CIVIL LITIGATION DIGITALIZATION 企業法務のための民事訴訟IT化対応シリーズ 05 / 06

企業が弁護士を付けずに訴訟する場合はどう変わるか|mints・少額訴訟・支払督促

法令・制度基準日:2026年7月31日

「法人も弁護士なしで訴訟できるのか」「法務担当者が会社の代理人として裁判に出られるのか」「mintsの法人アカウントを作れば担当者が手続できるのか」「少額訴訟なら簡単に回収できるのか」「支払督促と少額訴訟は何が違うのか」「督促手続オンラインシステムとmintsは同じものか」「相手方が争ったらどうなるのか」。

結論から述べます。法人も弁護士を付けずに手続を行うことはできます。しかし難しいのは、mintsへの入力操作ではありません。誰が会社を代表・代理するのか、何を請求し、どの証拠で立証し、相手方の反論や通常訴訟への移行にどう対応するのかという判断です。

特に注意が必要な点が2つあります。第一に、「弁護士を付けないこと」と「一般社員が会社の代理人になれること」は別の問題です。第二に、mintsのアカウントを登録できることと、会社を訴訟上代表・代理する権限があることも別の問題です。本記事はシリーズ第5話として、この区別を出発点に、少額訴訟と支払督促の選び方までを整理します。

民事訴訟IT化の全体像は第1話「民事訴訟のIT化で何が変わったか」で解説しています。

この記事の立場

本記事は、企業に本人訴訟を勧めるものではありません。また「mintsが使えるようになったから法人でも簡単に訴訟できる」という趣旨でもありません。本人対応という選択肢が現実に存在することを前提に、その要件・限界・社内負担を正確に示すことを目的としています。

Legal GPT 実務ツール|用途別

無料・時短・仕組み化の3つから選ぶ

無料で試す

まず使用感を確認したい方へ

AIで時短

AI指示文づくりを軽くしたい方へ

仕組み化する

部署の対応をそろえたい方へ

迷ったら 1分診断全商品一覧

法人は弁護士を付けずに民事訴訟をできるのか

できます。民事訴訟において弁護士を選任することは、常に法的な義務ではありません。法人が当事者となる事件でも、弁護士を選任せずに手続を進めること自体は可能です。本記事では、これを法人本人訴訟と呼びます。

ただし、法人は自然人ではありません。会社そのものが法廷で話すことはできないため、実際に手続を行う者が誰であり、その者にどのような資格があるのかが必ず問題になります。ここが個人の本人訴訟と決定的に異なる点です。

最初に区別すべきこと

「弁護士を付けないこと」と「一般社員が代理人になれること」は、まったく別の問題です。会社が社内で「この件は法務部のAさんが担当」と決めることと、Aさんが法律上、会社の訴訟代理人として訴訟行為を行えることは、一致しません。社内の任命は、訴訟上の権限を生じさせません。

図表1 法人本人訴訟で区別すべき4つの立場

1.法人代表者
代表取締役等。法人を代表して訴訟行為を行います。地方裁判所でも簡易裁判所でも、会社を代表できます。
2.会社法上の支配人
会社に代わって、その事業に関する裁判上・裁判外の一切の行為をする権限を有します(会社法11条1項)。選任は登記事項です。
3.簡易裁判所の許可代理人
簡易裁判所では、裁判所の許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができます(民訴法54条1項ただし書)。許可は事件ごとの個別判断です。
4.一般の従業員
社内委任状があっても、当然に訴訟代理人になれるわけではありません。資料整理や提出補助といった事務作業と、訴訟行為とは区別されます。

なお、相手方が弁護士を選任した場合、こちらが本人対応であっても手続が特別に配慮されるわけではありません。主張・立証の水準は同じ土俵で評価されます。この点は、本人対応を選ぶかどうかの判断材料になります。

誰が会社を代表・代理できるのか

法人代表者

代表取締役等の法人代表者は、法人を代表して訴訟行為を行います。実務上は、会社の代表資格を証明する必要があり、通常は登記事項証明書(代表者事項証明書、全部事項証明書等)が用いられます。なお、代表者自身が会社を代表して手続を行う場合、代表者から代表者本人への委任状は通常必要ありません。委任状が必要になるのは、訴訟代理人を選任する場合や、社員に閲覧・複写等の特定の行為を委任する場合です。

注意すべきは代表者の変更です。訴訟の途中で代表取締役が交代した場合、資格証明の扱いや届出が問題になります。また、mintsのアカウントは個人単位で本人確認を経て付与されるため、代表者が交代すればアカウントの扱いも検討が必要になります。具体的な必要書類と手続は、事件が係属する裁判所および裁判所の最新案内でご確認ください。

会社法上の支配人

会社法11条1項は、支配人が会社に代わってその事業に関する裁判上または裁判外の行為をする権限を有すると定めています。したがって、支配人は弁護士でなくても、その事業に関する訴訟について会社を代理できます。

ただし、ここには誤解が多い論点が2つあります。

  • 社内の役職名とは別です。「支店長」「営業所長」「法務部長」といった肩書があるからといって、会社法上の支配人であるとは限りません。逆に、支配人であるかどうかは、その者に与えられた権限の実質によって判断されます。
  • 支配人の選任は登記事項とされています。訴訟やmintsの利用において支配人として手続を行う場合には、登記事項証明書等により、その資格と権限を裁判所へ証明する必要があります。実務としては、支配人として訴訟を追行するなら、証明手段を事前に確認すべきです。

