カスハラ対応基本方針の作り方|社内外への表明文をひな形付きで解説
2026年施行・カスハラ義務化対応シリーズ
第4話 / 全10話
カスハラ対応基本方針の作り方|社内外への表明文をひな形付きで解説
この記事でわかること
方針の記載事項、社内向け方針・トップメッセージ・社内通知・顧客向け掲載文(標準/簡潔/BtoB)のひな形、公表時の表現上の注意
カスタマーハラスメント(カスハラ)対応の最初の成果物が、基本方針です。厚生労働省の指針は、事業主に対し、方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することを義務づけています。
ここで多くの企業がつまずきます。「カスハラは許しません」と一文だけ掲げた紙を作り、社内掲示板に貼って終わり——これでは、現場で怒鳴られている従業員は何一つ守られません。方針は、現場が「これは会社が守ってくれる場面だ」と判断でき、管理職が動けるものでなければ機能しません。
もう一つ、最初に押さえていただきたい点があります。指針が義務として求める方針の中核は、意外なほど具体的に決まっています。「カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨」——これが指針4⑴イの文言です。「カスハラを行ってはならない」という宣言を書くこと自体は差し支えありませんが、それだけでは、この中核を明確にしたことにはなりません。この点を理解しないまま作った方針は、指針が求める要件を満たさない可能性があります。
本記事では、指針の正確な要求内容を確認したうえで、社内向け方針、経営トップメッセージ、社内通知文、顧客向けWebサイト掲載文(標準版・簡潔版・BtoB版)のひな形を提示します。措置全体の中での位置付けは第3話を参照してください。
本記事の法令・制度基準日:2026年7月14日/施行日:2026年10月1日
指針・通達・行政資料は今後変更され得ます。実際の対応にあたっては厚生労働省および都道府県労働局の最新情報をご確認ください。
読んだだけで終わると、次の案件でまたゼロから考えることになります。
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最初に結論:よい基本方針に必要な8項目
- カスハラには毅然とした態度で対応する旨(指針が求める中核)
- カスハラを受けた労働者を保護する旨(指針が求める中核)
- 正当な申入れとカスハラは区別する旨(顧客対応を捨てない)
- 労働者に一人で抱え込ませない旨(現場が動ける基準)
- 相談・報告を推奨する旨(相談窓口の存在と経路)
- 相談等を理由とする不利益取扱いをしない旨(措置10と連動)
- 悪質な事案には組織として対応する旨(措置8と連動)
- 企業側の問題は別途是正する旨(原因・背景の解消)
これらすべてを1つの文書に書く必要はありません。基本方針、対処内容、相談窓口規程、現場マニュアルなど、関連文書の全体としてカバーされていれば足ります。
方針は「顧客を規律する文書」ではありません。指針が求めているのは、事業主が自社の労働者を守るという立場の表明です。顧客に対して「こういう行為をするな」と命じる文書ではない、という構造を最初に理解してください。ここを取り違えると、顧客向けの掲示文が高圧的になり、かえって紛争を招きます。
カスハラ対応基本方針はなぜ必要か
指針が求める方針の「正確な文言」
根拠は、改正後の労働施策総合推進法(改正法=令和7年法律第63号/2025年6月11日公布)第33条第1項と、これに基づくカスハラ防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号/2026年2月26日告示)です。指針4⑴イは、次のように定めています。
指針4⑴イの要点(本記事による要約)
職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
また、当該方針を顧客等に周知・啓発することも、被害の防止に当たっては効果的と考えられる。
ここから読み取るべき点は3つです。
- 方針の中核は「毅然対応」と「労働者保護」の2つ。指針が義務として求めているのは、この2点を明確にすることです。「カスハラを行ってはならない旨の方針」を明確化することを求めているパワハラ防止指針とは、構造が異なります。
- 周知の対象は「管理監督者を含む労働者」。顧客等への周知は義務ではなく、「効果的と考えられる」という位置付けです。厚生労働省のQ&Aも、方針を顧客等に周知することまでは義務付けていないと明言しています。
- 「顧客対応がない部署」も周知の対象。Q&Aは、顧客対応が発生しない部署の労働者にも方針の周知や研修が必要であり、対処の内容についても社外の人と接する機会の有無を問わず全ての労働者に周知する必要があるとしています。
なぜパワハラと構造が違うのか
パワハラの行為者は自社の労働者です。だから事業主は「行ってはならない」と規律できます。しかしカスハラの行為者は顧客等であり、事業主の指揮命令が及びません。そこで指針は、事業主に対して「顧客を規律せよ」ではなく「毅然と対応し、労働者を守れ」と求めているのです。
この構造は、厚生労働省のQ&Aが示す次の点とも整合します。改正法は事業主に雇用管理上必要な措置を講ずることを義務付けるものであり、事業主が何らかの措置を行う法的な権利や権限を新たに設けるものではありません。「カスハラを行ってはならない」と方針に書いても、それ自体で顧客を拘束する法的効果が生まれるわけではない、ということです。
では「行ってはならない旨」はどこに出てくるのか
指針の中で「カスハラを行ってはならない旨の方針」という表現が登場するのは、望ましい取組の文脈です。
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| 根拠 | 内容 | 位置付け |
|---|---|---|
| 指針6⑷ | 方針の明確化等を行う際に、自社の労働者が他社の労働者に対してカスハラを行ってはならない旨の方針を併せて示すこと | 望ましい取組 |
| 指針7 | 方針の明確化等を行う際に、自社が雇用する労働者以外の者(他社の労働者、個人事業主等のフリーランス等)に対する顧客等の言動についても、同様の方針を併せて示すこと | 望ましい取組 |
| 法第4条第4項 | 一般に、職場におけるハラスメントを行ってはならない旨を法文上明らかにし、国が啓発活動を行うことを規定(施行通達) | 国の責務に関する規定 |
| 法第34条 | カスハラ問題に関する国、事業主、労働者および顧客等の責務を、主体ごとに規定(施行通達) | 責務規定。各項の文言に応じて、理解促進、研修その他の配慮等に努めることが求められる |
つまり、「自社の従業員が取引先の従業員にカスハラをしない」という宣言は望ましい取組として方針に盛り込むべきものであり、指針が義務として求める中核(毅然対応・労働者保護)とは別物です。「カスハラを行ってはならない」と記載すること自体は差し支えありません。問題なのは、その文言だけを書いて、毅然対応と労働者保護を書かないことです。義務の中核となる2点を明記したうえで、加害防止の方針を併記する構成にしてください。
方針がある場合/ない場合
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| 場面 | 方針がない場合 | 方針がある場合 | 必要な補完文書 |
|---|---|---|---|
| 現場の判断 | 「どこまで我慢すべきか」を担当者が個人で判断する | 「会社が守る」という前提で、報告・交代・打切りを判断できる | 現場対応マニュアル |
| 管理職の対応 | 介入すると「客を怒らせた」と責められかねず、動きにくい | 方針と現場マニュアル、権限規程等に基づき、担当者交代や、必要に応じた退店要請等を組織的に検討・実施できる | 現場対応マニュアル、権限規程、施設利用規則 |
