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はじめに:「この広告、大丈夫でしょうか」と言われたら

「広告を公開した後に根拠資料がないと分かった」「消費者から表示が誇大ではないかと指摘された」「消費者庁・都道府県から照会が来た」「SNSで炎上した」「取引先から景表法違反ではないかと言われた」——。景品表示法違反が疑われる場面は、ある日突然訪れます。

このとき大切なのは、慌てて広告を消すことでも、何もせず様子を見ることでもありません。まず表示・企画の現物を保存し、事実関係と根拠資料を確認したうえで、リスクに応じた修正・調査・再発防止を進めることです。「違反が疑われる」ことと「違反が確定する」ことは別であり、初動の進め方次第で、その後の対応の質が大きく変わります。

第9話では、違反が疑われた場合の初動対応を、企業法務・管理部門が実務で使える形で整理します。違反対応は、処分を避けるためだけのものではなく、消費者に誤認を与えない体制を整えるためのものです。

  • 違反が疑われる典型場面と、初動でやるべきこと・やってはいけないこと
  • 表示・証拠の保存と、広告停止・修正の判断の考え方
  • リスク類型(優良誤認・有利誤認・No.1・二重価格・ステマ・景品規制)ごとの確認資料
  • 消費者庁・都道府県から照会が来た場合の基本対応
  • 措置命令・課徴金納付命令・指導・確約手続・不実証広告規制の基本
  • 原因分析と再発防止、広告審査フローの改善

本記事は、企業法務・管理部門の実務理解を助けることを目的とした一般的な情報提供であり、個別の法律相談や行政判断に代わるものではありません。違反の該当性や対応方針は、個別の事実関係によって判断が分かれます。重要な案件では、最新の法令・運用基準を確認し、早期に弁護士等の専門家へ相談することをおすすめします。

景品表示法違反が疑われる典型場面

まず、どんな場面で違反が疑われるのかを整理します。いずれも「疑い」の段階であり、直ちに違反が確定するわけではありません。落ち着いて、最初に確認すべき資料から手をつけます。

場面 主なリスク類型 最初に確認する資料 初動の方向性
公開後に根拠資料が不十分と分かった 優良誤認 効果・性能の根拠資料、試験・調査資料 表示保存→根拠確認→修正要否
LP・SNSに誇大表現があると分かった 優良誤認・有利誤認 表示の現物、原稿、承認履歴 表示保存→事実確認→修正要否
価格・割引・無料の条件が実態と違う 有利誤認・二重価格 価格履歴、販売実績、適用条件 実態確認→表示の整合性確認
No.1・満足度の調査根拠が弱い No.1・満足度(優良誤認等) 調査報告書、調査設計、注記 調査根拠と表示の対応を確認
PR表示が不十分なインフルエンサー投稿 ステマ規制 依頼文、対価、投稿、PR表示 関与と広告表示の確認
景品キャンペーンの上限超過のおそれ 景品規制 企画書、景品額、取引価額、応募条件 区分と上限の確認
消費者・取引先・競合・行政から指摘 各類型 指摘内容、対象表示 事実確認→窓口一本化
消費者庁・都道府県から照会・資料提出依頼 各類型 照会文書、対象・期限・求められる資料 期限把握→社内で正確に整理

初動対応の全体像

違反が疑われたときの基本フローは、おおむね次のとおりです。表示の保存から始め、事実関係を確認し、リスクに応じて修正・調査・再発防止へと進みます。

図:景表法違反が疑われたときの初動フロー

指摘・発覚
表示・証拠の保存(現物・掲載状況)
事実関係・根拠資料の確認
リスク類型の仮分類
広告停止・修正・差替えの判断
社内調査・関係者ヒアリング
行政対応・消費者対応の検討
再発防止・審査フロー改善
項目 やるべきこと やってはいけないこと 理由
表示の保存 修正前の現物・掲載状況を保存する 記録を残さず消す 後から事実を確認できなくなる
事実確認 客観資料で事実を確認する 確認せず「問題ない」と即断 誤った判断につながる
説明・記録 ありのままを正確に記録する 証拠隠滅・資料改ざん・虚偽説明 重大な信頼喪失・別問題を招く
被害拡大防止 リスクが高い表示は停止・修正を検討 放置して掲載を続ける 誤認の拡大・損害の拡大
窓口 社内窓口を一本化する 各部署が個別にバラバラ回答 説明の不整合・混乱
専門家相談 重要案件は早期に外部相談 こじれてから相談 初動の遅れが選択肢を狭める