一般の従業員

民訴法54条1項本文は、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることができないと定めています。したがって、地方裁判所の事件について、会社が一般社員に社内の委任状を出しただけでは、その社員は訴訟代理人になれません。

他方で、次の作業は訴訟行為とは別のものです。混同しないでください。

  • 事実関係の調査、社内ヒアリング、時系列の整理(訴状・準備書面の内容を独自に決定する行為は含みません)
  • 契約書・請求書・納品記録等の証拠候補の収集とPDF化
  • 代表者が内容を決定した書類の入力・編集補助、提出準備、裁判所への持参・郵送などの事務作業
  • 期限の管理、社内の報告・決裁の手配

これらは企業法務担当者の中心的な業務であり、本人対応であってもなくても発生します。

簡易裁判所の許可代理

民訴法54条1項ただし書により、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができます。少額訴訟や支払督促からの移行事件など、簡易裁判所の事件では、この制度が実務上の選択肢になります。

ただし、次の点を正確に理解してください。

  • 裁判所の許可が必要です。申請すれば必ず認められるものではなく、事件ごとの個別判断です。
  • 許可の判断にあたっては、その者と会社との関係(雇用関係の有無等)や、当該事件の内容との関わりなどが考慮されると考えられます。申請にあたっては、許可申請書のほか、委任状や社員であることを証する書面等の提出を求められるのが一般的です。必要書類や運用は裁判所によって異なり得るため、事前に担当の簡易裁判所へご確認ください。
  • 許可は事件ごとです。一度許可を得たからといって、他の事件でも当然に代理できるわけではありません。
  • 同項ただし書は簡易裁判所についての規定です。簡易裁判所の許可に基づく代理権は、簡易裁判所の当該事件についてのものです。支払督促への異議により地方裁判所の訴訟へ移行する場合には、同じ社員がそのまま訴訟代理人として活動できるわけではなく、代理体制を改めて検討する必要があります。

図表2 立場別・会社のためにできる訴訟行為

立場 地方裁判所 簡易裁判所 mints登録 主な資格証明 注意点
法人代表者 法人を代表して訴訟行為ができる 同左 法人等用の登録届出フォームから登録可 登記事項証明書(代表者事項証明書等) 代表者変更時の資格証明とアカウントの扱いを確認する
会社法上の支配人 事業に関する裁判上の行為をする権限を有する 同左 支配人としての登録が案内されている 登記事項証明書等 社内の役職名とは別。登記事項証明書等による証明手段を事前に確認する
簡易裁判所の許可代理人 簡易裁判所の許可だけでは代理できない 裁判所の許可を得て訴訟代理人となり得る 個人としてのアカウントとは別に、事件情報への関連付けが必要 許可申請書、委任状、社員であることを証する書面等 事件ごとの個別判断。必ず認められるとは限らない
一般の従業員 訴訟代理人にはなれない 許可を得ない限り同左 個人のアカウント登録と会社の事件を操作する権限は別 資料整理・提出補助等の事務作業は可能

※本表は制度の大枠を整理したものです。個別の事件でどの資格により手続を行うか、どの資料が必要かは、事件が係属する裁判所および代理人弁護士にご確認ください。

mintsの法人登録と、訴訟上の権限は別

ここは第2話でも触れた論点ですが、本人対応を検討する企業にとっては決定的に重要なので、あらためて整理します。

裁判所は、mintsのアカウント登録について、個人用の登録届出フォームと法人等用の登録届出フォームを別に用意しています。登録方法の資料も、一般個人編、法人編、支配人編、士業者編、指定代理人編に分かれて公表されています。つまり、mintsは弁護士等に限られたシステムではありません。

しかし、アカウントを登録できることと、特定の事件を操作できることは、まったく別です。mintsでは、裁判所が事件ごとに事件情報を作成し、当事者や訴訟代理人のアカウントをこれに関連付けます。関連付けられて初めて、その事件の記録を閲覧・ダウンロードでき、書類を提出できるようになります。

したがって、次の理解はいずれも誤りです。

  • 「会社としてmintsに登録したから、法務部の誰でも事件を操作できる」
  • 「アカウントを作れば、係属中の自社事件の記録が見られる」
  • 「mintsに登録できたということは、会社を代理する権限が認められたということだ」

図表3 法人がmintsを利用するまでの流れ

1 誰が会社を代表・代理して手続を行うかを確定する(代表者か、支配人か、簡裁の許可代理か)
2 その資格を証明する資料を準備する(登記事項証明書等)
3 法人等用の登録届出フォームからアカウント登録を申し出る
4 所定の本人確認手続を経る
5 新規申立てを行う、または既存事件の事件情報へ関連付けられる
6 システム送達を受ける旨の届出について検討・対応する
7 通知の確認体制と記録の保存・権限管理を整備する

※工程1・2を飛ばして3から始めると、後で手続主体そのものをやり直すことになります。画面名称、登録書類、操作手順は変更される可能性があるため、実際の登録にあたってはmintsの最新の利用案内および操作マニュアルをご確認ください。

