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はじめに:「今だけ半額」「初回無料」は、なぜ慎重に見るべきか

「今だけ半額」「通常価格より70%OFF」「初回無料」「全額返金保証」「期間限定キャンペーン」——。価格や条件のお得さを伝える表現は、消費者の背中を押す力が強く、販促では欠かせないものです。

一方で、こうした表現は、条件や実態とのあいだにズレがあると、景品表示法上の「有利誤認表示」として問題になり得ます。第2話で扱った優良誤認表示が「商品・サービスの中身」を良く見せすぎる表示だったのに対し、有利誤認表示は「価格・取引条件」を有利に見せすぎる表示を指します。中身か、条件か——という見ている対象の違いです。

ここでも大切なのは、「安く見せること」「お得に見せること」そのものが禁止されているわけではない、という点です。問題になるのは、実態や条件を超えて、消費者が誤認するほど有利に見せてしまう場合です。第3話では、この有利誤認表示を、企業法務・管理部門が広告審査で使える形に整理していきます。

  • 有利誤認表示とは何か(景品表示法5条2号の考え方)と、優良誤認表示との違い
  • 価格・割引・無料・初回限定・返金保証・期間限定などで問題になりやすいポイント
  • 二重価格表示の概要(「通常価格」には実態が必要)
  • 明らかな虚偽だけでなく、条件の不明確さ・通常価格の実態不足・注記の見落としやすさでも問題になり得ること
  • 「無料」「返金保証」など誘引力の強い表現で、条件表示がなぜ重要か
  • 広告審査で価格・条件・注記・適用範囲をどう確認するか、事業部への返し方

本記事は、企業法務・管理部門の実務理解を助けることを目的とした一般的な情報提供であり、個別の法律相談や行政判断に代わるものではありません。実際の表示の適否は個別事案ごとに判断が分かれることがあるため、重要な判断にあたっては最新の法令・ガイドラインを確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

有利誤認表示とは何か

有利誤認表示は、景品表示法第5条第2号に定められた不当表示の一類型です。条文をかみ砕くと、おおむね次のような表示を指します。

事業者が、自己の供給する商品・サービスの価格その他の取引条件について、
(ア)実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示、または
(イ)競争事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示であって、
不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示

ポイントは、対象が「価格その他の取引条件」、つまりいくらで、どんな条件で買えるのかに関する表示であることです。価格そのものだけでなく、割引、無料、返金、特典、数量、支払条件なども「取引条件」に含まれます。

そして、繰り返しになりますが、有利誤認で問題になるのは「お得に見せること」そのものではありません。実態や条件を超えて、消費者が誤認するほど有利に見せてしまうことが問題になります。法務の役割は、表現を止めることではなく、条件と実態の範囲内で、お得さを正しく伝える表現に整えることにあります。

要素 内容 実務で見るポイント
対象 自己の供給する商品・サービスの「価格その他の取引条件」 その表示が「取引条件」に関するものか「中身」に関するものか(後者は優良誤認の領域)
表示内容 実際のものより著しく有利と誤認させる表示 表示された価格・条件が、実際の取引条件と乖離していないか
比較対象 実際のもの、または競争事業者のもの 「何と比べて有利なのか」(通常価格・他社価格など)が明確か
誤認の程度 「著しく」有利であると一般消費者に誤認させること 軽微な差ではなく、選択に影響する重要な条件のズレか
消費者への影響 不当に顧客を誘引し、自主的・合理的な選択を阻害するおそれ その表示が「買おう」と思う決め手になり得るか

図:有利誤認リスクの考え方

有利性の訴求の強さ(「半額」「無料」など断定的・強調的なほど強い)
×
条件・実態の裏づけ(通常価格の実態・適用条件の明確さ)
×
消費者の判断への影響(購入の決め手になり得るか)

有利誤認リスクの検討(強い訴求 × 弱い裏づけ × 大きな影響 = 要注意)

優良誤認表示との違い

第2話の優良誤認表示と、本記事の有利誤認表示は、混同されがちですが、見ている対象が違います。優良誤認は「商品・サービスの中身(品質・内容)」、有利誤認は「価格・取引条件」です。

実務では、1つの広告に両方のリスクが含まれることも珍しくありません。たとえば「AIが高精度でリスクを検出」という訴求は中身の話なので優良誤認の観点、同じ広告の「今だけ無料」という訴求は条件の話なので有利誤認の観点で、それぞれ確認することになります。広告審査では、「この表現は中身か、条件か」を切り分けて見ると整理しやすくなります。

