LegalGPT|BCP・危機管理

第1話

災害・事業停止に備える企業法務BCP

緊急時の判断と対応|全15話

BCPとは?法務部が事業継続計画に関与すべき理由

本記事はシリーズ第1話です。BCPの基本を押さえたうえで、緊急時の意思決定、従業員対応、契約、情報管理、行政対応、復旧までを、企業法務の視点から順に解説していきます。

法令・情報基準日:

全15話の一覧を見る

「BCPは総務や防災担当が作るもので、法務にはあまり関係がない」。そう考えている会社は少なくありません。安否確認システムを導入し、非常食を備蓄し、避難訓練もしている。それでBCPは整っている、という感覚です。

ところが、地震や大規模なシステム障害で実際に業務が止まると、法務には次のような相談が集まります。

  • 交通機関が止まっているが、従業員に出社を指示してよいか
  • 納期に間に合わない取引先に、何を、いつ伝えるべきか
  • 契約上、遅延の責任を負うことになるのか
  • 社長と連絡が取れない。誰が決裁するのか
  • 顧客データを自宅に持ち帰らせて作業させてよいか

どれも、発生から数時間〜数日のうちに答えを出さなければならない問いです。平時に決めていなければ、混乱の中で調べながら判断することになります。

この記事では「BCPとは何か」という基本から始め、BCPに法務の視点が欠けると何が起きるのか、法務部が平時に何を確認しておくべきかを整理します。

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BCPとは何か|事業継続計画の意味と目的

BCPは「事業継続計画」のこと

BCPとは、Business Continuity Planの略で、日本語では「事業継続計画」と呼ばれます。

内閣府(防災担当)の「事業継続ガイドライン(令和5年3月)」は、BCPをおおむね次のように説明しています。

政府ガイドラインにおけるBCPの説明(要旨)

大地震などの自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーンの途絶など、不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針・体制・手順等を示した計画。

出典:内閣府「事業継続ガイドライン(令和5年3月)」1.1をもとに要約

この説明には、押さえておきたいポイントが2つあります。

  • 守る対象は「重要な事業」に絞られている:すべての業務を平常どおり続けることは前提にしていません。
  • 「止めない」と「早く戻す」の両方を含む:被害をゼロにする計画ではなく、止まることも想定した計画です。

BCPは「優先順位を決める計画」でもある

災害時は、使える人・設備・資金・情報が限られます。そのため同ガイドラインは、優先すべき重要業務を絞り込み、どの業務を、いつまでに、どの水準まで回復させるかを経営判断として決定する考え方を示しています。ここで使われるのが、目標復旧時間(RTO)や目標復旧レベル(RLO)という考え方です。

重要業務の選び方と、その前提となる分析については、第2話「会社の重要業務をどう決める?BCPの事業影響度分析(BIA)」で詳しく扱います。

BCPとBCMの関係

同ガイドラインでは、BCPを「危機発生時の対応計画」という狭い意味で使い、策定・訓練・見直しなど平時から行う管理活動全体を「事業継続マネジメント(BCM)」と呼んで区別しています。

本シリーズでは読みやすさを優先し、区別が必要な場面を除いて「BCP」とまとめて表記します。

対象となるリスクは地震だけではない

BCPというと大地震を思い浮かべがちですが、業務を止める原因はほかにもあります。

  • 自然災害(地震、津波、台風、豪雨、噴火など)
  • 感染症のまん延
  • 停電、通信障害
  • システム停止、データの消失
  • サイバー攻撃(ランサムウェアなど)
  • サプライチェーンの途絶(仕入先の被災、物流の寸断)
  • 重要取引先・委託先の事業停止
  • 火災や事故など、自社だけが被災する事象

同ガイドラインも、主に自然災害を念頭に置きつつ、事業の中断をもたらすあらゆる事象に適用できるとしています。また、原因(例:直下型地震)ではなく結果(例:本社が使えない)から対応を考えることを推奨しています。