| 相談・報告 | 「大げさだと思われる」と抱え込む | 相談してよい行為であると認識できる | 相談窓口規程 |
| 対応の一貫性 | 店舗・担当者ごとにばらつき、二次トラブルになる | 組織として同じ基準で対応できる | 対応記録様式、エスカレーション基準 |
| 法令対応 | 指針4⑴イが求める方針の明確化・周知が行われていない | 必要な内容が文書等で明確化され、労働者へ周知・啓発されている | 周知記録、研修記録 |
| 顧客対応 | 正当な苦情も「カスハラ」と処理されかねない | 正当な申入れとの区別が明示され、顧客対応の質を保てる | 顧客対応マニュアル |
基本方針に盛り込むべき事項
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| 項目 | 記載する趣旨 | 社内向けの記載例(要旨) | 社外向けへの記載 | 関連文書 |
|---|---|---|---|---|
| 1.毅然とした対応 | 指針が求める中核。会社としてカスハラに毅然と対応する立場を示す | 当社は、カスタマーハラスメントに対して毅然とした態度で対応します | 記載する | — |
| 2.労働者の保護 | 指針が求める中核。従業員を守ることを明言する | 当社は、カスタマーハラスメントを受けた従業員を保護します | 記載する | — |
| 3.カスハラの定義 | 3要素を示し、現場の恣意的判断を防ぐ | 指針の3要素(顧客等の言動/社会通念上許容される範囲を超える/就業環境が害される)を記載 | 簡潔に記載(詳細は不要) | 第2話 |
| 4.正当な申入れとの区別 | 顧客対応を捨てないための歯止め | 社会通念上許容される範囲の苦情・ご意見は正当な申入れであり、カスハラには当たりません | 強く推奨。正当な苦情を排除する方針でないことを明確にする | 第2話 |
| 5.該当し得る行為の例 | 現場の判断材料。限定列挙ではない旨も添える | 身体的な攻撃、精神的な攻撃、威圧的な言動、継続的・執拗な言動、拘束的な言動、不当な要求 等 | 記載する(簡潔に) | 第2話 |
| 6.一人で抱え込ませない | 現場が動ける基準 | 従業員に対応を一人で抱え込ませず、必要に応じて管理監督者が対応を引き継ぎます | 記載してもよい | 第7話 |
| 7.相談・報告の推奨 | 相談窓口の存在と経路の周知 | 該当するか判断が難しい場合、発生のおそれがある場合も相談してください | 不要 | 第6話 |
| 8.不利益取扱いの禁止 | 措置10と連動。相談等を理由に不利益な取扱いをしない旨 | 相談したこと、事実確認に協力したこと等を理由に不利益な取扱いをしません | 不要 | 第5話 |
| 9.悪質事案への対応 | 措置8と連動。組織として対応する旨 | 特に悪質と考えられる場合、法令・契約等に照らし、対応の中止、警告、警察・弁護士への相談等の措置を講じます | 記載する(抑止効果) | 第8話 |
| 10.企業側の問題の是正 | 原因・背景(商品・サービス・接客・説明不足)の改善 | 当社側に原因がある場合は、カスハラ対応とは別に、真摯に改善します | 記載を推奨(誠実さが伝わる) | — |
| 11.合理的配慮への留意 | 障害者差別解消法上の問題を防ぐ | 障害のある方からの社会的障壁の除去の申出は、カスハラには当たりません | 記載を推奨 | 第2話 |
| 12.他社労働者への配慮 | 望ましい取組(指針6⑷・7)。自社が加害側にならない | 当社の従業員は、他社の労働者やフリーランスの方等に対して、就業環境等を害する言動を行いません | 記載を推奨 | — |
| 13.方針の周知 | 適用範囲と周知方法 | 本方針は、管理監督者を含む当社が雇用する全労働者、および当社で就業する派遣労働者に適用します | 不要 | — |
| 14.制定日・改定履歴 | 文書管理 | 制定日、改定日、所管部署 | 制定日のみ | — |
項目1・2が義務の中核、項目12が望ましい取組、その他は実効性を高めるための構成要素です。なお、正当な申入れとの区別を基本方針本文に記載すること自体が独立した法定要件ではありません。ただし、カスハラの内容を労働者へ周知する措置(措置②)との整合を図り、正当な苦情まで排除する運用を防ぐため、社内向け・社外向けの双方で明記することを強く推奨します。この区別を社内資料に明記しておくと、上申時の説明が通りやすくなります。
基本方針と他の文書をどう使い分けるか
「方針」「トップメッセージ」「マニュアル」「規程」を1つの文書に押し込むのが、最もありがちな失敗です。目的も読み手も違います。
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| 文書 | 目的 | 主な対象者 | 記載内容 | 公開範囲 |
|---|---|---|---|---|
| 基本方針 | 会社の立場の表明 | 管理監督者を含む全労働者 | 毅然対応、労働者保護、定義、正当な申入れとの区別、不利益取扱いの禁止 | 社内(+任意で社外) |
| トップメッセージ | 経営の本気度を伝える | 全労働者 | 背景、経営としての決意、現場への約束、行動の呼びかけ | 社内(+任意で社外) |
| 社内通知文 | 施行と運用開始を伝える | 全労働者 | 施行日、方針の要点、相談窓口、報告手順、研修案内 | 社内 |
| 対応マニュアル | 現場の行動基準 | 顧客接点のある部署、管理職 | 初動、エスカレーション、録音、対応終了の基準、記録様式 | 原則として社内管理。社外公表は必要な概要に限定 |
| 就業規則・社内規程 | 労働契約上のルール | 全労働者 | 不利益取扱いの禁止、相談窓口、懲戒(自社労働者が加害者の場合) | 社内 |
| 顧客向け掲載文 | 顧客への理解と協力の要請 | 顧客、取引先 | 方針、該当し得る行為の例、対応方針、正当な申入れは歓迎する旨 | 社外公開 |
| 取引先向け通知 | BtoBでの協力要請 | 取引先 | 相互尊重、協力要請への対応、自社も加害側にならない旨 | 取引先へ送付 |
現場対応マニュアルは、原則として社内運用文書として管理してください。法令上、社外公開が一律に禁止されているわけではありませんが、対応時間・警告回数・緊急連絡先・警備体制等の詳細な内部基準を公開すると、その基準の直前まで行為を続けられる、基準の妥当性を争点にされる、安全管理上の支障が生じる、といったおそれがあります。社外には基本方針や対応の概略を示し、詳細な運用基準は必要な範囲に限って社内で管理するのが通常です。
基本方針の作成手順(10ステップ)
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| ステップ | 作業 | 担当部署 | 成果物 | 確認事項 |
|---|---|---|---|---|
| 1.現状把握 | 顧客接点の棚卸し、過去のトラブル事案の収集、現場ヒアリング | 人事・法務・現業 | 顧客接点一覧、過去事案の整理表 | 自社で実際に起きている類型を把握できたか |
| 2.適用法令・業法・約款の確認 | 指針4⑴イの文言、望ましい取組(6⑷・7)、自社に適用される業法・約款・利用規約を確認 | 法務 | 要件整理メモ、適用法令リスト | 義務と望ましい取組を区別できているか。業法上のサービス提供義務等を把握したか |
| 3.記載事項の決定 | 本記事の14項目から自社に必要な項目を選定 | 人事・法務 | 記載事項リスト | 項目1・2(毅然対応・労働者保護)が入っているか |
| 4.社内向け方針の起案 | ひな形をベースに自社の業種・実態へ調整 | 人事・法務 | 基本方針(案) | 正当な申入れとの区別が明記されているか |
| 5.関係部署レビュー | 現業部門、CS部門、労務、広報が確認。必要に応じて労働者・労働組合等の意見も聴く | 関係各部 | コメント一覧 | 現場が「これで動ける」と言えるか |