まず保存すべき資料

違反対応では、後から「何が、いつ、どのように掲載されていたか」を確認できるよう、証拠保全・資料保存が重要です。ここで強調したいのは、保存は証拠隠滅とは正反対の行為だという点です。問題部分を修正する場合でも、修正前の状態を残してから対応します。資料の改ざんや、都合の悪い記録の削除は絶対に行わないことが、法務・コンプライアンスの基本姿勢です。

資料 保存する理由 注意点
広告・LP・商品ページ・SNS投稿・バナーのスクリーンショット 表示の現物を確定する 修正前に取得・日時を記録
公開日時・修正日時・配信期間 掲載期間を特定する 管理画面の記録も併せて保存
配信媒体・配信対象・広告管理画面 どこに出ていたかを確認 外部媒体・二次利用先も確認
広告原稿・制作過程・承認履歴 誰がどう決めたかを確認 メール・チャットも対象
根拠資料・試験結果・調査資料 表示の裏づけを確認 作成日・出所を確認
販売実績・価格履歴・通常価格の履歴 価格・割引表示の実態を確認 POS・ECログを保存
キャンペーン企画書・景品額・応募条件・当選者数 景品規制の確認 抽選・発送記録も保存
インフルエンサー・アフィリエイト・代理店とのやり取り 関与・依頼内容を確認 依頼文・対価の記録を保存
消費者・取引先・行政からの指摘内容 論点・経緯を確認 受領日・文書を保存
社内の承認・審査記録 審査経緯を確認 審査フローの記録を保存

広告を停止・修正するかの判断

問題がある可能性が高い場合は、被害拡大防止の観点から、速やかな停止・修正を検討します。ただし、何が掲載されていたか分からなくなる形で証拠を消すのではなく、掲載状態・修正前後を保存してから対応することが大切です。対応の選択肢としては、表示全体の削除、問題部分だけの修正、一時停止、代替表示への差替えなどがあり、事案に応じて選びます。

修正後の表示も、根拠資料・注記・条件表示と整合しているかを確認します。なお、公開停止・修正をしたからといって、処分のリスクが必ずなくなるわけではありません。すでに行われた表示が問題とされる可能性は残ります。一方で、迅速で誠実な自主是正は、事案によっては重要な対応要素になります。消費者庁・都道府県から照会が来ている場合は、修正の進め方も含めて対応方針を慎重に検討します。

対応案 向いている場面 注意点 実務対応
一時停止 事実確認に時間がかかる 停止前の状態を保存 確認中は掲載を止める
問題部分の修正 一部の表現・注記に問題 修正前後を記録 根拠・注記と整合させる
代替表示への差替え 訴求自体は維持したい 差替え後も根拠を確認 裏づけのある表現にする
表示全体の削除 根拠がなく是正が難しい 削除前に現物を保存 二次利用先も削除依頼

リスク類型ごとに確認する資料

同じ「景表法違反の疑い」でも、リスク類型によって確認すべき資料が異なります。仮分類したうえで、類型に応じた資料を確認します。各類型の詳しい考え方は、本シリーズの該当記事も参照してください。

リスク類型 主な確認資料 見落としやすいポイント 関連するシリーズ記事
優良誤認表示 効果・性能・品質の根拠資料、試験・調査資料 根拠の作成時期・出所、表示との対応 第2話 優良誤認表示
有利誤認表示 価格履歴、適用条件、無料・返金の条件 条件の表示位置・実態との一致 第3話 有利誤認表示
No.1・満足度表示 調査報告書、調査設計、注記 調査の客観性・表示との対応 第5話 No.1・満足度表示
二重価格・期間限定割引 通常価格の販売実績、価格履歴 比較対照価格の実態、連続セール 第6話 二重価格表示
ステマ規制 依頼文、対価、投稿、PR表示 関与の有無、広告である旨の明示 第7話 ステマ規制
景品規制 企画書、景品額、取引価額、応募条件、当選者数 区分(懸賞か総付か)、上限額、市価評価 第8話 景品規制