登録時の本人確認について、裁判所の案内では、郵送で本人確認資料を送付する場合、法人代表者は法人の印鑑証明書、支配人は個人の印鑑登録証明書を用いることとされています。詳細は最新の登録ガイドをご確認ください。

なお、本人当事者を支援する制度として、サポータに入力を依頼する仕組みや、システム送達の受取人を届け出る仕組みが設けられています。これらの制度の詳細な要件や書式は、裁判所の最新案内でご確認ください。

mintsへの書面・証拠の提出方法、PDFの作り方、誤アップロード時の対応は、第2話「書類はオンライン提出の時代へ|mintsの仕組みと企業法務が知っておくべきこと」で解説しています。

本人当事者は電子提出と書面提出を選べる

民訴法132条の10第1項により、所定の手続については、電子情報処理組織を使用する方法で申立て等を行うことができます。他方、民訴法132条の11第1項は、委任を受けた訴訟代理人等について電子申立て等を義務付けています。

ここから導かれる結論は明確です。弁護士等を選任していない本人当事者は、オンラインでの提出も、従来どおりの書面での提出も選択できます。法人が本人として手続を行う場合も同様です。電子提出が義務付けられているのは、あくまで委任を受けた訴訟代理人等です。

ただし、「書面を選べば電子化への対応が不要になる」わけではありません。特に費用の納付について、書面提出を選べば収入印紙と郵便切手による従来どおりの処理になるとは限りません。2026年5月21日以降、従来の郵便費用は申立手数料に一本化され、申立手数料は原則としてペイジーにより納付することとされています。裁判所の支払督促の案内でも、書面による申立てについて「その他については、電子申立てと同様です」と説明されています。

図表4 法人本人による電子提出と書面提出の比較

項目 mints(電子提出) 書面提出 企業側の注意点
提出方法 オンラインでアップロード 裁判所へ持参または郵送 書面でも、提出物の内容と期限の管理は変わらない
記録の扱い 電磁的訴訟記録として作成・保管される 紙で提出しても、裁判所において電子化されて記録化される場面がある 「紙で出せば紙のまま」とは限らない
記録の閲覧 事件情報に関連付けられれば、裁判所外の端末から閲覧・ダウンロードが可能 裁判所での閲覧等の請求による 閲覧のたびに移動と時間が必要になる
送達 届出をすればシステム送達を受けられる 従来の送達方法による システム送達を選ぶ場合、通知の確認体制が必須(第4話)
費用・納付 申立手数料と郵便費用相当額を合わせて納付。原則としてペイジーによる電子納付 基本的な費用・納付の取扱いは電子申立てと同様。例外的な取扱いは裁判所へ確認 提出方法と納付方法を安易に結び付けず、納付情報を裁判所の案内で確認する
証拠の原本 いずれの方法でも、原本を対象として書証の申出をする場合には、期日に原本の持参を求められることがある 原本の所在確認は共通の課題
海外からの利用 mintsは海外から利用できない 担当者の海外出張時は国内の代替担当者を置く

※手数料の納付方法や必要書類は事件の種類・時期により異なります。実際の申立てにあたっては、裁判所の最新案内をご確認ください。

システム送達の効力発生時点、通知の見落とし対策、電子判決書の保存については、第4話「訴訟記録が電子化された後の管理実務」で詳しく扱っています。

少額訴訟とは何か

少額訴訟は、簡易裁判所における特別な訴訟手続です。裁判所の案内によれば、60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争の解決を図る手続とされています(民訴法368条1項)。

制度の要点

  • 対象――訴訟の目的の価額が60万円以下の、金銭の支払の請求を目的とする訴えに限られます。物の引渡しや作為・不作為を求める請求には利用できません。
  • 利用回数――裁判所の案内によれば、1人につき同じ簡易裁判所に年間10回までと制限されています。訴え提起の際、その年にその裁判所で少額訴訟を利用した回数を届け出る必要があります。
  • 審理――最初の期日までに、すべての言い分と証拠を提出することになっています。証拠は、最初の期日にすぐ調べることができるものに制限されます。
  • 判決――話合いによる解決の見込みがない場合には、原則としてその日のうちに判決が言い渡されます。分割払、支払猶予、訴え提起後の遅延損害金の支払免除などを命ずることができる点も特徴です。
  • 不服申立て――少額訴訟の判決に対しては、同じ簡易裁判所に異議の申立てをすることができますが、地方裁判所に控訴をすることはできません。異議申立て後は、同じ簡易裁判所が通常の手続で審理・裁判を行いますが、その異議後の判決についても控訴はできません。通常訴訟の控訴とは仕組みが異なります。

「必ず1日で終わる」わけではありません

裁判所の案内は、少額訴訟について、被告が異議を言わない場合に審理が進められるとしています。被告は通常の訴訟手続で審理するよう求めることができます(民訴法373条1項)。また、紛争の内容が複雑であったり、調べる証人が多く1回の審理で終わらないことが予想される事件は、裁判所の判断で通常の手続により審理される場合があります。

さらに、判決を得たからといって、それだけで入金されるわけではありません。相手方が任意に支払わなければ、別途、強制執行の手続が必要になります。

図表5 少額訴訟に向く事件・向かない事件

向いている事件

契約内容と請求額が明確で、争点が単純
契約書・請求書・納品記録など、主要な証拠が書面で揃っている
相手方の住所が判明しており、送達に問題がない
相手方の反論を含めても争点が限定され、最初の期日に提出できる証拠で審理できると見込まれる
短期間で判断を得たい

