2026年施行・カスハラ義務化対応シリーズ

第10話・最終話 / 全10話

2026年10月までにやることリスト|カスハラ義務化対応の工程表と総まとめ

2026年10月1日 施行 法令・制度基準日:2026年7月15日

この記事でわかること

施行日までにそろえる15点、法的区分A〜D、7段階の逆算工程表、プロジェクト体制・RACI、完成基準、研修体系、模擬訓練、未完了管理、30日・90日レビュー、内部監査、総合チェックリスト97項目、FAQ40問、コピー用ひな形20種

本記事は「2026年施行・カスハラ義務化対応シリーズ」の第10話(全10話・最終話)です。施行日(2026年10月1日)まで、基準日(2026年7月15日)から残り約2か月半。本記事は第1〜9話の要約ではなく、企業が施行日までに実施すべき対応を「いつまでに・誰が・何を・どの順序で・どの文書と証拠を残して・どの状態になれば完了か」という実行管理の形に落とし込む最終回です。法令上の義務・努力義務・望ましい取組・自社判断の追加対応を区別しながら、工程表・RACI・チェックリスト・完成基準・監査・経営報告までを扱います。

2026年10月1日は「カスハラだけ」の施行日ではありません。同じ改正法(令和7年法律第63号)により、カスハラ防止措置(労働施策総合推進法)求職者等セクハラ防止措置(改正男女雇用機会均等法)が同時に義務化され、企業規模を問わず全事業主が対象です(中小企業を含み、経過措置・猶予はありません)。東京都等のカスハラ条例(国法とは別制度)も別途確認が必要です。そして、方針を1枚作れば終わりではありません。相談窓口・現場・採用・法務・経営まで連動して初めて「措置を講じた」状態になります。

本記事の法令・制度基準日:2026年7月15日施行日:2026年10月1日
指針・通達・行政資料は今後変更され得ます。実際の対応にあたっては厚生労働省および都道府県労働局の最新情報をご確認ください。

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1.最終話の位置づけ:第1〜9話を「実行計画」に変える

第1話(全体像)から第9話(求職者等セクハラ・条例)まで、対応の中身は出そろいました。残る課題は、それらを期限と担当と完了証拠のある実行計画にすることです。措置義務への対応は「文書を作成した」だけでは足りず、承認・周知・研修・運用確認まで到達して初めて機能します。本記事では、各タスクに「完了条件」と「完了証拠」を付け、施行日に間に合わない項目には「暫定措置」を用意する管理方法まで含めて整理します。

完璧主義ではなく優先順位で。ただし着手は今すぐ。「すべての高度な改善が完了していなければ直ちに法令違反」ではありませんが、義務は施行日から発生します。法律・指針上の義務項目(法的区分A)を最優先で「機能する状態」にし、推奨実務(C)は段階的に高度化します。

2.結論:施行日までに最低限そろえる15点

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#そろえるもの法的区分完了の目安(完了条件の要点)関連話
1経営責任者と事務局(推進体制)C任命書・キックオフ議事録がある第1話
2自社影響・顧客接点・求職者等接点の洗い出しC影響調査票・ギャップ分析が完成第1・2話
3カスハラ対応基本方針(労働者を守る旨・カスハラを許容しない旨)A経営承認+全労働者へ周知済み第4話
4顧客等への対処内容・悪質行為者への対処方針A対処内容を定め労働者へ周知済み第3・8話
5就業規則・社内規程の点検(必要な改定・周知)A/C点検記録・改定版・周知記録がある第5話
6相談窓口(担当者・受付方法・受付後フロー)A完成基準19項目を満たす第6話
7現場からの即時報告ルート(上司・本部・緊急連絡)A/C連絡網テスト済み・現場が知っている第7話
8現場対応マニュアル(初動・交代・記録・引継ぎ)C完成基準23項目を満たす第7話
9悪質事案への対処方針と実行体制(法務・警察・弁護士連携)A方針文書・権限表・周知記録がある第8話
10被害者保護の手順(担当交代・接触停止・産業保健・意向確認)A手順書があり管理職が説明できる第3・7話
11記録・証拠保全の様式と個人情報管理C/D受付票・記録票・保存ルールがある第7・8話
12派遣労働者・1名店舗・外勤・夜間業務への対応A/C派遣元連絡済み・特殊拠点手順がある第7話
13求職者等セクハラ対策(方針・面談ルール・社外から使える窓口・採否分離)A求職者等へ窓口を案内できている第9話
14研修・周知(管理職・現場・相談担当・採用担当・全労働者)A/C受講記録・周知記録がある本話
15施行後の点検計画(30日・90日レビュー・内部監査・経営報告)Cレビュー日と責任者が決まっている本話

施行日(2026年10月1日)に最低限機能しているべき状態

細部の高度化が残っていても、施行日時点で少なくとも次が「動く状態」である必要があると整理してください。

  • カスハラを許容しない方針と、行為者への厳正対処方針が明確になっている
  • 方針が労働者へ周知されている(管理監督者を含む)
  • 相談窓口が定められ、担当者が対応できる
  • 相談後の事実確認・被害者保護・行為者対応のフローがある
  • プライバシー保護と不利益取扱い禁止が定められ、周知されている
  • 現場から管理職等へ即時に報告できる
  • 顧客等への対処内容(担当交代・複数名対応・対応の終了等)が定められている
  • 悪質事案への対処方針と実行体制がある
  • 派遣労働者も必要な措置を利用できる
  • 求職者等セクハラ防止方針・面談ルールがあり、求職者等が利用できる相談窓口が案内されている
  • 採否判断と相談対応を分離できる
  • 必要な担当者へ研修・周知が行われている

3.本記事の「法的区分」4分類(A〜D)

本記事のすべての表・チェックリストでは、各項目を次の4区分で表示します。AとB以下を混同しないことが、優先順位づけと社内説明の土台になります。

区分意味
A法律・指針上、講ずべき措置(措置義務の具体化)方針の明確化・周知、相談窓口、事実確認、被害者配慮、再発防止、プライバシー保護、不利益取扱い禁止、悪質事案への対処方針・体制、求職活動等ルール、求職者等が利用できる窓口
B法律上の努力義務・指針上の望ましい取組(実施が望まれるがAと同じ義務と断定しない)BtoBでの事実確認協力(法33条3項)、顧客等への方針の社外周知、役員・外部関係者による言動への対応、学校・教育機関との連携
C義務履行を実効化するための推奨実務(方法まで法令で一律に定められてはいないが実務上有効)現場対応マニュアル、権限表、研修・模擬訓練、記録様式、進捗管理、内部監査、30日・90日レビュー、経営報告
D業種・事業・リスクに応じた個別対応(契約・約款・業法・施設・条例等により判断)出入禁止・取引停止等の個別措置の設計、録音・防犯カメラ運用、業法(医療・宿泊・交通等)の確認、自治体条例への対応
Dに関する注意(第8話の再確認):改正法は、出入禁止権・契約解除権・取引拒絶権などの新たな権利・権限を創設していません。義務となるのは「悪質事案への対処方針・周知・実行体制の整備」(A)であり、書面警告・サービス停止・出入禁止・契約解除・警察通報・仮処分・損害賠償を個別事案ですべて実施する義務ではありません。個別措置は、契約・約款・施設を管理運営する法的地位・業法・公共性・合理的配慮等に基づき判断します。