社内ヒアリングの進め方

事実関係は、関係者へのヒアリングで補完します。ポイントは、責任追及よりも事実確認を優先することです。誰を責めるかではなく、何が起きたかを正確に把握することが、適切な是正につながります。口頭の説明だけでなく、メール・チャット・企画書・承認履歴・広告管理画面などの客観資料で裏づけること、そしていつ・誰から・何を確認したかを記録することが重要です。社外関係者への確認は、契約関係・秘密保持・証拠保全に注意します。

確認先 確認する内容 注意点 保存すべき資料
事業部・マーケティング 企画意図、訴求の根拠、表示の経緯 責任追及でなく事実確認 企画書・指示・やり取り
営業 顧客説明・営業資料の内容 口頭説明も対象 提案資料・メール
商品開発 効果・性能の根拠、試験データ 根拠の出所・作成時期 試験・調査資料
広告代理店・制作会社 制作経緯、表現の決定者 契約・秘密保持に注意 発注書・校正履歴
インフルエンサー担当 依頼内容、対価、PR表示 関与の有無を確認 依頼文・投稿記録
EC・カスタマーサポート 価格・条件の運用、問い合わせ状況 実際の運用と表示の差 管理画面・問い合わせ記録

消費者庁・都道府県から照会が来た場合

消費者庁や都道府県から、照会・資料提出依頼・ヒアリング・報告依頼などが来ることがあります。まずは、期限、対象表示、対象商品・サービス、求められている資料を正確に把握します。事実を確認せずに即答しないこと、虚偽説明・資料改ざん・都合のよい一部資料だけの提出は避けることが大前提です。社内で窓口を一本化し、回答案をレビューしてから提出します。

行政対応は、「徹底的に争うか、全面的に従うか」の二択ではありません。事実関係・法的評価・再発防止策を区別して整理し、事実を正確に示して誠実に対応することが重要です。照会が来た時点では違反が確定しているわけではありませんが、対応を誤ると不利に働くことがあるため、重要案件では早期に外部弁護士等への相談を検討します。

確認項目 内容 注意点 実務対応
期限 回答・提出の期限 遅延は不利に働き得る 早期に社内共有
対象 対象表示・商品・期間 範囲を正確に把握 該当資料を特定
求められる資料 根拠資料・販売実績など 一部だけ・改ざんは厳禁 正確・網羅的に準備
回答方針 事実・評価・再発防止の整理 事実未確認で即答しない 回答案をレビュー
窓口 社内の対応窓口 個別バラバラ対応を避ける 窓口を一本化
専門家 外部弁護士等の関与 こじれる前に相談 重要案件は早期相談

措置命令・課徴金納付命令・指導の基本

違反が認められた場合などに関係する主な制度を整理します。措置命令(7条)は、違反行為の差止め、再発防止、周知などを命じる行政処分で、公表されるため信用への影響が大きいものです。課徴金納付命令(8条)は、金銭的な不利益を課す制度です。指導は、行政処分には至らないものの是正を促すもので、運用上の対応として行われます。

課徴金については、いくつか重要なポイントがあります。課徴金の対象は、優良誤認表示・有利誤認表示であり、ステマ規制(5条3号の指定告示)や景品規制は課徴金の対象とはされていません。ただし、同じ事案に優良誤認・有利誤認が含まれる場合には、別途課徴金の問題が生じ得ます。課徴金額は、課徴金対象期間の対象商品・サービスの売上額に3%を乗じた額で、対象期間は最大3年間です。また、表示の根拠となる情報を確認するなど相当の注意を怠った者でないと認められるときや、課徴金額が150万円未満(対象売上額が5,000万円未満)のときは、課徴金の納付は命じられません。ただし、この「相当の注意を怠った者でない」という免責は容易に認められるものではなく、表示の根拠を確認していたか、社内の管理体制が整っていたかなどが問われます。「審査したが見落とした」というだけで当然に免責されるわけではない点に注意が必要です。なお、課徴金には、所定の方法による自主申告で50%の減額、一般消費者への自主返金による減額(返金相当額に応じた減額)の仕組みもあります。

