それでも止まらない相手への法的対応|取引拒絶・出入禁止・警察対応の実務
2026年施行・カスハラ義務化対応シリーズ
第8話 / 全10話
それでも止まらない相手への法的対応|取引拒絶・出入禁止・警察対応の実務
この記事でわかること
警告・窓口一本化・取引拒絶・契約解除・出入禁止・110番/#9110・SNS対応・仮処分・損害賠償の法的根拠・判断主体・証拠・業法上の制約、コピー用ひな形20種
本記事は「2026年施行・カスハラ義務化対応シリーズ」の第8話(全10話)です。第7話までの現場対応(安全確保・初動・担当者交代・通話終了・退店要請・記録・相談窓口への引継ぎ)を行っても悪質な言動が止まらない場合に、企業がどのような組織的・法的対応を検討できるかを整理します。警告、窓口一本化、取引拒絶、契約解除、出入禁止、110番・#9110、SNS対応、仮処分、損害賠償について、法的根拠・判断主体・証拠・業法上の制約を具体的に扱います。
本記事の前提:改正法は「新たな出入禁止権・取引拒絶権」を企業に与えたわけではありません。
2026年10月施行の改正労働施策総合推進法は、事業主に雇用管理上の措置を義務づける法律です。「カスハラと社内で判断したから、直ちに出入禁止・取引拒絶・契約解除ができる」ものではなく、各措置には別途、契約・約款・利用規約・施設管理・業法その他の法的根拠と、必要性・相当性・合理的配慮・公共性の個別検討が必要です。本記事は、企業が顧客等を無制限に排除できると説明するものではありません。法的対応は報復・制裁ではなく、従業員の安全確保と再発防止の手段です。
本記事の法令・制度基準日:2026年7月15日/施行日:2026年10月1日
指針・通達・行政資料は今後変更され得ます。実際の対応にあたっては厚生労働省および都道府県労働局の最新情報をご確認ください。
読んだだけで終わると、次の案件でまたゼロから考えることになります。
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1.なぜ「法的対応」が必要になるのか
第7話で整理した現場対応(安全確保・担当者交代・複数名対応・通話終了・退店要請・記録・証拠保全・相談窓口への引継ぎ)は、多くの事案で有効です。しかし、十分な説明・是正・配慮を行ってもなお悪質な言動が反復するケースは残ります。従業員の心身を守り、再発を防ぐには、現場対応の先にある組織的・法的対応を検討する必要があります。
ここで重要なのは、法的対応が企業の「権利」を新設するものではないという点です。指針や解釈Q&Aが明確にしているとおり、改正法は事業主に雇用管理上の措置を義務づけるものであり、出入禁止・取引拒絶・契約解除などを新たに行える権限を創設したものではありません。これらの措置は、従来から存在する契約・施設管理・民事・刑事の枠組みの中で、個別に検討します。
- 第7話(現場マニュアル)…進行中の現場対応(安全確保・初動・報告・記録・対応終了・引継ぎ) → 現場対応マニュアルの作り方(第7話)
- 第8話(本記事)…現場対応の先の組織的・法的措置(警告・取引拒絶・契約解除・出入禁止・警察・SNS・仮処分・損害賠償)
- 第9話(関連規制)…同時施行の求職者等セクハラ対策と自治体条例等 → 関連する法改正・条例への対応(第9話)
2.結論:悪質事案への法的対応で守る「12原則」
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| # | 原則 | 要点 |
|---|---|---|
| 1 | 安全確保を最優先する | 暴行・凶器・危害予告等では、法的検討を待たず避難・110番。 |
| 2 | 現場に法的判断を負わせない | 出入禁止・契約解除・告訴等は権限者・法務・経営が組織的に判断。 |
| 3 | 事実と評価を分ける | 「確認した具体的言動(事実)」と「カスハラ・犯罪という評価」を混同しない。 |
| 4 | 証拠を早期に保全する | 録音・録画・メール・SNS・目撃者・履歴を上書き・削除前に確保。 |
| 5 | 正当な申入れと区別する | 厳しい苦情・低評価投稿が直ちに違法・カスハラになるわけではない。 |
| 6 | 企業側のミスも確認する | 説明不足・対応の誤りが背景にないかを先に点検する。 |
| 7 | 警告内容を具体化する | 日時・場所・確認した言動・求める行動を特定。「カスハラ認定通知」にしない。 |
| 8 | 措置の法的根拠を確認する | 出入禁止=施設を管理運営する法的地位(所有権・賃借権等)・利用規約等、解除=契約・約款等。改正法は根拠にならない。 |
| 9 | 業法・公共性・合理的配慮を確認する | 医療・宿泊・交通・インフラ等の提供義務、障害者差別解消法を確認。 |
| 10 | 措置を必要最小限にする | 対象・施設・区域・期間を限定。「永久・全店舗・家族全員」を標準にしない。 |
| 11 | 被害者保護を先行する | 法的検討中も、担当交代・再接触防止・産業保健等を先に実施。 |
| 12 | 警察・弁護士へ早めに相談する | 重大・継続・拡散事案は、早期に警察相談・弁護士相談を検討。 |
3.法律・指針・関連法令の位置付け
本記事で扱う各資料が「何を定め/何を定めないか」を整理します。カスハラ法制(労働施策総合推進法)は雇用管理上の措置を定める法律であり、対外的措置の根拠は別の法令にあります。
- 改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号。カスハラ関係は2026年10月1日施行)
- 指針:令和8年厚生労働省告示第51号(2026年2月26日)
- 施行通達:令和8年4月24日付 雇均発0424第2号
- 解釈Q&A:令和8年4月24日「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」
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| 資料・法令 | 何を定めるか | 本記事での役割 |
|---|---|---|
| 改正労働施策総合推進法・指針・通達・Q&A | 事業主の雇用管理上の措置義務(方針・相談体制・事実確認・被害者配慮・再発防止・悪質事案への対処方針の策定/周知/体制整備)。出入禁止等を行う権限は定めない。 | 法的対応の「入口」(悪質事案の対処方針・体制の根拠)と限界を示す |
| 民法 | 契約の成立・債務不履行・催告解除(541条)・無催告解除(542条)・不法行為/損害賠償(709条)・信義則(1条2項)・権利濫用(1条3項)等 | 契約解除・損害賠償・契約自由と権利濫用の限界の根拠 |
| 刑法 | 暴行・傷害・脅迫・強要・恐喝・威力/偽計業務妨害・信用毀損・器物損壊・建造物侵入・不退去・名誉毀損・侮辱 等 | 警察相談・被害届・告訴の背景(成否は捜査機関・裁判所が判断) |
| 民事保全法 | 仮処分(被保全権利・保全の必要性・担保) | 接近禁止・立入禁止・削除等の仮処分の根拠(認容は保証されない) |
| 情報流通プラットフォーム対処法 | プロバイダ等の責任制限、発信者情報開示請求、発信者情報開示命令、送信防止措置(削除)等。※旧「プロバイダ責任制限法」。発信者情報開示命令は改称前の改正で導入。2025年4月1日施行の改正で法律名変更・大規模プラットフォーム事業者への規律追加。 | SNS投稿の削除申請・発信者特定の根拠 |
| 個人情報保護法 | 顧客・行為者情報の取得・利用・保管・共有・第三者提供・安全管理 | 録音/録画・行為者情報の社内共有の適法性 |
| 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法) | 不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供義務 | 属性のみを理由とする排除の禁止、合理的配慮の検討 |
| 個別業法(医師法・旅館業法・運送/インフラ関係法令等) | サービス提供義務・拒否事由・公共性 | 取引拒絶・サービス停止の可否と制約(所管省庁で要確認) |
「カスハラなら出入禁止にできる」/「2026年改正で顧客を排除できるようになった」/「カスハラ認定後は契約を解除できる」/「改正法に基づいてサービス提供を拒否する」/「法律で顧客の利用を禁止できる」。
いずれも、個別の契約・約款・施設管理・業法上の根拠と個別判断を欠いた断定であり、正当な権利侵害・差別・権利濫用と評価されるリスクがあります。
4.「義務となる体制」と「個別事案で選ぶ措置」を分ける
悪質事案について、指針上の義務は、次の3点です(指針4(4))。個々の事案で、警告・出入禁止・契約解除・警察通報・仮処分等のすべてを必ず実施する義務ではありません(解釈Q&A 問16)。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 義務(事業主が整える体制) | ①特に悪質と考えられる事案への対処方針をあらかじめ定める/②管理監督者を含む労働者へ周知する/③方針に基づいて対処を実行できる体制を整備する。 ※業種・業態により必要な対応が異なること、各業法等による定めがある場合、サービスが途絶すると顧客等の生命・心身の健康に重大な影響が及ぶ場合等に留意する。 |
| 個別事案で選択する措置(実施は義務ではない) | 警告文の発出/法令の制限内での販売・サービス提供の停止/出入禁止/民事保全法に基づく仮処分/警察への通報/弁護士への相談。 ※指針はこれらを対処の「例」として示しており、個別事案ごとに、法的根拠・必要性・相当性・業法・合理的配慮を検討して選択する。 |