| 6.経営承認 | 経営会議等での決議 | 経営 | 決議記録 | 経営の関与が記録に残っているか |
| 7.トップメッセージ作成 | 方針を経営の言葉で表現する | 経営企画・広報 | トップメッセージ | 指針の認められる例に該当する形式か |
| 8.社外向け文の作成 | Webサイト掲載文、店頭掲示文を作成 | 広報・法務・CS | 社外向け掲載文 | 高圧的・威嚇的な表現になっていないか |
| 9.周知・研修 | 全労働者(顧客対応のない部署を含む)へ周知。対処内容と併せて研修を実施 | 人事・現業 | 周知記録、研修記録 | 管理監督者を含む全員に届いたか |
| 10.運用と見直し | 相談実績・現場の声を踏まえて改訂 | 人事・法務 | 改訂履歴 | 見直しの頻度と責任者が決まっているか |
ステップ5の労働者・労働組合等からの意見聴取は、基本方針の策定そのものについて全企業に一律に義務づけられているわけではありません。ただし指針6⑵は、措置の運用状況の把握や見直しにあたり、労働者や労働組合等の参画を得つつアンケート調査や意見交換等を実施することを望ましい取組としています。現場の実情を方針へ反映するうえでも有効です。研修・講習等の実施方法について、施行通達は、定期的に実施する、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、部門に分けて実施する、対象となる労働者の経験年数や顧客対応の頻度に応じて実施方法を工夫するといった方法が効果的としています。一斉配信で終わらせないでください。
ひな形1|社内向け基本方針(全文)
【ひな形|社内向け・カスタマーハラスメント対応基本方針】
※【 】は自社の実情に合わせて必ず調整してください。
カスタマーハラスメント対応基本方針
1.基本的な考え方
【株式会社◯◯】(以下「当社」)は、お客様、お取引先その他当社の事業に関係を有する方々(以下「お客様等」)からの貴重なご意見・ご要望を、商品・サービスの改善に不可欠なものとして真摯に受け止めます。
一方で、その中に、社会通念上許容される範囲を超えた言動が含まれ、従業員の就業環境が害される場合があります。当社は、このような言動をカスタマーハラスメントと位置づけ、毅然とした態度で対応するとともに、これを受けた従業員を保護します。
2.カスタマーハラスメントの定義
当社は、次の3つの要素をすべて満たすものを、カスタマーハラスメントとします。
① 職場において行われるお客様等の言動であること
② 従業員が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものであること
③ その言動により、従業員の就業環境が害されること
「職場」には、店舗・事務所のほか、お客様等の自宅、取引先の事務所、出張先が含まれ、対面のものだけでなく、電話、メール、SNS等を通じて行われるものも含まれます。
3.正当なお申入れとの区別
お客様等からのご意見・ご要望のすべてがカスタマーハラスメントに当たるわけではありません。客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われたものは、正当なお申入れであり、カスタマーハラスメントには該当しません。当社は、正当なお申入れには誠実に対応します。
また、障害のある方から、不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、カスタマーハラスメントには当たりません。当社は、障害者差別解消法その他の関係法令に基づき、建設的な対話を通じて、過重な負担とならない範囲で必要かつ合理的な配慮を提供します。
4.カスタマーハラスメントに該当し得る行為
・身体的な攻撃(暴行、傷害、物を投げつける等)
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要、人格を否定する言動、性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動、盗撮、撮影をやめるよう求めた後も継続するなどの不相当な撮影等)
・威圧的な言動(大声で威圧する、反社会的な言動を行う等)
・継続的、執拗な言動(同様の質問の執拗な繰り返し、執拗な責め立て、同様のメールの執拗な送付等)
・拘束的な言動(不退去、居座り、長時間の電話による拘束等)
・要求内容が不当なもの(理由のない要求、契約を著しく超える要求、対応が著しく困難または不可能な要求、不当な損害賠償要求等)
・その他、社会通念上許容される範囲を超えると認められる言動
※上記は例示であり、これらに限られません。また、これらに形式的に当てはまるからといって、直ちにカスタマーハラスメントと判断されるものでもありません。
5.当社の対応
・従業員に対応を一人で抱え込ませません。必要に応じて、管理監督者等が対応を引き継ぎ、複数名対応、本部への連絡、対応の終了その他の必要な支援を行います。
・状況に応じて、記録の作成、録音・録画(個人情報保護関連法令を遵守します)、対応の中止、退店のお願い、通話の終了を行います。
・特に悪質と考えられる場合には、法令および契約等に照らし、警告、【法令の制限内における商品の販売・サービスの提供の停止】、【施設への出入りのお断り】、警察への通報、弁護士への相談その他の必要な措置を、組織として講じます。
・当社側の説明不足や対応の誤りが原因・背景となっている場合には、カスタマーハラスメントへの対応とは別に、原因を確認し、真摯に改善します。
6.相談・報告について
・カスタマーハラスメントを受けた、または受けるおそれがあると感じた場合は、【相談窓口:◯◯部/内線◯◯/メール◯◯】または直属の管理監督者に相談してください。
・カスタマーハラスメントに該当するか判断が難しい場合、発生のおそれがある段階の場合も、相談の対象です。
・言動を直接受けた従業員だけでなく、それを見聞きした周囲の従業員からの相談も受け付けます。
7.不利益取扱いの禁止
当社は、従業員が、①カスタマーハラスメントに関し相談をしたこと、②事実関係の確認等の当社の措置に協力したこと、③都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求めもしくは調停の申請を行ったこと、④調停の出頭の求めに応じたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いを行いません。
8.他社の労働者等への配慮
当社の従業員は、他社が雇用する労働者、個人事業主・フリーランスその他当社の事業に関係する方に対し、社会通念上許容される範囲を超え、その就業環境等を害する言動を行いません。また、当社の職場において、当社が雇用する従業員以外の方がお客様等から同様の言動を受けた場合にも、必要に応じて適切に対応するよう努めます。
9.適用範囲
本方針は、管理監督者を含む当社が雇用するすべての労働者(正社員、パートタイム労働者、契約社員等)、および当社で就業する派遣労働者に適用します。
10.周知および見直し
本方針は、社内ホームページ、社内報および研修を通じて周知します。運用状況を踏まえ、必要に応じて見直します。
制定日:【2026年◯月◯日】/所管:【人事部】
自社用に必ず調整する項目
- 「5.当社の対応」の悪質事案への対処。業法によりサービス提供の義務等が定められている場合や、サービスが途絶すると顧客等の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合があります(施行通達は例として医師法第19条第1項等を挙げています)。自社の業種に適用される業法を確認してから記載してください。
- 「4.該当し得る行為」の具体例。自社で実際に起きている類型(時間拘束型、リピート型、SNS投稿型等)を追加してください。