さらに、不実証広告規制(7条2項)により、優良誤認のおそれがある表示について、期間を定めて合理的根拠を示す資料の提出が求められ、提出できない場合は優良誤認表示とみなされることがあります。この提出期限は原則15日以内と短いため、求められた場合は速やかに動く必要があります。これは措置命令・課徴金の両方に関係します。なお、令和5年改正(令和6年10月1日施行)で罰則も拡充されており、措置命令に違反した場合の罰則(2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金)に加え、故意に優良誤認表示・有利誤認表示をした者に対する直罰(100万円以下の罰金)が新設されました。直罰には両罰規定があり、行為者だけでなく法人にも罰金(100万円以下)が科され得ます。行政の報告・資料提出の求めに対する虚偽報告や検査拒否などにも罰則があるため、「引き延ばす」「ごまかす」といった対応は避けなければなりません。

制度 内容 主な対象 実務上の影響 注意点
措置命令(7条) 差止め・再発防止・周知等を命じる行政処分 不当表示・過大景品 公表され信用に影響 表示・景品の両方が対象
課徴金納付命令(8条) 売上額×3%の金銭的不利益 優良誤認・有利誤認 金銭負担が大きい ステマ・景品規制は対象外
指導 行政処分に至らない是正の働きかけ 各類型 公表されない運用が多い 軽視せず是正する
不実証広告規制(7条2項) 合理的根拠資料の提出要求 優良誤認のおそれ 提出できないとみなし規定 根拠は事前に整える

課徴金額の規模基準(150万円未満・売上額5,000万円未満)は「命じられない場合がある」という整理であり、「この金額以下なら何をしても安全」という意味ではありません。また、減額の仕組みがあるからといって、自主申告すれば必ず処分を避けられるわけでもありません。制度を正しく理解したうえで、事実関係に即して判断することが大切です。

確約手続とは何か(令和6年10月1日施行)

確約手続は、令和5年改正(令和6年10月1日施行)で導入された制度です。景品表示法に違反する疑いのある行為について、事業者が自主的な是正措置計画(確約計画)を申請し、消費者庁の認定を受ける仕組みです(26条以下)。認定を受けた場合、その違反被疑行為について措置命令・課徴金納付命令の適用を受けないこととなり、迅速な是正が期待できます。

注意したいのは、確約手続は違反の有無を確定させずに自主的な是正を促す仕組みであり、認定は「違反と認定したものではない」ことを明らかにしたうえで公表される点です。つまり、認定された事実自体は公表されます。また、確約手続は必ず利用できるわけではありません過去10年以内に措置命令・課徴金納付命令が確定している(繰り返し違反)場合や、根拠がないと認識しながら表示するなど悪質・重大な違反被疑行為の場合は、確約手続の通知が行われないことがあります。確約手続には期限があり、確約手続の通知を受けた場合、確約計画を申請するときは通知の日から60日以内に申請する必要があります。確約計画には、表示の是正、一般消費者への周知、返金・補償、再発防止、管理体制の整備などが含まれ得ます。なお、令和7年2月には、消費者庁が確約計画を認定した初の事案も公表されています。

図:確約手続の位置づけ

違反被疑行為の発覚・調査
消費者庁が確約手続通知を行う場合(悪質・重大・繰り返しは対象外のことも)
事業者が確約計画を申請(通知日から60日以内・是正・周知・返金・再発防止等)
消費者庁が認定(違反認定ではない旨を示して公表)
当該行為について措置命令・課徴金納付命令の適用を受けない
計画の履行・再発防止

確約手続は有力な選択肢ですが、利用できるかは事案によります。悪質・重大な場合や繰り返し違反では通知が行われないことがあり、確約計画が認定されない場合は通常の手続に移行します。初動段階では、確約手続の可能性も念頭に置きつつ、まずは事実関係と是正方針を正確に整理することが大切です。

確認項目 内容 注意点 実務対応
対象になり得るか 悪質・重大・繰り返しでないか 過去10年の処分歴等を確認 該当性を早期に検討
是正方針 表示是正・周知・返金・再発防止 実行可能な計画にする 計画の柱を整理
公表の理解 認定は公表される(違反認定ではない) 「公表されない」と誤解しない 広報と方針を共有
履行体制 計画の履行・管理体制 履行できる体制か 履行・記録の体制を整備

