法人の住所等変更登記チェックリスト|2028年3月31日までに法務部がやること
制度は理解した。物件も洗い出した。過去分も直した。会社法人等番号も入れた。では、本当にこれで終わりなのか──。
最終話は、新しい論点を足す回ではありません。自社の対応状況を物件単位で点検し、残っている作業を特定するための実行チェックリストです。詳しい理由や手続は各話へのリンクをたどってください。
結論|「申請したか」ではなく「物件ごとに現在の登記状態を確認できるか」
「昔、本店移転のときに登記をやった記憶がある」は点検になりません。必要なのは、対象不動産の母集団 × 過去の会社情報の変更 × 現在の登記表示を突き合わせ、物件ごとに状態を確定させることです。
内部管理上の「完了」は、対象不動産について現在の登記状態を確認し、必要な対応が完了しているか、または適切な処理状態にあることを証跡付きで確認できた状態と定義してください。申請書を出した、司法書士に依頼した、番号を申し出た、というだけでは完了になりません。
2026年住所等変更登記義務化|法人所有不動産の登記管理実務
制度の全体像から、自社不動産の棚卸し、過去分の処理、社内体制の構築までを10話で扱います。点検で引っかかった項目は、該当する回へ戻って確認してください。
無料・時短・仕組み化の3つから選ぶ
まず期限を確認|誰が2028年3月31日の対象か
点検の前提として、ここを取り違えないでください。2028年3月31日は、施行日前に既に生じていた未登記の変更についての経過措置期限です。すべての住所等変更登記の期限ではありません。
| 変更が生じた時期 | 期限 | 内容 |
|---|---|---|
| 2026年4月1日より前 | 2028年3月31日まで | 施行日時点で変更登記が未了のものについての経過措置 |
| 2026年4月1日以後 | 変更があった日から2年以内 | 変更ごとに期限が立つ(不動産登記法第76条の5) |
※ 表は横にスクロールできます
正当な理由がないのに申請義務に違反した場合は5万円以下の過料の適用対象となります(同法第164条第2項)。ただし、期限の翌日に自動的に科されるものではなく、登記官の催告を経て裁判所が判断する運用とされています。詳細は第2話をご覧ください。
最終監査の9フェーズ
図1:2028年対応の9フェーズ
所有不動産の母集団を確定する
何を持っているかが分からなければ、点検の対象が定まらない
過去の本店移転・商号変更を洗い出す
会社側の変更イベントを時系列に並べる
現在の登記表示を照合する
物件ごとに、登記記録と商業登記を突き合わせる
会社法人等番号の記録状況を確認する
所有権の登記事項として記録されているかを物件ごとに確認
スマート変更登記の状況を確認する
対象か、対象外か、職権登記待ちか
合併・会社分割等の組織再編案件を確認する
表示変更ではなく権利承継のレーンへ分ける
取引予定・担保・例外案件を切り分ける
職権登記を待てない物件を先に処理する
期限・申請・完了証跡を確認する
案件管理としての最終確認
2028年対応から平常運用へ引き継ぐ
プロジェクトの終了条件に引継ぎを含める
PHASE 1|所有不動産を確定する
点検対象は、その法人が所有権の登記名義人となっている不動産です。使用しているかどうかではありません。本社、工場、倉庫、営業所、社宅、駐車場、遊休地、発電所用地、私道持分、共有持分まで含めて洗い出します。
情報源は複数使います。固定資産台帳、不動産管理台帳、過去の取得・売却契約、登記事項証明書、司法書士への過去の依頼資料、そして所有不動産記録証明制度です。固定資産台帳だけで母集団を確定しないでください。
所有不動産記録証明制度(2026年2月2日施行)は、法人自身も請求でき、名称・住所に加えて会社法人等番号を検索条件とすることもできます。最終照合の補助資料として有効ですが、検索条件と登記記録が一致しない物件は抽出されないことがあり、登記簿がコンピュータ化されていない不動産は検索対象外です。この証明書だけで所有不動産の100%を把握できる制度ではありません。詳細は第3話をご覧ください。
PHASE 2|過去の本店移転・商号変更を洗い出す
会社単位で、本店移転・商号変更・名称変更の履歴を時系列に並べます。とくに2026年4月1日より前に生じたものを抽出してください。履歴事項全部証明書で足りない古い案件では、閉鎖事項証明書や閉鎖登記簿謄本が必要になることがあります(第5話)。
| 日付 | イベント | 商業登記 | 不動産登記への影響 |
|---|---|---|---|
| 2012/6/1 | 本店移転 | 完了 | 要確認(施行前・経過措置の対象) |
