問題社員対応の実務

注意・指導から懲戒・退職・解雇まで、会社が整える実務

第4話 / 全10話 類型別対応 労務・人事コンプライアンス

遅刻・欠勤・無断欠勤を繰り返す社員への対応
注意から懲戒までの進め方

法令・情報基準日:2026年9月2日

「今月すでに5回遅刻しています。懲戒できますか」

「3日連続で出社せず、連絡もありません」

「何度注意しても欠勤が続いています」

「無断欠勤が続いているので解雇したいです」

法務がこうした相談を受けたとき、最初に確認すべきなのは「何回」「何日」ではありません。

法務の結論

無断欠勤を理由とする懲戒は、日数だけでは決まりません。 欠勤の理由、本人からの連絡の有無、会社が定めた連絡ルールとその周知状況、反復性、過去の注意・指導、業務への影響、健康問題の有無、他の社員との取扱いの均衡、就業規則上の根拠——これらを総合して判断します。

そして、勤怠不良の案件でとりわけ重要なのが、次の切り分けです。
「欠勤したこと」と「連絡しなかったこと」は、別の問題として評価する。

病気で出勤できなかったこと自体と、会社が定めた連絡ルールに従わなかったことは、別々に確認し、別々に評価します。この2つを混ぜたまま「無断欠勤だから懲戒」と進めると、後で説明ができなくなります。

本記事は、勤怠不良という具体的な類型について、事実確認から懲戒検討までの積み上げ方を扱います。注意・指導の方法一般は第2話、使用する文書は第3話を参照してください。

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遅刻・欠勤・無断欠勤は何が違う?

用語を整理します。まず前提として、これらの定義は法令が定めているものではなく、各社の就業規則・勤怠規程の定めによります。自社の定義を必ず確認してください。

図表1|遅刻・欠勤・無断欠勤の違い

用語一般的な意味確認すべきこと評価の軸
遅刻所定の始業時刻までに就労を開始しないこと実際の就労開始時刻、事前連絡の有無、理由労務提供の遅れ+連絡ルールの遵守
早退所定の終業時刻前に就労を終えること申請・承認の有無、理由同上
欠勤所定労働日に労務提供がないこと事前連絡、届出、承認、年休請求の有無労務提供義務の不履行
無断欠勤会社所定の連絡・承認なく欠勤すること連絡ルールの内容と周知、連絡の有無と時刻、理由労務提供義務の不履行服務規律違反となり得る

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無断欠勤が問題視されやすいのは、2つの違反が重なっているからです。逆にいえば、次のような場合には評価が変わります。

  • 病気で欠勤したが、始業前に上司へ連絡し承認を得ている → 欠勤ではあるが「無断」ではない
  • 交通事故に遭い、意識がなく連絡できなかった → 形式的には連絡がないが、連絡義務違反として非難できるか慎重に検討する
  • 会社の連絡ルールが規程にも業務上の指示にもなく、周知もされていない → 「所定の連絡」の内容を会社が特定して説明できるかを確認する必要がある

注意

3つ目は見落とされがちです。連絡方法・連絡期限・連絡先が規程や業務上の指示等によって明確にされておらず、社員にも十分周知されていない場合、「どのルールに違反したのか」という会社側の説明は弱くなります。特に懲戒を検討する場合は、連絡義務の内容が社員に明確にされていたかを慎重に確認してください。

勤怠不良が起きたら会社が最初に確認すること

問題行動の初動対応一般は第1話で扱いました。ここでは勤怠不良に固有の確認項目に絞ります。

図表2|勤怠不良発生時の初動確認表

区分確認項目確認先・資料
事実発生日、所定始業時刻、実際の出社(就労開始)時刻勤怠システム、入退館記録
事実欠勤・遅刻の時間量勤怠システム
連絡本人からの連絡の有無、連絡時刻通話履歴、メール、チャット、SMS
連絡連絡方法が就業規則所定のものか就業規則・勤怠規程
連絡申告された理由連絡記録、上司メモ
手続勤怠システム上の申請の有無勤怠システム
手続上司の承認状況承認履歴
手続年休請求の有無年休申請記録
履歴過去の遅刻・欠勤の回数と時期勤怠データ(期間を区切って集計)
履歴過去の注意・指導の履歴指導履歴一覧、面談記録
背景健康面の相談歴・診断書の有無人事(産業保健職と連携し、必要な範囲で)
背景ハラスメント申告、長時間労働の有無相談窓口記録、労働時間データ
客観交通障害、災害等の外部事情運行情報、社内他部署の状況

