社内調査は誰が行う?法務・監査・人事・外部弁護士の役割分担

  • 企業不祥事の初動対応|第7話 / 全15話
  • カテゴリー:コンプライアンス・規程対応
  • 法令・情報基準日:2026年9月5日
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全員が「自分たちが調査すべきだ」と言い出す場面から

購買部のキックバック疑惑。予備確認で、○○社との取引に市場価格より明らかに高い発注が複数見つかり、担当課長と○○社担当者とのメールも保全済み。第5話(調査開始の判断)と第6話(証拠保全)で扱った段階です。

経営会議で正式な社内調査への移行が決まると、こういう意見が出ます。

  • 法務部「法令違反の可能性がある。法務が主導すべきだ」
  • 内部監査部「不正調査は独立性が命だ。監査部が主導するのが筋だ」
  • 人事部「ヒアリングも処分もある。人事が入らないと進まない」
  • コンプライアンス部「内部通報案件だ。責任部署は当部だ」
  • 情報システム部「メールとPCを見なければ何も分からない」
  • 担当役員「各部から1名ずつ出して調査委員会にすればいい」

一見もっともらしい。ところが事務局が事実関係を整理すると、こうなっていました。

  • 内部監査部は半年前に購買部を監査し、「重大な指摘なし」と報告している
  • 人事部長は、被通報者である購買部長と入社同期で親しい
  • 法務部長は、問題となっている○○社との取引基本契約の審査を担当していた
  • 担当役員は、購買部を所管する役員である

「各部から1名ずつ」をそのまま実行すると、調査結果によって自分の判断や自分の管掌責任が問われ得る人たちが、そろって調査チームに入ることになります。

本記事の視点

「関係部署を全部入れること」と「公正に調べられる体制を作ること」は、別の作業である。

本記事は、社内調査の体制を「どの部署の仕事か」ではなく、「調査に必要な機能を、その事案について利益相反のない人にどう割り当てるか」という観点から整理します。

この記事の結論

社内調査の担当部署を定めた法令上のルールはありません。決めるべきは「どの機能を、誰に担わせるか」です。法務・内部監査・人事のいずれも、当然に調査責任者になるわけではありません。その事案について調査結果によって不利益を受けず、対象者と近すぎず、必要な能力を持つ人は誰かを一人ずつ確認することが、体制設計の実質です。

TL;DRこの記事の要点
  • 社内調査の担当部署を定めた法令上のルールはない
  • 9つの機能から設計する。全部を別人が担う必要はない
  • 内部公益通報では、事案に関係する者を関与させない措置が指針上求められる
  • ただし関係者が一切協力できないわけではない
  • 公益通報対応業務従事者は、調査メンバー全員ではない
  • 調査する人と、最終判断する人を分ける
  • チームは小さく、専門性はスポットで
  • 経営陣の関与が見えたら、通常体制のまま続けない

【シリーズナビゲーション】企業不祥事の初動対応|全15話

社内調査は法務・監査・人事のどこが担当する?

結論から書きます。法令上、社内調査の担当部署を一律に定めたルールはありません。

公益通報者保護法に基づく現行の法定指針(令和3年内閣府告示第118号)も、内部公益通報について「受け、調査をし、是正に必要な措置をとる部署及び責任者を明確に定める」ことを求めるだけで、それがどの部署であるべきかは指定していません。指針の解説(令和3年10月・消費者庁)も、受付窓口を所管する部署と調査・是正の部署を別に定めることは可能だとしています。

会社が決めるべきなのは、①この事案の調査にどういう機能が必要か、②その機能をこの事案について公正に果たせる人は誰か、の2つです。順番を逆にすると、冒頭の会議のように部署の縄張り争いになり、利益相反を抱えたままのチームができます。

まず「調査に必要な9つの機能」を決める

社内調査で必要になり得る機能を、LegalGPTでは次の9つに整理しています(法令上の分類ではなく、実務設計のための整理です)。

# 機能 中身 担い得る者の例
調査統括目的・スコープ・進捗管理、重要判断、報告事案から独立した管理職・役員、外部弁護士
事実調査資料レビュー、データ分析、ヒアリング、時系列整理法務、内部監査、外部弁護士
法的評価適用法令、報告義務、契約・訴訟リスク、労働法上の手続法務、外部弁護士
会計・内部統制分析仕訳、支払、承認ルート、監査証跡、類似取引の抽出内部監査、経理、会計専門家
人事労務対応在籍・異動記録、就業規則、日程調整、暫定措置、懲戒手続人事
デジタルデータ対応メール・チャット・PC・ログの保全と抽出情報システム、外部フォレンジック
業務・技術の専門知識品質、安全、薬事、施工、電力、ITセキュリティ等事業部門の専門家、外部専門家
経営・監査機関への報告誰に、いつ、何を報告するか調査責任者、事務局
記録・事務局証拠管理、議事メモ、版管理、決定事項記録、アクセス管理法務・コンプライアンス担当者等

