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はじめに:「通常価格10,000円→今だけ5,000円」をどう見せるか

「通常価格10,000円のところ今だけ5,000円」「70%OFF」「期間限定セール」「メーカー希望小売価格から半額」——。価格の安さやお得さを伝える表示は、消費者の購入判断に直結します。それだけに、比較対象とする価格に実態や根拠がないと、景品表示法上の有利誤認表示の問題になりやすい領域です。

第3話では有利誤認表示の全体像を扱いました。第6話では、その中でも実務上とくに相談の多い「二重価格表示」と「期間限定割引」に絞って、企業法務・管理部門が広告審査で確認すべきポイントを整理します。ここでも出発点は同じで、「安く見せること」自体ではなく、実態を超えてお得に見せて消費者を誤認させることが問題になります。

  • 二重価格表示とは何か、なぜ有利誤認の問題になり得るか
  • 比較対照価格(過去価格・将来価格・メーカー希望小売価格・他店価格など)の考え方
  • 過去の販売価格を使う場合の「最近相当期間」の目安(8週間・過半など)
  • 将来の販売価格を比較対照価格にする場合の注意点
  • 期間限定・キャンペーン価格で表示と実態を一致させること
  • EC・LP・スマホ表示を導線全体で確認する視点と、事業部への返し方

本記事は、企業法務・管理部門の実務理解を助けることを目的とした一般的な情報提供であり、個別の法律相談や行政判断に代わるものではありません。価格表示の適否は、販売実態や比較対照価格の種類、個別事案ごとに判断が分かれることがあります。重要な判断にあたっては最新の法令・ガイドラインを確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

二重価格表示とは何か

二重価格表示とは、事業者が自己の販売価格に、その販売価格より高い別の価格(比較対照価格)を併記するなどして、実際の販売価格が安いことを強調する表示をいいます。たとえば「通常価格10,000円→セール価格5,000円」「メーカー希望小売価格20,000円のところ9,800円」「他店価格より30%安い」などです。

大切なのは、二重価格表示そのものが禁止されているわけではないという点です。問題になるのは、比較対照価格に実態や根拠がないために、販売価格が実際よりも有利であると一般消費者に誤認される場合です。この場合、景品表示法上は有利誤認表示(5条2号)の一類型として問題になり得ます。比較対照価格に実態があり、条件が分かりやすく示されていれば、二重価格表示を適切に使える場合もあります。

図:比較対照価格・販売実態・条件表示の関係

比較対照価格何と比べて安いのか
×
その価格の販売実態実際にその価格で売っていたか
×
条件表示の分かりやすさ対象・期間が伝わるか

二重価格表示リスクの検討
要素 内容 実務で見るポイント
現在の販売価格 実際に販売している価格 表示価格で実際に購入できるか
比較対照価格 併記される高い方の価格(通常価格・希望小売価格など) 何の価格か(種類)が明確か
価格差・割引率 「○%OFF」「○円引き」などの差 計算の基準価格に実態があるか
比較対照価格の根拠 その価格を裏づける販売実績・公表データ 根拠資料を説明できる状態か
消費者への印象 「実際より安い」という受け取り方 表示の印象と実際がずれていないか

比較対照価格の種類

ひとくちに「通常価格」「参考価格」といっても、何を比較対照価格にしているかによって、確認すべき資料は変わります。「通常価格」と書けば何でもよいわけではありません。代表的な比較対照価格と、その確認の考え方を整理します。

比較対照価格 よくある表示例 確認すべき資料 危ない状態 修正の方向性
過去の販売価格 「通常価格○○円→△△円」 その価格での販売実績(期間・時期) 実際にはほとんど販売していない 最近相当期間の販売実績に基づく
将来の販売価格 「今だけ○円、来月から△円」 価格改定の社内決定・販売予定 実際には値上げ予定がない 実際に販売する確実な予定を前提にする
メーカー希望小売価格 「希望小売価格の半額」 メーカーが設定・公表している価格 実在しない希望小売価格を使用 メーカー公表価格であることを確認
参考価格 「参考価格○○円」 「参考」の根拠・出所 根拠が曖昧・出所不明 根拠を明確にするか表示を見直す
他店価格・市価 「他店より30%安い」 比較対象・調査時点・調査方法 正確な調査をせずに表示 相当数の事業者の実際の価格を調査
自社通常価格 「当店通常価格」 その価格での自社の販売実績 実態のない通常価格 実際の販売実績に基づく
キャンペーン前価格 「セール前価格○○円」 セール前の販売実績・期間 セール直前だけ高く設定 通常販売していた価格を用いる
会員価格・非会員価格 「会員なら○○円」 非会員価格での販売実態 非会員価格に実態がない 双方の価格の実態を確認する