向いていない事件

契約の解釈そのものが争点になる
証人尋問が必要、または関係者が多数にわたる
相殺、契約不適合、損害賠償などの反論が予想される
営業秘密や個人情報を多く含む
相手方が通常手続への移行を求めそうである
判決を得ても、相手方の財産状況が不明で回収が見込みにくい

※この整理は実務上の目安であり、法令上の基準ではありません。60万円以下の請求であっても、通常訴訟を選択することは可能です。

支払督促とは何か

支払督促は、簡易裁判所の裁判所書記官が行う手続です。法務省の説明によれば、督促手続とは、債権者からの申立てに基づいて、原則として債務者の住所のある地域の簡易裁判所の裁判所書記官が、債務者に対して金銭等の支払を命じる制度です(民訴法382条以下)。

制度の要点

  • 対象――金銭その他の代替物または有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求です。また、日本国内において公示送達によらずに送達できる場合に限られます(民訴法382条)。相手方の所在が不明な事案では利用できません。
  • 審査――法務省の説明によれば、裁判所書記官は、債務者の言い分を聞かないで金銭等の支払を命じる支払督促を発することとされています(民訴法386条1項)。書面審査による手続です。
  • 督促異議――債務者は、支払督促に対して督促異議を申し立てることができます(民訴法386条2項)。異議の機会は2回あります。最初の支払督促の送達後(仮執行宣言前の督促異議。民訴法390条)と、仮執行宣言付支払督促の送達後(民訴法393条)です。
  • 仮執行宣言――債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立てをしないときは、裁判所書記官は、債権者の申立てにより仮執行の宣言をしなければならないとされています(民訴法391条1項)。裁判所の案内によれば、申立人は2週間の経過後30日以内に仮執行宣言を申し立てることができ、この期間内に申し立てなかった場合、支払督促は効力を失います(民訴法392条)。
  • 仮執行宣言後の異議――仮執行宣言付支払督促の送達を受けた日から2週間の不変期間を経過すると、債務者は督促異議を申し立てることができなくなります(民訴法393条)。
  • 通常訴訟への移行――適法な督促異議の申立てがあると、支払督促に係る請求について訴訟に移行します(民訴法395条)。
  • 確定と強制執行――仮執行宣言付支払督促に対し督促異議の申立てがないとき等は、支払督促は確定判決と同一の効力を有します(民訴法396条)。仮執行宣言が付されれば直ちに強制執行手続をとることができますが、強制執行は別途の申立てが必要な手続であり、自動的に回収されるわけではありません。

支払督促は「争われないこと」を前提に効率が高い手続です

相手方の言い分を聞かずに発付されるため、申立てから債務名義の取得までが早いのが利点です。しかし、相手方が争う可能性が高い事案では、その利点は失われます。異議が出れば通常訴訟へ移行し、支払督促にかけた時間と手数は、結果的に迂回になります。

さらに注意すべきは管轄です。支払督促は債務者の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。督促異議が申し立てられると、請求額に応じて、債務者住所地を管轄する簡易裁判所またはその地域を管轄する地方裁判所の通常訴訟へ移行します。相手方が遠方の場合、当初から自社の近くの裁判所に訴えを提起できたはずの事案でも、遠方での対応を強いられることがあります。督促手続オンラインシステムを使って東京簡易裁判所へ申し立てた場合でも、異議後の審理が常に東京で行われるわけではありません。

「証拠が不要」ではありません

申立ての段階では実質的な証拠調べを行いませんが、それは証拠が不要という意味ではありません。異議により通常訴訟へ移行すれば、通常の訴訟と同じく主張と立証が必要になります。また、強制執行の段階でも書類が求められます。契約書、発注書、納品記録、請求書、催告の記録は、支払督促を選ぶ場合でも整理しておく必要があります。

図表6 支払督促の流れ

1 債務者の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官へ申立て
2 裁判所書記官による書面審査
3 支払督促の発付(債権者へ発付通知、債務者へ送達)
4 債務者は送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てられる
5A 異議あり → 通常訴訟へ移行
5B 異議なし → 2週間経過後30日以内に仮執行宣言を申し立てる(期間内に申し立てないと支払督促は失効)
6 仮執行宣言付支払督促(これに対しても、送達から2週間以内に督促異議の申立てが可能)
7 必要に応じて強制執行の申立て(別途の手続)