| 2018/4/1 | 商号変更 | 完了 | 要確認(施行前・経過措置の対象) |
| 2023/10/1 | 本店移転 | 完了 | 要確認(施行前・経過措置の対象) |
| 2026/7/1 | 本店移転 | 完了 | 変更があった日から2年以内の期限が別に立つ |
※ 表は横にスクロールできます
PHASE 3|現在の登記表示を照合する
母集団に入った各物件について、登記記録上の名義人の名称・住所を確認し、商業登記上の現在の商号・本店と突き合わせます。結果を4つに分類してください。
| 区分 | 状態 | 必要になり得る対応 |
|---|---|---|
| A | 名称・住所とも現在表示 | 住所・名称の変更登記については対応不要。会社法人等番号の記録状況はPHASE 4で別途確認する |
| B | 住所のみ旧表示 | 住所の変更登記(または職権登記の対象判定) |
| C | 名称のみ旧表示 | 名称の変更登記(または職権登記の対象判定) |
| D | 名称・住所とも旧表示 | 両方の変更。履歴の復元が必要なことが多い |
※ 表は横にスクロールできます
「一部だけ直っている」を前提に点検する
本社ビルは現在表示、工場は1つ前の本店、社宅は2つ前の本店、遊休地は旧商号+旧本店。これは実際によくある状態です。「過去に一度変更登記を申請したから全物件完了」とは扱えません。会社単位ではなく物件単位で確認してください。
PHASE 4|会社法人等番号を確認する
各不動産について、所有権の登記事項として会社法人等番号が記録されているかを確認します。会社が12桁の番号を持っていること、商業登記簿に番号があることでは足りません。
記録されていない物件は、法人識別事項の申出の対象候補として別リストにします。ただし申出ができるのは2024年4月1日時点で所有権の登記名義人だった法人であり、既に登記されている場合は申出できません(第6話)。なお、13桁の法人番号とは別のものです。
2024年4月1日以降に取得した物件についても、会社法人等番号が正しく記録されているかを完了確認として点検してください。法人を所有権の登記名義人とする登記では法人識別事項を申請情報として提供する仕組みになっているため、記録されている可能性が高いのですが、確認は物件ごとに行います。
PHASE 5|スマート変更登記を確認する
番号が記録されていれば、次はスマート変更登記の対象かどうかです。制度の施行日は2026年4月1日ですが、法人について実際に職権登記がされるのは2026年5月15日からです。
図2:会社法人等番号からの判定
所有権の登記事項として会社法人等番号が記録されているか
記録なし → 法人識別事項の申出または自主申請を検討(第6話)
3類型のどれに当たるか
(1)番号登記後の変更/(2)過去の変更+2026年5月15日以降の番号登記/(3)5月15日前に番号登記済み+既存の変更
対象類型か
本店移転・商号変更・種類変更・組織変更・特例有限会社の移行は対象。合併・会社分割は対象外
登記記録で反映を確認する
反映済み=完了。未反映=職権登記待ちとしてステータスを分ける
「スマート変更登記の対象=完了」ではありません
法人については、職権登記前の意思確認も、完了連絡もありません。完了まで一定の期間を要するとされています。したがって、「職権登記待ち」を独立したステータスとして持ってください。対象になっていることと、登記されていることは別です(第7話)。
職権登記待ちを、単純な未対応と同列にしない
法務省は、会社法人等番号の登記がされているが登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合を、一般に「正当な理由」があると認めることとする例として挙げています。2028年3月31日時点で登記記録がまだ更新されていない案件でも、番号が適切に記録され処理待ちである案件は、申請も申出もしていない案件とは状態が違います。
ただし社内では、番号の記録、対象類型であること、処理待ちであること、確認した日付を証跡として残してください。何も記録がなければ、後から状態を説明できません。
PHASE 6|合併・会社分割等を確認する
吸収合併・新設合併・吸収分割・新設分割は、法人のスマート変更登記の対象外です。必要になるのは表示の変更登記ではなく所有権移転登記であり、点検も別レーンで行います。
図3:2つのレーンに分ける
レーン1:表示変更
同一法人の本店移転・商号変更。対象なら職権登記、対象外なら自主申請
レーン2:権利承継
合併・会社分割・事業譲渡。所有権移転登記の完了を確認する(第8話)