消費者対応・取引先対応・公表対応

消費者から問い合わせが来た場合は、事実確認前に過度な断定・謝罪・補償約束をしない一方で、不誠実・曖昧な回答を続けると炎上・信用低下につながるため、バランスが重要です。取引先・販売代理店・広告代理店・アフィリエイト先とも、対応方針を共有します。表示を修正した場合は、外部媒体・二次利用素材・SNS投稿・アフィリエイト記事も修正対象に含めるのを忘れないようにします。必要に応じて、お知らせ・訂正・返金・問い合わせ窓口の設置を検討します。公表対応は、法務・広報・経営・カスタマーサポートが連携して決めます。

対応先 よくある場面 注意点 実務対応
消費者 問い合わせ・苦情 断定・過度な謝罪・約束を避ける 事実確認後に誠実に回答
取引先・代理店 説明要請・是正依頼 契約・責任分担を確認 方針を共有し連携
広告代理店・アフィリエイト先 表示修正の波及 二次利用・外部記事も対象 修正・削除を依頼し確認
社内(広報・経営) 公表・お知らせの要否 部署横断で連携 公表方針を一元的に決定

原因分析と再発防止

景品表示法対応は、広告を直して終わりではありません。なぜ起きたのかを分析し、再発防止と審査フローの改善まで行うことで、はじめて対応が完結します。原因は、知識不足・根拠資料不足・広告審査漏れ・媒体別確認不足・外部委託管理不足・承認フロー不備・記録保存不足などに分けて整理すると、対策が立てやすくなります。

図:広告停止・修正から再発防止までの流れ

停止・修正被害拡大を止める
周知・訂正必要に応じ案内
原因分析なぜ起きたか
再発防止策フロー・教育
定期モニタリング継続的に確認

再発防止策としては、広告審査フローの整備、チェックリストの活用、根拠資料の保管ルール、事業部教育、外部委託契約の見直し、SNS・アフィリエイトの管理、キャンペーンの事前審査、定期モニタリングなどが考えられます。これらは、消費者庁の「事業者が講ずべき表示等の管理上の措置に関する指針」が示す管理上の措置とも関係します。次回の第10話では、こうした審査を日常的に行うための広告審査チェックリストを扱います。

原因 典型例 再発防止策 関係部署
知識不足 担当者が景表法を知らずに表現 事業部向け教育・研修 法務・人事・事業部
根拠資料不足 効果表示の裏づけがない 根拠の事前確認・保管ルール 商品開発・法務
広告審査漏れ 審査を通さず公開 審査フロー・チェックリスト 法務・マーケ
媒体別確認不足 スマホ・SNSの見え方を未確認 媒体別の確認手順 マーケ・制作
外部委託管理不足 代理店・アフィリエイト任せ 委託契約・モニタリング 法務・調達・マーケ
承認フロー不備 承認者・権限が不明確 承認フローの明確化 法務・経営
記録保存不足 根拠・審査記録が残らない 記録保存の仕組み化 法務・情報システム

景品表示法違反対応の社内チェックリスト

初動から再発防止までを、チェックリストとして整理します。事案ごとに、抜け漏れがないか確認してください。

チェック項目 確認する資料・画面 NGになりやすい状態 対応の方向性
問題となる表示・企画を特定したか 表示の現物・企画書 対象が曖昧なまま進める 対象を特定する
掲載・配信・実施期間を確認したか 管理画面・配信記録 期間が不明 期間を特定する
修正前の表示を保存したか スクリーンショット等 保存せず修正・削除 修正前に保存する
配信媒体・広告管理画面を保存したか 媒体・管理画面 外部媒体を見落とす 媒体ごとに保存
根拠資料・試験・調査資料を確認したか 根拠資料 根拠が見つからない 出所・作成時期を確認
販売実績・価格履歴を確認したか POS・ECログ 通常価格の実態が不明 実態を確認
景品の企画書・額・条件・当選者数を確認したか 企画書・抽選記録 上限・区分が未確認 区分と上限を確認
ステマの依頼文・対価・PR表示を確認したか 依頼文・投稿 関与の有無が不明 関与と明示を確認
関係部署・外部委託先にヒアリングしたか ヒアリング記録 口頭のみで裏づけなし 客観資料で確認・記録
広告停止・修正・差替えの要否を判断したか 対応方針 放置・無記録の削除 保存後に判断
消費者・取引先・行政対応の要否を判断したか 対応方針 窓口がバラバラ 窓口を一本化
措置命令・課徴金・確約手続の可能性を検討したか 事実・制度整理 制度を検討していない 可能性を整理
再発防止策を決めたか 再発防止計画 修正だけで終了 原因分析と対策
経営層への報告要否を判断したか 報告方針 報告が遅れる 重要度に応じ報告
すべての判断・対応を記録したか 対応記録 記録が残らない 経緯を記録・保存