雇用管理上の措置と対外的措置の比較
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| 比較項目 | 雇用管理上の措置(対内) | 顧客等への対外的措置 |
|---|---|---|
| 目的 | 労働者の安全・就業環境の確保 | 不当な言動の停止・再発防止・被害拡大の防止 |
| 対象 | 自社の労働者・職場 | 顧客等(行為者) |
| 法的根拠 | 労働施策総合推進法・指針(+労働契約法5条の安全配慮義務) | 契約・約款・利用規約・施設管理権・民法・刑事/民事手続・業法 |
| 判断主体 | 事業主(人事・現場・産業保健等) | 権限者・法務・経営(重大事案は弁護士) |
| 代表例 | 担当者交代・一人で対応させない・相談窓口・事実確認・被害者保護・研修・記録 | 口頭注意・窓口一本化・書面警告・取引拒絶・契約解除・出入禁止・警察相談・SNS削除申請・仮処分・損害賠償 |
| 実施時期 | 相談・発生の都度、早期に | 事実確認・証拠保全・根拠確認の後に個別判断 |
| 専門家相談 | 産業医・社労士等 | 弁護士(措置の適法性・通知文・手続) |
| 被害者保護との関係 | それ自体が保護 | 対外措置の検討中も被害者保護を先行 |
現場担当者に「決めさせない」ことと「できること」
| 現場担当者が行うこと | 現場担当者に決めさせないこと |
|---|---|
| 安全確保/離脱/緊急時の110番/担当者交代の要請/管理職への報告/記録/証拠保全/会社が定めた定型文による注意・終了予告 | 出入禁止/契約解除/新規取引拒絶/継続取引停止/損害賠償請求/仮処分/刑事告訴/SNS上の公開反論/顧客情報の全社・グループ共有/犯罪成立の判断/カスハラ該当性の最終判断(=事業主として関係部門が事実確認後に組織的に判断) |
5.現場対応から法的対応への移行フロー
一般的な検討順序です。暴行・凶器・具体的な危害予告・器物損壊・現在進行中の待ち伏せ等では、途中段階を飛ばして避難・110番・弁護士相談へ進みます。
- 緊急性確認(危険が進行していれば以降を飛ばして避難・110番へ)
- 安全確保・避難
- 被害者保護(担当交代・再接触防止・産業保健等)
- 証拠保全(録音・録画・メール・SNS・履歴・目撃者)
- 要求内容の確認
- 企業側のミス・説明不足の確認
- 通常の説明・合理的配慮の検討
- 管理職介入・担当者交代・複数名対応
- 対応条件の提示(時間・方法の制限)
- 連絡窓口の一本化
- 書面対応への切替え・書面警告
- 契約・約款・利用規約・業法の確認
- 法的措置候補の比較(必要性・相当性・根拠)
- 権限者の決定
- 警察・弁護士への相談
- 相手方への通知(警告・取引拒絶・出入禁止等)
- 措置の実施
- 違反時の対応
- 被害者フォロー
- 再検討・見直し(期間の再評価)
- 目的:現場対応から法的措置までの検討順序を共有し、判断の抜けを防ぐ。
- 使用前に確認:緊急事案では順番を飛ばしてよいことを全員が理解しているか。
- 自社用に調整:権限者・法務窓口・弁護士連絡先を具体化する。
- 避けるべき使用:常にステップ1から順に踏ませ、緊急時の通報を遅らせること。
- 法的注意点:措置の実施可否は個別の法的根拠・業法・合理的配慮を確認して判断する。
- 弁護士確認を推奨する場面:契約解除・出入禁止・仮処分・損害賠償・発信者情報開示を検討する段階。
6.対応レベル表(社内の検討モデル)
これは法律上の固定基準ではなく、社内で検討順序を共有するためのモデルです。
| レベル | 内容 |
|---|---|
| レベル0 | 正当な申入れ・通常対応(誠実に対応し、企業側のミスは是正) |
| レベル1 | 管理職介入・担当者交代・記録 |
| レベル2 | 窓口一本化・書面対応・対応条件の提示 |
| レベル3 | 正式な書面警告 |
| レベル4 | 利用制限・新規取引拒絶・サービス停止・契約解除・出入禁止等の検討 |
| レベル5 | 警察・弁護士・仮処分・訴訟・損害賠償・発信者情報開示等 |
再掲:この表は社内の検討モデルであり、法律上のカスハラ・犯罪の該当性や措置の適法性を決めるものではありません。暴行・凶器・危害予告等の緊急事案は、レベルを飛ばして避難・110番・弁護士相談へ進みます。
7.法的措置の比較
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| 措置 | 目的 | 主な法的根拠 | 判断主体 | 必要な証拠 | 緊急性 | 専門家相談 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 口頭注意 | 行為の中止 | —(事実上の対応) | 現場・管理職 | 記録 | — | 不要 |
| 窓口一本化 | 対応の集約 | —(運用) | 管理職・本部 | 経緯記録 | 低 | 不要 |
| 書面対応への限定 | 口頭拘束の回避 | —(運用) | 管理職・本部 | 経緯記録 | 低 | 任意 |
| 連絡時間・方法の制限 | 過度な連絡の抑制 | —(運用) | 本部・法務 | 連絡履歴 | 低 | 任意 |
| 初回警告・再警告 | 中止要求・記録化 | —(事実の通知) | 法務・権限者 | 具体的言動の証拠 | 低〜中 | 推奨 |
| 店舗・施設利用条件の制限 | 安全確保 | 施設管理権・利用規約 | 権限者・法務 | 事実・証拠 | 中 | 推奨 |
| 新規取引拒絶 | 新たな契約を結ばない | 契約自由の原則(+業法・差別禁止の制約) | 経営・法務 | 事実・経緯 | 低 | 推奨 |
| サービス提供停止 | 役務の一部/全部停止 | 契約・約款(+業法) | 経営・法務 | 契約・事実 | 中 | 必要 |
| 契約更新拒絶 | 更新しない | 契約条項・約款 | 経営・法務 | 契約・通知 | 低 | 推奨 |
| 契約解除 | 契約関係の終了 | 契約・約款上の解除条項、債務不履行に該当する場合の民法541条・542条等 | 経営・法務 | 債務不履行等の証拠 | 中 | 必要 |
| 出入禁止 | 施設への立入り制限 | 所有権・賃借権等に基づく施設管理上の権限、施設利用契約・利用規約等(+業法・公共性) | 経営・法務 | 事実・警告歴 | 中 | 必要 |
| 110番 | 緊急の事件・事故対応 | —(緊急通報) | 現場(緊急時)・管理職 | 不要(事後に記録) | 高 | 不要 |
| #9110・所轄署相談 | 緊急でない相談 | — | 管理職・本部・法務 | 事実整理 | 低〜中 | 任意 |
| 被害届 | 被害の申告 | 刑事手続 | 被害を受けた本人または法人(会社は本人の申告を支援) | 証拠 | 中 | 推奨 |
| 告訴 | 訴追を求める意思表示 | 刑事手続 | 刑訴法上の告訴権者(会社自身が被害者なら会社、従業員個人が被害者なら原則本人等) | 証拠 | 中 | 推奨 |
| SNS削除申請 | 権利侵害投稿の削除 | 情報流通プラットフォーム対処法・約款 | 広報・法務 | 投稿の保全 | 中 | 推奨 |
| 発信者情報開示 | 投稿者の特定 | 情報流通プラットフォーム対処法 | 法務・弁護士 | 投稿の保全・権利侵害 | 高(保存期間) | 必要 |
| 削除・接近禁止等の仮処分 | 暫定的な差止め | 民事保全法 | 法務・弁護士 | 被保全権利・必要性 | 高 | 必要 |
| 損害賠償請求・本案訴訟 | 損害の回復 | 民法709条等 | 経営・法務・弁護士 | 違法性・損害・因果 | 低 | 必要 |
- 目的:措置ごとの根拠・判断主体・必要証拠を一覧で比較する。
- 使用前に確認:自社の契約・約款・業法に照らして「根拠」欄が成立するか。
- 自社用に調整:判断主体を自社の権限規程に合わせる。
- 避けるべき使用:改正法を出入禁止・取引拒絶の「根拠」に記載すること。
- 法的注意点:仮処分・訴訟・開示は裁判所の判断であり、認容は保証されない。
- 弁護士確認を推奨する場面:「必要」「推奨」と記した措置全般。
8.権限分担(誰がどの措置を決めるか)
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| 決定事項 | 現場 | 店長/管理職 | 本部/CS | 法務 | 経営 |
|---|---|---|---|---|---|
| 担当者交代 | 要請 | ○決定 | — | — | — |
| 窓口一本化 | — | 起案 | ○決定 | 助言 | — |
| 書面対応への限定 | — | 起案 | ○決定 | 助言 | — |
| 店舗利用制限 | — | 起案 | ○ | ○確認 | — |
| 書面警告(初回/再) | — | 起案 | 起案 | ○作成/確認 | 承認 |
| 新規取引拒絶 | — | — | 起案 | ○確認 | ○決定 |
| 契約更新拒絶 | — | — | 起案 | ○確認 | ○決定 |
| 契約解除 | — | — | 起案 | ○確認 | ○決定 |
| 出入禁止 | — | 起案 | — | ○確認 | ○決定 |
| 110番 | ○(緊急時) | ○ | ○ | — | — |
| #9110相談 | — | ○ | ○ | ○ | — |
| 被害届の相談 | — | 起案 | ○ | ○ | 承認 |
| 告訴の検討 | — | — | 起案 | ○(弁護士) | ○決定 |
| 弁護士相談 | — | 起案 | ○ | ○ | 承認 |
| 仮処分・訴訟 | — | — | — | ○(弁護士) | ○決定 |