実務上も、「本社が使えない」「主要仕入先から入荷しない」「基幹システムが動かない」といった結果ごとに整理しておくと、想定外の事象にもBCPを応用しやすくなります。

BCPと防災計画は何が違うのか

BCPと防災計画(防災マニュアル)は、しばしば混同されます。内閣府のガイドラインが示す比較をもとに整理すると、次のようになります。

表1 BCPと防災の違い
観点防災(従来の防災活動)BCP(事業継続の取組)
主な目的生命・身体の安全確保、物的被害の軽減安全確保に加え、重要業務の継続・早期復旧
想定する事象拠点の所在地で想定される災害事業中断の原因となり得るあらゆる事象
検討の範囲拠点ごと(本社ビル、工場など)全社横断。仕入先・委託先・供給先も含む
主な担い手防災・総務・施設部門など経営者を中心に、事業部門・調達・販売・管理部門が横断的に
典型的な対策耐震補強、備蓄、避難訓練、二次災害の防止代替拠点、調達先の複数化、データのバックアップ、要員の代替
法務との接点
(筆者による整理)
安全配慮、施設・設備の安全管理、防災関係法令など左記に加え、契約、労務、意思決定権限、情報管理、行政対応など広範

出典:内閣府「事業継続ガイドライン(令和5年3月)」表1.2-1をもとにLegalGPT作成。最下段は筆者による整理であり、ガイドラインの記載ではありません。

注意したいのは、防災とBCPは対立するものではないという点です。人命の安全確保はBCPでも最優先の前提であり、同ガイドラインも両者を並行して進める考え方を示しています。

違いは、BCPが「被害は出る」ことを前提に、限られた資源をどの業務に振り向けるかを決める点にあります。そして、この「決める」部分に、法的な判断が数多く入り込みます。

災害・事業停止のときに会社で起きる判断の流れ

  1. 1災害・事業停止の発生
    地震、台風、システム障害、仕入先の停止など
  2. 2安全確保
    人命の保護、二次災害の防止、安否確認
  3. 3事業の継続・停止の判断
    どの業務を続け、どの業務を止めるか
  4. 5復旧
    平常体制への復帰、対応の振り返り
図1 災害・事業停止から復旧までの全体像(LegalGPT作成)

図では順番に並べていますが、実際には3と4はほぼ同時に進みます。「この業務を止める」と決めた瞬間に、従業員を休ませるか、取引先にどう伝えるか、行政への報告は必要か、といった論点が一斉に発生するからです。

発生直後の数時間に会社が何をすべきかは、第5話「地震・台風が発生した直後、会社が最初にやること」で時系列に整理します。

BCPの論点と、法務が確認する事項

BCPで扱う論点の多くは、そのまま法的判断の論点でもあります。

これらの多くは、平時に規程や契約書を確認しておけば、有事の判断時間を大きく縮められます。逆に、有事になって初めて契約書を探し始めると、「気づいたときには通知期限を過ぎていた」ということも起こり得ます。

BCP:重要業務の継続・早期復旧
権限・ガバナンス
緊急時の決裁、代行、機関決定
(第3話)
人・労務
安全配慮、出社判断、休業手当
(第6話・第7話)
契約・取引
不可抗力、通知、代替調達、BCP条項
(第4話・第8話・第9話・第14話)
情報・システム
システム停止、私物端末、個人情報
(第10話・第11話)
施設・行政対応
許認可、届出・報告、安全管理
(第12話)
証拠・保険
被害記録、保険請求、損害賠償
(第13話)
図2 法務BCPの6つの領域(LegalGPT作成)

ケースで考える:本社は無事でも、主要仕入先の工場が止まった

設例

東京の本社と自社工場に被害はない。しかし、主要部品を供給している仕入先の工場が地震で停止し、再開の見通しが立たない。自社は完成品を顧客A社に毎週納品する契約を結んでいる。