- 相談窓口の連絡先。実在する窓口・担当者・連絡方法を記載してください。「関係部署にご相談ください」は周知として不十分です。
- 派遣労働者の扱い。派遣労働者は通常、派遣先である自社の従業員ではありません。労働者派遣法第47条の4により、派遣先が派遣労働者を雇用する事業主とみなされ、措置義務を負う、という法的構造です。適用範囲の記載でこの点を正確にしてください。
ひな形3|社内通知文
【ひな形|社内通知文】
【全従業員各位】
カスタマーハラスメント対応基本方針の運用開始について
標記について、下記のとおり運用を開始しますので、内容をご確認ください。
本方針は、顧客対応の有無を問わず、管理監督者を含む当社が雇用するすべての労働者、および当社で就業する派遣労働者を対象とします。
記
1.運用開始日 【2026年10月1日】
2.背景
改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)およびこれに基づく厚生労働省指針(令和8年厚生労働省告示第51号)により、【2026年10月1日】から、カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が事業主の義務となります。
3.方針の要点
① 当社は、カスタマーハラスメントに毅然とした態度で対応し、従業員を保護します。
② 正当なお申入れは、カスタマーハラスメントではありません。誠実に対応してください。
③ 従業員に対応を一人で抱え込ませません。その場で管理監督者に報告してください。
④ 相談したこと等を理由に、不利益な取扱いを行いません。
4.発生時の対応
(1)身の危険を感じる場合は、判断を待たずにその場を離れ、管理監督者・警備・警察へ連絡してください。
(2)その場で管理監督者に報告し、指示を仰いでください。
(3)対応記録票【様式◯◯】に、日時・発言内容・回数・継続時間を記録してください。
(4)判断に迷う場合、発生のおそれがある段階でも、相談してください。
5.相談窓口
【◯◯部 カスタマーハラスメント相談窓口】
内線:【◯◯】/メール:【◯◯@◯◯.co.jp】/受付時間:【平日9:00〜18:00】
時間外・緊急時:【本部当番 ◯◯-◯◯◯◯-◯◯◯◯】
6.研修
【2026年◯月】に、全従業員向け研修を実施します(対象・日程は別途案内)。
7.関連文書
・カスタマーハラスメント対応基本方針
・カスタマーハラスメント対応マニュアル【社内限定】
・対応記録票【様式◯◯】
以上
【2026年◯月◯日】/【人事部】
ひな形4|顧客向けWebサイト掲載文(標準版)
顧客等への周知は義務ではありません。厚生労働省のQ&Aは、方針を顧客等に周知することまでは義務付けていないと明言しています。一方、指針は顧客等への周知・啓発を被害の防止に当たっては効果的としています。顧客接点の多い業種では、実施を推奨します。
【ひな形|顧客向けWebサイト掲載文(標準版・約900字)】
カスタマーハラスメントに対する当社の方針
いつも【株式会社◯◯】をご利用いただき、誠にありがとうございます。
お客様からいただくご意見・ご要望は、当社の商品・サービスを改善するうえで欠かせないものです。当社は、これらを真摯に受け止め、誠実に対応してまいります。
一方で、一部のお客様による、社会通念上許容される範囲を超えた言動により、従業員が心身に苦痛を受け、通常の業務に支障が生じる事例が発生しています。
従業員が安心して働ける環境を守ることは、お客様に安定したサービスをお届けするための前提でもあります。当社は、カスタマーハラスメントに対して毅然とした態度で対応し、従業員を保護する方針を定めました。お客様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
■ カスタマーハラスメントに該当し得る行為
次のような言動により、従業員の就業環境が害される場合、カスタマーハラスメントに該当することがあります。
・暴行、傷害、物を投げつけるなどの行為
・脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要、人格を否定する言動
・大声での威圧、反社会的な言動
・同様のご質問の執拗な繰り返し、執拗な責め立て、同様のメール等の執拗な送付
・不退去、居座り、長時間にわたるお電話でのご対応の要求
・理由のないご要求、契約内容を著しく超えるご要求、対応が著しく困難または不可能なご要求、不当な損害賠償のご要求
・従業員個人への私的な接触の要求、撮影をおやめいただくようお願いした後も継続される撮影、SNS等への従業員のプライバシーに関わる情報の投稿
※上記は例示です。個別の状況により判断が異なる場合があります。
■ 正当なお申入れについて
お客様からのご意見・ご要望のすべてが、カスタマーハラスメントに当たるわけではありません。社会通念上許容される範囲で行われるお申入れは、正当なものであり、当社はこれを歓迎します。厳しいご指摘も含め、真摯に承ります。
また、障害のあるお客様からの合理的配慮に関するお申出自体は、カスタマーハラスメントには当たりません。当社は、関係法令に基づき、建設的な対話を通じて必要かつ合理的な配慮を行います。
当社側の説明不足や対応の誤りがあった場合には、その点について真摯に確認し、改善いたします。
■ 当社の対応
事実関係および個別の状況を確認した結果、カスタマーハラスメントに該当すると判断した場合には、当社は、法令、契約、利用規約等に照らし、必要かつ相当な範囲で次の対応を行うことがあります。
・従業員に代わって、管理者が対応いたします
・記録のため、通話の録音または映像の記録を行う場合があります
・ご対応を中止し、ご退店をお願いする、またはお電話を終了させていただく場合があります
・特に悪質と判断した場合、警告、【法令の範囲内でのサービス提供のお断り】、警察・弁護士への相談その他の必要な措置を講じる場合があります
■ お問い合わせ・ご相談の窓口
商品・サービスに関するお問い合わせ、ご要望は、通常の窓口【お客様相談室:◯◯/受付時間◯◯】にて承ります。
お客様に安心してご利用いただける環境と、従業員が安心して働ける環境の両立に努めてまいります。ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
【2026年◯月◯日】/【株式会社◯◯】
この掲載文だけで、録音・録画に関する個人情報保護法上の対応が完了するわけではありません。実際に録音・録画を行う企業は、取得・利用目的、通知・公表の方法、保存期間、閲覧権限、第三者提供の可否等を別途整理してください(第7話)。
ひな形5|顧客向け掲載文(簡潔版)
店頭ポスター、レジ横掲示、Webサイトのフッター等に使います。
【ひな形|簡潔版・約320字】
カスタマーハラスメントに対する当社の方針
お客様からのご意見・ご要望は、当社の大切な財産です。厳しいご指摘も含め、真摯に承ります。
一方で、暴言、威圧的な言動、長時間の拘束、不当なご要求など、社会通念上許容される範囲を超えた言動により従業員の就業環境が害される場合、当社は毅然とした態度で対応し、従業員を保護します。
該当すると判断した場合には、法令・契約等に照らし、管理者による対応への交代、記録の作成、ご対応の中止をお願いすることがあります。特に悪質な場合は、警察・弁護士への相談等の措置を講じることがあります。
お問い合わせは、通常の窓口【◯◯】にて承ります。従業員が安心して働ける環境の維持に、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
【株式会社◯◯】
ひな形6|取引先向け(BtoB版)
指針上の「顧客等」には、取引の相手方、取引先の担当者、企業間での契約締結に向けた交渉を行う際の担当者が明示的に含まれます。BtoB専業の企業も対象です。あわせて、自社の従業員が加害側にならない旨を示すことが、指針6⑷の望ましい取組にあたります。
【ひな形|取引先向け通知文(約700字)】