| SNS削除申請 | — | 報告 | 起案 | ○(広報連携) | — |
| 発信者情報開示 | — | — | — | ○(弁護士) | 承認 |
| 広報発表 | — | 報告 | 起案 | ○確認 | ○決定 |
| 取引先への協力要請 | — | 起案 | ○ | ○確認 | — |
| 被害者の勤務調整 | — | 起案 | — | — | ○(人事) |
- 目的:措置ごとの起案・確認・決定・承認を明確にし、独断や遅延を防ぐ。
- 使用前に確認:緊急時の避難・110番が承認制になっていないか。
- 自社用に調整:役職名・決裁ラインを自社に合わせる。派遣元・取引先窓口も追記。
- 避けるべき使用:緊急の避難・110番を上長承認の対象にすること。
- 法的注意点:契約解除・出入禁止・告訴・仮処分は法務/弁護士の確認を前提にする。
- 弁護士確認を推奨する場面:解除・出入禁止・開示・仮処分・訴訟・告訴。
9.警告文の作り方(「カスハラ認定通知」にしない)
警告文は、確認した事実と法的評価を分け、具体的な言動・求める行動・連絡方法を記載します。相手を挑発・威圧しません。
警告文の構成
- 宛先
- 差出人(発行権限者)
- 対象となる日時・場所・媒体
- 会社が確認した事実(できる限り具体的に)
- これまでの説明・対応
- 問題となる具体的行為
- 今後求める行動
- 今後の連絡方法(窓口一本化)
- 再発時に検討する措置
- 問い合わせ窓口
- 発行日
- 発行権限者
「確認した事実」と「法的評価」は別欄にし、評価は断定を避けます。
〔宛先〕 様 〔差出人〕 株式会社〇〇 〇〇部 部長 〇〇(発行権限者) 〔発行日〕 20〇〇年〇月〇日 件名:当社担当者への言動に関するお願い 平素より当社サービスをご利用いただきありがとうございます。 当社記録によれば、下記の日時・場所において、当社担当者に対する 次の言動が確認されております。ご事情もあろうかと存じますが、 当社としては、担当者の安全と業務の遂行の観点から、お願いを申し上げます。 【当社が確認した事実】 ・日時:20〇〇年〇月〇日 〇時頃 ・場所/媒体:〇〇(店舗/電話/メール 等) ・確認された言動:(具体的に。例:大声での怒号が約〇分続いた/ 担当者個人への侮辱的な発言があった 等) 【これまでの当社の対応】 ・(例:ご要望の趣旨を確認し、〇〇について複数回ご説明しました) 【今後お願いする事項】 ・担当者への侮辱的・威圧的な言動はお控えください。 ・ご要望・お問い合わせは、下記の窓口へお願いいたします。 なお、正当なお申し出については、引き続き誠実に対応いたします。 【今後の連絡方法】 ・窓口:〇〇(担当・連絡先・受付時間) 【今後について】 ・同様の言動が継続する場合には、当社として必要な措置を検討する ことがございます。 ご不明な点は上記窓口までお問い合わせください。 以上
- 目的:事実を特定して中止を求め、記録化する。
- 使用前に確認:相手方の特定、具体的事実の確認、証拠、企業側のミスの有無、合理的配慮の要否、発行権限者。
- 自社用に調整:窓口・受付時間・差出人を記入。
- 避けるべき使用:「カスハラ認定」「犯罪者」「二度と来るな」等の断定・威圧。
- 法的注意点:事実と評価を分け、犯罪成立を断定しない。正当な申入れは受け付ける旨を必ず残す。
- 弁護士確認を推奨する場面:脅迫的言動・拡散・重大事案、再発時の措置に法的措置を含める場合。
〔宛先〕 様 〔差出人〕 株式会社〇〇 〇〇部 部長 〇〇(発行権限者) 〔発行日〕 20〇〇年〇月〇日 件名:再度のお願い(〇月〇日付お願いに関して) 20〇〇年〇月〇日付で、担当者への言動についてお願いを差し上げました。 しかしながら、当社記録によれば、その後も下記の言動が確認されております。 【初回のお願い】20〇〇年〇月〇日付 【その後確認された言動】 ・日時/場所/媒体:〇〇 ・確認された言動:(具体的に) つきましては、担当者への侮辱的・威圧的な言動はお控えいただくよう、 改めてお願いいたします。ご要望は下記窓口で承ります。 【今後の連絡方法】窓口:〇〇(担当・連絡先・受付時間) 【当社が検討している対応】 ・同様の言動が継続する場合、当社は、施設利用条件の見直し、 取引・サービス提供の見直しその他の必要な措置を検討いたします。 ・本件についてご意見がある場合は、〇月〇日までに上記窓口へ 書面またはメールでお知らせください。 以上
- 目的:初回警告後の継続を記録し、次段階を予告する。
- 使用前に確認:初回警告の事実、その後の具体的言動、証拠、権限者。
- 自社用に調整:意見提出期限・窓口を記入。
- 避けるべき使用:実際には検討できない措置を並べて威圧すること。
- 法的注意点:予告した措置は、実際に法的根拠をもって検討できるものに限る。
- 弁護士確認を推奨する場面:取引停止・契約解除・出入禁止を予告する場合。
警告文で避けるべき表現
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| 避けるべき表現 | 問題点 | 修正の方向 |
|---|---|---|
| あなたをカスハラ認定します | 一方的な断定・レッテル貼り | 「次の言動が確認されています」と事実を示す |
| あなたは犯罪者です | 犯罪成立の断定(会社は判断者でない) | 「犯罪に該当し得る行為として警察に相談します」 |
| 必ず逮捕させます | 実現を保証できない威迫 | 「必要に応じて警察に相談します」 |
| 二度と来るな | 感情的・範囲不明確 | 「対象施設・区域・期間を特定して利用をお断りします」 |
| 永久に利用禁止です | 必要性を超える・再検討がない | 「期間を定め、再検討日を設けます」 |
| 家族・勤務先へ知らせます | 個人情報の不当利用・威迫 | 記載しない |
| SNSで公表します | 名誉毀損・プライバシー侵害のリスク | 記載しない |
| 社会的制裁を加えます | 報復・威迫 | 記載しない |
| ブラックリストに載せます | 不適切な呼称・個人情報の不当管理 | 「対応上注意を要する事案情報として、目的の範囲で管理します」 |
| 発生した費用をすべて請求します | 当然に全額請求できるとの誤解 | 「損害が生じた場合、法的手続を検討することがあります」 |
件名:ご連絡窓口の一本化について 本件に関する当社へのご連絡は、正確かつ迅速に対応するため、 今後は下記の窓口で一括して承ります。 恐れ入りますが、個々の担当者・店舗への直接のご連絡はお控えください。 【窓口】部署/担当:〇〇 連絡先:〇〇 受付時間:〇〇 ※正当なお申し出には、当窓口にて引き続き誠実に対応いたします。 以上
- 目的:現場担当者への直接接触を減らし、対応を集約する。
- 使用前に確認:窓口体制・受付時間が実際に機能するか。
- 自社用に調整:窓口情報を記入。
- 避けるべき使用:正当な連絡まで一律に遮断すること。
- 法的注意点:一本化は連絡方法の指定であり、契約上の義務を免れるものではない。
- 弁護士確認を推奨する場面:業法上の連絡・通知義務がある業種。
件名:以後のご連絡方法について 本件については、正確な記録と的確な対応のため、以後のやり取りを 書面(メールを含む)に限らせていただきます。恐れ入りますが、 ご連絡は下記へ書面またはメールでお願いいたします。 【送付先】〇〇 メール:〇〇 ※お急ぎでご連絡が必要な緊急のご事情がある場合は、その旨を明記ください。 以上
- 目的:長時間の口頭拘束を避け、経緯を記録に残す。
- 使用前に確認:合理的配慮が必要な相手か(口頭以外の手段の要否)。
- 自社用に調整:送付先・緊急時の例外を記入。
- 避けるべき使用:緊急・安全に関わる連絡まで一律に書面限定にすること。
- 法的注意点:業法・契約上の説明義務がある場合は方法を要確認。
- 弁護士確認を推奨する場面:契約上の通知・説明義務がある取引。
10.取引拒絶・サービス停止・契約解除
新規(契約締結前)と既存(契約継続中)を分けて考えます。いずれも、改正法ではなく契約・約款・業法を根拠に、個別に判断します。
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| 場面 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 新規契約を締結しない/個別注文を断る/新規会員登録を断る | 契約自由の原則が及ぶが、業法上の提供義務・差別禁止・公共性・合理的配慮の制約があり得る。事実・経緯を記録し、差別的取扱いと評価されないよう注意。 |
| 連絡手段の限定・担当窓口の変更 | 運用上の対応。契約上の義務は免れない。 |
| 一部サービスの停止 | 契約・約款の根拠、生命・健康への影響、代替手段、通知。 |
| 契約更新をしない | 更新条項・通知期間・更新拒絶の可否(継続的契約では信義則・予告期間に注意)。 |
| 会員資格の停止・取消し | 会員規約の停止/除名事由・手続・通知・返金。 |
| 継続契約の解除 | まず契約・約款上の解除条項を確認。顧客等の言動が契約・約款上の義務違反または債務不履行に該当する場合の解除(催告解除=民法541条/無催告解除=542条)、催告の要否、通知、既履行分・前払金・返金、生命/健康への影響、代替手段、解除の相当性、業法。 |
契約類型ごとの確認ポイント
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| 契約類型 | 確認すべき条項 | 停止・解除時の注意 | 専門家相談 |
|---|---|---|---|