法務が確認するポイント

自社は被災していないのに、この時点で少なくとも次の判断が同時に必要になります。

  1. 代替調達できるか
    別の仕入先から同等品を調達できるか。仕様承認や品質保証の手続、価格・支払条件、既存仕入先との契約に独占条項などの制約がないかを確認します。(第4話:サプライチェーンBCPと代替調達)
  2. A社への納品義務はどうなるか
    「災害だから」という理由だけで責任を免れるとは限りません。契約の不可抗力条項に「仕入先の被災」が含まれるか、代替手段があったか、民法上「債務者の責めに帰することができない事由」(民法415条1項ただし書)にあたるかなどを検討します。(第8話:不可抗力・債務不履行の判断)
  3. いつ、どうA社へ通知するか
    契約上の通知期限や方法、復旧見込みの伝え方を決めます。見込みを楽観的に伝えすぎると、後の説明が難しくなります。(第9話:取引先への通知と契約対応)
  4. ラインを止めて従業員を休ませるか
    厚生労働省のQ&A(令和8年熊本地震に伴うもの)は、自社の施設・設備に直接の被害がなく、取引先の被災で仕入れができずに休業させる場合、原則として労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業にあたると考えられる、としています。取引先への依存の程度、代替手段の可能性、休業回避の努力などを総合的に見て例外にあたるかが判断されるため、休業手当が当然に不要になるわけではありません。(第7話:休業手当の判断)
  5. 何を記録しておくか
    仕入先からの連絡内容、代替調達の検討経過、A社とのやり取りは、後に責任の有無や保険が問題になったときの材料になります。

実務ポイント

このケースで見落とされやすいのは、同じ地震でも、取引先との関係で問題になる「不可抗力」と、労働基準法上の休業手当の判断とは枠組みが異なるという点です。A社に対して納品遅延の免責を主張できる可能性がある一方で、従業員には休業手当の支払いが必要になる、ということも考えられます。こうした論点を平時に整理しておくのが、法務の役割です。

政府ガイドラインも「法令・契約」を分析対象にしている

法務の関与は、LegalGPT独自の主張というわけではありません。内閣府のガイドラインは、事業中断の影響を評価する観点として「法令・条例や契約、SLA等に違反した場合の影響」を挙げ、例として契約上の供給遅延の賠償責任、株主総会の開催期限、税務申告期限などを示しています。

また、事業継続戦略を検討する観点の一つに「法規制等への対応」を挙げ、被害を受けても法令や条例による規制は遵守する必要があると指摘しています。

注意

なお、同ガイドライン自身が、記載事項には推奨や例示も多く、各企業が自社に適した事項を取捨選択するよう述べています。ガイドラインは法的義務を定めるものではない点に注意してください。

つまり、法的な検討はBCPの本体に組み込まれています。法務が関与しなければ、この部分は空欄のままになるか、担当者の推測で埋められることになります。

法務が関与しないBCPで起こりやすい問題

以下は、BCP文書によく見られる記載と、法務の視点から見た「抜け」の例です。自社のBCPと見比べてみてください。

「災害時は在宅勤務に切り替える」とだけ書いてある

抜けやすい点:貸与PCが足りない場合に私物のPCやスマートフォンを使ってよいのか、ルールがない。顧客名簿や人事情報を自宅で扱うことが想定されていない。

法務の確認:私物端末の利用可否と条件、持ち出してよい情報の区分、個人情報の安全管理措置、委託元との契約で持ち出しが制限されていないか、漏えい時の報告体制。(第11話:緊急時の情報管理ルール)

「社長不在時は副社長が指揮を執る」とだけ書いてある

抜けやすい点:決裁規程・職務権限規程と整合していない。副社長にどの範囲の対外的な代理権・社内決裁権限が付与されているか、緊急の契約締結や支払承認をどこまで行えるかが整理されていない。取締役会の決議が必要な事項の扱いも未定。