※期間や手続の詳細は事件により異なります。実際の申立てにあたっては、裁判所の案内および担当の裁判所書記官にご確認ください。

支払督促は書面・mints・専用システムのどれを使うか

2026年5月21日以降、支払督促の申立方法は3つあります。これらは同じものではありません。

図表7 支払督促の申立方法3つの比較

項目 書面 mints 督促手続オンラインシステム
申立経路 紙の申立書を管轄する裁判所へ提出 新規申立てフォームへの入力、またはPDFの提出 専用システム上の所定フォーム等による申立て
申立先 債務者の住所地等を管轄する簡易裁判所 東京簡易裁判所以外の簡易裁判所の管轄に属する督促事件であっても、東京簡易裁判所の裁判所書記官に申立てができる
対象事件 支払督促一般 支払督促事件のうち定型的な処理が可能なもの
電子申立て義務 弁護士等の訴訟代理人には電子申立て義務がある。本人当事者は書面も選択できる
対応する請求の類型 支払督促の対象となる請求(金銭その他の代替物・有価証券の一定数量の給付請求) 貸金、立替金、求償金、売買代金、通信料、リース料の6類型および「通信料+立替金」の複合型に限る。請負代金(修理代金・工事代金を売掛金として請求する場合を含む)、給料、賃料、損害賠償、過払金などは対象外
事前準備 mintsのアカウント登録 電子証明書の取得(個人は公的個人認証、法人は商業登記に基礎を置く電子認証)、債権者情報の登録、動作環境の整備
一括申立て 複数申立用インタフェース(法人向け)により、CSV形式ファイルで1度に最大300件までの申立てが可能
その後の手続 裁判所の案内による 事件情報を通じた管理 督促手続オンラインシステムを利用する事件では、その後の申立ても同システム上で行う運用とされている
利用上の注意 いずれの経路でも、異議により通常訴訟へ移行した場合の対応は必要。利用者登録の方法、電子証明書の要否、利用可能時間、法人利用・代理人利用の可否等の詳細は、最新の利用案内をご確認ください

※督促手続オンラインシステムの具体的な利用条件・登録手続・対応機能は、本記事では確認できた範囲のみを記載しています。実際の利用にあたっては、督促手続オンラインシステムの最新の案内および利用規約をご確認ください。

まず確認すべきは件数ではなく「請求の類型」です

督促手続オンラインシステムは、すべての支払督促に使えるわけではありません。同システムの案内によれば、利用可能な申立類型は貸金、立替金、求償金、売買代金、通信料、リース料の6類型および「通信料+立替金」の複合型です。そして、請負代金(修理代金、工事代金などを売掛金として請求する場合を含む)、給料、賃料、損害賠償、過払金など、これら以外の債権については同システムを利用して申立てを行うことはできないとされています。

企業の債権回収では、請負代金や賃料が対象外である点が特に重要です。売掛金であっても、実質が工事代金や修理代金であれば対象外とされています。申立類型に疑義がある場合は、動作環境の整備前に東京簡易裁判所へ問い合わせるよう案内されています。

したがって企業実務では、まず請求の類型が督促手続オンラインシステムの対象かどうかを確認します。対象外であれば、件数にかかわらずmintsまたは書面を選ぶことになります。そのうえで、申立件数、CSVによる一括申立ての必要性、利用時間、電子証明書を含む動作環境、申立後の管理方法を比較してください。

なお、同システムの利用には電子証明書の取得が必要とされています。個人は公的個人認証基盤に基づくもの、法人は商業登記に基礎を置く電子認証制度に基づくものを用いるとされており、事前準備に一定の時間を要します。また、複数件を1回で送信する複数申立用インタフェースは法人向けで、CSV形式ファイルにより1度に最大300件までの申立てが可能とされています。継続的に多数の定型請求を行う企業にとっては、この一括処理が最大の利点になります。

少額訴訟・支払督促・通常訴訟をどう選ぶか

ここが本記事の核心です。金額だけで手続を選ばないでください。

図表8 少額訴訟・支払督促・通常訴訟の比較

項目 少額訴訟 支払督促 通常訴訟
対象となる請求 金銭の支払の請求 金銭その他の代替物・有価証券の一定数量の給付請求 制限なし
金額制限 60万円以下 制限なし 制限なし
相手方の関与 期日に出頭し、反論する 申立段階では言い分を聞かない 答弁書の提出と期日での反論
期日 原則として1回 なし(書面審査) 複数回にわたる
証拠 最初の期日にすぐ調べられるものに制限 申立段階では実質的な証拠調べをしない 制限なし(証人尋問等も可能)
通常訴訟への移行 被告の申述または裁判所の判断による 督促異議により移行
不服申立て 同じ簡易裁判所への異議(控訴はできない) 督促異議(通常訴訟へ移行) 控訴
強制執行 いずれも、判決・仮執行宣言等を得たうえで、別途の申立てが必要
社内工数 期日対応が必要。準備を1回に集中させる負担が大きい 申立自体は軽い。ただし異議後は通常訴訟と同じ 継続的に大きい
向いている場面 争点が単純で、書面証拠が揃っている少額の請求 相手方が争わないと見込まれる定型的な請求 争点が複雑、金額が大きい、証人尋問が必要

手続を選ぶ7つの判断軸

1相手方は争ってくるか(争うなら、支払督促の利点は消える)
2証拠は揃っているか(少額訴訟では最初の期日にすべて出す)
3相手方の住所は分かるか(支払督促は公示送達によれない)
4相手方に財産はあるか(債務名義を得ても回収できるとは限らない)
5請求内容は単純か(契約解釈が争点なら通常訴訟)
6社内で対応できるか(期日対応・書面作成の工数)
7通常訴訟へ移行しても継続できるか(移行先の裁判所の所在地を含む)

「60万円以下なら少額訴訟、それ以上なら支払督促」という選び方は成り立ちません。60万円以下でも相手方が争うなら通常訴訟が合理的な場合がありますし、金額が大きくても相手方が争わない定型的な請求なら支払督促が有効な場合があります。判断の中心は金額ではなく、相手方が争うかどうかと、回収できる見込みがあるかどうかです。