| 単発売買 | 個別契約・返品規約 | 履行済みなら解除の余地は限定的 | 任意 |
| 継続的売買・供給契約 | 解除条項・予告期間 | 継続性への配慮・予告・信義則 | 必要 |
| 業務委託 | 解除・中途解約条項 | 委託業務の引継ぎ・損害 | 推奨 |
| 会員契約 | 停止・除名事由 | 手続・通知・返金 | 推奨 |
| サブスクリプション | 解約・利用停止条項 | 日割・返金・データ | 推奨 |
| 施設利用契約 | 利用規約・禁止事項 | 施設管理権・公共性 | 推奨 |
| 宿泊契約 | 約款・旅館業法 | 旅館業法第5条の拒否事由(後述) | 必要 |
| 運送契約 | 運送約款・関係業法 | 引受義務・安全 | 必要 |
| 医療・介護 | —・関係業法 | 応召義務・提供拒否の制約(後述) | 必要 |
| 賃貸借 | 賃貸借契約・信頼関係 | 信頼関係破壊・正当事由 | 必要 |
| BtoB基本契約 | 解除・反社・遵守条項 | 取引影響・経営判断 | 必要 |
| 個別発注契約 | 個別契約・基本契約 | 基本契約との関係 | 推奨 |
| EC・オンラインサービス | 利用規約・アカウント停止条項 | 停止基準・データ・返金 | 推奨 |
件名:ご注文(お申込み)についてのご連絡 このたびのお申込みにつきまして、当社内で検討いたしましたが、 今回はお引き受けいたしかねるとの結論となりました。ご期待に 沿えず恐れ入ります。 ご不明な点は下記窓口までお問い合わせください。 【窓口】〇〇 以上
- 目的:新規の申込みを、感情的表現を避けて丁重に断る。
- 使用前に確認:業法上の提供義務・差別禁止に触れないか、事実・経緯の記録。
- 自社用に調整:窓口・理由の記載範囲を検討。
- 避けるべき使用:属性(障害・国籍・年齢等)のみを理由に断ること。
- 法的注意点:契約自由が原則でも、業法・差別禁止・合理的配慮の制約がある。
- 弁護士確認を推奨する場面:提供義務のある業種、反復・継続取引の相手。
□ 契約書・約款・利用規約を確認した □ 該当する解除事由(催告解除/無催告解除)を特定した □ 催告の要否・催告済みか確認した □ 通知期間・通知方法を確認した □ 既履行分・前払金・返金の扱いを確認した □ 顧客等の生命・心身の健康への影響を確認した □ 代替手段(他の提供方法・他社紹介等)を検討した □ 解除の必要性・相当性を検討した □ 業法上の制約を確認した □ 差別・合理的配慮の観点を確認した □ 事実・証拠を整理した □ 決裁権限者を確認した □ 弁護士に確認した □ 被害者保護を先行して実施した □ 通知文の表現を確認した(挑発的でないか)
- 目的:解除の可否・手続の抜けを防ぐ。
- 使用前に確認:契約書一式・約款が手元にあるか。
- 自社用に調整:契約類型別に項目を追加。
- 避けるべき使用:契約・業法確認を省いて解除通知を送ること。
- 法的注意点:継続的契約・公共性の高いサービスは信義則・権利濫用に注意。
- 弁護士確認を推奨する場面:ほぼ全ての契約解除。
11.業種別の制約
取引拒絶・サービス停止・出入禁止の可否は、業種で大きく異なります。提供義務・公共性が強い業種ほど慎重な検討が必要です。下表は概観であり、実際の可否は所管省庁の公式資料と個別の契約・約款で確認し、弁護士に相談してください。
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| 業種 | 想定される措置 | 主な法的制約 | 確認すべき法令・所管 |
|---|---|---|---|
| 医療 | 診療の一部調整・新規診療の可否・他院紹介 | 医師法第19条1項の応召義務(正当な事由が必要) | 医師法/厚労省 令和元年通知(後述) |
| 介護 | 担当変更・サービス調整・契約解除 | 正当な理由のない提供拒否の制限(運営基準) | 介護保険法・運営基準/厚労省・自治体 |
| 障害福祉 | 担当変更・支援方法の調整 | 提供拒否の制限・合理的配慮 | 障害者総合支援法等・障害者差別解消法/厚労省 |
| 宿泊 | 宿泊拒否(特定要求行為の反復) | 旅館業法第5条:原則拒否不可+2023年改正で特定要求行為を拒否事由に追加(後述) | 旅館業法/厚労省 |
| 航空 | 搭乗拒否・約款上の対応 | 運送引受義務・安全確保 | 航空法・運送約款/国交省 |
| 鉄道 | 約款・安全上の措置 | 運送引受義務・公共性 | 鉄道営業法等/国交省 |
| バス・タクシー | 乗車拒否は限定・安全上の措置 | 運送引受義務(正当事由が必要) | 道路運送法/国交省 |
| 電気・ガス・水道 | 供給停止は極めて慎重 | 供給義務・生命身体への影響大 | 電気事業法・ガス事業法・水道法/経産省・自治体 |
| 通信 | 約款に基づく利用停止 | 提供・約款上の制約 | 電気通信事業法/総務省 |
| 金融・保険 | 取引謝絶・約款対応 | 契約自由+適合性・差別禁止 | 銀行法・保険業法・消費者契約法/金融庁 |
| 小売・飲食 | 退店要請・出入禁止・取引拒絶 | 施設管理権・契約自由(+差別禁止・合理的配慮) | 各社約款・利用規約 |
| 教育・保育 | 個別対応・契約の見直し | 公共性・継続性・子の利益 | 関係法令/文科省・こども家庭庁 |
| 不動産・賃貸 | 更新拒絶・解除 | 信頼関係破壊・正当事由 | 借地借家法・民法 |
| 行政受託・公共施設 | 利用制限は特に慎重 | 公共性・平等取扱い | 関係条例・要綱/自治体 |
| BtoB製造・建設 | 取引停止・契約解除 | 契約・下請取引適正化・独禁法(優越的地位濫用等) | 民法・独占禁止法・取引適正化関係法令/公取委・中小企業庁 |
| EC・オンライン | アカウント停止・取引停止 | 利用規約・消費者保護 | 利用規約・消費者契約法 |
12.出入禁止の判断手順
出入禁止は、所有権・賃借権その他の施設を管理運営する法的地位、施設利用契約、利用規約等を基礎として検討する対外的措置であり、改正法が新設した権限ではありません。「施設管理権」という名称だけで、あらゆる施設について無制限に立入りを禁止できるわけではありません。とくに公共施設・行政受託施設・医療機関・交通機関・宿泊施設・ライフライン・賃貸物件・区分所有建物の共用部分等では、単純に排除できるとは限りません。対象・施設・区域・期間を具体化し、必要最小限にします。「永久・全店舗・家族全員」を標準ひな形にしないでください。
件名:ご来店に際してのお願い 当社記録によれば、〇月〇日、当店において、担当者に対する 〇〇(具体的言動)が確認されました。当店では、他のお客様と 従業員の安全のため、同様の言動があった場合、その場での対応を お断りすることがございます。ご理解をお願いいたします。 ご要望は〇〇窓口で承ります。
- 目的:軽度の事案で、その場の対応の限界を丁重に伝える。
- 使用前に確認:具体的事実の記録、正当な申入れでないか。
- 自社用に調整:窓口・店舗名を記入。
- 避けるべき使用:レッテル貼り・威圧的表現。
- 法的注意点:施設内の対応は施設管理権等に基づく。恒久的措置ではない。
- 弁護士確認を推奨する場面:再来店の常態化・出入禁止へ発展する場合。
件名:当社施設のご利用に関するご連絡 〔宛先〕 様 〔差出人〕 株式会社〇〇(発行権限者:〇〇) 〔発行日〕 20〇〇年〇月〇日 1. 当社が確認した事実 ・日時/場所:20〇〇年〇月〇日、〇〇店 ・確認された言動:(具体的に) 2. これまでの当社の対応 ・20〇〇年〇月〇日付お願い(初回警告)等 3. 対象者:〇〇 様(本人確認方法:〇〇) 4. 対象施設・区域:〇〇店(〇〇エリア)※対象を限定 5. 対象期間:20〇〇年〇月〇日から〇か月間(〇年〇月〇日に再検討) 6. 禁止する行為:上記施設・区域への立入り 7. 例外的な連絡方法:ご要望・お問い合わせは〇〇窓口へ書面/メールで 8. 再来店時の対応:対象期間中に対象施設へ来訪された場合は、当社から退去を 求めます。退去の求めに応じず、従業員または利用者の安全、施設運営等に 支障が生じる場合には、警備会社または警察へ連絡することがあります。 9. お問い合わせ:〇〇窓口(連絡先・受付時間) 本措置は、従業員と他のお客様の安全確保を目的とするものです。 ご意見がある場合は〇月〇日までに上記窓口へお知らせください。 以上
- 目的:対象・施設・区域・期間・例外を特定した出入禁止通知を出す。
- 使用前に確認:対象者の特定、事実・証拠、過去の警告、施設の性質、契約・利用規約、業法・公共性、合理的配慮。
- 自社用に調整:対象施設・区域・期間・再検討日・本人確認方法を必ず記入。
- 避けるべき使用:「永久」「全店舗」「家族全員」を標準にすること。理由を「カスハラのため」とだけ書くこと。
- 法的注意点:所有権・賃借権その他の施設を管理運営する法的地位、施設利用契約・利用規約等が根拠。「施設管理権」という名称だけで無制限に立入りを禁止できるわけではない。公共性・業法・合理的配慮を確認。必要性を超える範囲は権利濫用のリスク。
- 弁護士確認を推奨する場面:出入禁止のほぼ全て、とくに公共性の高い施設・長期・広域。
出入禁止の判断順序
- 対象者の特定(本人確認方法)
- 事実・証拠の確認
- 過去の注意・警告
- 施設の性質(公共性・不特定多数の利用)
- 契約・利用規約
- 業法・公共性
- 合理的配慮の要否
- 対象施設・区域の限定
- 期間(開始日・終了日または再検討日)
- 例外(必要な連絡方法・代理人)
- 通知方法
- 警備連携
- 情報共有範囲(他店舗・グループ会社は必要最小限)
- 再来店時の対応
- 再検討日
