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はじめに:「この景品、いくらまで出せる?」に答えるために

「購入者全員にノベルティを配りたい」「抽選で商品券を出したい」「来店者に先着で景品を渡したい」「SNSで誰でも応募できるキャンペーンをしたい」——。マーケティング部門や営業部門からこうした相談を受けたとき、景品表示法の景品規制を確認することになります。

これまでの第2話〜第7話は「表示規制」の話でしたが、景品規制は別の考え方です。景品規制は、広告表現の問題ではなく、過大な景品類によって、消費者が商品・サービスの内容や価格を冷静に判断できなくなることを防ぐ制度です。確認は、「景品類に当たるか」→「取引に付随するか」→「懸賞か総付か」→「上限額はいくらか」と順に見ていきます。

この記事で学べること
  • 景品規制とは何か、「景品類」とは何か
  • 「取引に付随して提供される経済上の利益」が問題になること
  • 総付景品・一般懸賞・共同懸賞・オープン懸賞の違い
  • 取引価額の考え方と、それぞれの上限額(最高額・総額)
  • 値引き・キャッシュバック・ポイント還元との違い
  • BtoB・業種別告示・公正競争規約で確認すべきこと

本記事は、企業法務・管理部門の実務理解を助けることを目的とした一般的な情報提供であり、個別の法律相談や行政判断に代わるものではありません。景品規制の該当性・区分・上限は、企画の実態や個別事案によって判断が分かれることがあります。重要な判断にあたっては最新の法令・告示・運用基準を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

景品規制とは何か

景品表示法は、不当表示だけでなく、過大な景品類の提供も規制しています。景品につられて、商品・サービスの内容や価格を冷静に判断できなくなることを防ぐのが目的です。そのため、景品類の提供方法に応じて一般懸賞・共同懸賞・総付景品などに区分し、それぞれの限度額を確認します。

大切なのは、景品を出すこと自体が禁止されているわけではないという点です。景品類に当たるか、どの区分か、上限はいくらかを確認し、表示内容や業種別ルールも整えれば、適法に実施できる余地があります。「景品規制があるからキャンペーンは危ない」ではなく、「分類と上限を確認すれば実施できる」分野です。

確認ステップ 内容 実務で見るポイント
① 景品類に当たるか 顧客誘引手段として取引に付随して提供する経済上の利益か 値引き・アフターサービス等の例外に当たらないか
② 取引に付随するか 購入・来店など取引に付随して提供するか 取引付随性がなければオープン懸賞等を検討
③ 懸賞か総付か 抽選・くじ・優劣などで決まるか、もれなく提供か 偶然性・優劣の有無で区分が変わる
④ 取引価額はいくらか 上限額の計算基準となる取引の価額 取引価額の考え方を確認する
⑤ 最高額・総額の上限内か 区分ごとの最高額・総額の上限 最高額と総額の両方を確認(総付は総額規制なし)
⑥ 業種別ルールはあるか 業種別景品告示・公正競争規約 自社業界の特別ルールを確認する

図:景品規制の4区分(早わかり)

総付景品

取引に付随し、懸賞によらずもれなく提供。
最高額:取引価額1,000円未満は200円、1,000円以上は取引価額の10分の2総額規制なし

一般懸賞

取引に付随し、抽選・くじ・優劣等で提供。
最高額:取引価額の20倍(5,000円以上は10万円)。総額:売上予定総額の2%以内。

共同懸賞

複数事業者が共同で行う懸賞。
最高額:取引価額にかかわらず30万円。総額:売上予定総額の3%以内。

オープン懸賞

購入・来店を条件とせず誰でも応募(取引付随性なし)。
景品規制の対象外で、現在、金品等の上限額の定めなし

「景品類」とは何か

景品表示法上の「景品類」は、日常的な意味の「景品」より広い概念です。基本的には、①顧客を誘引する手段として、②取引に付随して提供される、③物品・金銭その他の経済上の利益を指します。物品、金券、商品券、ポイント、キャッシュバック、旅行、招待、サービス利用権などが問題になり得ます。

一方で、正常な商慣習に照らして値引きと認められるもの、アフターサービス、試供品などは、景品類に当たらない場合があります。ここでも、企画の名称ではなく実態で判断されます。「おまけ」「プレゼント」「特典」といった呼び方にかかわらず、上記①〜③に当たるかを確認します。