M&Aの履歴がある場合は、スキームごとに判定します。株式譲渡では原則として所有法人自体が変わらないため、所有権移転登記は生じません。事業譲渡で不動産が対象に含まれていれば、個別の所有権移転登記になります。いずれの場合も、確認した結果を記録に残してください(第8話)。
PHASE 7|取引予定・例外案件を切り分ける
次の物件は通常案件と分け、例外案件として別表で管理します。
- 近く売却予定/抵当権の抹消・設定の予定がある
- M&A・組織再編の対象
- 共有持分・私道持分
- 登記記録と固定資産台帳が一致しない
- 会社法人等番号が不明、または閉鎖事項証明書の要否を確認中
- 所有関係そのものが不明
- 組織再編の前後に旧表示が残っている
売却や抵当権抹消の手続では、現在の住所等と登記簿上の住所等が一致している必要があります。職権登記の完了前にこれらの登記手続を行う必要がある場合は、待たずに自ら変更登記を申請します。逆に、将来いつか売却するかもしれないというだけで自主申請が必要になるわけではありません。判断の分かれ目は、職権登記の完了前に別の登記手続が必要かどうかです。
PHASE 8|期限・申請・証跡を最終確認する
ここで案件管理として締めます。物件ごとに、法定期限、社内目標日、対応方法、申請日、職権登記待ちか、完了確認日、証跡の保存先、担当者を持たせてください。社内目標日を法律上の期限のように扱わないでください。
証跡として残すのは、登記事項証明書・登記情報、申請書の控え、登記完了証、法人識別事項申出書の控え、司法書士からの報告、閉鎖事項証明書、商業登記の証明書、組織再編の契約・計画、そして社内の判定記録です。
「対応不要」も証跡にする
株式譲渡について、スキームを確認した結果、不動産の所有主体に変更がないので所有権移転登記は不要と判断した──この判断も記録に残してください。記録がなければ、見落としたのか、確認して不要と判断したのかを後から区別できません。判定日と判定者をセットで残します。
PHASE 9|平常運用へ引き継ぐ
2028年対応を一時的なプロジェクトで終わらせると、数年後の本店移転で同じ調査を一から繰り返すことになります。所有不動産マスター、イベントトリガー、担当部署、証跡、例外案件、次回の点検方法を、第9話で作った平常運用へ引き継いでください。
所有不動産の母集団が確定している
複数の情報源を突合し、未説明の差異が残っていない。
全物件の現在表示を確認している
A〜Dの分類が全物件について埋まっている。
過去未了案件の対応方針が確定している
自主申請か職権登記待ちか、証明ルートも含めて決まっている。
会社法人等番号の記録状況を確認している
あり/なし/申出済みが物件ごとに埋まっている。
スマート変更登記の対象/対象外を判定している
組織再編類型を対象外として分けている。
組織再編案件を確認している
所有権移転登記の完了を登記記録で確認している。
要対応案件を処理している
申請済み、または完了確認済みになっている。
職権登記待ち案件を証跡化している
番号の記録と対象類型を確認した記録がある。
管理マスターを更新している
最終確認日と証跡の保存先が埋まっている。
平常運用へ引き継いでいる
イベントトリガーと担当が決まり、次回の点検方法が定まっている。
2028年3月31日時点の状態を3つに分ける
法定義務と社内の完了基準は分けて考える
自ら変更登記を申請する案件について、不動産登記法第76条の5が求めているのは期限内に変更の登記を「申請」することです。したがって、期限内に適切な申請がされている場合に、登記官の審査や登記の完了そのものが2028年3月31日までに終わっていることまでを同条が要求しているわけではありません。
一方、本記事では内部管理上の「完了」を、登記記録への反映確認まで追跡した状態としています。法定期限は申請義務の期限、社内の完了は反映確認まで、という二層で捉えてください。
この前提のうえで、期限が近づいた時点の状態を3つに分けて把握すると、残作業が見えます。以下は法務省の公式分類ではなく、社内管理上の分類例です。
| 区分 | 状態 | やること |
|---|---|---|
| GREEN 完了 |
必要な登記が完了し、登記記録で確認済み | 確認日と証跡を記録して終了 |
| AMBER 処理中・確認待ち |
① 会社法人等番号が適切に登記され、スマート変更登記の職権処理待ちであるもの ② 期限内に自主申請が受け付けられ、登記官の審査・登記完了を待っているもの ③ 補正可能な不備について、登記官が定めた期間内に補正対応中のもの ※①は、法務省が一般に「正当な理由」があると認める例として示しているもの。②③はこれとは法的な位置付けが異なるため、同じ「正当な理由」の類型として扱わない。 |