9機能を9人で分担する必要はありません。 小規模な会社なら、法務担当者1名+経営者+外部弁護士で大半をカバーできる事案も珍しくありません。機能の整理は人数を増やすためではなく、抜けを作らないためのものです。人数を増やせば独立性が上がるわけでもありません。

⑨事務局を軽視しない

第5話のスコープメモと第6話の証拠保全指示書は、誰かが最新版を管理していなければ、途中で「今どこまで調べる話になっていたか」が分からなくなります。この2つの版管理者を最初に決めることが、後の説明可能性を左右します。

内部公益通報では「事案に関係する者」を外す

内部公益通報として入ってきた案件では、体制の組み方に指針上の要求があります。一般の社内調査における「望ましい設計」とは性質が違うので、分けて理解してください。

指針第4の1(4)|利益相反の排除

現行制度 2026年9月5日時点

現行の法定指針は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して行われる公益通報対応業務について、事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとることを求めています。

「事案に関係する者」とは、指針の解説によれば公正な公益通報対応業務の実施を阻害する者をいい、典型例として、法令違反行為の発覚や調査の結果により実質的に不利益を受ける者、公益通報者や被通報者と一定の親族関係がある者が挙げられています。

判断基準は所属部署でも役職でもなく、公正な対応を阻害するかどうかです。冒頭の例なら、法務部長が契約審査を担当していた事実そのものではなく、その審査の当否が調査対象になり得るか、調査結果によって自らの判断の是非が問われ得るかを見ます。

後から判明した場合/「一切関与できない」わけではない

指針の解説は、受付当初は判明しなかった場合でも、「事案に関係する者」であることが判明した段階で関与から除外することが必要だとしています。

一方で、「事案に関係する者」であっても、公正さが確保できる部署のモニタリングを受けながら対応をする等、実質的に公正な公益通報対応業務の実施を阻害しない措置がとられている場合には、その関与を妨げるものではないとも明示されています。

したがって「該当し得る=一切話を聞いてはいけない」ではありません。業務実態の説明、資料の所在、専門的知見の提供といった協力を、公正さを担保する措置とセットで受けることまで一律に排除されるものではない、というのが現行指針の立て付けです。

注意外部に出せば利益相反が消えるわけではない

指針の解説は、調査等を外部委託する場合についても、中立性・公正性に疑義が生じるおそれ又は利益相反が生じるおそれがある法律事務所や民間の専門機関等の起用は避けることが適当だとしています。

【2026年12月1日から】適用範囲が広がります

改正後 2026年12月1日施行

2026年3月31日公表の改正後の法定指針では、組織の長その他幹部からの独立性確保、公益通報対応業務の実施、利益相反の排除の各措置について、内部公益通報受付窓口を経由した内部公益通報以外の公益通報に係る通報対象事実についても、調査・是正等の対応が必要な場合には同様の措置をとることが明文化されます。

ただしこれは2026年12月1日施行の改正法(令和7年法律第62号)に対応するもので、本記事の基準日(2026年9月5日)時点では施行前です。規程改定の際は施行日の違いを必ず確認してください。

経営幹部が関係する事案の独立性

現行の法定指針は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に係る公益通報対応業務について、組織の長その他幹部に関係する事案では、これらの者からの独立性を確保する措置をとることを求めています(指針第4の1(2))。ここでの「幹部」とは、指針の解説によれば、役員等の事業者の重要な業務執行の決定を行い又はその決定につき執行する者を指します。

指針の解説が挙げる方法の例は次のとおりです。

  • 社外取締役や監査機関(監査役、監査等委員会、監査委員会等)にも報告を行う
  • 社外取締役や監査機関からモニタリングを受けながら公益通報対応業務を行う
  • 内部公益通報受付窓口を事業者外部(外部委託先、親会社等)に設置する

求められる独立性は受付段階に限られず、調査及び是正に関しても確保する措置が求められる点に注意してください。

実務上の意味は明快です。調査の途中で経営幹部の関与可能性が出てきたら、通常の調査チーム構成をそのまま続けず、体制を再評価する。誰に報告するか、誰が責任者か、外部を入れるかを、その時点で決め直します。独立調査体制・第三者委員会の設計は第8話で扱います。

調査チームの「従事者」は誰か

公益通報者保護法11条1項は、公益通報を受け、通報対象事実の調査をし、是正に必要な措置をとる業務(公益通報対応業務)に従事する者を定めることを事業者に義務付けています。現行指針は、従事者として定めなければならない者を、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者としています。

指針の解説の考え方は次のとおりです。

  • 受付・調査・是正に必要な措置の全部又はいずれかを主体的に行う業務、及びその重要部分について関与する業務を行う場合に「公益通報対応業務」に該当する
  • コンプライアンス部、総務部等の所属部署の名称にかかわらず、実質的に判断して定める必要がある
  • 主たる職務とする部門以外の担当者でも、事案により該当する場合は必要が生じた都度定める必要がある