13.警察対応(110番・#9110・被害届・告訴)
110番と#9110を正確に区別します。緊急の事件・事故は迷わず110番し、上司・本部・法務の承認を待たせません。一方、「怖いと感じたらすべて110番」と単純化もしません。
#9110・所轄警察署への相談を検討する場面:緊急性はないが脅迫的言動が反復/将来の待ち伏せ・来店が懸念/自宅・家族への言及/SNS上に危害を示唆する投稿/警告・出入禁止通知の前に相談したい/再来店時の対応を事前相談したい/被害届・告訴について相談したい——など、緊急性は高くない継続的な安全上の懸念。
110番・#9110・所轄署相談・被害届・告訴の違い(概観)
| 手段 | 性格 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 110番 | 緊急通報 | 事件・事故が現に発生し、直ちに警察官の臨場が必要 |
| #9110 | 相談専用電話 | 緊急性はないが安全上の相談をしたい |
| 所轄署への相談 | 事前相談 | 継続事案・今後の対応・証拠の相談 |
| 被害届 | 被害の申告 | 被害の事実を警察へ届け出る |
| 告訴 | 訴追を求める意思表示 | 処罰を求める意思を明確に示す |
※受理・捜査・立件・逮捕を保証するものではありません。
【110番でまず伝える】 1. 何が起きているか(例:暴れている/刃物を持っている) 2. 現在進行中か 3. 住所・施設名( ) 4. 階・入口( ) 5. 行為者の人数・外見・服装 6. 凶器・危険物の有無 7. 負傷者の有無 8. 行為者の現在位置・逃走方向・車両番号 9. 退去要請をしたか 10. 従業員・お客様の避難状況 11. 防犯カメラ・録音の有無 12. 通報者名・電話番号 ※従業員に行為者を拘束・制圧させない。安全を最優先。 ※通報後は本部連絡・被害者保護・現場保存・事後記録。
- 目的:緊急時に落ち着いて必要事項を伝えられるようにする。
- 使用前に確認:住所・施設名・入口をあらかじめ記入して掲示。
- 自社用に調整:拠点ごとに住所・目印を印字。
- 避けるべき使用:通報を上長承認の対象にすること。従業員に制圧させること。
- 法的注意点:犯罪の成否は現場で断定しない。事実を伝える。
- 弁護士確認を推奨する場面:事後の被害届・告訴の検討。
■ 警察相談シート 相談日時: 相談先(署・#9110): 相談番号: 【事案概要】 発生日時・場所: 行為者(氏名/特徴/不明): 具体的言動(事実。評価を混ぜない): □暴力 □脅し □凶器 □器物損壊 □不退去 □待ち伏せ □つきまとい □SNS投稿 □自宅・家族への言及 過去の経緯・警告歴: 証拠(録音/録画/カメラ/メール/SNS/目撃者): 被害者(担当者)・負傷/受診の有無: 今後の接触見込み(再来店・来訪の可能性): 【会社が相談したい事項】 (例:再来店時の対応/被害届の要否/警告の進め方) 【警察からの助言】 【担当者】 【次の対応】
- 目的:警察相談前に事実・証拠を整理し、相談を実効的にする。
- 使用前に確認:事実と評価を分けて記載しているか。
- 自社用に調整:業種特有の項目を追加。
- 避けるべき使用:犯罪名を断定して記載すること。
- 法的注意点:証拠がなくても相談は可能。証拠の有無で相談を止めない。
- 弁護士確認を推奨する場面:告訴・被害届・重大事案。
警察対応フロー
| 緊急時 | 非緊急時 |
|---|---|
| ①避難 →②110番 →③負傷者確認 →④必要に応じ119番 →⑤現場保存 →⑥証拠保全 →⑦本部連絡 →⑧被害者保護 →⑨警察への説明 →⑩事後記録 | ①事実整理 →②証拠一覧作成 →③#9110・所轄署へ相談 →④再来店・接触時の対応を協議 →⑤警告方法を検討 →⑥被害届・告訴等を相談 →⑦社内決裁 →⑧従業員・警備へ必要最小限の周知 |
14.SNS・インターネット上の投稿への対応
低評価レビューや批判的投稿が、直ちに違法・カスハラになるわけではありません。一方、従業員個人の実名・顔写真・自宅情報の拡散、虚偽情報、危害予告、なりすまし等は、権利侵害として対応を検討します。従業員個人に公開反論させず、会社公式アカウントで感情的に応酬しません。投稿の削除前に証拠を保存し、危害の切迫性がある場合は警察相談を優先します。
なお、削除申請、発信者情報開示、削除仮処分等は、それぞれ要件と手続が異なります。任意の削除申請はプラットフォームの約款・基準にもより、発信者情報開示では権利侵害が明らかであることや開示を受ける正当な理由等が、削除仮処分では被保全権利と保全の必要性等が問題になります。いずれも必ず認められるわけではなく、アクセスログの保存期間が短い場合があるため、投稿の保全と早期の相談が重要です。
■ SNS証拠保全票 発見日時: 保存者: プラットフォーム: 投稿URL: アカウント名/ID: 投稿日時: 投稿本文(原文のまま): 投稿前後のやり取り・文脈: 添付画像・動画(保存ファイル名): アドレスバーを含むスクリーンショット:□取得済み 従業員の個人情報の有無:□氏名 □顔写真 □勤務先 □自宅・家族 虚偽・危害予告・なりすましの有無: 編集・削除前の状態の保存:□済み 閲覧日時: 共有先(法務/広報/情報システム):
- 目的:削除・編集前に、出所と文脈まで含めて証拠化する。
- 使用前に確認:URL・日時・アカウント・アドレスバーを含めて保存したか。
- 自社用に調整:保存先・命名規則を定める。
- 避けるべき使用:切り取り画像だけを保存すること。私物端末に保存すること。
- 法的注意点:発信者情報開示にはログ保存期間の制約があり、早期対応が重要。
- 弁護士確認を推奨する場面:発信者情報開示・削除仮処分・損害賠償。
- 投稿発見
- 原文・URL・日時・アカウントを保存
- 投稿前後の文脈を保存
- 危害の切迫性を確認(切迫していれば警察相談を優先)
- 従業員個人情報の有無を確認
- 法務・広報・情報システムへ集約
- 公開反論の要否を判断(原則しない)
- プラットフォームへの削除申請
- 警察相談
- 弁護士相談
- 発信者情報開示・削除仮処分等の検討
- 被害者保護
- 再投稿・再発の確認
- 目的:SNS対応の順序を統一し、被害拡大と二次炎上を防ぐ。
- 使用前に確認:証拠保全を削除申請より先に行っているか。
- 自社用に調整:法務・広報の連絡先を記入。
- 避けるべき使用:公式アカウントでの感情的応酬。従業員個人の反論。
- 法的注意点:批判的口コミすべてが違法ではない。削除・開示は保証されない。
- 弁護士確認を推奨する場面:開示・仮処分・損害賠償。
発信者情報開示・仮処分(概観)
- 発信者情報開示:匿名投稿者を特定するための手続。権利侵害の明白性等が問題になり、証拠が必要。ログ保存期間の制約があるため早期対応が重要。弁護士相談が通常必要で、必ず認められるわけではない。
- 仮処分:投稿削除や接近・立入・連絡禁止等を暫定的に求める手続(民事保全法)。被保全権利・保全の必要性・担保が問題になり、緊急性がある一方、裁判所が必ず命令を出すとは限らない。
※本記事では、申立書・訴状の完成形は掲載しません。実際の申立ては弁護士にご相談ください。
損害賠償(会社・本人)
| 会社に生じ得る損害 | 労働者本人に生じ得る損害 |
|---|---|
| 物損・修理費/営業停止/警備費用/調査費用/対応人件費/信用毀損による損害/法的対応費用 | 治療費/通院交通費/休業損害/慰謝料/物損 |
請求には、違法な行為・故意過失・損害・因果関係・証拠・損害額・回収可能性・訴訟コスト・レピュテーション・被害者本人の意向の検討が必要です。「対応時間×人件費を当然に全額請求できる」わけではありません。
15.BtoB(取引先担当者)事案への対応
取引先の担当者も「顧客等」に含まれ得ます。現場担当者同士で解決させず、被害者保護を先行しつつ、相手方事業主へ協力を求めます。改正法(労働施策総合推進法第33条第3項)および指針は、他の事業主から事実確認その他の雇用管理上の措置について必要な協力を求められた事業主に対し、これに応ずるよう努めることを求めています(施行通達も、協力を求められた事業主には法第33条第3項の規定により応じる努力義務があるとしています)。相手方が協力に応じない場合、都道府県労働局に相談することもできます(解釈Q&A 問20)。取引停止を懲罰・報復として用いず、契約・取引法上の影響を確認します(協力を求めたことを理由に相手方との契約を解除する等の不利益な取扱いは望ましくないとされています)。
〔宛先〕 株式会社 御中 〔差出人〕 株式会社〇〇 〇〇部 〇〇 件名:貴社ご担当者の言動に関するご確認のお願い 平素より格別のお引き立てを賜り御礼申し上げます。 このたび、下記のとおり、貴社ご担当者による当社従業員への言動に つきまして、当社従業員の就業環境に支障が生じております。つきまし ては、事実関係のご確認と、再発防止に向けたご協力をお願い申し上げ ます。 【当社が確認した事実】 ・日時/場所: ・確認された言動:(具体的に) 【当社の対応】 ・被害者保護(担当者の一時変更等)を実施済み 【お願い】 ・事実関係のご確認 ・再発防止に向けたご協議 ・必要に応じたご担当者の変更等のご検討 【当社窓口】〇〇(連絡先) なお、本件は取引関係とは切り離し、まずは従業員保護の観点から ご連絡するものです。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。 以上
- 目的:相手方事業主へ事実確認・再発防止の協力を求める。
- 使用前に確認:自社での事実確認・証拠保全・窓口一本化を済ませたか。
- 自社用に調整:窓口・差出人を記入。