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最後の「客観」の欄は、実務上わりと重要です。同じ日に同じ路線を使う社員が複数遅刻していれば、それは個人の問題ではありません。

この段階では評価をしないでください。集めるのは事実です。「またか」という判断が先に立つと、健康問題や会社側の要因を見落とします。

無断欠勤が発生したら、まず本人へ連絡する

始業時刻を過ぎても出社せず連絡もない場合、会社が最初にすべきことは記録でも懲戒の検討でもなく、本人への連絡です。

理由は2つあります。ひとつは、連絡がない理由には会社が想定していないものが含まれ得るからです。

  • 急病、事故、入院
  • メンタル不調
  • 家族の緊急事態
  • 通信障害、端末の故障、災害
  • 職場でのトラブルやハラスメント
  • 単なる失念(目覚ましの不作動など)
  • 意図的な欠勤

もうひとつは、会社が連絡を試みた記録そのものが、後の対応の前提になるからです。「出勤の督促をしたか」は、後述する解雇の場面でも実際に問われる要素です。

図表3|無断欠勤時の連絡フロー

STEP 1

状況の把握

  • 始業時刻を経過。出社なし・連絡なし
STEP 2

1次連絡

  • 直属上司から本人へ(電話→つながらなければメール/チャット/SMS)
  • 連絡時刻、手段、応答の有無、留守電の内容を記録
STEP 3-A

連絡がついた場合

  • 理由・状況を確認(評価せず、事実を聞く)
  • やむを得ない事情がある → 健康対応・年休・欠勤届・休職等、該当する手続へ
  • ない → 連絡ルールの確認と注意・指導へ
STEP 3-B

連絡がつかない場合

  • 2次連絡:時間をおいて再度連絡(当日中)
  • 人事へ報告(社内基準の時間内に)
  • 安全確認の必要性を検討
  • 必要に応じて緊急連絡先へ(次章参照)
  • 法務へ相談/事実調査/書面での出勤督促

連絡にあたっての留意点です。

  • 過度な頻度で連絡しない。1日に何十回も架電する、深夜に連絡するといった対応は、それ自体が別の問題になります
  • 「無断欠勤=退職の意思表示」と決めつけない。連絡がないことは、退職の意思を意味しません
  • 記録は連絡した側が残す。日時、手段、応答の有無、話した内容、留守電やメッセージの文面を残します
  • メッセージの文面は事実に限定する。「無断欠勤は懲戒事由です」と最初のSMSに書くのは避けてください。まずは安否と状況の確認です

本人と連絡が取れない場合、緊急連絡先へ連絡してよい?

実務で判断に迷う場面です。整理します。

緊急連絡先の情報は、多くの会社が入社時に取得しています。まず、自社が何と説明して取得したかを確認してください。

個人情報保護法との関係は、二段構えで整理します。

場面関係する規律
緊急連絡先の情報を、取得時に示した利用目的の範囲を超えて利用する利用目的による制限(個人情報保護法18条)
本人の欠勤・安否等に関する個人データを、家族という第三者へ伝える第三者提供の制限(同法27条)

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法的根拠

いずれについても、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときは、例外が認められ得ます(同法18条3項2号、27条1項2号)。安否確認は、この例外の検討場面になり得ます。

判断にあたっては次を確認します。

確認事項内容
通常の連絡手段を尽くしたか電話・メール・チャット等を、複数回・複数手段で試みたか
安否を懸念する具体的事情があるか連絡途絶の期間、直前の体調不良の申告、普段の勤務態度との落差
経過した時間・日数当日の数時間なのか、数日連続なのか
伝える情報は必要最小限か安否確認に必要な範囲を超えていないか