したがって、次のどちらも誤りです。

  • 「調査チームに入った人は全員、自動的に従事者になる」
  • 「法務・コンプライアンス担当者だけが従事者である」

指針の解説は、該当しない例も挙げています。社内調査におけるヒアリングの対象者、品質不正事案で品質の再検査を行う者など、通報の内容を伝えられたにとどまる者は、受付・調査・是正を主体的に行わず重要部分にも関与していないため、調査上の必要から公益通報者を特定させる事項を伝達されたとしても、従事者として定めるべき対象には該当しないとされています。ただしその場合も、内部規程に基づく範囲外共有の禁止義務は負います。

守秘義務従事者には刑事罰がある

従事者又は従事者であった者は、正当な理由がなく、公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならず(法12条)、違反には刑事罰があります(現行法21条・30万円以下の罰金)。指針は、従事者を定める際、書面による指定など、その地位に就くことが本人に明らかとなる方法によることを求めています。

なお指針の解説は推奨事項として、都度指定する場合、指定行為自体が「この調査は公益通報が端緒だ」と本人に知らせてしまう可能性があるため、指定の是非を慎重に検討することも考えられると述べています。調査メンバーの選定と従事者指定は、同一の判断ではありません。

法務部の役割と注意点

強みは、法的論点の整理(適用法令、行政報告の要否、契約・訴訟リスク)、調査スコープの設計、証拠と法的評価の結び付け、ヒアリング項目の設計、外部弁護士との連携。法務は調査の設計と評価に強い部門です。

一方、法務が当然に調査責任者になるわけではありません。次は個別に確認が必要です。

  • 対象事業の業務実態(現場の運用、業界慣行、技術的事情)を知らない場合がある
  • 問題となっている契約・スキームを、過去に法務自身が審査・承認していた場合がある
  • 経営陣の直属で、経営陣関与事案では独立性に疑義が生じる場合がある
  • 「会社を守る」意識が強すぎ、事実認定が結論先取りに見えてしまう場合がある

ただし、過去に契約審査に関与したというだけで直ちに排除されるわけではありません。 判断すべきは、その担当者が調査結果によって自己の責任を問われ得るか、公正な調査を阻害するおそれがあるかです。審査の当否自体が論点になるなら外す、契約書を見たことがあるだけなら情報提供者として関与する、という切り分けが実務的です。

内部監査の役割と注意点

強みは、業務執行ラインからの一定の独立性、内部統制・業務プロセス・承認ルート・監査証跡への精通、部門横断で資料を求める経験、そして「なぜ統制で防げなかったか」という原因分析です。最後の点は再発防止策の実効性に直結します。事実認定だけで終わると、同じ穴が残ります。

ただし、「内部監査部だから常に独立している」とは言えません。次の場合は担当者または体制の見直しを検討します。

  • 直近に同じ部署を監査し、「問題なし」と評価していた
  • 監査の見落としや監査手続の不十分さ自体が調査の論点になり得る
  • 監査部門が経営陣の強い影響下にあり、経営陣関与事案である

冒頭の例では、調査結果によって「なぜ監査で発見できなかったのか」が問われます。とはいえ過去に監査したというだけで自動的に失格になるわけでもありません。 当時の担当者本人を外して別の監査担当者を充てる、監査部門は会計・統制分析に限定し統括は別の者が担う、といった調整で足りることもあります。

人事部の役割と注意点

人事は、所属・異動・評価・勤怠の記録、就業規則と懲戒規程、ヒアリングの日程調整と労務面の配慮、自宅待機・担当替えなどの暫定措置、懲戒手続(弁明の機会の付与を含む)の適正な運用で不可欠です。

一方、人事を調査の最終責任者に据えなければならない理由はありません。 次の場合は利益相反を具体的に検討してください。

  • ハラスメント事案で、人事自身の過去対応(相談を受けながら動かなかった等)が論点になっている
  • 被通報者と人事責任者が同期・元同一部署など密接な関係にある
  • 人事制度や運用そのものが調査対象になっている

そして最も重要な実務ルールがこれです。

実務ルール

事実認定の前に、人事処分の方針を決めない。

処分方針が先に決まると、調査は「その方針を裏づける作業」に変質します。なお、自宅待機や担当替えといった暫定措置は事実認定前でも行い得ますが、これは懲戒処分とは別の措置です。

コンプライアンス・IT・経理・事業部門はどう使うか

コンプライアンス部・内部通報窓口は、通報受付、通報者との連絡、ケース管理、公益通報該当性の整理、通報者情報の管理、進行管理を担います。ただし受付担当者が自分で全調査を行う必要はありません。 第6話で整理したとおり、「通報者情報」と「調査に必要な事実情報」は分けて設計できます。指針の解説も、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査ができない等のやむを得ない場合を除き、特定させる事項を伝達する範囲を必要最小限に限定すること(真に必要不可欠でない限り調査担当者にも共有しないこと)を推奨事項として挙げています。