比較項目 優良誤認表示 有利誤認表示
見ている対象 商品・サービスの中身(品質・規格その他の内容) 価格その他の取引条件
よくある表現 「効果抜群」「高品質」「業界最高水準」「精度99%」 「今だけ半額」「初回無料」「全額返金保証」「業界最安値」
確認すべき資料 効果・性能の試験・調査結果、専門機関の見解など 通常価格の販売実績、適用条件、料金体系、解約条件など
関連する記事 第2話:優良誤認表示第5話:No.1表示 本記事/第6話:二重価格表示

有利誤認で問題になりやすい表示類型

有利誤認は、価格や条件にかかわるさまざまな表現で問題になり得ます。以下は、広告審査で「いったん立ち止まって条件・実態を確認したい」代表的な表示類型です。なお、ここで挙げる例はすべて架空の一般例であり、特定の企業・商品を指すものではありません。

表示類型 よくある表現例 問題になりやすい理由 法務が確認すべき資料・条件
通常価格・参考価格との比較 「当店通常価格5,000円→2,500円」 「通常価格」に販売実態がないと誤認を招く その価格での販売実績(時期・期間)
二重価格表示 「2,000円のところ1,400円」 比較対照価格の根拠・実態が不十分だと問題 比較対照価格の根拠(詳細は第6話
期間限定割引 「今だけ」「期間限定セール」 実際は恒常的に行っている割引だと実態とズレる キャンペーン期間・実施履歴
初回限定・初月無料 「初回限定980円」「初月無料」 2回目以降の価格・条件が分かりにくいと誤認のおそれ 2回目以降の価格・継続条件・総額
無料トライアル 「無料でお試し」 自動更新・解約条件が伝わらないと誤認のおそれ 無料期間・更新時期・解約方法
返金保証・全額返金保証 「全額返金保証」 返金の対象・期間・条件・手数料が不明確だと誤認 返金条件・対象外事由・申請手続
追加費用・手数料の表示 「月額500円」(別途費用あり) 送料・手数料・登録料などが隠れると総額が誤認される 付随費用の有無・総額表示
キャンペーン条件 「全員にプレゼント」 対象者・適用除外・併用不可条件が不明確だと誤認 対象者・対象商品・除外条件
定期購入・サブスク 「いつでも解約可能」 実際は解約条件が厳しいと誤認のおそれ(特商法も関係) 契約回数・解約条件・支払総額
他社比較・最安値表示 「業界最安値」 比較対象・調査範囲・時点が不明だと誤認 比較の対象・調査範囲・時点の資料
ポイント還元・キャッシュバック 「実質無料」「全額ポイント還元」 「実質」の前提条件が伝わらないと誤認のおそれ 還元の条件・上限・利用制限

いずれの類型も「絶対にダメ」というわけではありません。「何と比べて有利なのか」「どの条件で有利なのか」が明確で、実態を伴っていれば、お得さを適切に伝えられます。逆に、比較対象や条件が曖昧なまま強い訴求を使うと、リスクが高まります。

価格表示・割引表示で見るべきポイント

有利誤認の中でも、価格表示は特に問題になりやすい領域です。「通常価格」「メーカー希望小売価格」「参考価格」「過去の販売価格」などを比較対照価格として示す場合、その価格に実態があることが前提になります。実態のない価格と比べて「お得」に見せると、二重価格表示として問題になり得ます。

図:価格表示で見るべき3点

比較対象価格(何と比べて安いのか)
×
その価格の実態(実際にその価格で販売していたか)
×
消費者に伝わる条件(適用条件・対象が分かるか)

価格表示リスクの検討

消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)では、比較対照価格として主に用いられるものとして、過去の販売価格・他店(市価)の販売価格・メーカー希望小売価格の3つが挙げられています。このうち過去の販売価格を比較対照価格とする場合、同一商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であれば不当表示に当たるおそれはないとされています。

この「最近相当期間」については、一般的に、セール開始時点からさかのぼる8週間のうち、その価格で販売されていた期間が販売期間の過半を占めるとき、とされています(販売期間が8週間未満のときは、その期間の過半かつ2週間以上の販売実績が一つの目安。最後に販売した日から2週間以上経過している場合や、販売期間が2週間に満たない場合は、原則として過去の販売価格として表示できないとされています)。