状態の根拠を証跡化し、反映を継続して確認する。却下された申請や、補正期間を徒過した案件はAMBERに残さずREDへ移す |
| RED 未対応 |
対象であるにもかかわらず、申請もせず、スマート変更登記の前提(番号の記録)も整っていない | 最優先で処理する。期限が迫っていれば自主申請を検討する |
※ 表は横にスクロールできます
「申請中」の案件を一律に未対応として扱わないでください。期限までに申請したものの登記の完了が後になる、補正の対応中である、といった状態は、内部管理上は申請済み/補正対応中/完了確認待ちとして別のステータスで持つのが実務的です。
法人の住所等変更登記・最終チェックリスト
各項目は「何ができればチェックを付けられるか」という完了条件の形で書いています。ステータスは未確認/対応中/完了/対象外の4段階で運用してください。
所有権の登記名義人となっている不動産の一覧を、法人単位で作成した
グループ一括ではなく、所有法人ごとに分けている。
固定資産台帳以外の情報源とも突合した
契約書、税務資料、施設管理資料、司法書士の依頼記録などを確認した。
遊休地・私道持分・共有持分・社宅までリストに入っている
使用実態のない物件が抜けていない。
賃借物件・グループ他社名義の物件を対象から除外した
使用しているだけの物件が混入していない。
資料間の差異について、原因を説明できる状態になっている
売却済み、承継済み、検索条件不一致などの理由が記録されている。
本店移転・商号変更の履歴を時系列で確定した
商業登記の証明書で、いつ何が変わったかを特定した。
2026年4月1日より前の変更と以後の変更を区別した
期限の決まり方が違うため、一覧上で分かれている。
変更があった日を、商業登記の記録と議事録等で確認した
本店移転は決議上の予定日だけで判断していない。
古い変更について、閉鎖事項証明書等の要否を判定した
現在の会社法人等番号で経緯を確認できるかを検討した。
全物件について、登記記録上の名義人の名称・住所を確認した
一覧の推測ではなく、登記事項証明書等で確認した。
商業登記上の現在の商号・本店と突き合わせた
物件ごとにA〜Dの分類が付いている。
「一部の物件だけ旧表示」の状態がないか確認した
会社単位ではなく物件単位で判定している。
甲区の順位番号を控えた
申請が必要な物件について、登記の目的を特定できる。
所有権の登記事項として現在の会社法人等番号が記録されていることを、物件ごとに確認した
会社が番号を持っていることの確認ではない。
12桁の会社法人等番号と13桁の法人番号を取り違えていない
登記事項証明書等で確認した番号を使っている。
番号が未記録の物件を別リストにした
法人識別事項の申出の対象候補として抽出できている。
申出をした物件について、番号が実際に登記されたことを確認した
申出をしたことと登記されたことを区別している。
2024年4月1日以降に取得した物件も記録状況を確認した
記録済みと推定せず、物件ごとに確認した。
物件ごとに対象/対象外を判定した
番号の記録と変更の類型の両方で判定している。
3類型のどれに当たるかを整理した
過去の変更も対象になり得ることを踏まえている。
「職権登記待ち」を独立したステータスとして持っている
対象であることを完了として扱っていない。
反映の有無を登記記録で確認した
完了連絡を待つ運用になっていない。
合併・会社分割の履歴の有無を確認した
該当する場合、表示変更とは別レーンに分けている。
承継した物件について所有権移転登記の完了を確認した
商業登記の完了をもって完了としていない。
会社分割では契約・計画と対象物件を突き合わせた
承継対象に含まれるかを確認できている。
株式譲渡・事業譲渡の案件について判定結果を記録した
「対応不要と判断した」記録が残っている。
売却・担保取引の予定がある物件を抽出した
職権登記を待てない物件が特定できている。
それらの物件について自主申請の要否を判定した
職権登記の完了前に別の登記手続が必要かで判断している。
担保付き物件・共有持分・私道持分を例外キューに入れた
個別確認が必要な物件が埋もれていない。
証明できない履歴について、登記所または司法書士へ相談した
相談日と回答が記録されている。
法定期限と社内目標日を別欄で管理している
混同していない。
物件ごとにステータスが埋まっている
完了/職権登記待ち/申請中/要対応/対象外/専門家確認中のいずれか。
完了確認日を登記記録の確認日で記録している