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伝える内容は、次の程度にとどめてください。

「◯◯さんと連絡が取れていないため、安全の確認のためご連絡しました。ご本人の状況をご存じでしたら、会社までご連絡いただけますでしょうか」

重大リスク|安否確認だけが目的の場合、原則として伝えない情報

  • 無断欠勤が続いて業務に支障が出ていること
  • 過去の勤怠不良や指導の履歴
  • 懲戒や退職を検討していること
  • 本人の人事評価、相談歴

これらは安否確認に必要のない情報であり、伝えれば本人のプライバシーを侵害します。家族は本人の代理人ではありません。安否確認の連絡と、労務問題の連絡は別だと理解してください。

もっとも、生命・身体の保護のために必要がある場面では、伝えるべき情報の範囲が変わり得ます(たとえば、直前に体調不良の申告があった場合に、その事実を家族へ伝えて安否確認を求めることは考えられます)。判断の軸は「安否確認に必要か」であって、情報の種類ごとに一律に決まるものではありません。

なお、緊急連絡先への連絡は、社内で誰が、どの段階で、何を伝えるかをあらかじめルール化しておくべき事項です(後述の整備項目7)。その場の判断で上司が電話をかける運用は避けてください。

無断欠勤の背景に健康問題がないか確認する

勤怠不良の案件で、会社が最も注意すべき論点です。次のような事情がある場合、勤怠ルール違反としてだけ処理してはいけません。

  • 以前から体調不良を訴えていた
  • 診断書が提出されている
  • メンタル面の相談歴がある
  • ハラスメントの申告がある
  • 長時間労働が続いていた
  • それまで問題がなかった社員が、突然連絡を絶った

裁判例

日本ヒューレット・パッカード事件・最判平成24年4月27日

最高裁は、精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者について、使用者としては精神科医による健康診断を実施するなどしたうえで、その結果に応じて必要な場合は治療を勧め、休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであるとして、無断欠勤を理由とする諭旨退職処分を無効としています。

この判決で重要なのは、社員に精神的不調があることをうかがわせる具体的事情の下で、会社が医学的な確認や休職等の対応を検討せず、直ちに正当な理由のない無断欠勤として処分を行った点です。

これは「病気であれば無断欠勤がすべて許される」という意味ではありません。実務上の示唆は、健康問題を疑わせる情報がある場合には、背景事情を確認してから勤怠違反を評価する必要がある、ということです。

したがって、法務が確認するのは次の3点です。

  1. 健康上の問題を疑わせる情報が、会社に届いていたか
  2. 届いていた場合、会社は何をしたか(受診の勧奨、産業保健職への連携、休職制度の案内、業務調整)
  3. 本人の状態を踏まえたうえで、なお連絡ルール違反として評価できる部分があるか

役割分担も明確にしてください。健康情報の取扱いは人事・産業保健職の領域であり、上司や法務が診断的な判断をするものではありません。就業上の措置が必要かどうかは、産業保健職の意見を踏まえて判断します。

勤怠記録と連絡履歴を一体で残す

勤怠システムのデータだけでは、案件を説明できません。

分かること分からないこと
何時に出社したか、何日欠勤したか事前連絡があったか
申請・承認の記録があるか本人が何と説明したか
年休を取得したか会社が何を伝えたか、いつ注意したか

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したがって、勤怠データ+連絡履歴+面談記録+指導履歴を、案件単位で紐づけて管理します。次の様式を社内フォーマットにしてください。

図表4|勤怠不良記録表(項目例)

項目記載内容
日付発生日
事象遅刻/早退/欠勤/無断欠勤
予定時刻所定始業・終業時刻
実績実際の就労開始・終了時刻
連絡の有無・時刻本人からの連絡があった時刻(なければ「なし」)
連絡手段電話/メール/チャット/SMS等
申告理由本人が述べた理由(本人の説明として記載)
会社からの連絡会社が連絡した時刻・手段・応答の有無
手続欠勤届/年休申請/診断書の有無、承認者
確認資料勤怠データ、通話履歴、運行情報等
会社対応口頭注意/面談/書面指導/対応なし
本人説明面談での説明(趣旨を変えず正確に)
業務影響顧客対応の遅延、他の社員の負担等(あれば)
次回対応次に確認する日、担当

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記録は上司個人のメールボックスではなく、人事が管理する場所に保存します。保存期間・保存場所・アクセス権限の設計は第2話を参照してください。