修正コメント・社内報告の書き方

事業部・上司・経営層への伝え方も、初動対応の一部です。「違反です」と即断しすぎない一方で、リスクが高い場合は曖昧にしないこと、必要資料・暫定対応・恒久対応を分けて示すことがポイントです。経営層には、事実・リスク・対応方針・判断してほしい事項を簡潔に伝えます。法務は止める係ではなく、被害拡大防止と再発防止を進める係です。

場面 コメント例 伝えるべきポイント 注意点
根拠資料が見つからない効果表示 「この効果表示の根拠資料を確認させてください。見つからない場合は、いったん表現を調整し、裏づけが整い次第戻す方向で進めましょう」 根拠確認・暫定対応・恒久対応 断定せず、是正の道筋を示す
通常価格の実態が弱い割引表示 「通常価格の販売実績(期間・価格履歴)を確認させてください。実態が弱い場合は比較対照価格の表示を見直しましょう」 価格履歴の確認 実態に基づき判断
No.1表示の調査資料が不十分 「調査報告書と調査設計を共有いただけますか。表示と調査結果の対応を確認し、注記の調整を検討します」 調査根拠と表示の対応 調査の客観性を確認
PR表示のないインフルエンサー投稿 「依頼・対価の有無を確認させてください。関与がある場合は、広告である旨を分かりやすく表示する形に整えましょう」 関与と広告表示の明示 投稿の修正範囲も確認
景品額が上限を超えている可能性 「取引価額と景品の市価を確認させてください。区分(懸賞か総付か)に応じて上限内に収める方向で調整しましょう」 区分・取引価額・上限 市価で評価する
行政から資料提出依頼が来た 「対象・期限・求められる資料を整理しました。窓口を一本化し、事実を正確に確認のうえ回答案を作成します。重要案件として外部相談も検討します」 対象・期限・窓口一本化 即答せず正確に
経営層へ初動報告する 「事実、想定されるリスク類型、暫定対応(停止・修正)、今後の対応方針、判断いただきたい事項を整理して報告します」 事実・リスク・方針・判断事項 簡潔・正確に

景品表示法シリーズ 全10話の読み方

本シリーズは、景品表示法を「表示規制」「景品規制」「違反対応」「実務チェック」の順に体系立てて学べる構成です。第9話の違反対応は、第2話〜第8話で学んだ各類型の知識を、いざというときに使う回です。最終回の第10話では、日常の広告審査チェックリストを扱います。

話数 タイトル 扱うテーマ とくに読んでほしい人
第1話 景品表示法とは?企業法務が押さえる広告表示・景品規制の基本 全体像・2本柱の理解 これから景品表示法を学ぶすべての人
第2話 優良誤認表示とは?効果・性能・品質を良く見せすぎる広告の注意点 優良誤認表示 効果・性能・品質・実績を訴求する人
第3話 有利誤認表示とは?価格・割引・無料表示で誤認を招くケースを解説 有利誤認表示 価格・割引・無料・返金の表示を扱う人
第4話 景品表示法の「表示」とはどこまで?Web広告・LP・SNS・営業資料の対象範囲 「表示」の対象範囲 どの資料を広告審査に回すか迷う人
第5話 No.1表示・満足度表示の景品表示法リスク|調査根拠と注記のチェックポイント No.1・満足度表示 ランキング・満足度・実績を訴求する人
第6話 二重価格表示・期間限定割引の注意点|通常価格・セール価格をどう見せるか 二重価格・割引表示 セールやキャンペーン価格を設計する人
第7話 ステマ規制とは?口コミ・PR投稿・インフルエンサー広告の基本 ステルスマーケティング規制 SNS・インフルエンサー・口コミを扱う人
第8話 景品規制の基本|総付景品・一般懸賞・共同懸賞の違いをわかりやすく解説 景品規制 プレゼント・懸賞・キャンペーンを企画する人
第9話 景品表示法違反が疑われたときの初動対応|広告修正・社内調査・再発防止 違反対応・初動(本記事) 万一のときの対応を準備したい法務担当者
第10話 広告審査の景品表示法チェックリスト|企業法務が見るべき実務ポイント 広告審査チェックリスト 日々の広告審査を効率化したい人