申請日や依頼日ではない。
証跡が台帳からたどれる形で保存されている
案件番号または不動産番号で引ける。
司法書士へ依頼した案件も、社内で完了確認をしている
依頼した時点を完了としていない。
所有不動産マスターを平常運用へ引き継いだ
プロジェクト終了後も更新される状態になっている。
イベントトリガーと通知ルールが文書化されている
本店移転・商号変更・取得・売却・M&A・再編・清算が入っている。
登記管理のオーナーが決まっている
部署名は問わず、責任者が明確になっている。
次回の点検方法と時期が決まっている
自社の業務に組み込める形になっている。
最終管理表
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 管理番号 | 社内で一意の番号 |
| 所有法人 | 法人格単位 |
| 不動産番号 | 登記記録上の番号 |
| 所在・地番/家屋番号 | 登記記録どおり |
| 用途 | 本社/工場/倉庫/社宅/遊休地など |
| 現在の登記名称・登記住所 | 登記記録上の表示 |
| 現在の商号・本店 | 商業登記上の表示 |
| 未反映の変更 | 有/無(有の場合は区分A〜D) |
| 変更履歴 | 本店移転○回/商号変更○回 |
| 会社法人等番号 | 12桁 |
| 番号の記録 | 有/無/申出済み |
| スマート変更登記 | 対象/対象外/確認中 |
| 職権登記 | 完了/待ち/対象外 |
| 組織再編 | 有/無 |
| 取引予定 | 有/無 |
| 対応方法 | 自主申請/職権登記待ち/所有権移転登記/対応不要 |
| 法定期限 | 2028/3/31 または変更から2年以内 |
| 社内目標日 | 自社で設定 |
| ステータス | 完了/職権登記待ち/申請中/要対応/対象外/専門家確認中 |
| 申請日・完了確認日 | YYYY/MM/DD |
| 証跡 | 保存先 |
| 担当 | 部署・担当者 |
| 備考 | 個別事情 |
※ 表は横にスクロールできます
優先順位とスケジュール
すべてを同時に処理できない場合の順序です。法的な優先順位ではなく、社内プロジェクト管理上の例です。
| 優先度 | 案件 | 理由 |
|---|---|---|
| S | 売却・担保取引・クロージングが迫っている物件 | 取引スケジュールに直接影響する |
| A | 組織再編案件、所有主体に疑義がある物件 | 調査に時間がかかり、必要な登記の種類も違う |
| B | 会社法人等番号なし+旧表示 | 職権登記の前提が整っておらず、自力で処理する必要がある |
| C | 旧表示だが通常の申請で処理できる物件 | 手順が確立していれば量をこなせる |
| D | 会社法人等番号あり+職権登記待ち | 反映確認が中心。ただし放置はしない |
※ 表は横にスクロールできます
企業内部のモデルスケジュール(法定の工程ではありません)
2026年秋の着手を想定した例です。
- STEP 1〜2(2026年秋) 所有不動産の母集団確定、旧表示の抽出
- STEP 3(2026年冬〜2027年春) 変更履歴と会社法人等番号の確認、法人識別事項の申出
- STEP 4(2027年春) 例外案件について登記所・司法書士へ事前相談
- STEP 5(2027年春〜秋) 通常案件の申請
- STEP 6(2027年秋〜冬) スマート変更登記の反映確認
- STEP 7(2028年初) 未完了案件の再点検と追加申請
- STEP 8(2028年3月) 最終監査と平常運用への引継ぎ
期限ぎりぎりまで待たないほうがよい理由は、危機感ではなく作業量です。母集団の漏れ、古い商業登記の履歴、閉鎖事項証明書の取得、会社法人等番号の付け替えの確認、複数管轄への申請、組織再編案件の切り分け、登記所への事前相談、補正への対応、司法書士との調整。これらが重なる案件では、調査・申請・補正等に数か月を要することもあります。
経営・管理職へ説明するならこの5点
1ページサマリー
1.2028年3月31日は、施行日前に生じていた未登記の変更についての経過措置期限です。施行後の変更には、変更から2年以内という別の期限が立ちます。
2.確認は会社単位ではなく物件単位で行う必要があります。一部の物件だけ旧表示が残っているのが典型です。
3.会社法人等番号を不動産登記に入れておくと、今後の本店移転・商号変更について登記官の職権登記につながり、申請の負担を軽減できます。
4.合併・会社分割による承継は自動化の対象外で、所有権移転登記が別途必要です。
5.過去分を是正した後も、平常の管理を続けなければ同じ漏れが再発します。