就業規則・勤怠ルールを確認する

「社内ではみんな知っている」は根拠になりません。次を規程レベルで確認します。

確認対象確認するポイント
始業・終業時刻、休憩対象社員に適用される所定労働時間。フレックス・シフト制の場合の扱い
遅刻・欠勤時の連絡方法手段(電話か、メールでもよいか)、連絡先(誰宛か)
連絡期限「始業時刻まで」か「始業30分前まで」か
承認者・承認手続事後の届出で足りるか、事前承認が必要か
欠勤届・診断書提出義務の有無、何日以上で診断書が必要か
服務規律勤務時間の遵守、報告義務に関する定め
懲戒事由勤怠不良に関する規定の文言
休職規定適用要件、休職期間、期間満了時の扱い
退職に関する規定無断欠勤が一定期間続いた場合の定めの有無と文言
年次有給休暇申請方法、期限、事後申請の可否
周知従業員が現に確認できる状態にあるか(掲載日・アクセス権限)

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周知は形式的な確認事項ではありません。就業規則が拘束力を持つには、適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることが必要とされています(フジ興産事件・最判平成15年10月10日、労働契約法7条)。連絡ルールが規程になく、口頭の慣行だけで運用している会社は、まずそこから整えてください。

遅刻を繰り返す社員にはどう注意・指導する?

進め方は第2話と同じですが、勤怠の場合は「具体化」が容易なので、そこを徹底します。

NG

社会人としての自覚を持ってください

OK

始業時刻の9時までに、業務を開始できる状態で出社してください。やむを得ず遅れる場合は、8時30分までに上司の◯◯へ電話で連絡してください。今後1か月間、この2点を守れているかを確認します。2週間後の◯月◯日に一度状況を確認します。

前者は改善したかどうかを会社が判定できません。後者は勤怠データと通話履歴で判定できます。

一方で、回数だけを見て評価しないでください。次のような事情がある場合、求めるべき対応が変わります。

背景事情検討すべき対応
交通機関の恒常的な遅延始業時刻の変更、時差出勤、遅延証明の運用の見直し
育児・介護短時間勤務、時差出勤、フレックス等の制度の案内
健康問題産業保健職への連携、就業上の措置の検討
業務量・長時間労働業務配分の見直し。会社側の要因として記録する
制度を知らない制度の案内。知らせていなかったことは会社側の問題

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制度の利用が可能な場合、まず制度を案内したかどうかは、後に会社の対応の相当性を説明する際の重要な要素になります。

欠勤を繰り返す社員にはどう対応する?

欠勤は、遅刻より確認すべき項目が多くなります。

確認事項確認の視点
欠勤の理由本人の申告内容。傷病か、私的事情か、申告がないか
事前連絡所定の期限・方法で連絡があったか
会社の承認承認したのか、事後に黙認しただけか
診断書提出の有無。規程上の提出義務との関係
年休請求年休として処理されているか、欠勤扱いか
休職制度傷病による長期欠勤の場合、休職規定の適用対象か
業務への影響顧客対応、他の社員の負担、シフトへの影響
反復性期間と頻度。特定の曜日に偏っていないか

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「欠勤が多い=懲戒」ではありません。理由があり、所定の手続を踏み、会社が承認している欠勤は、規律違反ではないからです。

他方、正当な理由がなく、会社所定の手続にも従わず、注意・指導を受けても反復する場合には、服務規律違反として評価される余地が出てきます。ただしその評価は、後述の確認項目を揃えたうえで行います。

傷病による長期欠勤の場合は、懲戒のルートではなく休職制度の適用を先に検討してください。休職規定があるのに適用せず、欠勤を理由に処分を進めることは、会社の対応として説明が難しくなります。

書面指導へ切り替えるタイミング

「2回目なら書面」というような固定ルールは作らないでください。重大な事案では初回から書面で対応すべき場合がありますし、逆に複数回でも事情によっては口頭での指導を継続すべき場合があります。

図表5|口頭注意→書面指導→懲戒検討の判断要素

判断要素口頭注意で足りる方向書面指導・懲戒検討へ進む方向
期間・回数単発、短時間反復、長期化
連絡の有無連絡があり、理由も説明されている連絡がなく、説明もない
本人の説明具体的で、資料とも整合する説明が変遷する、資料と矛盾する
過去の注意初回、または過去の注意後は改善していた同じ指摘を繰り返している
業務への影響限定的顧客対応の遅延、他の社員の負担が発生
ルールの明確性規程が不明確、周知が不十分規程が明確で、周知もされている
改善可能性改善の意思と見通しがある改善の意思が示されない
会社側の支援制度案内・業務調整をこれから行える支援を実施したが改善しない
健康問題疑われる(→健康対応を優先)確認したが該当しない