情報システム部は、データ保全、ログ抽出、メール・チャットの取得、アクセス権管理を担う、第6話の証拠保全指示書の実行部隊です。ただしIT担当者を事実認定者にしないでください。 「メールを読んだIT担当者が不正と判断する」体制は、技術的判断と法的評価を混同しています。ITはデータの取得と技術的説明を担い、事実評価・法的評価は調査チームが行う。IT責任者自身が関係し得る事案(ログの改ざん、アクセス権の不正付与、インシデントの隠蔽等)では、外部フォレンジックの利用を検討します。

経理は仕訳・支払・承認ルート・類似取引の抽出に不可欠ですが、経理部門自体が疑いの対象である場合は担当者の選定を慎重に行います。

事業部門の専門家は、品質・安全・薬事・施工・電力・ITセキュリティなど、業務知識がなければ資料を見ても異常か判断できない領域で必要です。「この発注単価は業界的に異常か」を判定できるのは現場を知る人です。ただし対象部署の担当者は、利益相反と情報漏えいに注意し、調査判断には関与させず、専門的な照会に答える立場(スポット支援)に限定するのが安全です。

部門別の役割比較表

部門 強み 主な役割 注意点
法務法的評価・調査設計統括、ヒアリング、法令評価過去の助言・審査、経営陣との距離
内部監査独立性・内部統制プロセス調査、原因分析過去監査との関係、監査自体の当否
人事人事情報・労務人事資料、日程、懲戒手続人事自身が事案関係者でないか
コンプライアンス通報制度の運用通報者対応、ケース管理通報者情報の管理範囲
経理会計データ支払・仕訳分析経理自身が対象の場合
情報システムデータ保全・抽出・技術説明事実認定・法的評価はしない
事業部門の専門家現場知識技術・業務の評価対象部門との関係、情報拡散
外部弁護士法的専門性・外部性調査支援、重大案件の統括独立性、費用、秘匿性への誤解

外部弁護士はいつ入れるか

「不祥事だから必ず外部弁護士」ではありません。外部弁護士を早期に入れる合理性が高まるのは、次のような事情がある場合です。

  • 重大な法令違反、刑事事件に発展する可能性がある
  • 行政調査・行政への報告が視野に入る(第9話
  • 上場会社の重要な不祥事である/経営陣の関与が疑われる
  • 社内法務に利益相反がある、独立性に疑義がある
  • 多数のヒアリングが必要で社内人員では回らない
  • 重大な労務紛争・懲戒解雇が視野に入る
  • 海外子会社・海外法令が絡む/複数の法領域が交錯する
  • 調査結果を社外へ説明する可能性が高く、調査過程の信頼性が問われる

逆に、限定的な規程違反、事実関係が単純で客観資料から確認できる案件、法的論点が明確な案件で、社内に利益相反がなく調査能力もあるなら、社内中心の調査で足ります。判断は点数表で機械的に出すものではなく、上記事情が重なるほど必要性が高まる、という重み付けで考えてください。

顧問弁護士なら独立性は十分か

「顧問弁護士だから使えない」でも「弁護士だから独立している」でもありません。

現行指針の解説は、いわゆる顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とすること自体を禁じていません。その上で、顧問弁護士への通報を躊躇する者が存在し、それが通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることに留意すべきこと、窓口とする場合はその旨を明示し、利用者が通報先を選択する判断に資する情報を提供することが望ましいことを推奨事項として示しています。

調査でも考え方は同じです。次の事情があるときは、顧問弁護士自身の利益相反と、外部から見た独立性・中立性を具体的に検討してください。

  • 問題となっている取引・スキームについて以前から会社に助言していた
  • 調査対象となり得る役員を、別件で代理している
  • 当該事案について、会社側の責任主体と密接な関係がある

一方、会社の事業や過去の経緯を理解している顧問弁護士だからこそ的確に調査できる事案もあります。重要なのは肩書きではなく、この事案について公正に調べられる位置にいるかです。微妙なら、顧問弁護士は法的助言に回り、調査は別の事務所に依頼する切り分けも取れます。

外部弁護士を入れれば資料は秘匿されるか

誤解秘匿特権への過信

「外部弁護士を調査責任者にすれば、調査資料・メール・ヒアリングメモがすべて秘匿特権で保護される」という理解は、日本の制度を前提とする限り正しくありません。

米国のattorney-client privilegeのような包括的な制度が、日本の社内調査資料一般について当然に成立するとはいえません。

関連する制度として、公正取引委員会の判別手続があります。行政調査手続で提出を命じられた、課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見についての事業者と弁護士との秘密の通信(特定通信)の内容が記録された物件のうち、適切な保管等の要件を満たすと確認されたものを、審査官がその内容にアクセスすることなく速やかに事業者へ還付する手続です(令和2年12月25日から運用)。射程には明確な限定があります。