シリーズ全10話の対応表
| 最終確認の論点 | 詳細解説 |
|---|---|
| 制度・対象範囲がそもそも分からない | 第1話 |
| 期限の計算、過料、正当な理由 | 第2話 |
| 所有不動産の母集団が確定できない | 第3話 |
| 申請書の書き方、管轄、登録免許税 | 第4話 |
| 過去の変更が複数回あり履歴がつながらない | 第5話 |
| 会社法人等番号が記録されていない | 第6話 |
| 職権登記の対象判定、反映の確認 | 第7話 |
| 合併・会社分割・事業譲渡・株式譲渡 | 第8話 |
| 再発防止、社内の管理体制 | 第9話 |
※ 表は横にスクロールできます
まとめ
第10話のまとめ
1.期限は2種類ある。2028年3月31日は施行日前の未登記分の経過措置期限で、施行後の変更には変更から2年以内の期限が別に立ちます。
2.点検は物件単位。会社として一度申請したことは、全物件の完了を意味しません。
3.完了の定義は登記記録での確認。申請、依頼、申出、対象判定は、いずれも完了ではありません。
4.職権登記待ちは未対応と別物。ただし、その状態であることを証跡として残してください。
5.終わりは平常運用への引継ぎ。プロジェクトの終了条件に明記してください。
2028年3月31日を乗り切ること自体が目的ではありません。目的は、今後、本店移転やM&Aがあっても同じ漏れを繰り返さない状態を作ることです。今回の対応で作った所有不動産マスターと社内フローは、次の10年で何度も使うことになります。そこまで到達して、このシリーズの目的は達成されます。
よくある質問(FAQ)
Q12028年3月31日までに対応が必要なのはどの会社ですか?
A2026年4月1日より前に本店移転や商号変更があり、その内容が所有不動産の登記に反映されていない法人です。所有権の登記名義人となっている不動産があることが前提になります。
Q22026年4月1日以降の本店移転も2028年3月31日まででよいですか?
Aいいえ。施行後に生じた変更は、原則として変更があった日から2年以内です。2028年3月31日は施行日前の未登記分についての経過措置期限であり、両者は別の期限です。
Q3会社として一度変更登記をしていれば全物件完了ですか?
Aなりません。物件単位で確認してください。本店移転時に本社ビルだけ手当てし、工場や社宅が旧表示のまま残っているケースは実際によくあります。
Q4会社法人等番号が入っていれば、2028年3月31日まで何もしなくてよいですか?
A確認は必要です。番号が記録されているのは物件ごとであり、変更の類型によっては対象外になります。また、職権登記の反映を確認するのは自社です。売却や抵当権抹消等の登記手続を職権登記の完了前に行う必要がある場合には、職権登記を待たず、自ら住所等変更登記を申請する必要があります。
Q5スマート変更登記がまだ完了していない場合はどうしますか?
A会社法人等番号が記録されていること、対象類型であること、処理待ちであることを確認し、証跡として残してください。法務省は、番号の登記がされているが職権による変更登記の手続がされていない場合を、一般に「正当な理由」があると認めることとする例として挙げています。
Q6合併した子会社名義の土地もこのチェックリストで確認できますか?
A母集団には含めますが、処理は別レーンです。合併による承継は表示の変更ではなく所有権移転登記の問題で、法人のスマート変更登記の対象外です。詳細は第8話をご覧ください。
Q7司法書士に依頼済みなら完了扱いでよいですか?
A依頼した時点は完了ではありません。登記完了証と登記事項証明書等で対象物件の登記記録を確認し、管理表を更新して初めて完了としてください。依頼していない物件が残っていないかの確認も社内側の作業です。
Q82028年3月31日の対応が終わったら、台帳は削除してよいですか?
A削除しないでください。施行後の変更には別の期限が立ち続けます。所有不動産マスターは平常運用へ引き継ぎ、本店移転・商号変更・M&Aのたびに更新される状態にしてください。
参考資料・一次資料
本記事は2026年8月時点で公開されている法令および法務省の資料に基づく一般的な情報提供です。本記事のチェックリスト、管理表、優先順位、スケジュール、GREEN/AMBER/REDの分類は、法令が要求しているものではなく、法定義務を確実に履行するための企業実務上の管理例です。個別の物件・案件の取扱いについては、対象不動産を管轄する登記所または司法書士にご確認ください。
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