- 避けるべき使用:相手方へ必要以上の懲戒処分を要求すること。取引停止を報復に用いること。
- 法的注意点:相手方の協力は努力義務。取引の継続/停止は契約・取引法上の影響を確認して経営判断。
- 弁護士確認を推奨する場面:取引停止・契約解除に発展する場合、独禁法・下請取引の観点。
BtoB対応フロー
- 被害者保護
- 自社での事実確認
- 証拠保全
- 自社窓口の一本化
- 相手方事業主への協力要請
- 相手方の事実確認
- 再発防止の協議
- 担当者変更等の要請
- 契約・取引条件の確認
- 取引継続・停止の経営判断
- 労働局・弁護士への相談
16.法的検討より被害者保護を先行する
出入禁止や契約解除の検討に時間がかかる場合でも、被害者保護は先に実施します。法的判断が確定するまでの間も、被害者の安全と心身の状態を優先し、原則として同じ行為者への単独対応を継続させないでください。本人が対応継続を希望する場合でも、安全性・必要性・支援体制を確認し、本人だけに判断や負担を委ねないようにします。
【直後・短期】 □ 担当者を交代した □ 行為者との接触を停止した □ 連絡窓口を一本化した □ 行為者からの再接触を防ぐ措置をとった □ 勤務場所・シフトを一時調整した □ 帰宅経路の安全を確認した □ 警備と連携した □ 産業保健につないだ □ 医療・休養の要否を確認した □ 相談窓口を案内した □ 情報共有を必要最小限に限定した 【保護措置を行う際の本人確認】 □ 本人の意向を確認した □ 措置の目的・期間を説明した □ 賃金・手当・評価への影響を確認した □ 見直し日を設定した 【中長期】 □ 定期的にフォローした □ 不利益取扱いが生じていないか確認した
- 目的:法的検討中も被害者の安全を確保する。
- 使用前に確認:本人の意向・不利益の有無。
- 自社用に調整:産業保健・シフト運用に合わせる。
- 避けるべき使用:保護名目で恒久的な不利益を与えること。法務判断まで被害者に対応を継続させること。
- 法的注意点:相談等を理由とする不利益取扱いは禁止(派遣労働者への受入れ拒否も同様)。
- 弁護士確認を推奨する場面:勤務・処遇の大幅な変更を伴う場合。
17.行為者情報の管理(「ブラックリスト」と呼ばない)
顧客・行為者情報を管理する場合、「ブラックリスト」という呼称は使いません。「対応上注意を要する事案情報」「再接触防止対象事案」「利用制限対象者情報」「安全管理上の注意情報」等の正式名称を用い、個人情報保護法に沿って運用します。
■ 対応上注意を要する事案情報 台帳(項目例) 管理番号/登録日/登録権限者 利用目的(例:従業員の安全確保・再接触防止) 登録要件(どの事実があれば登録するか) 情報源(記録・証拠) 対象者(本人確認方法) 事案概要(事実) 実施した措置(警告・利用制限等) 共有範囲(部署・他店舗・グループ会社の要否と範囲) 第三者提供の有無・根拠 保存期間/更新日/再検討日 訂正・削除の手続 アクセス権限(閲覧できる者) 目的外利用の禁止
- 目的:安全確保に必要な範囲で、適正に情報を管理する。
- 使用前に確認:利用目的の特定、登録要件、保存期間、アクセス権限。
- 自社用に調整:共有範囲を必要最小限に設計。
- 避けるべき使用:「ブラックリスト」の呼称。全社・全グループへの無限定な共有。誤登録の放置。
- 法的注意点:個人情報保護法(利用目的・第三者提供・正確性・安全管理)を遵守。誤登録は速やかに訂正・削除。
- 弁護士確認を推奨する場面:グループ会社・他社との共有、第三者提供。
18.合理的配慮・差別防止との関係
障害・年齢・国籍・認知症等の属性のみを理由に、出入禁止・取引拒絶を決めてはいけません。障害特性・認知症等の症状・外国語・読み書き・聴覚/視覚上の配慮が背景にある場合は、伝達方法の変更、支援者・家族の同席、代替手段、建設的対話を検討します(障害者差別解消法の合理的配慮)。属性ではなく具体的な言動と安全上のリスクで評価します。
一方、障害等があっても、暴力・具体的な脅迫・他者への危険を無条件に受忍する必要はありません。この場合も、安全確保を優先しつつ、記録・組織的判断・必要に応じた警察相談を行います。
19.法的対応検討票(弁護士へ渡す前の整理)
■ 法的対応検討票 管理番号: 作成日: 記録者: 承認者: 【事案概要】 行為者(氏名/不明/特徴): 契約関係:□あり(類型: )□なし 施設利用関係: 具体的言動(事実。評価と分ける): 3要素の暫定評価(①顧客等の言動 ②社会通念上許容範囲を超える ③就業環境が害される):※あくまで暫定・組織的に確認 緊急性:□高 □中 □低 企業側のミス・説明不足: 合理的配慮の要否: 過去の注意・警告: 証拠(録音/録画/カメラ/メール/SNS/目撃者/履歴): 被害者への影響(心身・勤怠): 業務への影響: 業法上の制約: 契約・約款・利用規約: 【候補措置】(各根拠・リスク・代替措置・必要最小限性) □口頭注意 □窓口一本化 □書面警告 □利用制限 □新規取引拒絶 □サービス停止 □契約更新拒絶 □契約解除 □出入禁止 □110番 □#9110 □被害届 □告訴 □SNS削除申請 □発信者情報開示 □仮処分 □損害賠償 警察相談:□要 □済 弁護士相談:□要 □済 決裁権限者: 実施日: 再検討日: 被害者保護(実施内容): 情報共有先(必要最小限):
- 目的:事実・証拠・根拠を整理し、弁護士相談や社内決裁を実効的にする。
- 使用前に確認:事実と評価を分けているか、証拠を保全したか。
- 自社用に調整:決裁ライン・業種別項目を追加。
- 避けるべき使用:3要素評価を「確定」として扱うこと。現場個人に評価を負わせること。
- 法的注意点:該当性は組織的に確認。措置は必要最小限・法的根拠に基づく。
- 弁護士確認を推奨する場面:候補措置に解除・出入禁止・開示・仮処分・訴訟を含む場合。
20.架空事例で学ぶ(すべて説明のための架空事例です)
事例1:口頭注意だけを続け、担当者が休職
事実関係(架空):店舗で暴言・居座りが繰り返されたが、口頭注意だけを続け、書面警告・窓口一本化・出入禁止の検討をしなかった。担当者は精神的に消耗し休職した。
- 初動:本来は早期に管理職介入・担当交代・記録・証拠保全。
- 法的論点:事業主の安全配慮義務(労働契約法5条)。対応遅延は雇用管理上の措置義務・安全配慮の観点で問題。
- 不足していた証拠:具体的言動の記録・録音・目撃者。
- 対応候補:書面警告→窓口一本化→(根拠を確認のうえ)施設利用制限・出入禁止の検討。
- 措置の限界:出入禁止は施設管理権等の根拠と対象・期間の特定が必要。
- 被害者保護:担当交代・産業保健・休職/復職支援・不利益防止。
- 社内ルール修正案:警告・窓口一本化・エスカレーションの基準と権限を明文化。
事例2:「カスハラ認定のため永久出入禁止」通知で紛争拡大
事実関係(架空):具体的事実や根拠を示さず、「カスハラ認定したため永久・全店舗出入禁止」とだけ書いた通知を送付。相手が反発し紛争が拡大した。
- 法的論点:具体的事実の不特定、法的根拠の欠如、対象施設・区域・期間の不特定、再検討の不在、挑発的表現、個人情報の扱い。
- 不足:確認した事実、過去の警告、根拠の説明。
- 対応候補:対象施設・区域・期間を限定し、確認した事実・過去の対応・例外的連絡方法・再検討日を記載した通知に作り直す。
- 措置の限界:「永久・全店舗」を安易に標準とすると必要性を超え、権利濫用と評価されるリスク。長期・無期限とする場合は必要性を特に慎重に確認し、定期的な見直しや解除申出の仕組みを設ける。
- 被害者保護:並行して再接触防止。
- 社内ルール修正案:出入禁止通知の必須記載事項・上限期間・再検討日をひな形化。
事例3:医療機関が事情を確認せず無期限の診療拒否を通知
事実関係(架空):暴言のある患者に対し、緊急性や信頼関係を検討せず、事情を確認しないまま「今後一切診療しない」と無期限の拒否を通知した。
- 法的論点:医師法第19条1項の応召義務。正当事由の判断では緊急対応の要否(病状の深刻度)が最重要、診療時間内か、信頼関係も考慮(令和元年通知)。なお応召義務は医師が国に対して負う公法上の義務であり、それ自体が直ちに患者に対する私法上の義務となるものではないが、診療契約上の責任や不法行為責任等が別途問題となり得るため、事情確認をせず一律・無期限に拒否するのは慎重に検討する必要がある。
- 不足:具体的言動の記録、緊急性の評価、責任者や複数の関係者による組織的な検討。
- 対応候補:緊急対応の要否を確認し、診療時間・場所・担当者の調整、他院紹介、迷惑行為の記録、必要に応じ弁護士相談。
- 措置の限界:緊急対応が必要な患者への拒否は特に慎重に。
- 被害者(従業員)保護:担当交代・記録・産業保健。
- 社内ルール修正案:診療拒否の判断手順(緊急性・信頼関係・記録・組織的検討・弁護士相談)を整備。
事例4:営業担当が独断で基本契約を解除通知
事実関係(架空):取引先担当者による人格否定が続いたため、営業担当者が独断で基本契約の解除を通知した。
- 法的論点:決裁権限の逸脱、契約解除条項・催告の要否・通知手続、証拠、BtoB特有の取引影響、独禁法・取引適正化の観点。
- 不足:自社での事実確認、証拠保全、相手方への協力要請、経営判断。
- 対応候補:被害者保護→自社での事実確認→窓口一本化→相手方事業主への協力要請→契約・取引条件の確認→経営判断。
- 措置の限界:取引停止を報復に用いない。契約・取引法上の影響を確認。
- 被害者保護:担当交代・再接触防止。
- 社内ルール修正案:契約解除の決裁権限・手順を明確化。現場の独断を禁止。
事例5:従業員の氏名・顔写真・自宅地域がSNS投稿されたが放置