  • 対象は不当な取引制限等の課徴金減免対象被疑行為に関するもので、私的独占や不公正な取引方法の違反被疑行為は含まれない
  • 対象は法的意見についての特定通信を記録した物件であり、事実の記録一般ではない
  • 適切な保管等の要件を満たす必要がある
  • 対象は原則として外部弁護士との通信であり、社内弁護士との通信の扱いには条件がある

これを「日本にも秘匿特権があるから社内調査資料は守られる」と一般化しないでください。実務的な結論はシンプルです。調査資料は、いずれ社外に出る可能性がある前提で作る。 そのほうが、事実と評価の書き分けも結果的に質が上がります。

「調査する人」と「最終判断する人」を分ける

調査チームの仕事は、資料収集、ヒアリング、事実認定、法的評価、原因分析、報告(必要に応じた提言)です。

会社の意思決定機関・権限者の仕事は、懲戒処分の決定、役員の処分・責任追及、取引停止・契約解除、行政報告の要否と内容、対外公表の要否と内容、再発防止策の正式決定です。

調査チームが提言すること自体は問題ありません。しかし、調査担当者が自分の調査結果だけを根拠に処分まで単独決定する構造を当然のものとしないでください。社内規程・権限規程・会社機関の定めに従う必要があり、調査と処分が同一人に集中すると手続の公正さを外部に説明しにくくなります。

調査開始時に決めておく9項目

# 決めておく項目
1調査責任者
2調査メンバー
3調査補助者・事務局
4最終報告先
5途中報告の相手と時点
6スコープ変更の承認者
7外部専門家起用の承認者
8暫定措置の決定者
9通報者情報へのアクセスが必要な者の範囲

5と6は第5話のスコープメモと直結します。「調査しない事項」を決めたのが誰で、変更できるのが誰かが不明確だと、範囲が場当たり的に広がったり、必要な拡張ができなくなったりします。走り出してから「これ誰に報告するんだっけ」と考える体制にしないでください。

調査メンバーの利益相反をチェックする

# 確認項目
1被通報者本人ではないか
2被通報者の直属の上司・部下ではないか
3通報者と親族関係・密接な個人的関係はないか
4問題となっている取引・支出の承認者ではないか
5問題となっている制度・契約・スキームの設計・審査担当者ではないか
6過去の監査・法務審査の責任者ではないか
7調査結果によって自己の責任が問われ得る立場にないか
8対象者と強い個人的関係(同期、元同一部署、私的な交友等)はないか
9調査結果に経営上の利害を有しないか
10通報者を特定させる情報へアクセスする必要が本当にあるか

1つ当たれば自動的に失格、という機械的な判定表ではありません。 最終的な基準は一つです。

最終的な基準

その人が関与することで、公正な調査の実施を阻害するおそれがあるか。

項目6に該当しても、当時の担当者本人でなければ問題が生じない場合があります。逆に、形式的にはどれにも当たらなくても、被通報者と極めて近い関係が社内で周知であれば、その人を責任者に据えるのは、結果の受け入れられ方という点で得策ではありません。

チェック結果は、該当の有無だけでなく、該当した場合にどう処理したか(外した/機能を限定した/モニタリング下で関与させた)まで記録してください。

調査チームは大きいほど公正になるわけではない

人数が増えると、情報漏えい、通報者の特定、責任所在の不明確化、意思決定の遅延、ヒアリング情報の拡散、口裏合わせ、記録・アクセス管理の負担が確実に増えます。指針の解説も、範囲外共有を防ぐ措置として、記録・資料を閲覧・共有できる者を必要最小限に限定し、その範囲を明確に確認することを挙げています。

推奨は、コアチームを小さく保ち、必要な専門性はスポットで足す設計です。

コアチーム(例) 法務、内部監査、コンプライアンス、外部弁護士
スポット支援 情報システム、経理、人事、事業部門の専門家

この「4人」はあくまで一例で、標準ではありません。2人のこともあれば6人のこともあります。

「知る必要がある人」と「調査メンバー」は違う

調査に協力する全員へ、事案の全体像を説明する必要はありません。情報システム担当者には「A部長の2025年4月以降のメールを保全してください」で足りる場合があり、通報者の氏名も疑惑の全体像も不要です。経理担当者には「この10件の支払について、通常処理との差異を確認してください」で足りることもあります。

指針の解説も、調査等の契機が公益通報であることを伝えなければ、相手方は公益通報がなされたことを確定的に認識できず、結果として公益通報者を特定させる事項の伝達を避けられる、という考え方を示しています。役割ごとに共有情報を絞る——これは依頼文を「何を確認してほしいか」だけで書けるかという実務の問題です。

3つの調査体制パターン

※以下はLegalGPTによる実務整理であり、法定の類型ではありません。

TYPE A|小規模・限定案件

:特定社員の経費不正疑惑

機能 担当
統括・法的評価法務/コンプライアンス担当者
客観資料の確認経理または内部監査
人事情報・手続人事(必要な範囲で)
データ提供情報システム(指定範囲のみ)