4.法令上の義務・努力義務・推奨実務の一覧表

2つの義務を横断した対応項目の一覧です。「カスハラ」「求職者等セクハラ」欄の○は当該制度で必要となる対応、—は当該制度の直接の対象でないことを示します。

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対応項目カスハラ求職者等セクハラ法的区分根拠完了条件(要点)関連話
方針の明確化・労働者への周知啓発A労働施策総合推進法33条・指針(告示51号)/改正均等法13条・指針(告示52号)方針文書+経営承認+周知記録(メール・イントラ・研修)第3・4・9話
行為者(自社労働者)への厳正対処方針・対処内容の規定A指針(告示52号):就業規則等への規定就業規則・服務規律・懲戒規定との整合確認済み第5・9話
相談窓口の設置と労働者への周知A各指針:窓口をあらかじめ定め周知担当者任命+受付方法+周知記録+完成基準充足第6・9話
事実確認(相談者・行為者双方、不一致時は第三者)A各指針:事後の迅速かつ適切な対応手順書・記録様式・担当者研修済み第3・7・9話
被害者への配慮の措置A各指針:被害者配慮(配置・メンタル・不利益防止等)手順書があり、管理職が実行できる第3・7話
行為者(自社労働者)への措置A指針(告示52号):就業規則等に基づく措置暫定措置・正式措置の手順がある第9話
再発防止措置(事実確認が困難でも実施)A各指針再周知・研修・改善の記録がある第3・9話
プライバシー保護の措置と周知A各指針:併せて講ずべき措置取扱いルール+周知記録第3・9話
相談等を理由とする不利益取扱いの禁止の周知A労働施策総合推進法33条2項等/改正均等法13条2項等規定・周知記録(採用場面含む)第3・9話
顧客等への対処内容・方法(担当交代・複数名対応・対応の終了等)の整備A指針(告示51号):現場対応を含む体制整備対処内容が文書化され現場へ周知済み第3・7話
悪質事案への対処方針・周知・実行体制A指針(告示51号)4(4)方針+権限表+弁護士・警察相談ルート第8話
求職活動等ルール(面談時間・場所・体制・SNS等)の明確化と周知A指針(告示52号)4⑴ルール文書+労働者・求職者等への周知第9話
求職者等が利用できる相談窓口(社外アクセス可)の周知A指針(告示52号)4⑵採用サイト・案内文への掲載確認第9話
他の事業主からの事実確認等への協力(BtoB)B労働施策総合推進法33条3項(努力義務)・指針協力要請への対応手順・窓口がある第8話
顧客等への方針の周知・社外表明B指針:望ましい取組店頭掲示・サイト掲載等(実施した場合は記録)第4話
自治体カスハラ条例への対応(東京都等)D各自治体条例(東京都:令和6年条例140号ほか)所在地条例の確認票+必要対応の実施第9話
就業規則に関する法的整理(混同しやすい点):①労働基準法89条・90条は常時10人以上の事業場の就業規則作成・届出義務と意見聴取を定め、同法106条は周知義務を定めます。②就業規則の労働契約上の効力は、労働契約法7条・10条等(合理性と周知)との関係で判断され、労働基準監督署への届出・受理は民事上の効力発生要件ではありません。③施行前の届出は実務上望ましいものの、施行前届出を一律の法的効力要件と扱わないでください。④常時10人未満の事業場は就業規則の作成義務こそありませんが、カスハラ・求職者等セクハラの措置義務は企業規模を問わず適用されます。就業規則作成義務の有無と措置義務を混同しないでください。

5.プロジェクト体制(19の役割)

自社の規模に応じて兼務・簡素化して構いませんが、「誰が最終責任者か」「誰が事務局か」だけは必ず決めてください。

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役割主な担当決裁事項提出物連携先完了条件
経営責任者全体方針・予算・最終決裁基本方針・規程改定・未完了項目の暫定措置承認記録(議事録・決裁書)PJ責任者・法務方針承認と施行前報告の受領
プロジェクト責任者工程管理・部門間調整工程変更・優先順位工程表・進捗報告全部門施行前最終確認会議の実施
法務規程・悪質事案・契約約款・条例法的措置の起案確認規程案・権限表・条例確認票弁護士・経営法的レビュー完了記録
人事・労務方針・就業規則・窓口・研修・記録窓口担当任命の起案方針・研修資料・受講記録労働者代表・産業保健周知・研修・届出(必要な場合)完了
カスタマーサービス電話・メール・SNS対応の運用CS向け手順・記録票運用現場・情シスCS研修と模擬訓練完了
現場部門(店舗・営業所)初動・報告・記録の実装拠点別の掲示・連絡網本部・警備拠点研修・連絡網テスト完了
採用面談ルール・求職者等窓口の運用採用サイト掲載・案内文人事・広報求職者等への案内開始
総務掲示・設備・警備連携掲示物・緊急連絡網警備・拠点掲示・連絡網の整備完了
コンプライアンス内部通報との整理・規程整合窓口整理表人事・法務窓口間の役割分担確定
情報システム相談フォーム・記録システム・権限フォーム・アクセス権設定書個人情報責任者システム設定とテスト完了
個人情報保護責任者録音・録画・記録の取扱い保存期間・共有範囲取扱いルール法務・情シス取扱いルールの承認・周知
広報社外表明・SNS炎上対応社外表明文・SNS対応フロー法務・経営公表物の承認・掲載
産業保健被害者ケアの受け皿相談導線の案内人事導線が窓口手順に組み込み済み
警備緊急時の駆けつけ・退去対応警備連携手順拠点・総務連携手順の共有・訓練参加
内部監査施行後の適合性点検監査計画・報告書経営監査計画の承認
顧問弁護士規程・悪質事案・個別措置の確認意見書・レビュー記録法務主要文書のレビュー完了
社会保険労務士就業規則・届出・労務手続手続支援記録人事必要な手続の完了確認
派遣元派遣労働者への周知・苦情処理連携連絡文書・苦情処理ルート人事・現場派遣元への通知と合意
外部相談窓口受託範囲の相談受付委託契約・受付フロー人事契約締結と接続テスト
コピー用ひな形①:カスハラ義務化対応プロジェクト計画書
■ カスハラ・求職者等セクハラ義務化対応 プロジェクト計画書
1. プロジェクト名:
2. 目的:2026年10月1日施行の措置義務への対応(カスハラ/求職者等セクハラ)
3. 根拠法令:労働施策総合推進法(令和7年法律第63号による改正)/
   改正男女雇用機会均等法/告示第51号・第52号/施行通達/解釈Q&A
4. 施行日:2026年10月1日
5. 対象会社:
6. 対象事業所:(本社/店舗/コールセンター/…)
7. 対象業務:(顧客対応/採用・実習受入れ/…)
8. 経営責任者:
9. プロジェクト責任者:
10. 事務局:
11. 関係部署:(法務/人事/CS/現場/採用/総務/情シス/広報/…)
12. 対応範囲:(カスハラ/求職者等セクハラ/条例/職場セクハラ点検)
13. 主要成果物:(方針/規程/窓口/マニュアル/研修/記録様式/…)
14. マイルストーン:(第1〜5段階・施行日・施行後レビューの期日)
15. 予算:(外部窓口/研修/システム/専門家費用)
16. 外部専門家:(弁護士/社労士/外部窓口)
17. リスク:(遅延/人員不足/高リスク拠点/…)
18. 進捗報告日:(隔週◯曜 等)
19. 施行後レビュー日:(30日後:2026年10月末/90日後:2026年12月末)
作成日:   作成者:   承認者(経営責任者):
このひな形の使い方
  • 目的:対応全体を1つのプロジェクトとして定義し、責任・範囲・期日を確定する。
  • 使用時期:着手期(2026年7月中)の最初に作成。
  • 主な作成者:事務局(人事・法務)。承認者:経営責任者。
  • 避けるべき運用:責任者・期日を空欄のまま走り出すこと。
  • 法的注意点:対応範囲に求職者等セクハラと条例を必ず含める(カスハラのみにしない)。
  • 完了証拠として残すもの:承認済み計画書・キックオフ議事録。
コピー用ひな形②:対応責任者・事務局任命書
■ 任命書
20◯◯年◯月◯日
◯◯部 ◯◯ 殿
株式会社◯◯ 代表取締役 ◯◯