法人本人訴訟で企業側に発生する作業

弁護士費用が発生しないことは、本人対応の分かりやすい利点です。しかし、弁護士費用が減っても、社内工数がゼロになるわけではありません。むしろ、通常は代理人が担う作業が、そのまま社内に移ります。

図表9 本人対応で企業が行う作業一覧

段階 主な作業
申立て前 請求内容と金額の確定/請求の法的根拠の整理/時効の確認/管轄の確認/相手方の商号・住所・代表者の調査/催告の記録の確認/手続の選択
申立て 訴状・申立書の作成/資格証明書の取得/手数料の計算と納付/送達先の特定/証拠の選別とPDF化/証拠説明書の作成
係属中 送達状況の確認/相手方の反論書面の検討と再反論/追加証拠の収集/期日への出頭または参加/和解の可否の社内判断/期限の管理/記録の保存
判決・移行後 判決内容の確認/不服申立ての要否の判断と社内決裁/通常訴訟へ移行した場合の体制の見直し/確定・送達の証明
回収 任意履行の交渉/相手方の財産の調査/強制執行の申立て/回収状況の管理/会計処理

仮想事例(実在の事件ではありません)

ある企業では、40万円ほどの売掛金について、金額が小さいことを理由に本人対応を選んだ。相手方は争わないだろうと見込み、支払督促を申し立てた。ところが相手方は督促異議を申し立て、事件は通常訴訟へ移行した。相手方は、納品物の一部に不具合があったとして損害賠償請求権による相殺を主張してきた。

会社は、当時の担当者へのヒアリング、検収記録の探索、メールのやりとりの復元、反論書面の作成に追われた。担当者の実作業時間は数十時間に及び、相手方の住所地が遠方であったため期日対応にも負担が生じた。最終的に和解で解決したが、社内工数を人件費に換算すると、当初想定した弁護士費用と大きな差はなかった――。

この事例の問題は、本人対応を選んだこと自体ではありません。「相手方は争わないだろう」という見込みだけで手続を選び、争われた場合の負担を見積もっていなかったことにあります。

証拠となる契約書・請求書・納品記録をすぐ取り出せる状態にしておくことが、本人対応の前提になります。管理の設計は「契約書が見つからない問題の解決|検索性を高める管理設計」で解説しています。

どの段階で弁護士へ切り替えるか

以下はいずれも実務上の判断目安であり、法的な義務ではありません。本人対応を継続するかどうかは、最終的には事案とリスクを踏まえた経営判断です。

図表10 弁護士への切替えを検討するサイン

直ちに相談を検討したい場面
相手方に代理人が就いた/通常訴訟へ移行した/反訴が提起された/相殺や損害賠償の反論が出た/証人尋問が必要になった/契約解釈そのものが争点になった/時効の完成が迫っている
早めに相談したい場面
請求額が大きい/相手方が事実関係を争っている/管轄に争いがある/営業秘密や個人情報を多く含む/海外に当事者がいる/強制執行や財産調査が必要になりそう/取引関係や会社の信用への影響が大きい
本人対応を継続し得る場面
争点が単純で相手方も争っていない/書面証拠が揃っている/請求額が小さい/相手方の所在と資力が明確/社内に対応できる人員と時間がある

※この分類は目安です。「直ちに相談を検討したい場面」に該当しても弁護士の選任が法的に義務付けられるわけではなく、「本人対応を継続し得る場面」であっても相談してはいけないという趣旨ではありません。

特に見落とされやすいのが、通常訴訟へ移行した時点です。少額訴訟や支払督促は、それぞれ簡易・迅速な処理を前提とした手続です。通常訴訟へ移行すれば、前提が変わります。「同じ事件だから同じ体制で続ける」という判断は、そこで一度立ち止まる価値があります。

通常訴訟へ移行した場合の期日対応や証人尋問については、第3話「口頭弁論もウェブ会議で|企業担当者が知るべき期日対応と証人尋問の注意点」をご覧ください。

法人本人訴訟を始める前のチェックリスト

図表11 法人本人訴訟を始める前のチェックリスト

誰が会社を代表・代理するか確認した
代表者か、支配人か、簡易裁判所の許可代理かを特定します。
資格証明に必要な資料を確認した
登記事項証明書、委任状、許可申請書等を事前に洗い出します。
mints登録と訴訟上の権限を区別している
アカウント登録は、事件を操作する権限とは別です。
請求額だけで手続を選んでいない
相手方が争うかどうかを最優先の判断軸にします。
相手方の商号・住所・代表者を確認した
支払督促は公示送達によることができません。
契約書・請求書・納品記録・催告記録を確認した
「あるはず」ではなく、実際に取り出せるかを確認します。
相手方の想定反論を整理した
相殺、契約不適合、支払済みの主張などを事前に洗い出します。
時効と管轄を確認した
移行先の裁判所の所在地も含めて確認します。
異議後に通常訴訟へ移行しても対応できる
移行した場合の体制と工数を、着手前に見積もります。
判決後の回収可能性を検討した
債務名義を得ることと、実際に回収することは別です。
社内工数と外部弁護士費用を比較した
担当者の作業時間を人件費に換算して比較します。
期限と通知の主担当・副担当を決めた
システム送達を利用する場合は特に重要です。
弁護士へ切り替える基準を決めた
着手前に決めておかないと、判断が後ろ倒しになります。