事実関係(架空):従業員の実名・顔写真・自宅地域がSNSに投稿されたが、会社は「口コミだから」と放置した。
- 法的論点:名誉毀損・プライバシー侵害の可能性、危害の切迫性、個人情報。放置は安全配慮の観点で問題。
- 不足:証拠保全(URL・日時・アカウント・アドレスバー含む画面・投稿前後の文脈)。
- 対応候補:証拠保全→危害の切迫性確認→(切迫時)警察相談→削除申請→弁護士相談→発信者情報開示・仮処分の検討→被害者保護→広報対応。
- 措置の限界:批判的口コミすべてが違法ではない。削除・開示は保証されない。
- 被害者保護:帰宅経路の安全・再接触防止・産業保健。
- 社内ルール修正案:SNS対応フロー・証拠保全票・広報連携を整備。
21.施行前チェックリスト
状態欄:未対応/対応中/完了/対象外
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| # | 分類 | 項目 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 1 | 基本方針・体制 | 悪質事案への対処方針を定めた | |
| 2 | 関係部署(法務・人事・広報・情シス・警備)を定めた | ||
| 3 | 措置ごとの決裁権限を定めた | ||
| 4 | 緊急時権限(避難・110番)を承認制にしていない | ||
| 5 | 顧問弁護士の連絡先・相談ルートを整えた | ||
| 6 | 契約・約款 | 解除条項を確認した | |
| 7 | 利用停止条項を確認した | ||
| 8 | 会員資格停止・除名事由を確認した | ||
| 9 | 更新拒絶の手続・通知期間を確認した | ||
| 10 | 施設利用ルール(禁止事項)を整えた | ||
| 11 | 業法上の提供義務・制約を確認した | ||
| 12 | 警告 | 初回警告文のひな形を用意した | |
| 13 | 再警告文のひな形を用意した | ||
| 14 | 出入禁止通知のひな形を用意した | ||
| 15 | 発行権限者を定めた | ||
| 16 | 送付方法(記録の残る方法)を定めた | ||
| 17 | 警告に必要な証拠の基準を定めた | ||
| 18 | 警察 | 110番の基準を周知した | |
| 19 | #9110の使い方を周知した | ||
| 20 | 所轄警察署の連絡先を把握した | ||
| 21 | 警察相談シートを用意した | ||
| 22 | 防犯カメラの運用(個人情報)を整えた | ||
| 23 | 110番通報チェックカードを掲示した | ||
| 24 | SNS | SNS証拠保全の手順を定めた | |
| 25 | 削除申請の手順を定めた | ||
| 26 | 広報対応(公開反論しない)を定めた | ||
| 27 | 警察相談の基準を定めた | ||
| 28 | 発信者情報開示の相談ルートを整えた | ||
| 29 | 仮処分の相談ルートを整えた | ||
| 30 | 被害者保護 | 再接触防止の手順を定めた | |
| 31 | 勤務調整の手順を定めた | ||
| 32 | 帰宅経路の安全確認を定めた | ||
| 33 | 産業保健につなぐ手順を定めた | ||
| 34 | 不利益取扱い防止を明記した | ||
| 35 | 本人の意向確認の手順を定めた | ||
| 36 | 保護措置の見直し日を設定する運用にした | ||
| 37 | BtoB | 相手方窓口の把握方法を定めた | |
| 38 | 協力要請書のひな形を用意した | ||
| 39 | 契約確認の手順を定めた | ||
| 40 | 担当者変更の要請手順を定めた | ||
| 41 | 労働局相談のルートを把握した | ||
| 42 | 情報管理 | 行為者情報の登録基準を定めた | |
| 43 | 共有範囲を必要最小限に定めた | ||
| 44 | 他店舗・グループ会社共有の要否を定めた | ||
| 45 | 保存期間・訂正・削除の手順を定めた | ||
| 46 | アクセス権限を限定した | ||
| 47 | 点検 | 模擬事案での訓練を計画した | |
| 48 | 弁護士レビューを受けた | ||
| 49 | 警察への事前相談を検討した | ||
| 50 | 事案レビューの仕組みを定めた | ||
| 51 | 定期改定の時期を定めた | ||
| 52 | 「ブラックリスト」等の不適切な呼称を使っていない |
- 目的:施行までに、体制・文書・手順の抜けを点検する。
- 使用前に確認:各項目の責任部署。
- 自社用に調整:業種特有の業法確認を追加。
- 避けるべき使用:形式的なチェックで終えること。
- 法的注意点:契約・業法・個人情報の確認は弁護士・所管省庁資料で。
- 弁護士確認を推奨する場面:契約・約款・業法・出入禁止・情報共有の設計。
22.よくある質問(FAQ)
Q1.カスハラと判断すれば出入禁止にできますか?
できません。カスハラと社内判断しただけでは根拠になりません。出入禁止は、施設を管理運営する法的地位(所有権・賃借権等)・利用規約等を根拠に、対象・区域・期間を特定し、必要性・相当性・業法・合理的配慮を確認して個別に判断します。
Q2.改正法で出入禁止権が新設されたのですか?
いいえ。改正法は事業主に雇用管理上の措置を義務づけるもので、出入禁止・取引拒絶等の権限を新設していません(解釈Q&A 問18)。
Q3.悪質事案では必ず出入禁止にする義務がありますか?
ありません。義務は「悪質事案への対処方針の策定・周知・実行体制の整備」です。個別事案で出入禁止を必ず実施する義務ではありません(問16)。
Q4.警告をせずに出入禁止にできますか?
暴行・凶器等の重大事案では警告を経ないこともありますが、多くの事案では、事実確認・(可能なら)警告を経て、根拠・必要性・相当性を確認するのが安全です。弁護士に相談してください。
Q5.出入禁止の期間は何年にすべきですか?
一律の正解はありません。事案の重大性・再発リスクに応じて必要最小限の期間を定め、再検討日を設けます。
Q6.無期限の出入禁止にできますか?
無期限の出入禁止が一律に許されない、という法規範があるわけではありません。期間の設定に一律の基準はなく、事案の重大性・再発可能性・施設の性質・行為者からの危険の継続性等に応じ、必要かつ相当な範囲で設定します。もっとも、無期限や長期の措置は必要性を超えやすいため、その必要性を特に慎重に確認し、一定時期ごとの見直しや解除申出を受け付ける仕組みを設けることが望まれます。
Q7.全店舗を対象にできますか?
必要性がある範囲に限定します。事案と無関係の店舗まで一律に対象とするのは、必要性・相当性の観点で慎重に検討します。
Q8.家族や代理人も禁止できますか?
家族全員・関係者全員を一律に対象とするのは避けます。正当な連絡(代理人経由等)まで遮断すると問題が生じ得ます。個別に必要性を検討します。
Q9.新規取引を拒絶できますか?
契約自由の原則が及びますが、業法上の提供義務・差別禁止・公共性・合理的配慮の制約があり得ます。属性のみを理由とする拒絶は避け、事実・経緯を記録します。
Q10.継続契約を解除できますか?
まず契約・約款上の解除条項を確認します。顧客等の言動が契約・約款上の義務違反または民法上の債務不履行に該当するかを検討し、該当する場合の解除(催告解除=民法541条/無催告解除=542条)、催告の要否・通知・返金・生命健康への影響・代替手段・相当性・業法を確認します。カスハラと評価されること自体が、直ちに民法第541条・第542条の解除事由になるわけではありません。弁護士確認を推奨します。
Q11.契約更新を拒絶できますか?
更新条項・通知期間を確認します。継続的契約では信義則・予告期間に注意が必要です。
Q12.サービスの一部だけ停止できますか?
契約・約款の根拠、生命・健康への影響、代替手段、通知を確認したうえで検討します。
Q13.医療機関は診療を断れますか?
医師法第19条1項の応召義務があり、正当な事由が必要です。緊急対応の要否(病状の深刻度)が最重要で、診療時間内か、信頼関係も考慮されます。事情を確認せず一律・無期限に拒否するのは危険です。組織的判断・記録・弁護士相談を。
Q14.介護サービスを停止できますか?
正当な理由のない提供拒否は運営基準上制限されます。安全確保・担当変更・関係機関連携を検討し、契約解除は慎重に。所管の基準・弁護士に確認してください。
Q15.旅館は宿泊を拒否できますか?
2023年改正旅館業法により、特定要求行為の反復は宿泊拒否事由になりました。ただし「正当な理由なく拒めない」原則は維持されています。まず要求に応じられない旨を説明し、なお繰り返す場合に、客観的事実に基づき理由を説明して拒否します(記録が前提)。
Q16.電気・ガス・水道等を停止できますか?
供給義務があり、生命・身体への影響が大きいため、停止は極めて慎重に判断します。約款・業法・所管省庁の資料を確認し、弁護士相談を。
Q17.どの段階で弁護士へ相談すべきですか?
契約解除・出入禁止・仮処分・損害賠償・発信者情報開示を検討する段階、重大・継続・拡散事案では早期に相談します。
Q18.どの段階で110番すべきですか?
暴行・凶器・切迫した危害予告・器物損壊の進行・居座りと危険増大・進行中の待ち伏せ等、事件・事故が現に発生し、警察官の臨場が直ちに必要な緊急時です。承認を待たず通報します。
Q19.#9110とは何ですか?
警察相談専用電話です。緊急でない生活の安全に関する相談(反復する脅し・待ち伏せの不安・SNSの危害示唆等)に利用します。
Q20.警察へ相談するには犯罪名を特定する必要がありますか?