カスタマーハラスメント対策および求職者等に対するセクシュアル
ハラスメント対策(2026年10月1日施行)への対応につき、貴殿を
下記のとおり任命する。

1. 役割:対応プロジェクト責任者(/事務局)
2. 任務:工程管理、部門間調整、経営への進捗報告、
   施行前最終確認会議の主宰、施行後レビューの実施
3. 権限:関係部署への資料提出・作業依頼、進捗報告の徴求
4. 任期:20◯◯年◯月◯日から施行後90日レビュー完了まで
5. 報告先:経営責任者(◯◯)
以上
このひな形の使い方
  • 目的:責任者・事務局の役割と権限を明文化し、推進力を担保する。
  • 使用時期:着手期(計画書と同時)。承認者:代表者・経営責任者。
  • 避けるべき運用:任命だけして権限(資料徴求等)を与えないこと。
  • 完了証拠として残すもの:任命書の写し・本人の受領記録。

6.RACI表(主要12タスク)

R=実行、A=最終責任、C=相談、I=報告先。1タスクにつきAは1つに絞ります。

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タスク経営PJ責任者法務人事現場/CS採用
基本方針の策定ACCRII
就業規則・規程の点検改定AICRII
相談窓口の設計IACRCC
現場対応マニュアルIACCRI
悪質事案への対処方針・体制ACRCCI
被害者保護手順ICCA/RCI
記録・個人情報管理ICARCC
派遣・特殊拠点対応IACRRI
求職者等セクハラ対策ACCRIR
研修・周知IACRRR
条例対応ICA/RCII
施行後レビュー・内部監査ARCCII

7.施行日から逆算する工程表(7段階)

基準日(2026年7月15日)から施行日(10月1日)までの標準モデルです。期間は目安であり、拠点数・既存整備状況により前倒しが必要です。「この日程なら必ず間に合う」保証ではありません。遅れている企業は、法的区分Aを最優先し、Cは施行後の継続改善に回す判断も検討します。

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段階時期の目安主な作業主担当成果物完了条件
第1段階:着手・体制7月中旬〜下旬プロジェクト計画・任命・影響調査の開始経営・事務局計画書・任命書・影響調査票責任者と事務局が確定し調査に着手
第2段階:現状把握・ギャップ分析7月下旬〜8月上旬顧客接点・対象労働者・求職者等接点・既存規程の棚卸し事務局・各部門影響調査票・ギャップ分析表不足項目が一覧化された
第3段階:方針・規程の整備8月上旬〜中旬基本方針・対処内容・悪質事案方針・規程点検・求職者等セクハラ方針人事・法務方針・規程案・面談ルール経営承認を得た
第4段階:体制・文書の整備8月中旬〜9月上旬相談窓口・現場マニュアル・記録様式・権限表・採用窓口・条例確認各部門窓口・マニュアル・様式一式完成基準を満たす
第5段階:周知・研修9月上旬〜中旬全労働者周知・階層別研修・求職者等への案内開始人事・現場・採用研修資料・受講記録・周知記録対象者へ届いた
第6段階:模擬訓練・最終確認9月中旬〜下旬模擬訓練・連絡網テスト・最終確認会議・未完了項目の暫定措置決定事務局・全部門訓練記録・最終確認議事録経営へ施行前報告済み
第7段階:施行・施行後点検10月1日〜運用開始・30日/90日レビュー・内部監査全社・内部監査運用記録・レビュー報告・監査報告レビュー・監査を実施
コピー用ひな形③:逆算工程表(記入式)
■ 逆算工程表(施行日:2026年10月1日)
段階/完了目標日/担当/成果物/状態(未着手・進行中・完了・暫定)/備考
第1段階 体制    (〜 7/31)/事務局/計画書・任命書/  /
第2段階 現状把握  (〜 8/8 )/各部門/ギャップ分析/  /
第3段階 方針・規程 (〜 8/22)/人事法務/方針・規程/  /
第4段階 体制・文書 (〜 9/5 )/各部門/窓口・マニュアル/ /
第5段階 周知・研修 (〜 9/18)/人事現場採用/研修記録/ /
第6段階 訓練・確認 (〜 9/26)/事務局/訓練・最終確認/ /
第7段階 施行・点検 (10/1〜)/全社・監査/レビュー報告/ /
※遅延タスクは「暫定措置」欄に施行日時点の代替運用を記載。
このひな形の使い方
  • 目的:施行日から逆算した期日と状態を一元管理する。
  • 使用時期:着手期に作成し、隔週で更新。
  • 主な作成者:事務局。報告先:経営責任者。
  • 避けるべき運用:期日だけ決めて「状態」「暫定措置」を空欄にすること。
  • 法的注意点:遅延時は法的区分Aを優先。暫定措置でも施行日から義務は発生する。
  • 完了証拠として残すもの:更新履歴付きの工程表。