ただし、これは過去の販売価格を比較対照価格とする場合の代表的な目安であり、すべてのケースに同じ基準が当てはまるわけではありません。たとえば、将来の販売価格を比較対照価格とする場合(「セール後は○○円」など)は、その将来価格に十分な根拠があること(実際にその価格で販売する予定があること)が必要で、実際には販売しない価格やごく短期間しか販売しない価格を用いると不当表示に該当するおそれがあります。また、商品の特性(季節商品など)や販売形態によっても考え方が変わることがあります。比較対照価格の種類ごとの詳しい考え方は、第6話で整理しますので、本記事では「比較対照価格には実態・根拠が必要」という出発点を押さえておけば十分です。

  • 実態のない「通常価格」を比較対照価格にしている
  • ごく短期間しか販売していない価格と比較している
  • これから設定する将来の販売価格と比較している
  • 正確な調査をせずに「他社より安い」とうたっている

いずれも個別事案によって判断が分かれますが、まずは「何と比べて安いのか」「その価格に実態があるのか」を確認するのが出発点です。

表示例 確認すべき資料 見落としやすいポイント 修正の方向性
「当店通常価格○○円→セール価格△△円」 通常価格での販売実績(時期・期間) 通常価格に実態がない/販売期間が短い 実際の販売実績に基づく価格を比較対照にする
「メーカー希望小売価格の半額」 メーカーが設定・公表している希望小売価格 実在しない希望小売価格を用いている メーカー公表価格であることを確認する
「他社より安い」「業界最安値」 比較対象・調査範囲・時点の資料 調査が不十分/対象・範囲が曖昧 比較の範囲・条件・時点を明示する
「70%OFF」などの割引率表示 割引前価格の実態と計算根拠 割引前価格に実態がない/計算が合わない 実態のある価格を基準に正しく算定する

「無料」「返金保証」「初回限定」で注意すべきこと

「無料」「返金保証」「初回限定」は、消費者にとって誘引力がとても強い表現です。その分、重要な条件が分かりにくいと、有利誤認のリスクが高まります。とくに、無料トライアル後の自動更新、解約条件、返金の対象・期間・手数料、対象外条件などは、消費者が契約前に知っておきたい重要な情報です。

たとえば「無料」と大きく表示しながら、実際には送料・手数料・登録料などがかかる場合、表示全体として誤認を招かないよう注意が必要です。また、無料トライアルや定期購入の表示は、景品表示法の有利誤認だけでなく、特定商取引法上の表示義務も関係する領域です。とくに通信販売では、申込みの最終確認画面などで、契約の分量・各回や総額の支払金額・解約に関する事項などを適切に表示することが求められ、誤認させる表示も禁止されています(特定商取引法12条の6)。

近年とくに注意したいのが、「いつでも解約可能」とうたいながら、実際には解約手続が分かりにくい・受付窓口につながりにくいといったケースです。たとえば、最終確認画面に記載した電話番号に消費者が電話をかけても一切つながらないような場合は、解約に関する事項について不実のことを表示する行為に該当するおそれがあると整理されています。表示と解約運用の実態が合っているかは、画面だけでなく運用体制まで含めて確認しておくと安心です。

大まかにいえば、景品表示法では「価格・条件を実際より有利に見せていないか」を見ます。一方、特定商取引法では、通信販売の申込画面・最終確認画面などで、契約内容・支払総額・解約条件などが適切に表示されているかが問題になります。両者は重なる場面がありますが、確認する観点は完全に同じではありません。無料トライアルや定期購入では、テキスト原稿だけでなく、実際の申込画面・最終確認画面(スマホ表示を含む)まで確認することをおすすめします。

表現 確認すべき条件 危ない表示例 修正の方向性
「完全無料」「無料」 送料・手数料・登録料など付随費用の有無 「無料」と大きく表示し、別途費用を小さく注記 付随費用がある場合は、無料の範囲を明確に示す
「無料トライアル」「初月無料」 無料期間、自動更新の有無、更新時期、解約方法 自動更新・有料化のタイミングが伝わらない 更新時期・以後の料金・解約手順を分かりやすく示す
「全額返金保証」 返金の対象・期間・条件・手数料・対象外事由 「全額返金」と強調し、厳しい条件を小さく注記 返金の条件・期間・手続を明確に、近接して示す
「初回限定○○円」 2回目以降の価格、継続条件、支払総額 初回価格だけ強調し、継続条件が分かりにくい 2回目以降の価格・回数・総額を明確に示す
「いつでも解約可能」 解約の方法・受付時間・締切・違約金の有無 実際は解約手続が煩雑・期限がある 実際の解約条件と一致させる(特商法も確認)