← 表は横にスクロールできます

この表は、左が多いか右が多いかで判断するためのものであり、点数化するものではありません。文書の種類の選び方は第3話を参照してください。

無断欠勤を理由に懲戒を検討する前に確認すること

無断欠勤の懲戒を検討する段階で、法務が確認する項目を整理します。

#確認事項確認できていないと
1欠勤の事実(日付・日数)そもそも事実が特定できない
2「無断」であること(連絡の不存在)連絡があったと反論された時点で崩れる
3連絡義務・手続が規程や業務上の指示で明確にされ、周知されていたか「どのルールに違反したのか」を説明できない
4本人が述べた理由正当な理由の有無を判断できない
5過去の注意・指導の履歴と記録改善機会を与えたか説明できない
6反復性(期間・頻度)単発か常態かを区別できない
7業務への具体的影響「困る」以上の説明ができない
8健康問題の有無と会社の対応前章の論点をそのまま抱える
9他の社員との取扱いの均衡特定社員のみ厳しいと評価される
10就業規則上の懲戒事由への該当根拠規定を示せない

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法的根拠

「無断欠勤◯日=◯◯処分」という基準は作らないでください。 懲戒処分は、労働契約法15条により、懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利濫用として無効とされます。日数は考慮要素の一つにすぎません。

どの懲戒事由に該当し、どの処分が相当かという判断の手順は第7話、弁明・決裁・通知といった手続の整備は第8話で扱います。

長期の無断欠勤なら解雇できる?

検索需要の高い論点なので、答えを示します。日数だけでは決まりません。

「2週間」という数字を目にすることがあります。これは、労働基準法20条の解雇予告除外認定に関する行政の認定基準に由来します。同条1項但書は、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合には予告や予告手当を要しないとし、その除外事由の有無は労働基準監督署長の認定によるとしています(同条3項)。厚生労働省は、この「労働者の責めに帰すべき事由」の認定基準(昭和23年11月11日基発第1637号、昭和31年3月1日基発第111号)として、次のような例を挙げています。

  • 2週間以上正当な理由がなく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
  • 遅刻、欠勤が多く、数回にわたって注意を受けても改めない場合

ここで2点、必ず押さえてください

注意

(1)これは「予告手当が不要か」の基準であって、解雇そのものの有効性の基準ではありません。
除外認定を受けられたとしても、解雇が有効かどうかは労働契約法16条の問題として別途判断されます。逆に、2週間に満たなくても解雇が有効となる場合も、2週間を超えても解雇が無効となる場合もあります。

(2)認定基準自体が、日数での機械的判断を予定していません。
厚生労働省は、認定にあたっては必ずしも個々の例示に拘泥することなく総合的かつ実質的に判断することとされ、就業規則等に規定されている懲戒解雇事由にも拘束されないとしています。

また、この基準には「正当な理由がなく」「出勤の督促に応じない」という要素が含まれている点も重要です。会社が督促をしていなければ、少なくともこの「2週間以上の無断欠勤」という行政上の例示には、そのまま当てはまりません。

図表6|長期無断欠勤で確認する事項

#確認事項
1就業規則上の解雇事由・懲戒解雇事由の文言
2欠勤の開始日と継続期間(日付単位で特定)
3本人からの連絡の有無と内容
4会社からの連絡・出勤督促の履歴(日時・手段・内容)
5書面による出勤督促を行ったか(到達を確認できる方法か)
6本人が述べた理由、または理由が不明であること
7本人の出勤・復職の意思の有無
8健康問題の有無と、会社が行った対応
9休職制度の適用可能性を検討したか
10過去の指導履歴と、それに対する本人の対応
11他の社員との取扱いの均衡
12解雇・懲戒の手続(解雇予告、通知方法、本人への事情確認・弁明機会の要否を就業規則・社内手続に照らして確認)

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「無断欠勤◯日で自然退職」の規定を設けてよい?