とくに「メーカー希望小売価格」は、実際にメーカーが設定・公表している価格かどうかの確認が必要です。「他店価格」「市価」は、比較対象・調査時点・調査方法が重要で、消費者庁も、競争関係にある相当数の事業者の実際の販売価格を正確に調査せずに表示する場合は不当表示に該当するおそれがあるとしています。なお、「相当数」といえるかは、商品・サービスの種類、市場の広がり、販売チャネル、比較対象とする地域や時期によって変わり得ます。数店舗を見ただけで「市価」と表示するのではなく、比較対象の選定理由と調査方法を説明できるようにしておくことが重要です。「参考価格」は根拠が曖昧になりやすいため、出所を確認しておくと安心です。

過去の販売価格を比較対照価格にする場合

「通常価格」として過去の販売価格を比較対照価格に使う場合、消費者庁の価格表示ガイドライン(不当な価格表示についての景品表示法上の考え方)では、その価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であるかが重要とされています。

一般的な目安としては、セール開始時点からさかのぼる8週間のうち、その価格で販売されていた期間が販売期間の過半を占めている場合に、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」と扱う考え方があります。販売期間が8週間に満たない場合は、その販売期間の過半かつ2週間以上販売されていることが一つの目安です。また、最後にその価格で販売した日から2週間以上経過している場合や、その価格での販売期間が2週間未満の場合には、過去の販売価格として比較対照価格に用いることに注意が必要とされています。

上記の8週間・過半などは、過去の販売価格を比較対照価格とする場合の重要な目安です。ただし、すべての価格表示に機械的に当てはまる絶対基準ではなく、実際の販売実態や比較対照価格の種類によって、別途確認が必要になります。とくに、セールのためだけに短期間だけ高い価格を設定し、その後に大幅割引に見せるような運用は、比較対照価格に実態があるとはいえず、リスクが高いといえます。

実務で見落とされやすいのが、セールを間を置かずに繰り返す場合です。8週間・過半の目安は「セール開始時点からさかのぼった期間」で見るため、たとえば「春の割引(4週間)」の直後に「初夏のセール(4週間)」を続けて行うと、2回目のセール開始時点では、直前8週間の多くがセール価格の期間で占められ、通常価格での販売実績が過半に届かなくなることがあります。その状態で「通常価格○○円」と併記すると、比較対照価格としての実態が不足し、有利誤認の問題になり得ます。セールを繰り返す際は、通常価格での販売実績(期間・直近性)が目安を満たしているかを、価格変更ログなどで確認しておくと安心です。

図:過去販売価格を使うときの確認イメージ

セール開始日を起点にする
▲ 直前の8週間の販売実績を確認
その価格で販売されていた期間は「過半」を占めるか
最後にその価格で販売した日から2週間以上空いていないか
比較対照価格として使えるかを検討(個別実態も確認)
確認項目 見るべき資料 危ない状態 実務対応
販売実績の期間 価格設定履歴・販売データ その価格での販売がごく短期間 直前8週間の販売実績を確認する
過半を占めるか 期間ごとの価格・販売記録 セール価格の期間の方が長い 「過半」を満たすか確認する
最後の販売日からの経過 販売終了日の記録 最後の販売から2週間以上経過 経過期間を確認し表示を見直す
価格設定の意図 価格設定の社内記録 セールのためだけの一時的高値 実態のある通常価格を用いる
根拠資料の保存 販売実績の保存状況 根拠資料が残っていない 事後に説明できるよう保存する

将来の販売価格を比較対照価格にする場合

「今なら5,000円、来月から10,000円」のように、将来の販売価格を比較対照価格にする表示もあります。これについては、消費者庁が「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」(令和2年12月公表)を示しています。価格表示ガイドラインを補完するものです。