「全額返金保証」は強い訴求である一方、実際には「初回分のみ」「手数料を差し引く」「未開封に限る」といった制限(特約)が付いていることがあります。表示と実際の返金条件が食い違うと、有利誤認として問題になり得るほか、表示の対象となった売上に応じた課徴金の対象になる可能性もあります。返金の特約は、表示と一致しているか、表示に十分反映されているかを、リーガルチェックの段階で確認しておくと安心です(措置命令・課徴金など違反時の対応は第9話で扱います)。

期間限定・キャンペーン表示で注意すべきこと

「今だけ」「期間限定」「先着○名」「数量限定」などの表示は、消費者に「早く決めなければ」という気持ちを促す力があります。だからこそ、その表示が実態と一致していることが重要です。実際には恒常的に行っている割引を「期間限定」のように見せたり、キャンペーン終了後も同じ条件を続けているのに「今だけ」と表示し続けたりすると、表示の実態とズレて問題になり得ます。

表示例 確認ポイント 危ない状態 実務対応
「今だけ」「期間限定」 実際に期間が限定されているか 恒常的な割引を期間限定のように見せている 実施期間・履歴を確認し、実態に合わせる
「○月○日まで」 終了後に同じ条件を継続していないか 終了後も同じ価格・条件を続けている 期限を守る、または表示を更新する
「先着100名限定」 実際に人数で限定しているか 人数を超えても同条件で提供している 限定数の運用実態を確認する
「数量限定」 実際に数量が限定されているか 限定数の根拠がない 在庫・提供数の根拠を確認する
「対象者全員に」 対象者・対象商品・除外条件が明確か 適用除外・併用不可条件が伝わらない 対象・除外・併用条件を明示する

打消し表示・注記でどこまで補えるか

第2話でも触れたとおり、注記(打消し表示)を付ければ必ず問題が解消するわけではありません。価格や条件の表示では、注記が小さい・本文から遠い・分かりにくいと、消費者に重要な条件が伝わらないことがあります。

とくに、「無料」「半額」と大きく表示し、手数料や自動更新の条件を小さく注記するような構成は注意が必要です。重要な条件は、注記任せにするのではなく、本文・申込画面・価格表示の近くで、はっきりと示すことが基本です。消費者庁の打消し表示に関する資料でも、強調表示と打消し表示の対応関係が消費者に認識されるかが重要とされており、文字の大きさ・配置箇所・色などから総合的に判断されます。スマホ表示で読みにくくなっていないかも、実機で確認しておくと安心です。

図:価格・条件・注記の関係

強調表示(目立つ訴求)

例:「初回無料」「今だけ半額」
消費者が真っ先に受け取る印象

重要な条件

例:自動更新・手数料・解約条件・適用範囲
購入判断に必要な情報

この2つが「セットで」消費者に伝わることが必要。重要な条件を小さな注記だけに頼らない。

確認項目 危ない例 修正の方向性
注記の文字の大きさ 「無料」は大きく、条件は極端に小さい 重要条件は読みやすい大きさで示す
注記の配置 条件がページ最下部やスクロール先にある 強調表示の近くに、対応が分かるよう配置する
本文との整合性 「完全無料」と注記の費用条件が矛盾している 本文の表現自体を実態に合わせて調整する
申込画面との一致 LPの表示と申込画面・規約の条件が食い違う LP・申込画面・規約・FAQの条件を一致させる
スマホ表示 PCでは見えても、スマホで条件が見落とされる 実機のスマホ表示で重要条件の見え方を確認する
条件の具体性 「条件があります」とだけ書いて内容が不明 重要な条件は具体的に、分かりやすく示す

企業法務が広告審査で見るべきチェックポイント

ここまでの内容を、価格・条件表示の広告審査チェックリストにまとめます。第10話では、優良誤認・有利誤認を含む総合的なチェックリストを扱いますが、まずは有利誤認の観点から確認してみてください。