就業規則に「無断欠勤が◯日以上に及んだときは、退職したものとみなす」といった規定を置いている会社があります。

このような自然退職条項を設けること自体は、選択肢として考えられます。 厚生労働省の就業規則作成資料でも、行方不明・音信不通の社員に解雇の意思表示を到達させることが難しいという問題への対処方法として、一定期間連絡が取れない場合は退職とする旨を就業規則に定めておくことが挙げられ、「無断欠勤を2週間続けたとき。ただし、やむを得ない事情により会社への連絡ができなかったと会社が認めたときは、これを取り消すことができる」といった規定例が紹介されています。

ただし、実際に適用する際には、次の点を確認してください。

  • 規定の文言と、その適用要件を満たしているか(起算日、日数の数え方、「無断」の意味)
  • 欠勤に正当な理由がないといえるか
  • 会社が本人との連絡をどこまで試みたか、その記録があるか
  • 健康上の事情など、連絡できない事情がないか
  • 規定の文言や運用が、実質的な解雇であると争われる余地を残していないか

規定に該当したからといって、「◯日経過したから自動退職」と機械的に処理するのではなく、適用根拠と連絡経過を記録に残したうえで判断してください。上記の規定例のように、やむを得ない事情があった場合に取消しができる旨を規定に組み込んでおくと、運用の柔軟性が確保できます。

解雇を検討する場合の要件と手続、最終確認事項は第10話で扱います。

年次有給休暇・欠勤控除との関係を混同しない

年次有給休暇との関係

法的根拠

会社が一方的に欠勤を年休に振り替えることはできません。

労働基準法39条5項は、使用者は有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならず、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には他の時季に与えることができる、と定めています。年休をいつ取得するかを決めるのは労働者であり、会社が本人の請求なく欠勤を年休に置き換えることは、この枠組みに反します。

実務上の整理は次のとおりです。

場面対応
本人から年休の請求があった時季変更権の行使事由がなければ、年休として処理する
本人から請求がなく、会社が年休扱いにしたい本人の意思を確認する。同意なく処理しない
事後の年休申請を認めるか事後に年休へ振り替えることまでが労働者の権利となるわけではなく、認めるか否かを制度として明確にしておく必要があるとされています(沖縄労働局「労働相談事例 年休Q2」)。就業規則の定めや従来の労使慣行に従い、案件ごとに扱いが変わらないよう運用する

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年休への事後振替と、連絡ルール違反の評価は分けて考える

ここで、この記事の冒頭で示した切り分けに戻ります。

労使双方の合意により欠勤日を事後的に年休として処理した場合、その日の不就労自体を「欠勤」として重ねて不利益に評価することは適切ではありません。年休として処理した以上、その日は年休です。

一方で、始業時刻までに連絡するなど、年休の取得とは別に会社が定めている連絡・届出ルールに違反した事実がある場合、その点は別途検討する余地があります。年休へ振り替えたからといって、連絡義務違反という別個の事実まで当然に消えるわけではありません。

したがって、会社は「休んだこと」と「必要な連絡をしなかったこと」を、最後まで分けて整理してください。年休振替で処理できるのは前者であり、後者は前者とは別に、注意・指導の対象とすべきかを判断します。

なお、年5日の時季指定義務(同条7項)に基づく使用者の時季指定は、年休の取得促進のための制度であり、事後的に欠勤を年休へ振り替えるための仕組みではありません。混同しないでください。

欠勤控除との関係

欠勤・遅刻に対応する賃金の控除は、労務の提供がなかった部分について賃金が発生しないという考え方(ノーワーク・ノーペイ)に基づくもので、民法624条1項も、労働者は約した労働を終わった後でなければ報酬を請求できないと定めています。実際にどう控除するかは、月給制の設計を含め、賃金規程の定めによります

これと明確に区別すべきなのが、懲戒処分としての減給です。労働基準法91条は、就業規則で減給の制裁を定める場合、その減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない、と制限しています。

項目欠勤控除懲戒処分としての減給
性質労務提供がなかった分の賃金が発生しない制裁として賃金を減額する
根拠賃金規程就業規則の懲戒規定
手続通常の給与計算懲戒処分の手続(第8話
労基法91条の上限適用場面ではない適用される

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「遅刻が多いので、その分をペナルティとして給与から引く」という発想は、この2つを混同しています。控除するのは労務提供がなかった時間分であり、それを超える減額は制裁です。

会社として無断欠勤対応フローをどう整備する?

