M&A担当者向け判定フロー | 要否判定フロー | 第5話を読む |
| 第6話 | 上場会社への出資と外為法|1%基準・議決権取得・事前届出免除制度の基本 | 上場会社・1%基準・免除 | 第6話を読む |
| 第7話 | 非上場会社の買収・スタートアップ出資と外為法|1株取得でも確認が必要な理由 | 非上場会社・閾値なし(本記事) | 本記事 |
| 第8話 | 外為法の待機期間はどれくらい?30日・2週間・5営業日・最大5か月の考え方 | 待機期間の実務 | 第8話を読む |
| 第9話 | M&A契約で外為法をどう扱うか|前提条件・誓約事項・解除権・ロングストップ日の実務 | 契約条項での手当て | 第9話を読む |
| 第10話 | 外為法・対内直接投資チェックリスト|外国投資家から出資を受ける前に確認すること | 実務チェックリスト | 第10話を読む |
参照した主な公的資料
本記事は、以下の公的資料(一次情報)を参照して整理しています。非上場会社株式の取得・特定取得・事前届出・事後報告・免除制度の要件は改定され得るため、実際の確認時には各資料の最新版をご参照ください。
- 財務省「対内直接投資審査制度について」(事前届出免除制度・別表・コア業種告示・基準告示・改正情報、年次報告書)
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/index.htm - 財務省「外国投資家による投資について(パンフレット)」(株式取得時の事前届出・免除の全体像)
https://lfb.mof.go.jp/kantou/disclo/tainaityokutoupanhu.pdf - 日本銀行「外為法に関する手続き」
https://www.boj.or.jp/about/services/tame/index.htm - 日本銀行「外為法Q&A(対内直接投資・特定取得編)」(非上場株式の取得・特定取得・報告不要類型・免除基準等)
https://www.boj.or.jp/about/services/tame/faq/data/tn-qa.pdf - 日本銀行「対内直接投資・特定取得に関する報告書・届出書関係」(届出書・報告書・特定取得関連の様式および記入の手引)
https://www.boj.or.jp/about/services/tame/faq/t_naito.htm - 経済産業省「投資管理」(対内直接投資管理、事前届出業種、経産省所管業種FAQ等)
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/toushikanri/invest-control.html - 経済産業省「外国投資家から投資を受ける上での留意点について」
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/toushikanri1.pdf - 関係法令:外国為替及び外国貿易法(26条〔2項=対内直接投資等、3項=特定取得の定義〕・27条〔対内直接投資等の事前届出〕・27条の2〔同免除〕・28条〔特定取得の事前届出〕・28条の2〔同免除〕 ほか)、対内直接投資等に関する政令(直投令3条等の報告不要類型を含む)・命令、指定業種告示・コア業種告示・基準告示、(参考)会社法(株式譲渡・募集株式・種類株式・新株予約権) 等
🔍 関連ガイドへ進む
この記事と関連度の高い実務ガイドをまとめています。次に読むならこちら。