チェック項目 確認する資料・画面 NGになりやすい状態 修正・確認の方向性
税込/税抜:表示価格はどちらか明確か 価格表示・総額表示 税抜価格を目立たせ、総額が分かりにくい 総額(税込)が分かるように表示する
比較対象価格:何と比べているか 比較対照価格の表記 「通常価格」の意味・対象が曖昧 比較対象を明確にする
比較対象の実態:その価格で販売実績があるか 販売履歴・価格設定記録 実態のない通常価格を使用 販売実績に基づく価格を用いる
割引計算:割引率・割引額は正しいか 割引前価格・計算根拠 割引前価格に実態がない/計算が合わない 実態のある価格で正しく算定する
無料・初回・返金の条件:明確か LP・申込画面・規約 条件が小さく・遠くにしか書かれていない 重要条件を近接して明確に示す
自動更新・定期・解約:分かりやすいか 申込画面・規約・解約フロー 更新・解約条件が伝わらない 更新時期・解約方法を明示(特商法も確認)
キャンペーン:期間・対象者・対象商品は明確か キャンペーン要項・実施履歴 期間・対象・除外が曖昧 条件を具体的に示し、実態と合わせる
追加費用:送料・手数料・登録料が隠れていないか 料金表・申込画面 付随費用が表示されていない 付随費用と総額を明示する
注記の整合:本文の強い表現と矛盾しないか 注記の文面・配置 本文の断定を注記で打ち消している 本文表現自体を実態に合わせる
スマホ表示:重要条件が見えるか 実機のスマホ表示 スマホで条件が見落とされる 実機で見え方を確認する
画面間の一致:LP・申込画面・規約・FAQが一致するか 各画面・ドキュメント 画面ごとに条件が食い違う 表示内容を統一する
後出し説明:条件を後から説明する構成でないか 導線全体 申込直前まで重要条件が出てこない 重要条件を判断前に示す

修正コメントの書き方(事業部への返し方)

価格・条件表示でも、伝え方が大切です。「これは景表法違反です」と止めるだけでなく、リスクの所在と、必要な資料・代替表現を併せて示すと、事業部は前に進みやすくなります。法務は、お得な訴求を止める係ではなく、実態の範囲内で正しく魅力を伝える表現に整える係でありたいところです。

元の表現 リスク 法務コメント例 修正案の方向性
「今だけ半額」 恒常的な割引だと「期間限定」の実態とズレるおそれ 「割引の実施期間と履歴を確認させてください。恒常的であれば『○○円』と通常表示にする案もあります」 実際の期間に合わせる/通常価格表示に切り替える
「通常価格から70%OFF」 通常価格に実態がないと二重価格表示の問題に 「『通常価格』での販売実績(時期・期間)を教えてください。実態に合う比較対象に調整できます」 販売実績のある価格を比較対照にする
「完全無料」 送料・手数料などがあると誤認を招くおそれ 「別途かかる費用があれば教えてください。『○○は無料(送料別)』のように範囲を示す案があります」 無料の範囲と付随費用を明確に示す
「全額返金保証」 返金の条件・期間・手数料が不明だと誤認のおそれ 「返金の対象・期間・手続・対象外条件を確認させてください。条件を近くに明示できると安心です」 返金条件をはっきり、近接して示す
「初回限定」 2回目以降の価格・条件が分かりにくいと誤認のおそれ 「2回目以降の価格・回数・総額を教えてください。継続条件を分かりやすく示す形にできます」 継続条件・総額を明確に示す
「業界最安値」 最上級・比較表示。実際に他社の方が安い事実が一件でもあると、注記を付けても誤認とされるおそれが高い 「『最安値』は、注記で範囲を限定しても、実態が伴わないと打消しきれないことがあります。他社価格を継続的に調査・追随する仕組み(他社が安ければ差額対応するなど)はありますか。難しければ、当社の具体的な強みや価格体系を訴求する表現に切り替える案があります」 価格追随の仕組みがない限り最上級表現は避け、「高コスパ」「分かりやすい価格体系」など具体的訴求に置換する
「先着100名限定」 実際は人数で限定していないと実態とズレるおそれ 「限定数の運用(超過時の扱い)を確認させてください。実態に合わせた表現にできます」 限定の運用実態に合わせる

上記のコメント例は、建設的な伝え方のサンプルです。実際の表現の適否は、価格の実態や条件、個別事案によって判断が分かれます。最終的な表現は、資料を確認のうえ、必要に応じて専門家にも相談しながら決めるのが安全です。

景品表示法シリーズ 全10話の読み方

本シリーズは、景品表示法を「表示規制」「景品規制」「違反対応」「実務チェック」の順に体系立てて学べる構成です。第3話の有利誤認表示は、第2話の優良誤認表示、第6話の二重価格表示、第10話の広告審査チェックリストと特につながりが深い内容です。