外部弁護士は、懲戒が視野に入った段階や本人が争う姿勢を示した段階で検討すれば足りることが多く、調査委員会の設置は通常不要です。

TYPE B|部門横断・重大案件

:購買キックバック、品質不正、会計処理の問題

機能 担当 補足
調査統括利益相反のない管理職・役員所管役員は外す
法的評価・調査設計法務過去審査への関与を確認
統制・原因分析内部監査過去監査担当者は外す等の調整
会計・支払分析経理経理自身が対象でないか確認
人事労務人事事実認定前に処分方針を決めない
データ情報システム技術的支援に限定
業務専門知識事業部門の専門家スポット支援。判断に関与させない
外部専門家外部弁護士/会計専門家必要性に応じて

冒頭の購買部の事例はこの類型です。購買部門は業務説明には使いますが、疑惑の関係者を調査判断側に入れることはしません。

TYPE C|独立性を特に確保すべき案件

:役員の関与が疑われる、内部統制そのものに重大な疑義がある、社会的影響が大きい、社内調査では結果への信頼を確保しにくい

通常の社内体制の延長線上で考えるべきものではありません。詳細は第8話へ。本記事では、経営陣の関与可能性が見えた時点で、通常体制のまま進めず独立性を確保したルートへ切り替える判断をするという導線だけ押さえてください。

調査体制の選択マトリクス

重大性 経営陣の関与 専門性 社内の利益相反 体制の目安
なしなし小規模な社内チーム(TYPE A)
なしなし法務+監査+必要部門(TYPE B)
なし部門横断+外部専門家を検討
あり得る独立ルートへの切替を検討(第8話)
明確通常の社内体制ではなく独立性を優先(第8話)

この表は法定の基準ではなく、LegalGPTによる整理です。実際の判断は、社内の人員構成、過去の類似事案の処理、ステークホルダーの関心の強さによって変わります。

上場会社の場合|JPXプリンシプルの位置付け

日本取引所自主規制法人「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」は、原因究明に当たり、必要十分な調査が尽くされるよう最適な調査体制を構築するとともに適切な調査環境の整備に努めること、その際独立役員を含め適格な者が率先して自浄作用の発揮に努めることを求めています。

また、内部統制の有効性や経営陣の信頼性に相当の疑義が生じている場合、企業価値の毀損度合いが大きい場合、複雑な事案あるいは社会的影響が重大な事案である場合などには、調査の客観性・中立性・専門性を確保するため第三者委員会の設置が有力な選択肢となるとし、あわせて、第三者委員会という形式によって安易で不十分な調査に客観性・中立性の装いを持たせる事態を招かないよう留意すべきことも述べています。

位置付け法令や取引所規則そのものではない

これは上場会社に向けたプリンシプルであり、法令や取引所規則そのものではなく、「この場合は必ず第三者委員会」という一律の拘束ルールでもありません。とはいえ「最適な調査体制を構築する」という発想は、非上場会社の重大案件でも参考になります。

実務で使える「社内調査チーム編成表」

社内調査チーム編成表 INVESTIGATION TEAM CHART/調査開始時に作成
項目 記入欄 記入のポイント
事案名/管理番号仮称。通報者名は書かない
調査目的何を確かめるための調査か
調査責任者(所属・氏名)事案から独立した者
調査メンバー(所属・担当機能)9機能のどれを担うか
調査補助者・事務局記録・版管理の担当
利益相反チェック結果(該当の有無と処理)外した/機能を限定した/モニタリング下で関与
公益通報対応業務従事者該当性(各人ごと)実質判断。書面で指定
通報者情報へのアクセス要否(各人ごと)業務に本当に必要かで判断
証拠データへのアクセス範囲第6話の保全用マスター/作業用コピーの区分と対応
ヒアリング担当(主質問者・記録担当)主質問者と記録担当は分ける
法的評価担当/データ担当/人事対応担当機能ごとの担当者
最終報告先/途中報告の時点・相手幹部関係事案では監査機関等も
スコープ変更の承認者第5話のスコープメモと連動
外部専門家(事務所名・役割・起用承認者)利益相反の確認結果も記録
スコープメモ/証拠保全指示書の管理者最新版の管理責任者を1名決める
調査チームの変更履歴(日付・理由・引継ぎ)変更のたびに追記

特に重要なのは、「公益通報対応業務従事者該当性」と「通報者情報へのアクセス要否」を別項目にすることです。従事者該当性は公益通報対応業務を主体的に行うか等で判断され、通報者情報へのアクセスはその人の業務に本当に必要かで判断します。一つの欄にまとめると、「調査メンバーだから全員に通報者名を共有する」という運用に流れます。

調査の途中でメンバーを変えてよいか

変えてよいどころか、変えるべき場面があります。 調査が進んで初めて分かる事情のほうが多いくらいです。

  • 法務部長自身が問題のスキームに関与していたことが判明した
  • 内部監査の見落としが主要論点になってきた
  • 役員の関与を示す資料が出てきた
  • 海外子会社に対象が広がった/会計処理の問題に発展した