お取引先各位
ハラスメントのない取引関係の構築に関するお願い
平素より格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
2026年10月1日より、改正労働施策総合推進法に基づき、カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が、すべての事業主の義務となります。ここでいう「顧客等」には、取引の相手方や取引先のご担当者も含まれます。
これを機に、当社は、貴社との取引関係を、相互の尊重に基づく健全なものとしてさらに発展させたいと考えております。
1.当社の方針
当社は、当社の従業員が、社会通念上許容される範囲を超えた言動により就業環境を害されることのないよう、毅然とした態度で対応し、従業員を保護します。
2.当社の従業員による言動について
同時に、当社は、当社の従業員が、貴社の従業員の皆様に対してカスタマーハラスメントに当たる言動を行わないよう、周知・研修を行います。万一、当社の従業員による不適切な言動がございましたら、下記窓口までご連絡ください。事実関係を確認し、適切に対処いたします。
3.事実確認への協力について
改正労働施策総合推進法第33条第3項により、事業主は、他の事業主から事実関係の確認等の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合、これに応じるよう努めることとされています。当社は、貴社からの協力のお求めに誠実に対応いたします。貴社におかれましても、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
4.正当なご要望について
本件は、貴社からの正当なご要望やご指摘を制限するものでは一切ございません。品質、納期、価格に関するご指摘は、当社が向き合うべき事項です。引き続き、忌憚のないご意見を賜りますようお願い申し上げます。
【連絡窓口】【◯◯部 ◯◯/TEL:◯◯/メール:◯◯】
【2026年◯月◯日】/【株式会社◯◯】
BtoB版で最も重要なのは、「4.正当なご要望について」です。この一文がないと、取引先には「クレームを封じる通知」と受け取られ、取引関係を損ないます。
業種別に調整すべきポイント
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| 業種 | 主な顧客接点 | 方針で強調する点 | 避けるべき一律表現 | 確認すべき法令・契約 |
|---|---|---|---|---|
| 小売・飲食 | 店頭、電話、SNS | 退店のお願い、警察通報、防犯カメラの設置と撮影の明示 | 「一切のクレームお断り」 | 個人情報保護法(「防犯カメラ作動中」の掲示等が遵守例として通達に例示。顔識別機能付きの場合はその旨も明示) |
| 医療 | 診察、窓口、電話 | 患者・家族が「顧客等」に含まれること、安全確保の優先 | 「サービス提供を停止します」(無限定) | 医師法第19条第1項(応招義務) |
| 介護・福祉 | 訪問、施設、電話 | 利用者・家族への対応、訪問時の複数対応、記録 | 「対応を打ち切ります」(無限定) | 各福祉関係法令、契約、合理的配慮 |
| 宿泊・交通 | 受付、車内・機内、電話 | 安全阻害行為への対応、退去・搭乗拒否等の判断 | 「当社判断で利用禁止」 | 旅館業法に基づく宿泊拒否事由、航空法に基づく安全阻害行為等の禁止(通達が例示) |
| 金融・保険 | 窓口、電話、書面 | 通話録音の実施、対応時間の管理、記録の保存 | 「◯分で打ち切ります」(社外文書) | 個人情報保護法(録音の利用目的の特定・通知/公表)、各業法 |
| コールセンター | 電話、チャット | 通話終了の基準、オペレーターの交代、記録 | 通話終了の具体的な分数(社外に書かない) | 個人情報保護法 |
| 不動産・建設 | 店頭、現地、電話 | 施設の近隣住民も「顧客等」に含まれることの明記 | 「要求には応じません」(無限定) | 契約、宅建業法等、合理的配慮 |
| BtoB営業・受託事業 | 商談、電話、メール | 取引先も「顧客等」に含まれること、協力要請への対応、自社が加害側にならない旨 | 「取引を停止します」(無限定) | 契約、下請法等の取引関係法令 |
| 公共施設・行政受託 | 窓口、電話 | 安全確保、複数名対応、警察との連携 | 「利用をお断りします」(無限定) | 公共性・サービス提供義務、委託元との協議 |
業法の詳細な法的解説(応招義務、宿泊拒否事由、出入禁止・仮処分等)は、第8話で扱います。
基本方針で避けるべき表現
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| 避けるべき表現 | なぜ問題か | 修正例 |
|---|---|---|
| 「当社がカスハラと判断した場合、理由を問わずサービスを拒否します」 | 正当な申入れまで拒絶し得る。改正法は事業主に新たな権利を与える制度ではない(Q&A) | 「事実関係と状況を確認し、カスハラに該当すると判断した場合、法令・契約等に照らし必要かつ相当な範囲で対応します」 |
| 「従業員が不快に感じた言動はカスハラです」 | 3要素を満たさない場合まで該当と扱う。障害特性や言語・文化的背景を考慮できない | 「社会通念上許容される範囲を超えた言動により、従業員の就業環境が害される場合」 |
| 「クレームは一切受け付けません」 | 正当な申入れを排除し、商品・サービスの問題を発見する機会を失う | 「社会通念上許容される範囲で行われるお申入れには、誠実に対応します」 |
| 「無断撮影・録音はすべてカスハラです」 | Q&Aは、撮影をやめるよう求めた後も継続する場合等を想定。すべての撮影が直ちに該当するわけではない | 「撮影をおやめいただくようお願いした後も継続される撮影など、不相当な撮影」 |
| 「SNSへの投稿を示唆した場合は警察へ通報します」 | 意見表明と、要求を通す手段としての示唆を区別していない。威嚇的 | 「悪評の投稿をほのめかして要求を通そうとするなど、社会通念上許容される範囲を超えた言動」 |
| 「障害・高齢を理由とする繰り返しの説明要求には対応しません」 | 合理的配慮の不提供にあたり、障害者差別解消法上の問題を生じる | (削除。属性を判断材料にしない。合理的配慮として対応する) |
| 「当社の判断に異議を申し立てることはできません」 | 一方的で高圧的。紛争を招く | (削除) |
| 「悪質顧客の情報を社内外で共有します」 | 個人情報保護法上の問題。無限定なブラックリスト共有は不適切 | 「必要な範囲で、法令に従い、社内の関係部門で情報を共有します」 |
| 「出入禁止・契約解除等を必ず行います」 | 改正法は新たな権利を付与しない。実行できない宣言は信頼を損なう | 「特に悪質と判断した場合、法令・契約等に照らし、必要な措置を検討します」 |
| 「従業員を守るため、お客様より従業員を優先します」 | 顧客と従業員を対立させる構図。誤解を招く | 「お客様に安定したサービスをお届けするためにも、従業員が安心して働ける環境が必要です」 |
| 「毅然と対応します」だけ | 指針が求める「労働者を保護する旨」が欠落。要件を満たさない可能性がある | 「毅然とした態度で対応し、従業員を保護します」 |
| 「カスハラを行ってはならない」とだけ記載する | 指針4⑴イが求める中核は「毅然対応+労働者保護」。この表現だけでは中核を明確にしたことにならない | 中核(毅然対応+労働者保護)を明記したうえで、「他社の従業員等に対して行わない」旨を望ましい取組として併記する |
架空事例で確認する
以下はいずれも説明のために作成した架空の事例です。実在の事案・裁判例ではありません。
架空事例1:高圧的なWeb掲載文が炎上を招いた
状況:【架空の小売企業A社】は、施行に備えてWebサイトに次の文章を掲載した。