話数 タイトル 扱うテーマ とくに読んでほしい人
第1話 景品表示法とは?企業法務が押さえる広告表示・景品規制の基本 全体像・2本柱の理解 これから景品表示法を学ぶすべての人
第2話 優良誤認表示とは?効果・性能・品質を良く見せすぎる広告の注意点 優良誤認表示 効果・性能・品質・実績を訴求する人
第3話 有利誤認表示とは?価格・割引・無料表示で誤認を招くケースを解説 有利誤認表示(本記事) 価格・割引・無料・返金の表示を扱う人
第4話 景品表示法の「表示」とはどこまで?Web広告・LP・SNS・営業資料の対象範囲 「表示」の対象範囲 広告以外の資料も確認する管理部門の人
第5話 No.1表示・満足度表示の景品表示法リスク|調査根拠と注記のチェックポイント No.1・満足度表示 ランキング・満足度を訴求する人
第6話 二重価格表示・期間限定割引の注意点|通常価格・セール価格をどう見せるか 二重価格・割引表示 セールやキャンペーン価格を設計する人
第7話 ステマ規制とは?口コミ・PR投稿・インフルエンサー広告の基本 ステルスマーケティング規制 SNS・インフルエンサー施策を扱う人
第8話 景品規制の基本|総付景品・一般懸賞・共同懸賞の違いをわかりやすく解説 景品規制 プレゼント・懸賞・キャンペーンを企画する人
第9話 景品表示法違反が疑われたときの初動対応|広告修正・社内調査・再発防止 違反対応・初動 万一のときの対応を準備したい法務担当者
第10話 広告審査の景品表示法チェックリスト|企業法務が見るべき実務ポイント 広告審査チェックリスト 日々の広告審査を効率化したい人

よくある質問(FAQ)

Q. 有利誤認表示とは何ですか?

有利誤認表示は、景品表示法5条2号で禁止される不当表示の一類型で、商品・サービスの価格その他の取引条件について、実際のものや競争事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認させ、自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示をいいます。「お得に見せること」自体ではなく、実態や条件を超えて誤認させるほど有利に見せることが問題になります。

Q. 「通常価格から○%OFF」と表示する場合、何に注意すべきですか?

比較対照とする「通常価格」に販売実態があるかが重要です。価格表示ガイドラインでは、過去の販売価格を比較対照価格とする場合、一般的に、セール開始時点からさかのぼる8週間のうち、その価格で販売されていた期間が販売期間の過半を占めるときに「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とみてよいとされています。実態のない通常価格やごく短期間の価格と比較すると、二重価格表示として問題になり得ます。割引率の計算根拠も確認しておくと安心です。

Q. 「無料トライアル」と表示する場合、どこまで条件を書けばよいですか?

無料期間、無料期間後に自動更新・有料化するかどうか、その時期と料金、解約の方法・期限などの重要な条件を、消費者が契約前に分かるように示すことが大切です。「無料」だけを強調して条件を小さな注記に頼ると、有利誤認のおそれが高まります。無料トライアルや定期購入は、景品表示法に加えて特定商取引法上の表示義務(最終確認画面での表示など)も関係するため、両方の観点から確認することをおすすめします。

まとめ

第3話では、有利誤認表示を価格・条件表示の観点から整理しました。要点は次のとおりです。

  • 有利誤認表示は、価格や取引条件を、実態や条件を超えて有利に見せる表示で問題になり得る
  • 明らかな虚偽だけでなく、条件の不明確さ・通常価格の実態不足・注記の見落としやすさ・適用条件の分かりにくさにも注意が必要
  • 広告審査では、「何と比べて安いのか」「どの条件で有利なのか」「重要条件が消費者に伝わるか」を確認することが重要
  • 無料・返金保証・期間限定などの強い訴求は、条件表示とセットで確認する。無料トライアルや定期購入は特定商取引法も関係する

有利誤認は、法務・マーケティング・営業が「実態と条件をどう正しく伝えるか」という共通の物差しを持つことで、リスクを抑えつつお得さを伝えられる分野です。次回の第4話では、そもそも景品表示法の「表示」とはどこまでを指すのか——Web広告・LP・SNS・営業資料の対象範囲を解説します。

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参考資料

本記事の作成にあたり、以下の公的資料を参照しました(2026年6月3日最終確認。最新の情報は各リンク先をご確認ください)。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。有利誤認表示の該当性は、価格の実態や取引条件、個別の事実関係によって判断が分かれることがあります。無料トライアル・定期購入などは特定商取引法上の表示義務も関係します。実際のご対応にあたっては、最新の法令・ガイドライン・公表事例を確認のうえ、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。

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