8.自社影響調査(顧客接点・対象労働者・求職者等接点)

整備の前に、自社のどこに何のリスクがあるかを洗い出します。ここが曖昧なままだと、方針も窓口も現場に届きません。

コピー用ひな形④:自社影響調査票
■ 自社影響調査票
【1. 顧客等との接点(カスハラ)】
・対面(店舗・受付・訪問):有/無 部署:
・電話・コールセンター:有/無 部署:
・メール・チャット・フォーム:有/無 部署:
・SNS・口コミ:有/無 運用部署:
・取引先(BtoB)との折衝:有/無 部署:
・施設利用者・近隣住民との接点:有/無 部署:
【2. 対象労働者】
・正社員/パート・アルバイト/契約社員:
・派遣労働者:有/無 派遣元:
・1名店舗・少人数拠点:有/無 拠点:
・外勤・訪問・出張が多い職種:有/無:
・夜間・休日営業:有/無:
【3. 求職者等との接点(求職者等セクハラ)】
・採用面接(対面/オンライン):有/無:
・説明会・インターン・実習受入れ:有/無:
・OB/OG訪問・リクルーター:有/無:
・SNS・個人連絡の利用:有/無:
【4. 過去のトラブル事案】件数・傾向・未解決:
【5. 所在自治体の条例】本社:  事業所:  条例名・施行日:
記入部署:  記入日:  リスク高の接点:
このひな形の使い方
  • 目的:カスハラ・求職者等セクハラ・条例の3面から自社のリスク所在を特定する。
  • 使用時期:現状把握期(第2段階)。主な記入者:各部門長。
  • 避けるべき運用:本社のみで記入し現場・拠点を飛ばすこと。
  • 法的注意点:接点が「無」でも全労働者への方針周知義務は残る。
  • 完了証拠として残すもの:全部門ぶんの調査票と集計。
コピー用ひな形⑤:ギャップ分析表

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必要な措置(区分)現状(有無・水準)不足対応担当期限
基本方針(A)例:職場セクハラ方針のみ有カスハラ・求職者等セクハラ未整備方針を新設・改定人事8/22
相談窓口(A)例:社内窓口あり/社外導線なし求職者等が使えない社外アクセス経路を追加人事・採用9/5
現場即時報告(A/C)例:口頭のみ連絡網・様式なし連絡網・報告様式を整備現場・本部9/5
悪質事案対処(A)例:方針なし権限・連携先未定方針・権限表を作成法務8/22
条例対応(D)例:未確認所在地条例が不明確認票で確認法務8/8
このひな形の使い方
  • 目的:影響調査の結果を「不足→対応→担当→期限」に変換する。
  • 使用時期:現状把握期の終盤。報告先:PJ責任者。
  • 避けるべき運用:不足の洗い出しだけで担当・期限を決めないこと。
  • 完了証拠として残すもの:工程表に反映済みのギャップ分析表。

9.部署別ToDo一覧

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部署主なToDo連携先完了条件
経営方針・規程・予算の承認、施行前報告の受領、経営としての表明PJ責任者・法務承認記録と施行前報告がある
人事・労務方針・就業規則点検・窓口・被害者保護・研修・記録・派遣元連携法務・産業保健・派遣元15点のうち人事所管が完了
法務規程改定・悪質事案方針・権限表・契約約款・条例・弁護士連携経営・弁護士法的レビュー完了記録がある
カスタマーサービス電話・メール・SNSの対応手順、記録票運用、エスカレーション現場・情シスCS手順の運用開始・研修完了
現場部門初動・報告・記録の実装、掲示、連絡網テスト、拠点研修本部・警備拠点研修・連絡網テスト完了
採用面談ルール・求職者等窓口の案内・採否分離・面接官研修人事・広報求職者等への案内開始
総務掲示物・緊急連絡網・警備連携警備・拠点掲示・連絡網の整備完了
情報システム相談フォーム・記録システム・アクセス権限設定個人情報責任者設定とテスト完了
広報社外表明(実施する場合)・SNS炎上対応フロー法務・経営公表物承認・対応フロー整備
内部監査施行後監査の計画・実施・報告経営監査計画の承認・実施

10.文書体系(19文書の役割分担)

1つの文書にすべてを詰め込まず、役割で分けます。中小企業は統合・簡素化して構いませんが、方針・対処内容・窓口・記録は必ず用意します。

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文書区分目的主対象所管
カスハラ対応基本方針A会社の立場の表明全労働者(+任意で社外)人事・経営
トップメッセージC経営の本気度の伝達全労働者経営・広報
顧客等への対処内容A発生時の行動基準現場・管理職人事・現場
悪質事案への対処方針A組織的対応の基準本部・法務法務
相談窓口規程A窓口の設置・運用全労働者・派遣人事
相談窓口周知文A窓口の周知全労働者・派遣人事・総務
相談受付票C相談の記録窓口担当人事
事実確認記録票C事実確認の記録調査担当人事・法務
現場対応マニュアルC初動・交代・記録・引継ぎ現場・CS現場・人事
エスカレーション基準・権限表C誰が何を決めるか管理職・本部・法務法務・人事
被害者対応手順書A被害者配慮の手順管理職・産業保健人事・産業保健
プライバシー保護・記録管理ルールA/D情報の取扱い取扱担当個人情報責任者・法務
不利益取扱い禁止の規定・周知文A相談者等の保護全労働者・派遣人事
就業規則・服務規律の改定版A/C労働契約上のルール全労働者人事・社労士
求職者等セクハラ防止方針A求職者等の保護労働者・求職者等人事・採用
採用・面談ルールA求職活動等ルール面接官・採用採用・人事
求職者等向け相談窓口案内A社外からの相談導線求職者等採用・広報
研修資料・受講記録A/C周知・理解の担保対象者別人事
自治体条例確認票D条例対応の記録法務法務

11.相談窓口の完成基準(19項目)

第6話の詳細を、施行前チェック用の完成基準に凝縮しました。すべて満たして「機能する窓口」です。

  • 設置方法(担当者/制度/外部委託)を決めた(A)
  • 担当者と代替担当者を定めた(A)
  • 担当者が研修を受けた(3要素・正当な申入れとの区別・二次被害防止)(A/C)
  • 受付方法(電話・メール・フォーム・対面)を定めた(A)
  • 受付時間と時間外・緊急時の連絡先を明示した(C)
  • 連絡先を全労働者へ周知した(A)
  • 現場からの即時報告ルートを別途確保した(A/C)
  • 上司を経由しない経路(本社・外部窓口)を用意した(C)
  • 受付後のフロー(記録→事実確認→被害者保護)を定めた(A)
  • 発生のおそれ・微妙な場合・周囲からの相談も受ける旨を明記した(A)
  • 被害者に一律の報告義務を課していない(A)
  • 相談者への初回説明(不利益禁止・情報共有範囲・緊急時例外)を用意した(A/C)
  • プライバシー保護ルールがある(A)
  • 不利益取扱いをしない旨を周知した(A)
  • 派遣労働者も利用でき、周知した(A)
  • 求職者等が社外から利用でき、案内している(A)
  • 採否担当者と相談情報を分離できる(A)
  • 記録の保存場所・閲覧権限・保存期間を定めた(D)
  • 外部委託の場合、緊急通知・報告条件・秘密保持を定めた(C/D)