必要ありません。何が・いつ・どこで・どのような言動があったか、危険の進行、過去の経緯、証拠を事実として説明します。犯罪の成否は捜査機関が判断します。
Q21.被害届と告訴の違いは何ですか?
被害届は被害の事実を届け出るもの、告訴は処罰を求める意思を明確に示すものです。いずれも受理・捜査・立件・逮捕を保証するものではありません。なお、会社が従業員本人に代わって当然に告訴できるわけではありません。会社自身の業務・財産・信用が侵害された事案(会社が被害者)と、従業員個人が身体・名誉等の被害を受けた事案(原則として本人が告訴権者)を区別し、警察・弁護士へ相談してください。
Q22.不退去の場合はどうしますか?
退去を求めても居座り危険が高まる場合は、110番・警備要請・避難を検討します。犯罪の成否は現場で断定せず、警察に委ねます。
Q23.待ち伏せ・つきまといがある場合はどうしますか?
現に行われ危険があれば110番、緊急でなければ#9110・所轄署へ相談します。帰宅経路の安全確認・再接触防止を先行します。
Q24.SNSの低評価口コミを削除できますか?
低評価・批判的な口コミが直ちに違法とは限らず、削除できるとは限りません。権利侵害の明白性等が問題になります。まず証拠を保全し、必要に応じ弁護士に相談します。
Q25.虚偽投稿は削除できますか?
虚偽で権利侵害が認められる場合、削除申請や発信者情報開示・仮処分を検討できます。ただし認められるかは個別判断です。証拠保全を早期に行います。
Q26.従業員の実名・顔写真を投稿された場合はどうしますか?
証拠を保全し、危害の切迫性を確認(切迫時は警察相談を優先)、削除申請・弁護士相談・開示等を検討します。被害者保護を先行します。
Q27.自宅・家族情報を投稿された場合はどうしますか?
危険性が高いため、証拠保全のうえ警察相談を優先し、削除申請・開示・仮処分を検討します。帰宅経路の安全確認・再接触防止を実施します。
Q28.発信者情報開示とは何ですか?
匿名投稿者を特定するための手続です(情報流通プラットフォーム対処法)。権利侵害の明白性等が問題になり、ログ保存期間の制約があるため早期対応が重要です。弁護士相談が通常必要で、必ず認められるわけではありません。
Q29.仮処分とは何ですか?
投稿削除や接近・立入・連絡禁止等を暫定的に求める手続です(民事保全法)。被保全権利・保全の必要性・担保が問題になり、裁判所が必ず命令を出すとは限りません。
Q30.損害賠償を請求できますか?
違法な行為・故意過失・損害・因果関係・証拠が必要です。回収可能性・訴訟コスト・被害者本人の意向も検討します。認められるかは個別判断です。
Q31.警備費・対応人件費を請求できますか?
当然に全額請求できるわけではありません。損害・因果関係・相当性の立証が必要で、弁護士に相談して検討します。
Q32.取引先社員の暴言について相手企業へ懲戒を要求できますか?
必要以上の懲戒処分を要求するのは避けます。事実確認と再発防止の協力、担当者変更等の要請にとどめ、処分は相手企業の判断です。
Q33.相手企業が事実確認へ協力しない場合はどうしますか?
指針上、他の事業主には協力の努力義務があります。協力が得られない場合、都道府県労働局に相談することもできます(問20)。
Q34.合理的配慮を求める顧客を出入禁止にできますか?
障害等の属性のみを理由とする排除はできません。社会的障壁の除去を求めること自体はカスハラではありません。伝達方法の変更・代替手段・建設的対話を検討します。ただし暴力・具体的な脅迫は別途、安全確保の観点で対応します。
Q35.顧客情報を他店舗へ共有できますか?
安全確保に必要な範囲で、利用目的を特定し、共有範囲を限定して行います。無限定な全社共有は避け、個人情報保護法に沿って運用します。
Q36.グループ会社へ共有できますか?
第三者提供に当たり得るため、根拠・目的・範囲を慎重に検討します。弁護士確認を推奨します。
Q37.対応上注意を要する顧客情報を保存できますか?
従業員の安全確保や再接触防止のために必要な範囲で保存を検討できます。ただし、要件を形式的に定めれば自動的に適法になるわけではありません。取得方法、利用目的との関連性、情報の正確性、保存期間、アクセス権限、安全管理措置、第三者提供の有無等を個人情報保護法に沿って整理する必要があります。「ブラックリスト」という呼称は使いません。
Q38.警告文をメールだけで送れますか?
メールでも可能ですが、重大事案では受領の記録が残る方法(内容証明郵便等)が有効な場合があります。
Q39.内容証明郵便を使うべきですか?
送付の事実・内容を記録に残せるため、警告・解除通知等で有効な場合があります。使い方は弁護士に相談してください。
Q40.法的対応中も被害者に顧客対応を続けさせてよいですか?
法的判断が確定するまでの間も、被害者の安全と心身の状態を優先し、原則として同じ行為者への単独対応を継続させないでください。担当者交代、管理職による対応、窓口一本化、接触方法の限定等を検討します。本人が対応継続を希望する場合でも、安全性・必要性・支援体制を確認し、本人だけに判断や負担を委ねないことが重要です。
23.シリーズ全10話の案内
| 話数 | タイトル |
|---|---|
| 第1話 | カスハラ対策が全企業の義務に|2026年10月施行の改正法でやるべきこと全体像 |
| 第2話 | どこからがカスハラか|正当なクレームとの線引きを3要件で判断する |
| 第3話 | 指針が求める措置の中身|方針明確化・相談体制・事後対応をどう整えるか |
| 第4話 | カスハラ対応基本方針の作り方|社内外への表明文をひな形付きで解説 |
| 第5話 | 就業規則・社内規程はどこを直すか|カスハラ義務化対応の改定ポイント |
| 第6話 | カスハラ相談窓口をどう作るか|既存のハラスメント窓口と一本化する方法 |
| 第7話 | 現場が迷わないカスハラ対応マニュアルの作り方|初動・エスカレーション・記録 |
| 第8話 | それでも止まらない相手への法的対応|取引拒絶・出入禁止・警察対応の実務(本記事) |
| 第9話 | 同時施行の求職者等セクハラ対策も忘れずに|関連する法改正・条例への対応 |
| 第10話 | 2026年10月までにやることリスト|カスハラ義務化対応の工程表と総まとめ |
24.事案整理・警告文・被害者保護を効率化する
警告文のたたき台が作れない、事実と評価を分けて整理できない、弁護士へ渡す事案整理が不十分、証拠一覧が作れていない、警察相談前に何を整理すべきか分からない、出入禁止・取引停止の判断材料が不足する、BtoB協力要請文が作れない、被害者保護が法的検討の後回しになる——こうした悩みの下ごしらえに、実務テンプレートを活用できます。
カスハラ対応プロンプト集|顧客対応記録・従業員保護・上長報告・エスカレーションの実務テンプレート
対応記録・事案整理・警告文・エスカレーション・被害者保護の下書きを、自社の状況に合わせて素早く整えるためのプロンプト集です。
法改正対応セット|自社影響確認・社内周知・規程改定・対応ToDo整理の実務プロンプト集
法改正への自社影響確認から、社内周知・規程改定・ToDo整理までを支援するプロンプト集です。
カスハラを含むハラスメント対策の実務ツール・プロンプトをまとめたハラスメント商品ハブもあわせてご確認ください。
ご利用にあたっての注意/AIがカスハラ該当性・犯罪成立を最終判定するものではありません。出入禁止・契約解除・警察対応・仮処分等の適法性を保証するものではありません。自社の契約・約款・業法・施設の性質・証拠に合わせた調整が必要です。重大事案は、弁護士・警察等への相談を検討してください。AIの出力より、被害者の安全確保を優先してください。
25.参考資料
公式URLは執筆時点(2026年7月15日)で確認しています。最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf - 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」(改正法特設ページ。指針・省令・施行通達を掲載)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html - 厚生労働省「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第10章の規定等の運用について」(施行通達/令和8年4月24日付 雇均発0424第2号)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695607.pdf - 厚生労働省「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(令和8年4月24日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695619.pdf - 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html - 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(2022年版。2026年指針・通達・Q&Aと異なる場合は最新資料を優先)
- 厚生労働省「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」(令和元年12月25日付 医政発1225第4号)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf - 厚生労働省「令和5年12月13日から旅館業法が変わります!」(改正旅館業法・特定要求行為)
https://www.mhlw.go.jp/kaiseiryokangyohou/ - 政府広報オンライン「警察に対する相談は警察相談専用電話「#9110」番へ」(110番=緊急の事件・事故/#9110=緊急でない相談)
https://www.gov-online.go.jp/article/201309/entry-7508.html - 警視庁「110番」「警察相談ダイヤル#9110」(各道府県警察の案内も同様)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/jiken_jiko/110/110_9110.html - 個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/faq/APPI_QA/ - 総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai.html - 法務省「インターネット人権相談受付窓口」
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken113.html - e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 - e-Gov法令検索:民法
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - e-Gov法令検索:刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045 - e-Gov法令検索:民事保全法
https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000091 - e-Gov法令検索:個人情報の保護に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057 - e-Gov法令検索:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000065 - e-Gov法令検索:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(情報流通プラットフォーム対処法)
https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000137 - e-Gov法令検索(労働者派遣法/旅館業法/医師法/航空法 ほか)
https://laws.e-gov.go.jp/
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。出入禁止・契約解除・警察対応・仮処分・損害賠償・発信者情報開示等の可否は、自社の契約・約款・業法・施設の性質・証拠を踏まえた個別判断であり、必ず弁護士・警察・所管省庁等にご相談ください。犯罪の成否は捜査機関・裁判所が判断します。法令・制度基準日:2026年7月15日/施行日:2026年10月1日。
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