法務の確認:代行者と代行順位、代行できる事項の範囲、オンラインでの会議開催・決議の方法。政府ガイドラインも、代理体制を含む指揮命令系統の確保や、オンラインを活用した意思決定の仕組みの整備に触れています。(第3話:災害時の意思決定権限)

「取引先と協議のうえ納期を延期する」とだけ書いてある

抜けやすい点:契約上の通知期限や通知方法(書面・電子メールの別など)を確認していない。重要顧客ごとに契約条件が違うことが把握されていない。

法務の確認:重要契約の不可抗力・通知・解除条項の一覧化と、通知文のひな形の準備(通知の実務は第9話で扱います)。

「発災時は全員出社して復旧にあたる」と書いてある

抜けやすい点:交通機関の停止中や余震が続く中での出社指示、帰宅途中の危険が考慮されていない。政府ガイドラインは、安全確保の観点から参集対象者の出社を抑制することや、帰宅がかえって危険な場合の待機指示も初動の項目に挙げています。

法務の確認:安全配慮義務の観点からの出社基準、業務命令として出せる範囲、帰宅困難時の待機ルール。(第6話:出社命令・帰宅・在宅勤務の判断)

「システム停止時は紙で対応する」とだけ書いてある

抜けやすい点:電子契約やワークフローが止まったとき、誰が、どの方法で契約締結や承認を行うのかが決まっていない。復旧後にデータをどう整合させるかも未定。

法務の確認:代替手段による締結・承認の有効性、事後の追認手続、保存が必要な記録の扱い。(第10話:停電・通信障害・システム停止の法務対応)

「被災した工場は安全確認後に再開する」とだけ書いてある

抜けやすい点:許認可や法令に基づく届出・報告の要否が整理されていない。危険物などを扱う施設では、周辺住民への周知や行政への連絡が必要になる場合もあります(政府ガイドラインも言及しています)。

法務の確認:事業ごとの許認可・所管官庁・報告事項の一覧化。(第12話:許認可・行政報告の法務チェック)

被害や対応経過の記録について定めがない

抜けやすい点:片付けや復旧を急ぐあまり、写真や記録を残さない。後の保険請求や、取引先との責任分担の協議で説明材料が足りなくなる。

法務の確認:記録すべき項目、記録担当者、保存場所。政府ガイドラインも、初動段階で実施すべき事項の例として対応の記録を挙げています。(第13話:保険・損害賠償に備える証拠保存)

契約で「BCPを整備し供給を継続する」と約束しているが、中身が対応していない

抜けやすい点:取引基本契約や取引先アンケートで表明した内容と、実際のBCPの内容がずれている。

法務の確認:BCP関連条項の棚卸しと、表明内容と実態の整合。(第14話:BCP条項の作り方)

法務部がBCPで最低限確認したい項目

第1話では、入口として最低限の10項目に絞ります。

  • BCPの発動基準と、発動を決める権限者が決まっている
  • 代表者・決裁者と連絡が取れない場合の代行者と代行範囲が、社内規程と整合している
  • オンラインでの意思決定(取締役会・経営会議など)の方法を確認している
  • 出社・帰宅・自宅待機の判断基準がある
  • 休業時の賃金・手当の扱いについて、就業規則等との関係を確認している
  • 重要取引先との契約について、不可抗力・通知・解除条項を一覧にしている
  • 取引先への通知の担当者・方法・ひな形が決まっている
  • 在宅勤務や私物端末で扱ってよい情報の範囲を決めている
  • 施設停止時に必要な行政への届出・報告を把握している
  • 被害状況と対応経過を記録する担当者と方法が決まっている