この執行方針では、将来価格を比較対照価格とする二重価格表示は、比較対照価格とされた将来の販売価格で販売することが確かな場合以外は、基本的に行うべきではないという考え方が示されています。将来価格を見た一般消費者は、通常、セール後にその価格で販売されることが予定され、その予定どおり販売されることが確実であると認識すると考えられるためです。そのため、事業者がその将来価格で販売する確実な予定を有していないのにその価格を比較対照価格として表示すると、消費者の認識と齟齬し、有利誤認の問題になり得ます。

執行方針では、「確実な予定」を有していると認められるためには、事業者が、セール期間経過後に将来価格で販売するための合理的かつ確実に実施される販売計画を、セール期間を通じて有している必要があるとされています。単に「来月から値上げする予定を決めた」というだけでは足りず、計画を実行してもその将来価格で販売できる見込みが客観的に乏しい場合などは、合理的な計画とは認められないとされています。また、セール後にその将来価格で実際に販売することも必要で、販売実績が2週間以上継続していれば、有利誤認として扱われる「ごく短期間しか販売しない場合」には当たらないという目安が示されています(ただし、形式的なアリバイ作りの販売や、一般的でない販売場所のみでの販売、買う人がほとんどいない非現実的な高価格での販売は、「一般的な販売活動による販売」とは認められません)。「将来値上げ予定」と表示しながら実際には値上げしない、または値上げ後すぐに割引するような運用は、リスクが高いといえます。

表示例 確認すべき資料 危ない状態 修正の方向性
「今だけ○円、来月から△円」 価格改定の社内決定・実施予定 値上げ予定が決まっていない 実際の販売予定が固まってから表示
「○月○日まで特別価格」 セール後の販売価格・販売計画 セール後すぐ再び割引する セール後の通常販売の実態を確保
「将来価格○円の予定」 将来価格での販売の確実性 非現実的な高価格を設定しただけ 一般的な販売で実現する価格にする
「発売記念価格」 記念価格終了後の販売予定 終了後の価格・予定が不明 終了後の販売予定を確認・明示

期間限定割引・キャンペーン価格で注意すべきこと

「今だけ」「期間限定」「本日限り」「先着○名」「数量限定」「キャンペーン価格」などの表示は、その表示が実態と一致していることが重要です。実際には恒常的に行っている割引を「期間限定」のように見せたり、キャンペーン終了後も同じ条件を続けているのに「今だけ」と表示し続けたりすると、表示と実態がずれて問題になり得ます。

また、同じセールを繰り返す場合は、消費者に「通常価格」の実態について誤認を与えないよう注意が必要です。価格表示だけでなく、期間・対象商品・対象者・在庫数・適用除外・併用不可条件などのキャンペーン条件の表示も、有利誤認の観点から確認しておきましょう。

表示例 確認すべきこと 危ない状態 実務対応
「今だけ」「期間限定」 実際に期間が限定されているか 恒常的な割引を期間限定に見せる 実施期間・履歴を確認し実態に合わせる
「○月○日まで」 終了後に同条件を続けていないか 終了後も同じ価格を継続 期限を守る、または表示を更新する
「本日限り」を繰り返す 「通常価格」の実態を誤認させないか 毎日「本日限り」を続けている 通常価格の実態を確認する
「先着○名」「数量限定」 実際に人数・数量で限定しているか 限定数を超えても同条件で提供 限定の運用実態を確認する
「対象者限定キャンペーン」 対象・除外・併用条件が明確か 適用除外・併用不可条件が不明 対象・除外・併用条件を明示する

ECサイト・LP・スマホ表示で見落としやすい点

ECサイトやLPでは、価格表示・割引率・注記・送料・手数料・クーポン条件・ポイント還元・定期購入条件・解約条件などが、複数の画面に分かれて表示されることがよくあります。広告バナー、LP、商品ページ、カート、申込画面、FAQ、規約の表示が一致しているかを、導線全体で確認することが大切です。

図:価格表示は導線全体で確認する

広告バナー(入口の価格訴求)
LP・商品ページ(価格・割引・条件)
料金表・クーポン条件
カート・申込画面(総額・最終条件)
FAQ・利用規約
表示内容・条件が一致しているか確認(スマホ表示も)

スマホでは、注記が折りたたまれる、画面下部に追いやられる、画像内の小さな文字が読めない、といった問題が起きやすくなります。「実質無料」「最大○%OFF」「クーポン適用で○円」などは条件が複雑になりやすいため、特に丁寧に確認しましょう。なお、無料トライアルや定期購入を含む通信販売では、特定商取引法上の表示(最終確認画面での表示など)も関係する場合があります。