全社的な訴訟対応の体制整備と総合チェックリストは、シリーズ最終話(第6話)で扱います。

法人本人訴訟についてよくある誤解

図表12 法人本人訴訟についてよくある誤解

よくある誤解 実際
法人は弁護士を付けなければ訴訟できない 弁護士の選任は常に法的義務ではありません。ただし、誰が会社を代表・代理するかという問題は別に生じます
法務担当者なら会社を代理できる 民訴法54条1項本文により、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほかは、弁護士でなければ訴訟代理人になれません。社内の委任状だけでは足りません
「支配人」という社内の肩書があれば裁判上の代理権がある 社内の役職名と会社法上の支配人は別です。支配人の選任は登記事項とされており、訴訟では登記事項証明書等による資格・権限の証明が必要になります
簡易裁判所なら社員が自由に代理できる 裁判所の許可が必要であり(民訴法54条1項ただし書)、事件ごとの個別判断です。必ず認められるとは限りません
mintsの法人アカウントがあれば誰でも事件を操作できる アカウント登録と、事件情報への関連付けは別です。また、登録できることと会社を代理する権限があることも別です
本人当事者も必ず電子提出しなければならない 電子申立て等が義務付けられているのは、委任を受けた訴訟代理人等です(民訴法132条の11第1項)。本人当事者は書面提出も選択できます
書面提出を選べば電子化への対応は不要 紙で提出しても、裁判所において電子化されて記録化される場面があります。記録の閲覧方法や送達の選択も検討が必要です
少額訴訟は必ず1回で終わる 被告は通常の訴訟手続で審理するよう求めることができ(民訴法373条1項)、裁判所の判断で通常手続により審理される場合もあります
60万円以下なら少額訴訟が最適 60万円以下でも通常訴訟を選べます。相手方が争う見込み、証拠の状況、証人の要否によって適切な手続は変わります
支払督促では証拠がいらない 申立段階で実質的な証拠調べをしないだけです。異議により通常訴訟へ移行すれば通常の立証が必要になり、強制執行の段階でも書類が求められます
支払督促を出せば相手方の財産から自動的に回収できる 仮執行宣言を得ても、強制執行は別途の申立てが必要です。相手方に差し押さえるべき財産がなければ回収はできません
相手方が異議を出しても支払督促のまま進む 督促異議が申し立てられると、事件は通常の訴訟手続で審理されることになります
督促手続オンラインシステムとmintsは同じ 別のシステムです。督促手続オンラインシステムは支払督促事件のうち定型的な処理が可能なものを対象とし、貸金・立替金・求償金・売買代金・通信料・リース料の6類型等に限られます。請負代金や賃料などは対象外です。他方、東京簡易裁判所への申立てが可能という特徴があります
督促手続オンラインシステムなら、どんな債権でもオンラインで申し立てられる 利用できる申立類型は貸金、立替金、求償金、売買代金、通信料、リース料の6類型および「通信料+立替金」の複合型に限られます。請負代金(修理代金・工事代金を売掛金として請求する場合を含む)、給料、賃料、損害賠償、過払金などは利用できません
本人訴訟は弁護士費用がかからないので常に安い 弁護士費用は発生しませんが、社内の作業時間が発生します。争われた場合の工数を人件費に換算すると、想定と異なることがあります

まとめ|難しいのは入力操作ではない

  • 法人本人訴訟は可能です。弁護士の選任は常に法的義務ではありません。
  • 一般社員が当然に代理できるわけではありません。社内の任命は訴訟上の権限を生じさせません。
  • 代表者・支配人・簡易裁判所の許可代理人を区別してください。それぞれ根拠も証明方法も異なります。
  • mints登録と代理権は別です。アカウントを作れても、事件情報に関連付けられなければ操作できません。
  • 本人当事者は電子提出と書面提出を選べます。ただし書面を選んでも電子化への対応が不要になるわけではありません。
  • 少額訴訟は金額だけで選ばないでください。被告の申述や裁判所の判断により通常手続へ移行します。
  • 支払督促は督促異議により通常訴訟へ移行します。移行先が遠方になる可能性にも注意が必要です。
  • 督促手続オンラインシステムとmintsは別のシステムです。督オンには利用できる請求類型の制限があり、請負代金や賃料は対象外とされています。件数より先に、類型が対象かどうかを確認してください。
  • 本人対応にも相応の社内工数がかかります。弁護士費用が減っても、作業が消えるわけではありません。
  • 通常訴訟への移行や複雑な反論があれば、弁護士への相談を検討してください。

法人本人訴訟の成否は、mintsへ入力できるかどうかで決まるものではありません。権限、請求、証拠、反論、回収までを一つの手続として管理できるかどうかで決まります。

最終話となる第6話では、シリーズ全体を通じた訴訟対応の総合チェックリストを扱います。

よくある質問(FAQ)

法人も弁護士を付けずに民事訴訟をできますか。

できます。弁護士の選任は常に法的義務ではありません。ただし、法人は自然人ではないため、誰が会社を代表・代理して手続を行うかという問題が生じます。法人代表者、会社法上の支配人、簡易裁判所の許可代理人のいずれによるのかを、着手前に確定させてください。