平時の準備から発災後の復旧までを網羅したチェックリストは、第15話「災害・事業停止時の企業法務BCPチェックリスト|平時から復旧まで」にまとめています。

2026年9月時点で確認しておきたい公的資料の動き

基準日(2026年9月24日)時点で、一次資料により確認できた事項を整理します。

  • 事業継続ガイドライン:基準日時点で公表されている最新版は、内閣府「事業継続ガイドライン(令和5年3月)」です。一方、内閣府は2026年7月13日に「事業継続ガイドライン改定等に関する検討会」の第1回を開催しました。南海トラフ地震・首都直下地震の基本計画の見直しで、経営中枢機能を維持するための代替戦略やサプライチェーン対策の強化などが指摘されたことを受け、ガイドラインの見直しが進められています。同検討会では、BCPに取り組む企業が社会的に評価されるための環境づくりも議題とされています。基準日時点で改定版は公表されていないため、本記事は令和5年3月版を現行ガイドラインとして参照しています。改定版が公表された時点で、本シリーズの関連箇所を見直す予定です。
  • 令和8年版防災白書:2026年6月30日に公表されています。首都直下地震について令和7年12月の新たな被害想定が図表として掲載されており、首都圏に拠点を持つ企業にとっては、BCPの前提となる被害想定を見直すきっかけになります。
  • 令和8年熊本地震に伴う厚生労働省Q&A:労働基準法・労働契約法等に関する一般的な考え方が示されています(令和8年8月7日公表、8月25日更新)。休業や解雇、賃金の扱いについては第6話・第7話で扱います。

よくある質問

Q. BCPとは簡単にいうと何ですか?

A. 災害やシステム障害などで会社の業務が止まりそうなときに、重要な業務を続け、止まってしまっても早く元に戻すための計画です。すべての業務を守る計画ではなく、何を優先するかを決めておく計画と考えると理解しやすくなります。

Q. BCPと防災マニュアルの違いは何ですか?

A. 防災マニュアルは、人命や建物・設備を守ることが中心です。BCPは、その安全確保を前提に、被害が出た状態で事業をどう続け、どう復旧させるかを定めます。両者は重なり合う部分が多く、どちらか一方で足りるものではありません。

Q. BCPは法律で作成が義務付けられていますか?

A. 筆者が確認した範囲では、すべての一般企業に一律でBCPの作成を義務づける法律はありません。ただし、次のように個別のルールや要請がある点は区別して考える必要があります。

  • 内閣府のガイドラインは、国の防災基本計画がBCPの策定に努めることを企業の役割の一つとして記載していること、災害対策基本法7条2項に関連規定があることを紹介しています。同項は、災害応急対策または災害復旧に必要な物資・資材・役務の供給等を業とする事業者について、災害時にも事業活動を継続的に実施するよう努めることを定めています。いずれも努力義務の性格のものです。
  • 業種によっては、事業の運営基準などで業務継続計画の策定が求められています。例えば介護・障害福祉サービスの事業所では、令和6年4月から策定が義務化されています。詳細は所管行政庁の資料で確認してください。
  • 取引先との契約や取引条件、調達先の選定基準の中で、BCPの整備を求められることがあります。この場合は法律ではなく契約上の問題になります。

「法律上の義務ではないから不要」とも、「すべての会社に法的義務がある」とも言えません。自社に適用される個別のルールと契約上の約束を確認することが、法務の役割になります。

Q. BCPの作成は総務部と法務部のどちらが担当しますか?

A. 多くの会社では、総務部やリスク管理部門が事務局を担っています。政府ガイドラインも、経営者を中心とした部門横断の体制で取り組む考え方を示しています。法務が事務局を担うかどうかにかかわらず、権限・契約・労務・情報管理・行政対応にかかわる部分は、法務がレビューや設計に加わるのが現実的です(筆者の提案)。

Q. 中小企業でもBCPは必要ですか?

A. 政府ガイドラインは、業種・業態・規模を問わず全ての企業・組織を対象としています。中小企業庁は「中小企業BCP策定運用指針」を公開しているほか、防災・減災の事前対策の計画を経済産業大臣が認定する「事業継続力強化計画」の制度も設けています。認定を受けると、税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援が受けられます。最初から完璧を目指さず、重要取引先の契約確認など、できるところから始めるのが現実的です。