12.現場対応マニュアルの完成基準(23項目)

第7話の詳細を完成基準に凝縮。現場が「その場で何をするか」を判断できる状態が目標です。

  • 緊急性の判断基準(安全確保・110番を待たせない)がある
  • 危険時にその場を離れてよいと明記している
  • 管理監督者への即時報告手順がある
  • 担当者交代・複数名対応の基準がある
  • 一人で対応させない運用がある
  • 対応時間・方法を制限する目安がある
  • 十分な説明後の対応終了(退店要請・通話終了)の基準がある
  • 対応終了時の定型文がある(対面・電話・メール)
  • 本部・法務・警察・弁護士へのエスカレーション基準がある
  • 権限表(誰が何を決めるか)と連動している
  • 録音・録画の運用ルール(個人情報保護)がある
  • 証拠保全の手順がある
  • 対応記録票の様式がある
  • 記録は事実と評価を分けて書くルールがある
  • 被害者保護(直後・短期・中長期)につなぐ手順がある
  • 相談窓口への引継ぎ手順がある
  • 1名店舗の手順(退店要請・通報・本部連絡)がある
  • 外勤・訪問・出張時の手順がある
  • 夜間・休日の連絡先がある
  • 派遣労働者への適用と派遣元連携がある
  • 正当な申入れとの区別が明記されている
  • 合理的配慮への留意が明記されている
  • 現場が携行できる要約カードがある

13.研修体系(対象者別)

周知は「配って終わり」ではなく、対象者ごとに内容を変えて理解を確認します。施行通達も、部門別・経験年数・顧客対応頻度に応じた工夫を効果的としています。

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対象重点内容時間の目安完了確認
経営・役員制度の全体像、経営責任、求職者等セクハラで役員自身が対象になり得ること短時間受講記録
管理監督者初動判断、担当交代、被害者配慮、判断を現場に負わせない、報告受領受講記録・理解度確認
現場・CS3要素、正当な申入れとの区別、報告・記録、対応終了、合理的配慮受講記録・模擬訓練
相談窓口担当受付・傾聴、二次被害防止、事実確認、初回説明、プライバシー受講記録・ロールプレイ
採用担当・面接官・リクルーター求職者等セクハラの禁止事項、面談ルール、採否分離、SNS連絡制限受講記録・禁止事項の確認
実習指導者実習特有のリスク(更衣・身体接触・評価)、学校連携受講記録
全労働者(顧客対応なし部署含む)方針、相談先、不利益取扱いを受けないこと短時間周知記録
派遣労働者相談窓口の利用方法、不利益取扱いを受けないこと短時間周知記録(派遣元連携)

14.模擬訓練(5シナリオ)

文書がそろっても、動かなければ意味がありません。施行前に、次のような模擬訓練で「実際に動くか」を確認します。

  1. 店頭で長時間の暴言・居座り/初動→管理職交代→退店要請→記録→窓口引継ぎが動くか
  2. 電話での執拗な要求・恫喝/通話終了基準→本部連絡→記録が動くか
  3. SNSに従業員の実名・顔写真が投稿/証拠保全→広報・法務集約→警察/削除相談が動くか
  4. 取引先担当者からの人格否定(BtoB)/被害者保護→事実確認→相手方への協力要請が動くか
  5. 採用面接官による性的質問の相談/社外窓口受付→採否分離→面接官の一時除外→事実確認が動くか
訓練で「詰まった箇所」が、実際の事案でも詰まります。連絡網テスト(誰かが不在のときに代替へつながるか)も必ず行ってください。

15.施行直前の最終確認会議

施行の1〜2週間前に、事務局主宰で最終確認会議を開き、経営へ施行前報告を行います。

コピー用ひな形⑥:施行前最終確認会議アジェンダ
■ 施行前最終確認会議
日時:    主宰:事務局  出席:経営・各部門長・法務・人事
1. 15点の到達状況(法的区分Aから確認)
2. 相談窓口の完成基準(19項目)充足確認
3. 現場対応マニュアルの完成基準(23項目)充足確認
4. 求職者等セクハラ対策・採用窓口の稼働確認
5. 周知・研修の到達率
6. 模擬訓練・連絡網テストの結果と是正
7. 未完了項目と施行日時点の暫定措置
8. 条例対応の確認(所在自治体)
9. 施行後レビュー日・内部監査日の確定
10. 経営としての最終承認
決定事項/宿題/次回:
このひな形の使い方
  • 目的:施行日に「機能する状態」に達したかを経営が確認・承認する。
  • 使用時期:施行1〜2週間前。主宰:事務局。
  • 避けるべき運用:未完了項目を隠すこと(暫定措置を明示する)。
  • 完了証拠として残すもの:議事録・経営承認記録。

16.未完了項目・暫定措置の管理

施行日までにすべてが理想水準に達しない場合でも、義務(A)は施行日から発生します。未完了項目は放置せず、施行日時点の暫定運用を決めて記録します。

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未完了になりがちな項目区分施行日時点の暫定措置の例恒久対応の期限
現場対応マニュアルの詳細版C要約カード+即時報告ルートで運用開始施行後30日
記録システムの本稼働C/D共通様式(紙・表計算)で記録施行後30日
全拠点研修A/C方針・窓口・初動の要点だけ先行周知施行後30日
外部相談窓口の契約C社内担当+代替経路で暫定運用施行後30日
就業規則の届出A/C方針・不利益取扱い禁止を先行周知速やかに(労使手続後)
条例に基づく手引D国法対応を先行、条例確認を並行施行後速やかに
暫定措置でも「義務を果たしていない」ことにはならないよう注意。法的区分Aの中核(方針・窓口・不利益取扱い禁止・被害者保護・事実確認)は、簡素な形でも施行日に動く状態にしてください。暫定にしてよいのは主に方法・高度化(C/D)の部分です。

17.施行後30日・90日レビュー

施行は到達点ではなく起点です。運用が形骸化していないかを、早期に点検します。

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時期主な確認指標の例是正
30日レビュー(〜10月末)窓口が実際に使われたか、連絡網は機能したか、未完了項目の暫定措置は動いたか相談件数、初動所要時間、未完了項目の消化率詰まった箇所の手順修正・再周知
90日レビュー(〜12月末)事実確認・被害者保護・再発防止まで一連で回ったか、記録が残っているか対応完了件数、再発件数、研修受講率、休職・離職の状況マニュアル・研修・様式の改訂
相談件数がゼロでも「問題なし」と即断しないでください。周知不足・心理的障壁で相談が届いていない可能性を、30日・90日の両方で検証します。