「当社従業員が不快と感じる言動はすべてカスタマーハラスメントと認定します。カスタマーハラスメントと認定したお客様については、理由を問わず、サービスの提供を中止し、全店舗への入店を永久に禁止します。当社の判断に異議を申し立てることはできません。」
問題点
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| 箇所 | 問題 |
|---|---|
| 「不快と感じる言動はすべて」 | 3要素を無視している。従業員の主観だけを基準にしており、社会通念上許容される範囲や就業環境への影響を考慮していない |
| 「すべてカスタマーハラスメントと認定」 | 正当な申入れ、合理的配慮の申出まで排除し得る。障害者差別解消法上の問題も生じる |
| 「理由を問わず、サービスの提供を中止」 | 改正法は事業主に新たな権利を与える制度ではない(Q&A)。業法上のサービス提供義務(応招義務等)も考慮していない |
| 「全店舗への入店を永久に禁止」 | 無期限・全店舗という措置は、法的根拠・契約上の根拠を欠いたまま宣言されており、過度に広い。実行すれば逆に紛争リスクを負う |
| 「異議を申し立てることはできません」 | 一方的・高圧的で、顧客との紛争や炎上を招く。企業姿勢として不適切 |
修正版:顧客向けWeb掲載文(全文)
カスタマーハラスメントに対する当社の方針
いつも当社をご利用いただき、誠にありがとうございます。お客様からのご意見・ご要望は、当社の商品・サービスを改善するうえで欠かせないものです。厳しいご指摘も含め、真摯に承ります。
一方で、社会通念上許容される範囲を超えた言動により、従業員の就業環境が害される場合があります。従業員が安心して働ける環境は、お客様に安定したサービスをお届けするための前提です。当社は、こうした言動に対して毅然とした態度で対応し、従業員を保護します。
次のような言動により従業員の就業環境が害される場合、カスタマーハラスメントに該当することがあります。暴行・傷害、脅迫、侮辱、暴言、人格を否定する言動、大声での威圧、不退去・居座り、長時間の拘束、理由のないご要求や不当な損害賠償のご要求などです(これらは例示であり、個別の状況により判断が異なります)。
お客様からのご意見・ご要望のすべてが、カスタマーハラスメントに当たるわけではありません。社会通念上許容される範囲で行われるお申入れは、正当なものであり、当社はこれを歓迎します。また、障害のあるお客様からの合理的配慮に関するお申出自体は、カスタマーハラスメントには当たりません。当社は、関係法令に基づき、建設的な対話を通じて必要かつ合理的な配慮を行います。当社側に説明不足や誤りがあった場合は、その点を真摯に確認し、改善いたします。
事実関係と状況を確認した結果、カスタマーハラスメントに該当すると判断した場合には、当社は、法令・契約・利用規約等に照らし、必要かつ相当な範囲で、管理者による対応、記録の作成、ご対応の中止、警察・弁護士への相談その他の措置を講じることがあります。
お問い合わせは、通常の窓口【◯◯】にて承ります。ご理解とご協力をお願い申し上げます。
修正版の要点。①3要素に基づき「就業環境が害される場合」に限定した。②正当な申入れ・合理的配慮を明示的に除外した。③対応は「法令・契約等に照らし、必要かつ相当な範囲で」と限定した。④「永久」「全店舗」「異議を認めない」といった過度な・高圧的な表現を削除した。
架空事例2:方針を掲げたが、現場が動けなかった
状況:【架空の小売企業B社】は、Webサイトに「当社は、カスタマーハラスメントを一切許しません。悪質な行為には毅然と対応し、法的措置を含む厳正な対処を行います」という一文を掲載し、店頭にも同じ内容を貼り、これをそのまま社内周知にも流用した。
何が起きたか:施行後、店頭で顧客から30分以上にわたり暴言を受けた従業員が、対応を続けてしまった。理由を聞くと、次のように答えた。
- 「『悪質』の基準が分からない。この程度で会社が動いてくれるか自信がなかった」
- 「誰に、どのタイミングで報告すればいいのか、どこにも書いていなかった」
- 「途中で対応をやめてよいとは、書いていなかった」
- 「相談したら『客を怒らせた』と評価されるのではないかと思った」
欠けていたもの:①「労働者を保護する」という明記(指針が求める中核の一方が欠落)、②正当な申入れとの区別、③報告・相談の経路、④不利益取扱いの禁止、⑤社内向けと社外向けの区別(社外向けの一文をそのまま社内周知に流用したため、現場の行動基準がどこにもなかった)。
修正版:社内向け周知文(抜粋)
当社は、カスタマーハラスメントに毅然とした態度で対応し、これを受けた従業員を保護します。皆さんに、一人で耐えることを求めません。
・暴言、威圧、長時間の拘束を受けたと感じたら、その場で管理監督者に報告してください。会社は、皆さんに対応を一人で抱え込ませません。
・身の危険を感じる場合は、判断を待たずにその場を離れ、管理監督者・警備・警察に連絡してください。
・十分に説明したうえでなお同じ要求が繰り返される場合、管理監督者の判断で、ご退店をお願いする、またはお電話を終了することがあります。これは会社の方針に沿った対応です。
・カスハラかどうか分からない段階でも相談してください。判断は会社が行います。判断は、皆さんの仕事ではありません。
・相談したこと、事実確認に協力したことを理由に、不利益な取扱いをすることは絶対にありません。
・なお、社会通念上許容される範囲のご意見は、正当なお申入れです。当社側に説明不足や誤りがあった場合は、その問題は会社の責任として、別に是正します。
修正版の要点。①「毅然対応」と「労働者保護」が両方明記されている。②現場が「その場で何をするか」を判断できる。③「判断は会社が行う」と明言し、現場から判断責任を外している。④正当な申入れとの区別を残し、顧客対応を捨てていない。
方針を社内へどう周知するか
方針は、作成したことではなく、周知されたことが要件です。指針4⑴イが求めるのは「明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること」です。すべての方法を実施する法的義務はありません。自社に合う方法を選んでください。
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| 周知方法 | 向いている目的 | 利点 | 注意点 | 記録方法 |
|---|---|---|---|---|
| 社内ホームページ・社内報 | 常時参照 | いつでも確認できる | 指針の「認められる例」に明記。掲載しただけでは読まれない | 掲載日、閲覧ログ |
| トップメッセージ | 経営の本気度の伝達 | 現場管理職が動きやすくなる | 指針の「認められる例」になお書きで明記 | 配信記録 |
| 研修・講習 | 理解の定着 | 質疑で誤解を解ける | 指針は「対処の内容と併せて実施」を認められる例とする | 受講記録、理解度確認 |
| 部門別・階層別研修 | 実態に即した理解 | 顧客接点の濃淡に対応できる | 通達は、部門別、経験年数・顧客対応頻度に応じた工夫を効果的とする | 受講記録 |
| 朝礼・ミーティング | 現場への浸透 | 店舗・現場に届く | 口頭のみだと定着しにくい | 議事録 |
| 携帯カード・掲示 | その場での確認 | 初動時に見られる | 相談窓口の連絡先を必ず記載 | 配布記録 |
| 入社時教育 | 抜け漏れ防止 | 新規就業者を確実にカバー | 派遣労働者・中途入社者も対象に | 実施記録 |
顧客対応が発生しない部署も対象です。Q&Aは、顧客対応が発生しない部署の労働者にも方針の周知・研修が必要であり、対処の内容についても社外の人と接する機会の有無を問わず全ての労働者に周知する必要があるとしています。経理、開発、管理部門を対象から外さないでください。なお、全労働者が方針全文を暗唱できることまでは求められていません。方針の要点、相談先、初動時の行動、不利益取扱いを受けないことを認識できる状態を目標にしてください。