定期購入やサブスクのLPで増えているのが、「通常月額10,000円が、今なら初月500円(95%OFF)」のように、初月だけの割引率を大きく打ち出す表現です。たとえば「最低3か月の継続が条件」であれば、消費者が実際に支払う最低総額は2か月目以降の価格を含めて計算する必要があります。「95%OFF」という割引率だけを大きく見せ、2か月目以降の価格・継続条件・支払総額が小さな注記やスクロール先に置かれている構成は、有利誤認の問題になり得ます(特定商取引法上の表示義務も関係します)。割引率が「どの範囲(初月のみ等)に適用されるのか」と、2か月目以降の価格・総額・継続条件が、価格訴求と同一視野内で分かるか(スマホ実機で視認できるか)を確認しておくと安心です。

確認箇所 よくある表示 見るべきポイント 関連リスク
広告バナー 「70%OFF」「今だけ」 入口の訴求とLP・実際の価格が一致するか 有利誤認
LP・商品ページ 通常価格・セール価格 比較対照価格に実態があるか 二重価格(有利誤認)
料金表・クーポン条件 「クーポンで○円」 適用条件・上限・併用可否が明確か 有利誤認
カート・申込画面 総額・送料・手数料 最終的な総額・条件が伝わるか 有利誤認
FAQ・利用規約 適用条件・例外 本文・LPと条件が矛盾しないか 有利誤認

注記・打消し表示でどこまで補えるか

二重価格表示や期間限定割引では、比較対照価格の条件・調査範囲・対象商品・キャンペーン条件を注記で示すことがあります。しかし、注記が小さい・本文から遠い・分かりにくい場合、消費者に正しく伝わらないことがあります。

「70%OFF」と大きく表示し、比較対照価格の根拠や対象条件を小さく注記する構成は、注意が必要です。重要な条件は、注記だけに頼らず、本文の表現や価格表示の近くに織り込むことが望まれます。スマホ表示で注記が読めるか、画像内で潰れていないかも確認しておくと安心です。

注記項目 危ない例 修正の方向性
比較対照価格の種類 何の価格と比べたか書かれていない 「当店通常価格」「希望小売価格」等を明示
比較対照価格の根拠 販売実績・出所が示されていない 実績や出所を示せる状態にする
対象商品・対象条件 割引対象が分かりにくい 対象・除外条件を近接して示す
キャンペーン期間 期間の記載がない・実態とずれる 実際の期間を明示する
表示位置 注記が本文から遠く離れている 強調表示の近くに配置する
スマホ表示 スマホで注記が読めない・潰れる 実機で読めるサイズ・位置にする

二重価格表示・期間限定割引の広告審査チェックリスト

広告審査の実務で使えるよう、確認ポイントを整理します。第10話では優良誤認・有利誤認を含む総合的なチェックリストを扱いますが、まずは価格表示の観点から確認してみてください。

チェック項目 確認する資料・画面 NGになりやすい状態 修正・確認の方向性
比較対照価格は何か 価格表示・表記 「通常価格」の意味が曖昧 比較対照価格の種類を明確にする
比較対照価格に実態・根拠があるか 販売実績・公表データ 実態のない価格を併記 実績・根拠を確認する
過去価格:最近相当期間か 価格設定履歴・販売データ ごく短期間しか販売していない 8週間・過半などの目安で確認
将来価格:販売の確実な予定があるか 価格改定の社内決定・計画 値上げ予定が固まっていない 実際の販売予定を確認する
希望小売価格:実在・公表か メーカー公表資料 実在しない希望小売価格 メーカー公表価格か確認
他店価格・市価:調査は適切か 調査の対象・時点・方法 正確な調査をしていない 相当数の事業者の実価格を調査
割引率・割引額の計算は正しいか 基準価格・計算根拠 基準価格に実態がない・計算ミス 実態のある価格で正しく算定
期間・数量・先着に実態があるか 実施履歴・在庫記録 限定の実態がない 運用実態を確認する
終了後の運用は表示と一致するか キャンペーン履歴 終了後も同条件を継続 期限・表示を運用に合わせる
送料・手数料・条件が隠れていないか 料金表・申込画面 付随費用が表示されていない 総額・条件を明示する
画面間の表示が一致するか LP・カート・FAQ・規約 画面ごとに条件が食い違う 表示内容を統一する
スマホ表示でも条件が読めるか 実機のスマホ表示 注記が読めない・潰れる 実機で確認する
根拠資料を保存しているか 販売実績・調査資料 根拠資料が残っていない 事後確認できるよう保存