よくある質問(FAQ)

Q. 景品表示法違反が疑われたら、まず何をすべきですか?

まず、問題となりそうな表示・企画の現物(広告・LP・SNS投稿・キャンペーン企画書など)と、掲載状況・配信期間を保存します。そのうえで、根拠資料・販売実績・価格履歴・依頼記録などの事実関係を確認し、リスク類型を仮分類します。慌てて削除するのではなく、修正前の状態を記録してから、停止・修正の要否を判断するのが基本です。証拠隠滅・資料改ざん・虚偽説明は絶対に避けてください。

Q. 広告をすぐ削除すれば、景品表示法上の問題はなくなりますか?

削除や修正は被害拡大を防ぐうえで重要ですが、それだけで処分のリスクが必ずなくなるわけではありません。すでに行われた表示が問題とされる可能性は残ります。また、何が掲載されていたか分からなくなる形で削除すると、後の事実確認ができなくなり、かえって不利に働くことがあります。修正前の状態を保存したうえで対応し、原因分析と再発防止まで行うことが大切です。

Q. 確約手続を使えば、必ず措置命令や課徴金を避けられますか?

確約手続は、事業者が自主的な是正計画を申請し、認定されれば当該行為について措置命令・課徴金納付命令の適用を受けない制度です。ただし、必ず利用できるわけではありません。過去10年以内に措置命令・課徴金納付命令が確定している場合や、悪質・重大な違反被疑行為の場合は、確約手続の通知が行われないことがあります。また、認定された事実自体は(違反認定ではない旨を示したうえで)公表されます。「確約手続を使えば必ず処分を避けられる」とは考えず、事実関係と是正方針を正確に整理することが重要です。

まとめ

第9話では、景品表示法違反が疑われたときの初動対応を整理しました。要点は次のとおりです。

  • まず表示・企画の現物を保存し、事実関係と根拠資料を確認することが重要
  • 慌てて削除するのではなく、修正前後の記録を残し、リスク類型ごとに確認資料を整理する
  • 広告停止・修正・差替え、消費者対応、行政対応、取引先対応は、事案の重大性に応じて検討する
  • 措置命令・課徴金納付命令・確約手続・指導・不実証広告規制などの制度を理解しておく
  • 表示を直して終わりではなく、原因分析と再発防止、広告審査フローの改善まで行う
  • 証拠隠滅・資料改ざん・虚偽説明は絶対に行わず、事実を正確に整理して誠実に対応する

違反対応は、処分を避けるためだけのものではなく、消費者に誤認を与えない体制を整えるためのものです。最終回の第10話では、こうした問題を未然に防ぐための「広告審査の景品表示法チェックリスト」を、企業法務が使える形で整理します。

Legal GPTでは、広告審査・契約審査・社内規程・法務実務の整理に役立つ情報を、初心者にもわかりやすく発信しています。景品表示法をはじめとする企業法務の実務対応を、「どこを見ればよいか」が分かる形で整理していますので、万一のときの初動対応の備えにもご活用ください。

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参考資料

本記事の作成にあたり、以下の公的資料を参照しました(2026年6月3日最終確認。最新の情報は各リンク先をご確認ください)。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。違反の該当性、行政の対応、確約手続の利用可否、課徴金の有無などは、個別の事実関係によって判断が分かれます。実際のご対応にあたっては、最新の法令・運用基準・公表事例を確認のうえ、早期に弁護士等の専門家にご相談ください。また、問題発覚時の証拠隠滅・資料改ざん・虚偽説明は、重大な信頼喪失につながるため、絶対に行わないでください。

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