18.内部監査(22項目)

施行後、文書の有無だけでなく「実際に運用され、記録が残っているか」を点検します。

  • 基本方針が経営承認を経て周知されている
  • 方針が管理監督者を含む全労働者へ届いている
  • 顧客対応のない部署にも周知されている
  • 顧客等への対処内容が現場で参照できる
  • 悪質事案への対処方針と権限表がある
  • 相談窓口の担当者・代替担当者が実在し対応できる
  • 相談窓口が全労働者・派遣労働者へ周知されている
  • 現場からの即時報告ルートが機能している
  • 相談受付票・事実確認記録票が運用されている
  • 事実と評価を分けた記録になっている
  • 被害者保護が本人の意向確認・記録つきで行われている
  • 不利益取扱い禁止が周知され、違反がない
  • プライバシー保護・記録管理ルールが守られている
  • 記録の保存期間・閲覧権限が守られている
  • 求職者等セクハラ方針・面談ルールが運用されている
  • 求職者等が使える相談窓口が案内されている
  • 採否判断と相談対応が分離されている
  • 研修・周知の記録が保存されている
  • 派遣・1名店舗・外勤・夜間の手順が機能している
  • 条例確認票があり必要な対応が行われている
  • 30日・90日レビューが実施され記録がある
  • 是正事項がフォローされている

19.経営報告

コピー用ひな形⑦:経営報告書(施行前・施行後共通)
■ カスハラ・求職者等セクハラ対応 経営報告書
報告日:   報告者:   対象期間:
1. 到達状況(15点/法的区分Aの充足): %
2. 未完了項目と暫定措置:
3. 相談・対応の実績(件数・傾向・所要時間):
4. 研修・周知の到達率:
5. 模擬訓練・連絡網テストの結果:
6. 条例対応の状況:
7. 主なリスク(高リスク拠点・人員・遅延):
8. 是正計画(担当・期限):
9. 次回レビュー日:
10. 経営への依頼事項(予算・人員・決裁):
このひな形の使い方
  • 目的:施行前後の状況を経営が把握し、リソース判断を行えるようにする。
  • 使用時期:施行前報告・30日・90日レビュー時。
  • 避けるべき運用:未完了・リスクを省いて「完了」とだけ報告すること。
  • 完了証拠として残すもの:報告書と経営の受領・指示記録。

20.架空事例で学ぶ(すべて説明のための架空事例です)

事例1:方針は作ったが現場に届かず、施行後に相談ゼロ

事実関係(架空):基本方針をイントラに掲載したが、店舗スタッフは存在を知らず、施行後1か月の相談はゼロだった。

  • 問題点:周知が「掲載」で止まり、現場へ届いていない(法的区分Aの周知が未達)。
  • 30日レビューでの気づき:相談ゼロを「問題なし」と誤認しかけた。無作為ヒアリングで認知不足が判明。
  • 是正:朝礼・携行カード・拠点研修で再周知、窓口連絡先を掲示。
  • 教訓:周知は「届いた証拠」まで。相談ゼロは周知不足のサインでもある。

事例2:カスハラだけ対応し、求職者等セクハラと条例を失念

事実関係(架空):カスハラ規程は整えたが、求職者等セクハラ対策と所在地の条例確認を失念し、採用サイトに相談窓口の案内がなかった。

  • 問題点:同時施行のもう一つの義務(求職者等セクハラ)と条例(D)の抜け。
  • 是正:求職者等セクハラ方針・面談ルール・社外窓口案内を追加、条例確認票で所在地条例を確認。
  • 教訓:2026年10月は「2つの義務+条例」。対応範囲をカスハラだけにしない。

事例3:文書は完璧だが訓練せず、緊急時に連絡網が動かなかった

事実関係(架空):マニュアルは詳細に整備したが模擬訓練を省略。実際の暴言事案で、担当者が誰に報告するか分からず対応が遅れた。

  • 問題点:文書の完成と運用の実効性は別。連絡網テスト・訓練が未実施。
  • 是正:5シナリオの模擬訓練と連絡網テストを実施、詰まった経路を修正。
  • 教訓:施行前に必ず「動くか」を試す。訓練で詰まる箇所は本番でも詰まる。

21.総合チェックリスト(97項目)

シリーズ全体を統合した施行前・施行後の総合チェックリストです。区分列=法的区分(A〜D)。状態欄は「未対応/対応中/完了/対象外」で管理してください。まず区分Aを完了させるのが優先です。

コピー用ひな形⑧:カスハラ・求職者等セクハラ義務化対応 総合チェックリスト(97項目)