会社の法務担当者は訴訟代理人になれますか。

当然にはなれません。民訴法54条1項本文により、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほかは、弁護士でなければ訴訟代理人となることができません。社内の委任状だけでは、地方裁判所の事件で訴訟代理人になることはできません。簡易裁判所については、裁判所の許可を得て弁護士でない者を訴訟代理人とすることができますが(同項ただし書)、事件ごとの個別判断です。なお、資料整理や提出補助といった事務作業は、訴訟行為とは別のものとして行えます。

会社法上の支配人とは、支店長や法務部長のことですか。

社内の役職名とは別の概念です。会社法11条1項により、支配人は会社に代わってその事業に関する裁判上または裁判外の行為をする権限を有します。支配人の選任は登記事項とされており、訴訟やmintsの利用において支配人として手続を行う場合には、登記事項証明書等によりその資格と権限を裁判所へ証明する必要があります。単なる社内の肩書だけで支配人として扱われるわけではありません。支配人として訴訟を追行する場合は、証明手段を事前に確認してください。

mintsの法人アカウントを登録すれば、一般社員が事件を操作できますか。

できません。アカウントの登録と、特定の事件を操作できることは別です。mintsでは、裁判所が事件ごとに事件情報を作成し、当事者や訴訟代理人のアカウントを関連付けます。関連付けられて初めて記録の閲覧や提出が可能になります。さらに、登録できることと会社を訴訟上代表・代理する権限があることも、別の問題です。

法人本人は、必ずmintsで提出しなければなりませんか。

いいえ。電子申立て等が義務付けられているのは、委任を受けた訴訟代理人等です(民訴法132条の11第1項)。弁護士等を選任していない本人当事者は、オンラインでの提出も従来どおりの書面提出も選択できます。ただし、紙で提出しても裁判所において電子化されて記録化される場面があり、記録の閲覧方法や送達の選択は別途検討が必要です。

少額訴訟と支払督促はどちらを選ぶべきですか。

金額だけでは決まりません。判断の中心は、相手方が争ってくるかどうかです。相手方が争わないと見込まれる定型的な請求であれば支払督促の効率が高く、争点が単純で書面証拠が揃っている60万円以下の請求であれば少額訴訟が適することがあります。争われる見込みが高い事案では、最初から通常訴訟を選ぶ方が合理的な場合もあります。あわせて、相手方の住所が判明しているか、回収できる財産があるかも確認してください。

支払督促に異議を出された場合はどうなりますか。

適法な督促異議の申立てがあると、支払督促に係る請求について訴訟に移行します(民訴法395条)。異議の機会は、最初の支払督促の送達後(民訴法390条)と、仮執行宣言付支払督促の送達後(民訴法393条)の2回あります。注意すべきは管轄です。支払督促は債務者の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てるため、異議後は、請求額に応じて、その簡易裁判所またはその所在地を管轄する地方裁判所の通常訴訟へ移行します。相手方が遠方の場合、期日対応の負担が生じます。督促手続オンラインシステムを使って東京簡易裁判所へ申し立てた場合でも、異議後の審理が常に東京で行われるわけではありません。

督促手続オンラインシステムは、どの請求にも使えますか。

使えません。同システムの案内によれば、利用可能な申立類型は貸金、立替金、求償金、売買代金、通信料、リース料の6類型および「通信料+立替金」の複合型とされています。請負代金(修理代金、工事代金などを売掛金として請求する場合を含む)、給料、賃料、損害賠償、過払金などは対象外です。企業の債権回収では、請負代金や賃料が対象外である点に注意してください。対象外であれば、mintsまたは書面により申し立てることになります。申立類型に疑義がある場合は、事前に東京簡易裁判所へ問い合わせるよう案内されています。

どの段階で弁護士へ相談すべきですか。

法的な義務ではなくリスク判断ですが、実務上は、相手方に代理人が就いた場合、通常訴訟へ移行した場合、反訴や相殺の主張が出た場合、証人尋問が必要になった場合、契約解釈が争点になった場合には、直ちに相談を検討する価値があります。特に見落とされやすいのが通常訴訟へ移行した時点です。手続の前提が変わるため、「同じ事件だから同じ体制で」と続けず、一度立ち止まって判断してください。

参考資料・公的情報

本記事は、次の公的資料を確認して作成しています(いずれも最終確認日:2026年7月31日)。

本記事は2026年7月31日時点の公表情報に基づく一般的な解説であり、個別の事件についての法的助言ではありません。代表資格、支配人の権限、簡易裁判所における許可代理、管轄、時効、請求原因、証拠、手続の選択は、いずれも個別の判断となります。少額訴訟や支払督促を利用できるかどうかは、事件の内容および裁判所の判断によります。また、mintsおよび督促手続オンラインシステムの仕様は変更される可能性があります。実際の申立てにあたっては、担当の裁判所、裁判所書記官、代理人弁護士、および各システムの最新の利用案内をご確認ください。

読了後の実務化ガイド

この記事の確認観点を、実務の型に変える。

読んだ内容を、確認メモ・文例・AI指示文に落とせます。

A無料で試す

すべての商品を見る