方針の実効性を確認する方法/見直しの時期
実効性の確認
方針が機能しているかは、文書の有無ではなく、次の問いで確認します。
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| 確認項目 | 確認方法 | 「機能している」といえる状態 |
|---|---|---|
| 認知 | 無作為に数名へ「会社のカスハラ方針を知っているか」と聞く | 方針の要点を説明できる |
| 相談先の把握 | 「今すぐ相談するなら誰に、どうやって」と聞く | 連絡先を即答できる |
| 行動基準 | 模擬事案(30分の暴言)を提示して判断させる | 「管理監督者に報告する」「一人で抱え込まない」と答えられる |
| 判断責任の所在 | 「これはカスハラか、と聞かれたら誰が判断するか」と聞く | 「会社(法務・人事)が判断する」と答えられる |
| 正当な申入れとの区別 | 「厳しい口調の苦情はカスハラか」と聞く | 「内容と手段を分けて考える」と答えられる |
| 相談の心理的障壁 | 相談件数の推移を見る | 該当性が微妙な段階の相談も上がっている |
| 管理職の動き | 実際の事案で交代・打切りが行われたか記録を確認 | 方針に沿った対応が記録に残っている |
相談件数がゼロである場合、「カスハラが発生していない」のではなく「相談が届いていない」可能性を疑ってください。指針は、被害者が萎縮するなどして相談を躊躇する例があることを前提に、相談者の心身の状況や受け止めに配慮することを求めています。
見直しの時期
基本方針は、一度作って終わりではありません。次のような契機で見直してください。
- 法令・指針・Q&Aが改正されたとき
- 重大なカスハラ事案が発生したとき
- 相談件数や事案の傾向が変化したとき
- 新しいサービス、店舗、チャネルを開始したとき
- SNS、チャット等の新しい顧客接点が増えたとき
- 業法や約款が変更されたとき
- 従業員アンケートで運用上の問題が確認されたとき
- 顧客から方針に対する正当な指摘があったとき
- 取引先との連携に問題が生じたとき
基本方針に関するFAQ
Q1.基本方針はすべての対象事業主が作る必要がありますか
指針は「明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること」を求めています。「基本方針」という名称の独立文書が必ず必要というわけではなく、社内報・社内ホームページ・トップメッセージ等で必要な内容が明確化され、労働者へ周知されていれば足ります。もっとも、労働者が確認できる形にしておくことが実務上重要で、口頭のみの伝達では周知の証跡が残りません。
Q2.基本方針は就業規則に入れる必要がありますか
必須ではありません。指針は、方針の記載場所として社内報・パンフレット・社内ホームページ等も認められる例として挙げています。就業規則の改定が全企業一律に義務づけられているわけではありません(第5話)。
Q3.社外向けにWebサイトへ掲載することは義務ですか
義務ではありません。Q&Aは、方針を顧客等に周知することまでは義務付けていないと明言しています。ただし指針は、顧客等への周知・啓発を被害の防止に当たっては効果的としており、顧客接点の多い業種では実施を推奨します。
Q4.社内向けと社外向けは同じ文章でよいですか
分けてください。社内向けには相談窓口、報告手順、不利益取扱いの禁止といった内部運用の情報が必要です。社外向けにこれらを載せる必要はなく、逆に対応マニュアルの内部基準(対応時間、警告の回数等)を社外に出すと、その基準を逆手に取られるおそれがあります。
Q5.カスハラの具体例をどこまで書けばよいですか
指針は、措置②としてカスハラの内容を管理監督者を含む労働者に周知することを求めています。方針に書くか別文書に書くかは自由ですが、いずれかで周知が必要です。方針に3要素と代表的な類型を記載しておくと、現場が「厳しい口調=カスハラ」と短絡することを防げます。ただし、例は限定列挙ではなく、形式的な当てはめで判断しない旨を添えてください。
Q6.出入禁止やサービス停止を方針に書いてよいですか
書けますが、限定が必要です。改正法は事業主に新たな権利を与える制度ではありません(Q&A)。「法令の制限内において」「法令・契約等に照らし」「必要に応じて」といった限定を付し、業法上のサービス提供義務(応招義務、宿泊拒否事由等)に反しない範囲で記載してください。
Q7.警察へ通報する旨を記載してよいですか
記載できます。指針も、暴行・傷害・脅迫など犯罪に該当し得る言動については警察へ通報することを対処の例として挙げています。ただし、犯罪の成否は個別具体的に判断されるため、「示唆した時点で直ちに通報」といった威嚇的・無限定な表現は避け、「犯罪に該当し得る言動については」と限定してください。
Q8.顧客から「脅しだ」と反発されないでしょうか
高圧的な表現を避ければ、その懸念は大きく下がります。ポイントは、①正当な申入れは歓迎する旨を明記する、②対応を「法令・契約等に照らし、必要かつ相当な範囲で」と限定する、③従業員と顧客を対立させる表現を使わない、の3点です。本記事の標準版ひな形は、この方向で作成しています。
Q9.中小企業は短い方針でもよいですか
構いません。分量は要件ではありません。義務の中核(毅然対応・労働者保護)、正当な申入れとの区別、相談先、不利益取扱いの禁止が押さえられていれば、A4で1〜2枚でも足ります。規模が小さいほど、代表者名のトップメッセージが効果的な場合があります。
Q10.業界団体のひな形をそのまま使ってよいですか
そのままでは不十分です。Q&Aは、業界団体が作成した業種別マニュアルを単に配布するだけでは措置義務を果たしたことにならないとしています。自社の実情に応じた調整を行い、方針の明確化と対処内容の策定を行って周知することが必要です。
Q11.方針は誰の名義で公表すべきですか
法令上の指定はありません。ただし指針は、認められる例の中で「トップメッセージとして当該方針を広く社内に発信することも考えられる」と明記しています。経営の関与が明示されているほうが、現場の管理職が動きやすくなります。社外向けは会社名義が一般的です。
Q12.労働組合や労働者代表の意見聴取は必須ですか
基本方針の策定について、労働組合等からの意見聴取が全企業に一律に義務づけられているわけではありません。ただし指針6⑵は、措置の運用状況の把握や見直しにあたり、労働者や労働組合等の参画を得つつアンケート調査や意見交換等を行うことを望ましい取組としています(衛生委員会の活用も例示)。現場の実情を反映するうえで有効です。
Q13.方針はいつまでに作ればよいですか
施行日は2026年10月1日です。法令上「施行◯か月前」という期限が定められているわけではありません。ただし、相談窓口、マニュアル、周知・研修を施行日までに実効的に動かすには準備期間が必要です。本記事のモデル工程では、2026年7月末から8月初旬までの確定を推奨します。拠点数や規模に応じて前倒ししてください。
Q14.方針策定後に研修は必須ですか
特定の形式・回数の研修が一律に義務づけられているわけではありません。もっとも、指針は方針・対処内容の周知・啓発を義務とし、その方法として研修・講習等を認められる例に挙げています。研修は最も実効的な周知手段の一つです。施行通達は、定期実施、部門別、経験年数・顧客対応頻度に応じた工夫を効果的としています。
Q15.方針は毎年更新する必要がありますか
毎年の更新が法的に義務づけられているわけではありません。ただし、法令・指針の改正、重大事案の発生、顧客接点やサービスの変化、業法・約款の変更等があった場合には、その都度見直すべきです。定期的に運用状況を点検し、必要に応じて改訂する体制を整えてください。
シリーズ全10話の案内