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#分類項目区分状態
1体制・計画プロジェクト計画書を作成し経営承認を得たC 
2対応責任者・事務局を任命したC 
3関係部署の役割を割り当てたC 
4RACIで各タスクの最終責任者を1人に定めたC 
5逆算工程表を作成し隔週で更新しているC 
6予算・外部専門家(弁護士・社労士・外部窓口)を確保したC 
7対応範囲にカスハラ・求職者等セクハラ・条例を含めたA/D 
8現状把握顧客等との接点を洗い出したC 
9対象労働者(派遣・1名店舗・外勤・夜間含む)を把握したC 
10求職者等との接点(面接・実習・OB訪問・SNS)を把握したC 
11過去のトラブル事案を収集したC 
12既存規程(就業規則・セクハラ規定等)を棚卸ししたC 
13ギャップ分析で不足・担当・期限を確定したC 
14所在自治体の条例を確認したD 
15基本方針(カスハラ)カスハラを許容しない旨を明記したA 
16労働者を保護する旨を明記したA 
17正当な申入れとの区別を明記したA 
18一人で抱え込ませない旨を明記したA 
19相談・報告を推奨する旨を明記したA 
20不利益取扱いをしない旨を明記したA 
21悪質事案に組織対応する旨を明記したA 
22企業側の問題は別途是正する旨を明記したC 
23経営承認を得たA 
24全労働者(管理監督者含む)へ周知したA 
25トップメッセージを発信したC 
26対処内容・悪質事案顧客等への対処内容(交代・複数名・終了等)を定めたA 
27現場へ対処内容を周知したA 
28悪質事案への対処方針を定めたA 
29関係部門の連携体制・権限表を整えたA 
30弁護士・警察相談ルートを定めたA 
31出入禁止・取引停止等は法的根拠に基づき判断する整理をしたD 
32就業規則・規程就業規則・服務規律を点検したA/C 
33不利益取扱い禁止を定め周知したA 
34懲戒規定との整合を確認したC 
35必要な改定を行い労使手続・届出を検討したA/C 
36改定版を周知したA 
37相談窓口設置方法を決めたA 
38担当者・代替担当者を定めたA 
39担当者が研修を受けたA/C 
40受付方法・受付時間・緊急連絡先を定めたA/C 
41全労働者・派遣労働者へ周知したA 
42受付後フロー(記録→事実確認→保護)を定めたA 
43広く相談を受ける旨を明記したA 
44初回説明文を用意したA/C 
45完成基準19項目を満たしたA 
46現場・即時報告現場からの即時報告ルートを確保したA/C 
47連絡網テストを実施したC 
48現場対応マニュアルの完成基準23項目を満たしたC 
49携行カードを配布したC 
501名店舗・外勤・夜間の手順を定めたA/C 
51派遣元と連携したA/C 
52被害者保護・記録被害者対応手順(直後・短期・中長期)を定めたA 
53本人の意向確認・記録の手順を定めたA 
54産業保健への導線を用意したC 
55相談受付票・事実確認記録票を用意したC 
56事実と評価を分ける記録ルールを定めたC 
57プライバシー保護・記録管理ルールを定めたA/D 
58保存期間・閲覧権限・廃棄を定めたD 
59求職者等セクハラ求職者等セクハラ防止方針を定めたA 
60行為者への対処内容を就業規則等に規定したA 
61採用・面談ルール(時間・場所・体制・SNS)を定めたA 
62面接官・リクルーターへ禁止事項を周知したA/C 
63OB/OG訪問・インターン・実習のルールを定めたA/C 
64求職者等が社外から使える相談窓口を用意したA 
65採用サイト・案内文へ窓口を掲載したA 
66採否判断と相談対応を分離したA 
67役員・外部関係者による言動への対応を整理したB 
68実習生を相談窓口の対象に含めたA 
69研修・周知経営・役員へ研修したA/C 
70管理監督者へ研修したA/C 
71現場・CSへ研修したA/C 
72相談窓口担当へ研修したA/C 
73採用担当・面接官へ研修したA/C 
74実習指導者へ研修したC 
75全労働者へ周知したA 
76派遣労働者へ周知したA 
77受講記録・周知記録を保存したC 
78訓練・最終確認5シナリオの模擬訓練を実施したC 
79連絡網テストを実施したC 
80詰まった箇所を是正したC 
81施行前最終確認会議を実施したC 
82未完了項目の暫定措置を決めたC 
83経営へ施行前報告を行ったC 
84条例・社外本社所在地の条例を確認したD 
85事業所所在地の条例を確認したD 
86条例と国法の違いを整理したD 
87必要な手引等を作成した(該当時)D 
88顧客等への社外表明を検討・実施したB 
89SNS炎上対応フローを用意したC/D 
90施行後30日レビューの日と責任者を決めたC 
9190日レビューの日と責任者を決めたC 
92内部監査計画を承認したC 
93内部監査22項目を実施する体制があるC 
94相談ゼロを周知不足の観点でも検証するC 
95是正事項をフォローする仕組みがあるC 
96経営報告の様式・頻度を決めたC 
97指針・通達・条例の改定を継続的に確認するC/D 
このひな形の使い方
  • 目的:シリーズ全体の対応を1枚で管理し、抜けを防ぐ。
  • 使用時期:着手期から施行後まで継続。
  • 優先順位:区分A→B/C→Dの順。ただしDの条例確認は早期に。
  • 避けるべき運用:形式的なチェックで終えること。完了証拠を伴わせる。
  • 専門家確認を推奨する場面:就業規則改定・悪質事案・条例・個別措置。

22.よくある質問(FAQ)

Q1.カスハラ対策と求職者等セクハラ対策はいつから義務ですか?

どちらも2026年10月1日からです。企業規模を問わず全事業主が対象で、中小企業への経過措置・猶予はありません。

Q2.中小企業も対象ですか?

対象です。就業規則の作成義務(常時10人以上)の有無とは関係なく、措置義務は企業規模を問わず適用されます。

Q3.方針を1枚作れば義務は果たせますか?

果たせません。方針の明確化・周知、相談窓口、事実確認、被害者配慮、再発防止、プライバシー保護、不利益取扱い禁止等が連動して初めて「措置を講じた」状態になります。

Q4.何から着手すべきですか?

推進体制(責任者・事務局)の確定と自社影響調査です。ここが決まらないと後工程が動きません。

Q5.施行日に間に合わない場合どうしますか?

法的区分A(義務の中核)を最優先で機能させ、方法・高度化(C/D)は暫定措置+施行後の恒久対応に回します。未完了項目は暫定運用を決めて記録します。

Q6.法的区分A・B・C・Dの違いは?

Aは法律・指針上の措置義務、Bは努力義務・望ましい取組、Cは義務を実効化する推奨実務、Dは業種・契約・条例に応じた個別対応です。

Q7.就業規則は必ず改定が必要ですか?

一律ではありません。既存の懲戒規定等で対応可能な場合もあります。ただし不利益取扱いをしない旨の定めと周知は必要です。まず点検し、必要に応じて改定します。

Q8.就業規則は施行前に届け出る必要がありますか?

届出・受理は民事上の効力発生要件ではありません。施行前届出は望ましいものの、一律の法的効力要件ではありません。周知(労基法106条)と合理性が重要です。

Q9.常時10人未満でも対応が必要ですか?

必要です。就業規則の作成義務はなくても、カスハラ・求職者等セクハラの措置義務は適用されます。社内通知等で定めて周知します。

Q10.相談窓口は既存のハラスメント窓口と統合できますか?

統合できますが、カスハラの即時報告ルートの確保と、求職者等が社外から使える導線の確保が要件です。

Q11.相談窓口を外部委託すれば足りますか?

足りません。事実確認・被害者保護・再発防止を実行する責任は事業主に残ります。緊急時の即時報告ルートも別途必要です。

Q12.現場対応マニュアルは法的義務ですか?

マニュアルという形式自体が一律の義務ではありません(区分C)。ただし顧客等への対処内容を定め現場が動ける状態にすることは義務の一部です。

Q13.派遣労働者への対応は派遣元任せでよいですか?

いけません。派遣先も労働者派遣法により措置義務の対象となり、就業場所での安全確保・事実確認・配慮を担います。相談を理由とする受入拒否も禁止です。

Q14.1名店舗はどう対応しますか?

退店要請・通話終了・警察通報・本部連絡を定め、事実確認できた場合は担当変更・産業保健等の配慮を行います。「一人だから対応できない」は理由になりません。

Q15.求職者等セクハラの相談窓口も必要ですか?

必要です。求職者等はまだ社内にいないため、社外からアクセスでき採否担当者と情報を遮断できる窓口を用意し、採用サイト等で案内します。

Q16.採用面接で相談されたら不採用にできませんか?

相談を理由とする不利益取扱いは禁止です。相談と採否を分離し、採否は客観的な選考基準で判断・記録します。

Q17.役員が行為者の場合はどうしますか?