案件ごとに上司の判断で動く運用をやめ、社内基準を決めてください。

図表7|会社として整備する無断欠勤対応ルール

#決めること決め方の目安主管
1確認開始のタイミング始業時刻から何分経過で確認を開始するか人事
21次連絡の担当直属上司か、チームの誰か人事
3使用する連絡手段と順序電話→メール/チャット→SMS等人事
4連絡の回数・間隔当日中に何回まで、どの時間帯まで人事・法務
5人事への報告基準当日中か、何時間経過時点か人事
6法務への相談基準数日以上の連絡途絶、健康問題、争う姿勢、処分検討時法務
7緊急連絡先を使う条件誰が判断し、誰が連絡し、何を伝えるか人事・法務
8健康問題が疑われる場合のルート産業保健職への連携、受診勧奨、休職制度の案内人事・産業保健職
9記録フォーマット図表4の様式を社内版に人事
10書面指導への切替基準図表5の判断要素を社内版に。回数基準は設けない法務・人事
11懲戒検討へのエスカレーション基準誰が起案し、誰が決裁するか法務・人事
12長期連絡不能時の対応書面による出勤督促の様式、送付方法、記録法務・人事

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会社として整備する

12番の「書面による出勤督促」は、様式を用意しておくと運用が安定します。記載するのは、欠勤している事実、連絡を試みた経過、出勤または連絡を求める旨、期限、連絡先です。この段階で処分の予告を書き込まないでください。

よくあるNG対応

図表8|勤怠不良対応のNG例と改善

NG対応なぜ問題か代わりにすること
「3日来なければ辞めたものとする」と処理する本人の意思も事情も確認していない。実質的に解雇と評価され得る連絡・督促・意思確認を行い、記録を残す
一度も本人に連絡せずに懲戒を検討する「出勤の督促」がない。理由も確認できていないまず連絡し、理由を確認する
健康問題の可能性を考えない会社が背景を確認しなかったこと自体が問題とされ得る相談歴・診断書・直近の様子を確認し、産業保健職へ連携する
上司が電話した記録を残さない会社が対応した事実を説明できない日時・手段・応答の有無・内容を記録する
欠勤を勝手に年休扱いにする年休をいつ取得するかを決めるのは労働者。会社が一方的に置き換えることはできない本人の意思を確認する。事後振替を認めるかは制度として明確にしておく
遅刻の回数だけで処分を決める理由・背景・過去対応を無視した判断になる図表5の判断要素で総合的に検討する
同じ遅刻でも社員によって対応が違う取扱いの均衡を説明できない前例を確認し、異なる扱いなら理由を記録する
欠勤控除と懲戒減給を混同する制裁としての減額が労基法91条の制限を受けることを見落とす賃金規程による控除と懲戒手続を分ける
家族へ人事問題を詳しく伝える安否確認に不要な情報の共有。プライバシー侵害となり得る安否確認に必要な範囲にとどめる
深夜・多数回の架電を繰り返す連絡自体が別の問題を生む回数・時間帯を社内ルールで定める
連絡ルールを明確にしないまま「無断」と評価する「どのルールに違反したのか」の説明が弱くなる規程または業務上の指示で連絡方法・期限・連絡先を明確にし、周知する