| 話数 | タイトル | この記事で分かること |
|---|---|---|
| 第1話 | カスハラ対策が全企業の義務に|2026年10月施行の改正法でやるべきこと全体像 | 制度の全体像、対象事業主、10項目の措置、リスク、準備工程表 |
| 第2話 | どこからがカスハラか|正当なクレームとの線引きを3要件で判断する | 3要素、正当な申入れとの線引き、合理的配慮、判断フロー、記録 |
| 第3話 | 指針が求める措置の中身|方針明確化・相談体制・事後対応をどう整えるか | 10項目の措置の作り込み方、成果物、担当部署、完了基準 |
| 第4話 | カスハラ対応基本方針の作り方|社内外への表明文をひな形付きで解説(本記事) | 方針の記載事項、社内向け方針・トップメッセージ・顧客向け掲載文のひな形 |
| 第5話 | 就業規則・社内規程はどこを直すか|カスハラ義務化対応の改定ポイント | 既存規程の点検方法、改定要否の判断、労使手続と届出 |
| 第6話 | カスハラ相談窓口をどう作るか|既存のハラスメント窓口と一本化する方法 | 窓口の設計、担当者の指名と研修、二次被害の防止、記録様式 |
| 第7話 | 現場が迷わないカスハラ対応マニュアルの作り方|初動・エスカレーション・記録 | 初動対応、エスカレーション基準、録音・証拠保存、対応記録の実務 |
| 第8話 | それでも止まらない相手への法的対応|取引拒絶・出入禁止・警察対応の実務 | 警告文、販売・サービス提供の停止、出入禁止、仮処分、警察通報の判断基準 |
| 第9話 | 同時施行の求職者等セクハラ対策も忘れずに|関連する法改正・条例への対応 | 改正男女雇用機会均等法による求職者等セクハラ対策、自治体の条例 |
| 第10話 | 2026年10月までにやることリスト|カスハラ義務化対応の工程表と総まとめ | チェックリスト形式の総まとめ、成果物一覧、施行後の点検方法 |
まとめ
- 指針が義務として求める方針の中核は、「カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨」です。「カスハラを行ってはならない旨」を併記すること自体は差し支えありませんが、それだけでは中核を明確にしたことになりません。
- 周知の対象は管理監督者を含む全労働者。顧客対応が発生しない部署も含まれます。
- 顧客等への周知は義務ではありませんが、効果的とされています。実施する場合、高圧的な表現を避けてください。
- 正当な申入れとの区別を書いてください。これがないと、現場が顧客対応を放棄します。
- 社内向けと社外向けは分けてください。対応マニュアルの詳細な内部基準は、原則として社内で管理してください。
- 方針は、作ることではなく現場が動けることが目的です。「一人で抱え込ませない」「判断は会社が行う」を明記してください。
- 合理的配慮の提供は障害者差別解消法上の法的義務です(過重な負担がない範囲で、建設的対話を通じて提供)。「努めます」という努力義務的な表現にしないでください。
方針を固めたら、第5話「就業規則・社内規程はどこを直すか|カスハラ義務化対応の改定ポイント」で、既存規程の点検と改定要否を判断してください。
本記事のひな形は一般的な記載例であり、そのまま使用すればすべての企業で法令要件を満たすことを保証するものではありません。自社の業種、規模、顧客接点、適用される業法に応じて、必ず調整してください。本記事は2026年7月14日時点の法令・指針・通達・Q&A等に基づいています。実際の対応にあたっては厚生労働省および都道府県労働局の最新情報を確認し、個別の事案については弁護士、社会保険労務士、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)等への相談もご検討ください。
方針・通知文・掲載文のたたき台を効率よく作る
基本方針、トップメッセージ、社内通知文、顧客向け掲載文、取引先向け通知——方針づくりだけでも、これだけの文書を自社の言葉で書き起こす必要があります。業種、顧客接点、適用される業法によって、書ける内容も書いてはいけない内容も変わります。ゼロから起案していると、周知・研修の時間が足りなくなります。
カスハラ対応プロンプト集|顧客対応記録・従業員保護・上長報告・エスカレーションの実務テンプレート
顧客対応記録、従業員保護、上長報告、エスカレーション判断といった実務場面ごとに、たたき台を作成するためのプロンプトをまとめた実務ツールです。方針を現場の行動基準に落とし込む段階で、作業量を大きく削減できます。
法令対応を補助するためのツールです。これだけで措置義務の履行が完了するものではなく、専門家への相談に代わるものでもありません。作成した文書は、必ず自社の実態と最新の法令・指針に照らして確認してください。
自社への影響確認、社内周知、規程改定、対応ToDoの整理までまとめて進めたい方は、法改正対応セット|自社影響確認・社内周知・規程改定・対応ToDo整理の実務プロンプト集もあわせてご覧ください。
参考資料
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)
https://www.mhlw.go.jp/content/001662625.pdf - 厚生労働省「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第10章の規定等の運用について」(令和8年4月24日付け雇均発0424第2号)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695607.pdf - 厚生労働省「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(令和8年4月24日公表/カスタマーハラスメント関係は令和8年10月1日適用)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695619.pdf - 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html - 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html - 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(2022年2月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf - 厚生労働省リーフレット「(カスタマーハラスメント対策関係)消費者の心理や障害特性、認知症の症状に係る啓発資料のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695646.pdf - 厚生労働省「あかるい職場応援団」(資料ダウンロード・ポスター等)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/ - 内閣府「障害者差別解消法に関する基本方針・リーフレット等」
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html - e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(昭和41年法律第132号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 - e-Gov法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000065
このほか、労働者派遣法第47条の4、労働契約法第5条、個人情報保護法、医師法第19条第1項、旅館業法、航空法の各規定を参照しています。
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