代表者以外の相談経路(監査役・社外取締役・外部窓口等)をあらかじめ用意します。証拠保全と採用判断の再検証、ガバナンス対応を行います。

Q18.顧客への社外表明は義務ですか?

義務ではなく望ましい取組(区分B)です。顧客接点の多い業種では実施が推奨されますが、高圧的表現は避けます。

Q19.東京都の条例に対応すれば国法対応も完了しますか?

完了しません。条例と国法は別制度です。両方の確認・対応が必要です。

Q20.自治体条例はどう確認しますか?

本社・事業所所在地の自治体公式ページで、施行済みか・罰則の有無・事業者の義務/努力義務を確認します。条例案を施行済みと扱わないでください。

Q21.出入禁止や取引停止は改正法でできるようになったのですか?

いいえ。改正法は新たな権利を創設していません。個別措置は契約・約款・施設管理・業法等に基づき判断します。義務は悪質事案への対処方針・体制の整備です。

Q22.録音・録画は必須ですか?

必須ではありません(対処の例の一つ)。行う場合は個人情報保護法を遵守し、利用目的の特定・通知/公表等を整えます。

Q23.研修は必須ですか?

特定形式の研修が一律義務ではありませんが、方針・対処内容の周知は義務です。研修は最も実効的な周知手段で、対象者別・記録つきが望まれます。

Q24.顧客対応のない部署も周知が必要ですか?

必要です。方針・対処内容は社外接点の有無を問わず全労働者へ周知します。

Q25.相談件数がゼロなら問題なしと考えてよいですか?

即断は禁物です。周知不足や心理的障壁で相談が届いていない可能性を30日・90日レビューで検証します。

Q26.模擬訓練は必要ですか?

強く推奨します(区分C)。文書が整っても動かなければ意味がありません。連絡網テストで代替経路も確認します。

Q27.施行前に最終確認会議は必要ですか?

推奨します。15点の到達・完成基準の充足・未完了項目の暫定措置を確認し、経営承認を得ます。

Q28.施行後は何をすべきですか?

30日・90日レビューと内部監査を実施し、詰まった箇所を是正します。指針・通達・条例の改定も継続確認します。

Q29.内部監査では何を見ますか?

文書の有無だけでなく、実際に運用され記録が残っているか(周知・相談・事実確認・被害者保護・分離・研修等)を点検します。

Q30.経営はどこまで関与すべきですか?

方針・規程・予算・未完了項目の暫定措置を承認し、施行前報告と施行後レビュー報告を受けます。経営の関与記録を残します。

Q31.プライバシー保護は誰の情報が対象ですか?

相談者・行為者・関係者の情報が対象で、性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微情報を含みます。取扱いルールを定め周知します。

Q32.不利益取扱い禁止の対象行為は?

相談したこと、事実確認への協力、労働局への相談・調停申請、調停出頭です。これらを理由とする解雇その他の不利益取扱いが禁止されます。

Q33.被害者を一律に顧客対応から外してよいですか?

本人の意向・必要性・期間・待遇・復帰方法を確認・記録せずに一律に外すと、不利益取扱いと受け取られ得ます。協議と記録が必要です。

Q34.職場セクハラ(従来)の点検も必要ですか?

この機会に点検が望まれます。求職者等セクハラと職場セクハラは根拠条文が異なるため、既存のセクハラ規定が求職者等までカバーしているか確認します。

Q35.取引先社員からのカスハラはどう扱いますか?

カスハラの「顧客等」に取引先担当者も含まれ得ます。被害者保護を先行し、相手方事業主へ事実確認等の協力を求めます(相手方には努力義務)。

Q36.費用や人員が足りない場合は?

法的区分Aを優先し、外部窓口・業界団体ひな形・社労士等を活用します。優先順位と暫定措置を経営へ報告し、リソースを判断してもらいます。

Q37.業界団体のマニュアルをそのまま使えますか?

そのままでは不十分です。自社の実情に合わせて調整し、方針の明確化と対処内容の策定・周知を行って初めて措置を講じたことになります。

Q38.どの文書を最優先で作るべきですか?

基本方針・顧客等への対処内容・相談窓口・不利益取扱い禁止・被害者保護(いずれも区分A)です。これらを施行日に動く状態にします。

Q39.このチェックリストをすべて満たさないと違法ですか?

違います。区分Cの推奨実務や高度化を全部満たさなくても直ちに違法ではありません。ただし区分A(義務)は施行日から必要です。

Q40.最新情報はどこで確認しますか?

厚生労働省の改正法特設ページ・指針・施行通達・解釈Q&A、e-Gov法令検索、所在自治体の公式ページで確認します。本記事の基準日は2026年7月15日です。

23.シリーズ全10話の統合

本シリーズは、制度理解(第1・2話)→措置の設計(第3〜6話)→現場と法的対応(第7・8話)→関連規制(第9話)→実行管理(本話)という流れで構成しています。各話を、担当部署の実務に落とし込んでご活用ください。

24.自社影響調査から経営報告までを効率化する

プロジェクト計画・影響調査票・ギャップ分析・工程表・方針・規程・窓口案内・研修資料・チェックリスト・経営報告——施行日までに用意する文書は多岐にわたります。これらの下ごしらえに、実務テンプレートを活用できます。

法改正対応セット|自社影響確認・社内周知・規程改定・対応ToDo整理の実務プロンプト集

法改正への自社影響確認から、社内周知・規程改定・ToDo整理までを支援するプロンプト集です。工程管理・チェックリスト運用と相性がよい構成です。

法改正対応セットを見る

カスハラ対応プロンプト集

対応記録・事案整理・エスカレーション・被害者保護の下書きを素早く整えるためのプロンプト集です。

カスハラ対応プロンプト集を見る

ハラスメント商品ハブ

カスハラ・求職者等セクハラを含むハラスメント対策の実務ツール・プロンプトをまとめています。

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ご利用にあたっての注意/これらのツールは対応の下ごしらえを補助するものであり、これだけで措置義務の履行が完了するものでも、専門家への相談に代わるものでもありません。作成した文書は、必ず自社の実態と最新の法令・指針・条例に照らして確認し、就業規則改定・悪質事案・個別措置・条例対応は弁護士・社会保険労務士・都道府県労働局等にご相談ください。

25.参考資料

公式URLは執筆時点(2026年7月15日)で確認しています。最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。就業規則の改定・悪質事案への対処・個別措置(出入禁止・取引停止等)・条例対応・個人情報の取扱いは、自社の実態・契約・約款・業法・所在自治体の条例を踏まえた個別判断であり、必要に応じて弁護士・社会保険労務士・都道府県労働局等にご相談ください。法令・制度基準日:2026年7月15日/施行日:2026年10月1日。本シリーズはこれで完結です。

読了後の実務化ガイド

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