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遅刻・欠勤・無断欠勤対応チェックリスト

図表9|勤怠不良対応チェックリスト

Noチェック項目確認内容担当残す記録
1□ 勤怠記録を確認した発生日、所定時刻、実績、期間集計人事勤怠データ出力
2□ 本人からの連絡の有無を確認した連絡時刻、手段、内容現場上司連絡履歴
3□ 会社からの連絡履歴を保存した日時、手段、応答の有無、内容現場上司連絡記録
4□ 欠勤・遅刻の理由を確認した本人の説明を、趣旨を変えず記録現場・人事面談記録
5□ 健康問題の可能性を確認した相談歴、診断書、直近の様子人事・産業保健職連携記録
6□ ハラスメント・長時間労働の有無を確認した相談窓口記録、労働時間データ人事確認メモ
7□ 就業規則上の連絡ルールを確認した手段・期限・連絡先・承認者法務規程照合メモ
8□ 規程の周知状況を確認した従業員が確認できる状態にあるか法務・人事周知記録
9□ 過去の遅刻・欠勤履歴を確認した期間・頻度・偏り人事集計表
10□ 過去の指導履歴を確認した何を、いつ、どう指導したか人事指導履歴一覧
11□ 利用可能な制度を案内した時差出勤、短時間勤務、休職等人事案内記録
12□ 改善すべき行動を具体的に伝えた判定可能な水準まで具体化したか現場上司面談記録・指導書
13□ 改善期限と確認方法を設定したいつまでに、誰が、何で確認するか現場・人事指導書
14□ 再発状況を確認した期限到来時の実績と根拠資料現場上司確認記録
15□ 他の社員との取扱いを確認した同種事案での過去の対応人事前例メモ
16□ 書面指導の必要性を判断した図表5の判断要素で検討したか法務・人事判断メモ
17□ 年休・欠勤控除の処理を整理した本人の意思確認、賃金規程との整合人事処理記録
18□ 懲戒検討へのエスカレーションを判断した起案者・決裁者を確認したか法務決裁ルート
19□ 長期連絡不能時の対応を確認した書面督促、緊急連絡先、記録人事・法務督促記録
20□ 記録を所定の場所に保存した保存場所・アクセス権限人事保存台帳

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勤怠不良は「回数」ではなく経緯と対応履歴で判断する

遅刻・欠勤・無断欠勤への対応で、会社が押さえるべき点をまとめます。

  • 遅刻・欠勤・無断欠勤を分けて評価する。自社の規程上の定義を確認する
  • 「欠勤したこと」と「連絡しなかったこと」を分ける。評価の軸が異なる
  • まず本人へ連絡する。連絡がないことは退職の意思を意味しない
  • 健康問題を切り分ける。背景を確認せずに勤怠ルール違反として処理しない
  • 緊急連絡先への連絡は安否確認に限定する。労務問題を家族へ伝えない
  • 勤怠データと連絡履歴を一体で管理する。勤怠システムだけでは説明できない
  • 注意・指導は判定可能な水準まで具体化する。制度の案内を先に行う
  • 回数だけで懲戒を決めない。無断欠勤の懲戒は日数では決まらない
  • 長期の無断欠勤でも、日数だけで解雇を決めない。2週間は予告手当の除外認定の目安であって、解雇の有効性の基準ではない
  • 年休への事後振替と、連絡ルール違反の評価は分けて考える。欠勤控除と懲戒減給も別物
  • 会社として、連絡・記録・エスカレーションの仕組みを整える

勤怠不良は、記録が積み上がりやすい類型です。裏を返せば、記録が残っていない期間は、会社がどのような対応を行ったのかを後から客観的に説明・立証しにくい期間になります。日々の連絡と記録が、そのまま後の判断材料になります。

次回は、指示に従わない社員への対応を扱います。指導・業務命令・懲戒の境界がどこにあるのかを整理します。

次に読む 第5話 業務命令に従わない社員への対応|指導・業務命令・懲戒の境界 詳しく見る

シリーズ:問題社員対応の実務|注意・指導から懲戒・退職・解雇まで会社が整えること(全10話)

参考資料・一次資料

法令(e-Gov法令検索:https://laws.e-gov.go.jp/

  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)20条(解雇の予告)、39条5項・7項(年次有給休暇の時季指定・時季変更)、89条、91条(制裁規定の制限)、109条
  • 労働契約法(平成19年法律第128号)5条、7条、15条、16条
  • 民法(明治29年法律第89号)624条1項
  • 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)18条(利用目的による制限)、27条(第三者提供の制限)

行政資料

裁判例(裁判所ウェブサイト「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/

  • 日本ヒューレット・パッカード事件・最判平成24年4月27日(精神的不調が疑われる労働者の欠勤への対応)
  • フジ興産事件・最判平成15年10月10日(就業規則の周知と拘束力)

注記

本記事は2026年9月2日時点の法令・公表資料に基づいています。遅刻・欠勤・無断欠勤の定義、連絡方法、届出手続、休職・退職に関する取扱いは各社の就業規則により異なります。個別の事案については、自社の就業規則・規程、事実関係および最新の法令を確認のうえ、必要に応じて弁護士等の助言を得てください。

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