Q. BCPにはどのようなリスクを含めるべきですか?

A. 地震や台風などの自然災害に加え、感染症、停電、通信障害、システム停止、サイバー攻撃、サプライチェーンの途絶なども対象になります。原因ごとに計画を作り込むより、「拠点が使えない」「人が来られない」「システムが使えない」「仕入れが止まる」といった結果ごとに整理すると、実際に使いやすいBCPになります。

LegalGPTのBCPシリーズで扱うこと

本シリーズでは、BCPを「法務が判断する場面」の順に整理しています。目的に合わせて必要な回からお読みください。

全15話のロードマップ
段階記事答える問い
基礎第1話 BCPとは?法務部が事業継続計画に関与すべき理由(この記事)BCPに法務はどう関わるのか
第2話 会社の重要業務をどう決める?BCPの事業影響度分析(BIA)どの業務を優先して守るのか
平時の準備第3話 災害時の意思決定権限をどう決める?社長不在でも会社を止めない体制誰が緊急時に決めるのか
第4話 取引先が止まったらどうする?サプライチェーンBCPと代替調達仕入先が止まったらどうするか
災害発生・
従業員対応
第5話 地震・台風が発生した直後、会社が最初にやること発生直後に何をするか
第6話 災害時に従業員を出社させてよい?出社命令・帰宅・在宅勤務の判断従業員を出社させてよいか
第7話 災害で会社を休業したら給与はどうなる?休業手当の判断休業中の給与はどうなるか
契約・
事業停止対応
第8話 災害で納品できないと契約違反?不可抗力・債務不履行の判断納品できないと責任を負うか
第9話 納期に間に合わないとき取引先へどう通知する?事業停止時の契約対応取引先にいつ何を伝えるか
第10話 停電・通信障害・システム停止で業務が止まったら?BCPの法務対応システムが止まったらどうするか
第11話 災害時に自宅PC・私物端末を使ってよい?緊急時の情報管理ルール緊急時に情報をどう扱うか
第12話 災害で工場・店舗を停止したら?許認可・行政報告の法務チェック行政への報告は必要か
復旧・
総まとめ
第13話 被災したら何を記録する?保険・損害賠償に備える証拠保存何を記録・保存するか
第14話 BCPを契約書にどう入れる?事業継続協力・通知・代替供給条項の作り方契約書にどう反映するか
第15話 災害・事業停止時の企業法務BCPチェックリスト|平時から復旧まで全体を点検するには

まとめ|BCPとは、有事の法的判断を平時に設計しておくこと

BCPとは、災害や事業停止が起きても重要な事業を続け、止まっても早く復旧させるための事業継続計画です。この記事の要点は次の3つです。

要点

  • BCPは、非常食や安否確認だけの話ではない。限られた資源をどの業務に振り向けるかを決める計画である
  • 実際に会社が止まると、契約・労務・権限・情報管理・行政対応など、多数の法的判断が同時に発生する
  • そのため法務部は、事故が起きてから相談を受けるのではなく、平時のBCP設計の段階から関与したほうがよい

法務がBCPに関与する目的は、BCPの文書そのものを作ることではありません。有事に必ず発生する法的判断を、平時のうちに設計しておくことにあります。誰が決めるのか、何を根拠に判断するのか、誰にいつ伝えるのか。これらが決まっていれば、混乱の中でも判断を速く、ぶれなく行えます。

では、具体的にどの業務を最優先で復旧させるべきなのでしょうか。これが決まらなければ、どの契約を先に確認し、誰を出社させるべきかも決まりません。次の記事では、その出発点となる重要業務の選び方を解説します。

参考資料

いずれも確認日:2026年9月24日

本記事は2026年9月24日時点の公開情報に基づく一般的な解説であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な判断にあたっては、契約書・社内規程の内容を確認のうえ、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。

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