価格表示は売上に直結しやすいため、不当表示と判断された場合の影響も小さくありません。違反は、表示の差止め等を求める措置命令の対象になるほか、要件を満たせば売上額に応じた課徴金の対象になることもあります。「短期間だけ通常価格を設定してセールに見せる」といった運用は、軽い認識で行われがちですが、対象商品の売上規模によっては影響が大きくなり得ます。違反時の対応(措置命令・課徴金・確約手続など)は、第9話で扱います。

修正コメントの書き方(事業部への返し方)

価格表示でも、止めるだけでなく、必要な資料と、条件を整えれば使える方向性を併せて示すと、事業部は前に進みやすくなります。法務は、お得な訴求を止める係ではなく、比較対照価格と条件を整えて、正しく魅力を伝える表現に調整する係でありたいところです。

元の表現 リスク 法務コメント例 修正案の方向性
「通常価格10,000円→今だけ5,000円」 通常価格に実態がないと二重価格表示の問題に 「『通常価格』での販売実績(時期・期間)を教えてください。直前8週間の実績などを確認できれば、実態に合う形で使えます」 販売実績のある価格を比較対照にする
「70%OFF」 基準価格に実態がないと誤認のおそれ 「割引前価格の販売実績を確認させてください。基準価格に実態があれば、割引率はそのまま使えます」 実態のある基準価格で正しく算定
「メーカー希望小売価格から半額」 希望小売価格が実在しないと誤認のおそれ 「メーカーが設定・公表している希望小売価格か確認できる資料はありますか。確認できれば使えます」 メーカー公表価格であることを確認
「今だけ特別価格」 恒常的な割引だと実態とズレるおそれ 「この価格の実施期間と履歴を教えてください。恒常的なら通常価格表示にする案もあります」 実際の期間に合わせる/通常表示へ
「来月から値上げ予定」 実際に値上げ予定がないと有利誤認のおそれ 「価格改定の社内決定と販売予定を確認させてください。実際の予定が固まっていれば表示できます」 実際の販売予定を前提に表示する
「期間限定キャンペーン」 終了後も継続すると表示と実態がズレる 「期間・対象・終了後の運用を教えてください。期限を守る運用にできれば問題ありません」 期間・対象を明示し運用と一致させる
「最大80%OFF」 「最大」の対象が一部だと誤認のおそれ 「80%OFFになる対象商品・条件を教えてください。対象範囲を添えれば使えます」 「最大」の対象・条件を明示する
「実質無料」 「実質」の前提条件が伝わらないと誤認のおそれ 「『実質無料』となる計算根拠(ポイント還元額・利用条件・対象期間・自己負担額)を確認させてください。価格表示の近くで条件を明示する形に調整できます」 「実質」の計算根拠・条件を価格表示の近くで明示する

上記のコメント例は、建設的な伝え方のサンプルです。価格表示の適否は、販売実態や比較対照価格の種類、個別事案によって判断が分かれます。最終的な表現は、販売実績等の根拠資料を確認のうえ、必要に応じて専門家にも相談しながら決めるのが安全です。

景品表示法シリーズ 全10話の読み方

本シリーズは、景品表示法を「表示規制」「景品規制」「違反対応」「実務チェック」の順に体系立てて学べる構成です。第6話の二重価格表示・期間限定割引は、第3話の有利誤認、第5話のNo.1表示、第10話の広告審査チェックリストと特につながりが深い内容です。