こうした場合、調査メンバー、責任者、報告先、外部専門家の要否を見直します。内部公益通報案件では、後から「事案に関係する者」と判明した場合、その段階で公益通報対応業務への関与から除外することが必要とされています。

実務ルール

一度作った調査チームに、最後まで固執しない。

変更したときは、変更日・変更理由・引継ぎ内容を記録します。人が入れ替わること自体は問題になりませんが、記録がないと連続性や公正さを説明できなくなります。

ヒアリングは誰が行うか

技法そのものは本記事の範囲を超えますが、役割分担としては最低限、主質問者(質問の流れを管理)、記録担当(発言内容を記録)、必要に応じて専門質問担当(技術・会計等)を分けます。主質問者が同時に記録を取ると、両方の質が落ちます。

3〜4人で対象者を取り囲んで詰問する聴取を、当然の手法としないでください。人数と圧力は比例します。通常は2〜3名です。

人事が同席するか、外部弁護士が質問者になるかは事案によります。懲戒が視野に入る対象者では人事の同席が手続の適正を担保しやすい一方、事実確認の段階で人事が前面に出ると「もう処分は決まっている」という受け止めを生むこともあります。

最も重要なのは次の点です。

ヒアリングの原則

調査対象者と関係が深い者を、主質問者にしない。

上司が部下を、同期が同期を聴取する構図は、聞くべきことを聞けない、聞いた内容を軽く評価するという形で事実認定を歪めます。なお、通報者本人へのヒアリングは、その事実自体が通報者を推測させる材料になり得るため、特に配慮してください。

やってはいけない10の調査体制

警告この体制は避ける
  • 1. 被通報者本人を調査メンバーに入れる/「一番事情を知っているから」という理由で実際に起きます。
  • 2. 被通報者の直属の上司だからという理由だけで調査責任者にする/管理責任を問われ得る立場です。
  • 3. 関係部署を全員入れて巨大なチームにする/情報漏えいと通報者特定を招きます。公平さの外形は公正さの実質とは別です。
  • 4. 人事が懲戒方針を先に決め、事実調査をそれに合わせる/調査が結論の裏づけ作業になります。
  • 5. 法務が過去に承認した案件で、自分の判断の正しさを証明する調査になる/第三者から最も見抜かれやすい歪みです。
  • 6. 内部監査が過去の監査の正当化を優先する/最も重要な原因分析が失われます。
  • 7. 情報システム担当者にまで通報者名を共有する/保全依頼に通報者情報は通常不要です。
  • 8. 外部弁護士を入れれば独立性が自動的に確保されると考える/肩書きは独立性を保証しません。
  • 9. 外部弁護士を入れれば全資料が秘匿特権で守られると考える/日本では包括的な秘匿特権が当然に成立するとはいえません。
  • 10. 経営陣の関与が判明しても調査体制を変えない/現行指針が幹部からの独立性確保を求める趣旨に反します。

3つのケースで考える

CASE A 架空事例|社員1人の経費不正
実際には使用していない交通費の精算。年間10万円程度。

体制:法務/コンプライアンス担当者が統括し、経理が精算記録と訪問記録を突合。懲戒の可能性が出た段階で人事が手続に入る。

ポイント:この規模で調査委員会は不要です。大がかりな体制自体が対象者への不当な扱いになり得ます。事実が単純で客観資料から確認できる案件は、小さく速く終える。

CASE B 架空事例|購買キックバック(冒頭の事例)
複数年、取引額が大きく、上司関与の可能性もある。

体制:所管役員、過去に購買部を監査した担当者、被通報者と同期の人事部長は統括から外す。法務(過去審査への関与範囲を確認のうえ)+内部監査(別の担当者)+経理+情報システムでコアを組み、外部弁護士の起用を検討。購買部門の別の担当者からは発注プロセスと単価の妥当性について説明を受けるが、調査判断には関与させない。

ポイント:関係者を「全員外す」のでも「全員入れる」のでもなく、機能ごとに関与の仕方を変えるのが実務です。

CASE C 架空事例|内部監査部長自身が対象
内部監査部長が問題を把握しながら報告せず隠していたのではないか。

体制:通常の内部監査ルートを使いません。監査役等・監査委員会・社外取締役への報告ルートと、外部専門家の起用を検討します。

ポイント:調査の指揮系統そのものが疑いの対象である場合、社内の通常ラインで組んだ体制は、結論の内容にかかわらず信頼されません。詳細は第8話へ。

よくある質問(FAQ)

Q1.社内調査は法務部が行うものですか?

A.法令上そのような決まりはありません。法務は法的評価と調査設計に強い一方、業務実態の把握や会計データ分析は他部門が適していることがあります。問題となっている契約を法務自身が過去に審査していた場合は、その審査の当否が論点になるかを確認し、なるなら統括から外し、ならないなら情報提供者として関与させる、という切り分けが可能です。

Q2.内部監査部が調査すれば独立性は確保できますか?

A.一定の独立性を持つ設計ですが、常に確保されるわけではありません。直近に同じ部署を監査して問題なしと評価していた場合、監査手続の不十分さ自体が論点になる場合、経営陣関与事案で監査部門が経営陣の強い影響下にある場合は、担当者の交代や体制の見直しを検討してください。逆に、過去に監査したというだけで自動的に失格にもなりません。

Q3.人事部は調査メンバーに入れるべきですか?

A.人事情報、就業規則、懲戒手続、暫定措置の面では不可欠です。ただし最終責任者にしなければならない理由はありません。人事自身の過去対応が問題になっている場合、被通報者と人事責任者が密接な場合、人事制度自体が対象の場合は利益相反を検討してください。事実認定の前に処分方針を決めないことが最重要です。

Q4.外部弁護士は必ず入れた方がよいですか?

A.必須ではありません。重大な法令違反、刑事・行政対応、経営陣関与、社内法務の利益相反、海外案件、多数のヒアリング、社会的影響、上場会社の重要事案といった事情が重なるほど必要性は高まります。逆に、軽微で事実関係が限定的、法的論点が単純、社内に利益相反がなく調査能力もある案件では、社内中心でも足ります。

Q5.顧問弁護士に調査を依頼してもよいですか?

A.一律に禁じられるものではありません。現行指針の解説も、顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とすること自体は妨げていない一方、通報を躊躇する者がいることに留意すべきとしています。調査でも、当該取引に以前から助言していた、対象役員を別件で代理しているといった事情があれば独立性・中立性を検討してください。微妙なら、法的助言と調査を別の事務所に分ける方法もあります。

Q6.外部弁護士を入れれば調査資料は秘匿されますか?

A.日本では、社内調査資料一般について米国型の包括的な秘匿特権が当然に成立するとはいえません。公正取引委員会の判別手続はありますが、課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見についての特定通信で要件を満たすものに限られ、社内調査資料全般に及ぶ制度ではありません。資料は社外に出る可能性を前提に作成してください。

まとめ|「どの部署か」ではなく「誰なら公正に調べられるか」

  1. 社内調査の担当部署を定めた法令上のルールはない。 決めるべきは「どの機能を、誰に担わせるか」。
  2. 9つの機能から設計する。全部を別人が担う必要はない。
  3. 内部公益通報では、事案に関係する者を関与させない措置が指針上求められる。 後から判明した場合はその時点で外す。
  4. ただし関係者が一切協力できないわけではない。 公正さを担保する措置を講じたうえで、事実や専門知識の提供を受けることまで一律に排除されるものではない。
  5. 公益通報対応業務従事者は、調査メンバー全員ではない。 事案ごとの実質判断。従事者には法12条の守秘義務と刑事罰がある。
  6. 法務も内部監査も人事も、当然に調査責任者になるわけではない。
  7. 調査する人と、最終判断する人を分ける。
  8. チームは小さく、専門性はスポットで。 知る必要がある人と調査メンバーは違う。
  9. 体制は途中で変えてよい。 変更日・理由・引継ぎを記録する。
  10. 経営陣の関与が見えたら、通常体制のまま続けない。
この記事の軸

冒頭の会議で本当に必要だったのは、「どの部署が主導するか」を決めることではなく、調査結果によって不利益を受けず、対象者と近すぎず、必要な能力を持つ人は誰かを一人ずつ確認する作業でした。この確認を最初に30分かけておけば、終盤で「その調査は公正だったのか」と問われたときに答えられます。

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経営陣に不正疑惑があるときどう調査する?調査の独立性と第三者委員会

調査の途中で経営陣の関与を示す資料が出てきたら、通常の社内調査体制のまま進めることはできません。誰に報告し、誰が指揮し、第三者委員会を設置すべきかを次の記事で扱います。

第8話「経営陣に不正疑惑があるときどう調査する?調査の独立性と第三者委員会」を読む

参考資料・一次資料

※法令・情報基準日:2026年9月5日

公益通報者保護法|現行制度(2026年9月5日時点。2026年12月1日施行前)

公益通報者保護法|2026年12月1日施行の改正制度

上場会社

事業者と弁護士との間の通信

  • 公正取引委員会「判別手続について」
    https://www.jftc.go.jp/dk/seidogaiyo/hanbetsu.html
  • 公正取引委員会「事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の内容が記録されている物件の取扱指針」及び同Q&A
    ※課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見についての特定通信を対象とする手続であり、一般的・包括的な秘匿特権制度ではありません。

社内調査体制の実例

  • 上場会社が公表している社内調査委員会・特別調査委員会の報告書は、「外部弁護士+社外役員+社内監査機関」といった実際の体制設計を知るうえで参考になります。ただし、特定の一社の体制を標準モデルとして一般化することは避けてください。
免責

本記事は2026年9月5日時点の法令・公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別事案についての法的助言ではありません。実際の調査体制の設計に当たっては、事案の具体的事情を踏まえ、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。

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