話数 タイトル 扱うテーマ とくに読んでほしい人
第1話 景品表示法とは?企業法務が押さえる広告表示・景品規制の基本 全体像・2本柱の理解 これから景品表示法を学ぶすべての人
第2話 優良誤認表示とは?効果・性能・品質を良く見せすぎる広告の注意点 優良誤認表示 効果・性能・品質・実績を訴求する人
第3話 有利誤認表示とは?価格・割引・無料表示で誤認を招くケースを解説 有利誤認表示 価格・割引・無料・返金の表示を扱う人
第4話 景品表示法の「表示」とはどこまで?Web広告・LP・SNS・営業資料の対象範囲 「表示」の対象範囲 どの資料を広告審査に回すか迷う人
第5話 No.1表示・満足度表示の景品表示法リスク|調査根拠と注記のチェックポイント No.1・満足度表示 ランキング・満足度・実績を訴求する人
第6話 二重価格表示・期間限定割引の注意点|通常価格・セール価格をどう見せるか 二重価格・割引表示(本記事) セールやキャンペーン価格を設計する人
第7話 ステマ規制とは?口コミ・PR投稿・インフルエンサー広告の基本 ステルスマーケティング規制 SNS・インフルエンサー・口コミを扱う人
第8話 景品規制の基本|総付景品・一般懸賞・共同懸賞の違いをわかりやすく解説 景品規制 プレゼント・懸賞・キャンペーンを企画する人
第9話 景品表示法違反が疑われたときの初動対応|広告修正・社内調査・再発防止 違反対応・初動 万一のときの対応を準備したい法務担当者
第10話 広告審査の景品表示法チェックリスト|企業法務が見るべき実務ポイント 広告審査チェックリスト 日々の広告審査を効率化したい人

よくある質問(FAQ)

Q. 二重価格表示とは何ですか?

二重価格表示とは、販売価格に、それより高い別の価格(比較対照価格)を併記するなどして、販売価格の安さを強調する表示です。「通常価格○○円→△△円」などが典型です。二重価格表示そのものが禁止されているわけではありませんが、比較対照価格に実態や根拠がなく、販売価格が実際より有利であると一般消費者に誤認される場合には、有利誤認表示として景品表示法上問題になり得ます。

Q. 「通常価格から○%OFF」と表示する場合、何に注意すべきですか?

比較対照とする「通常価格」に販売実態があるかが重要です。過去の販売価格を比較対照価格とする場合、価格表示ガイドラインでは「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であることが目安とされ、一般的には、セール開始時点からさかのぼる8週間のうち、その価格で販売されていた期間が販売期間の過半を占めるかが一つの基準になります。ただしこれは目安であり、実際の販売実態に応じた確認が必要です。割引率の計算根拠も確認しておくと安心です。

Q. 「期間限定セール」と表示する場合、何に注意すべきですか?

表示と実際の運用が一致しているかが重要です。実際には恒常的に行っている割引を「期間限定」のように見せたり、終了後も同じ条件を続けているのに「今だけ」と表示し続けたりすると、表示と実態がずれて問題になり得ます。期間・対象商品・対象者・在庫数・適用除外・併用不可条件などを明確にし、終了後の運用も表示と一致させることが大切です。

まとめ

第6話では、二重価格表示と期間限定割引を整理しました。要点は次のとおりです。

  • 二重価格表示そのものが禁止されているわけではないが、比較対照価格に実態や根拠がないと有利誤認表示の問題になり得る
  • 価格表示では、「何と比べて安いのか」「その比較対照価格に実態があるのか」「条件が消費者に伝わるか」を確認する
  • 過去販売価格を比較対照価格にする場合は、最近相当期間(8週間・過半などが目安)の販売実績を確認する(機械的な絶対基準ではなく、個別実態も確認)
  • 将来販売価格・メーカー希望小売価格・他店価格・市価などは、それぞれ確認すべき資料が異なる
  • 期間限定・キャンペーン価格は、実際の運用と表示が一致しているかを確認する

二重価格表示も「危ないから使うな」ではなく、「比較対照価格の根拠と条件を整えれば使える」分野です。法務・マーケティング・営業が、価格の実態と表示の対応関係という共通の物差しを持つことが、リスクを抑える近道になります。次回の第7話では、「ステマ規制」について、口コミ・PR投稿・インフルエンサー広告の基本を解説します。

Legal GPTでは、広告審査・契約審査・社内規程・法務実務の整理に役立つ情報を、初心者にもわかりやすく発信しています。景品表示法をはじめとする企業法務の実務対応を、「どこを見ればよいか」が分かる形で整理していますので、価格表示やセール表示の確認にもご活用ください。

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参考資料

本記事の作成にあたり、以下の公的資料を参照しました(2026年6月3日最終確認。最新の情報は各リンク先をご確認ください)。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。二重価格表示・期間限定割引の該当性は、販売実態・比較対照価格の種類・個別の事実関係によって判断が分かれることがあります。実際のご対応にあたっては、最新の法令・ガイドライン・公表事例を確認のうえ、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。

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