景品の価額は「仕入原価」ではなく「市価」で考える

上限額を判断するときの景品類の価額は、事業者の仕入価格ではなく、一般消費者がそれを通常購入するときの価格(市価)を基準に考えるのが原則です(同じものが市販されていない場合は、入手価格などから算定します)。たとえば「通常500円で売られているグッズを、大量発注で原価80円で仕入れた」場合でも、景品としての価額は原則500円で評価されます。「原価が安いから上限内」という判断は誤りになりやすいので注意してください。

提供内容 景品類該当性の考え方 注意点
物品・ノベルティ 取引に付随して提供されれば景品類に当たり得る 市価・提供額で上限を判断する
商品券・金券・ギフトカード 経済上の利益として景品類に当たり得る 額面で上限を判断する
キャッシュバック 実態が値引きと認められれば景品類に当たらない場合がある 選択式・物品併用などで景品類になる場合も
ポイント 使途・交換対象・現金同等性などで判断 値引きに使える場合と景品提供の場合で異なる
値引き 正常な商慣習上の値引きは原則景品類に当たらない 名称が「値引き」でも実態で判断
アフターサービス・試供品 正常な商慣習上のものは景品類に当たらない場合がある 過大・誘引目的が強い場合は要確認

取引付随性とは何か

景品規制で重要なのが、「取引に付随して」提供されるかです。商品・サービスの購入者を対象にする場合は、取引付随性が認められやすくなります。消費者庁も、商品・サービスの利用者や来店者を対象として金品等を提供する場合は、取引に付随して提供するものとみなされ、景品規制の対象になるとしています。来店も取引につながるため、来店者対象の提供も取引付随性が問題になります。

購入を条件にしなくても、取引の相手方を主たる対象とする場合や、取引につながる蓋然性が高い場合には、取引付随性が認められ得ます。一方で、購入・来店を条件とせず広く誰でも応募できる企画は、オープン懸賞として景品規制の対象外になる場合があります。ただし、「無料会員登録」「アプリダウンロード」「資料請求」「クイズのヒントが購入者だけに分かる」などは、取引付随性の有無を個別に判断する必要があります。「無料で応募できるから大丈夫」と即断しないことが大切です。

図:景品規制の入口判断

経済上の利益を提供するか
顧客誘引の手段か
取引に付随しているか
景品類に該当する可能性
一般懸賞・共同懸賞・総付景品・オープン懸賞を分類
企画例 取引付随性の見方 注意点 実務対応
購入者を対象にした抽選 取引付随性が認められやすい 懸賞として上限を確認 取引価額・最高額・総額を確認
来店者全員に景品 来店も取引につながり付随性が問題に 取引価額の考え方に注意 総付景品として上限を確認
誰でも応募できる企画 購入・来店が条件でなければ付随性なしの場合も 実態として購入者優遇がないか オープン懸賞として整理できるか確認
無料会員登録・アプリDL 個別判断(取引につながる蓋然性等) 「無料だから対象外」と即断しない 条件と実態を確認する
クイズのヒントが商品に 購入者だけが応募しやすいと付随性が問題に 実質的に購入が条件になっていないか 応募条件を確認する

総付景品とは何か

総付景品(そうづけけいひん/ベタ付け景品)は、懸賞によらず、一般消費者に対して提供される景品類です。購入者全員、来店者全員、条件を満たした全員、先着順でもれなく提供する景品などが典型です。消費者庁も、商品・サービスの購入の申込み順または来店の先着順により提供される金品等も総付景品に該当するとしています。

ただし、購入者が申込時点で景品を受けられるか分からず、偶然性によって提供相手が決まるような場合は、懸賞とみなされることがあります(先着順・申込順は偶然性に含まれないとされています)。総付景品の最高額は、取引価額1,000円未満の場合は200円、1,000円以上の場合は取引価額の10分の2です。一般懸賞と違い、総額の規制はありません。来店者全員に提供する場合などは、取引価額の考え方に注意が必要です。

取引価額 景品類の最高額 注意点
1,000円未満 200円 800円の商品 → 最高200円 取引価額の考え方を確認
1,000円以上 取引価額の10分の2 5,000円の取引 → 最高1,000円 10,000円なら最高2,000円

取引価額の取り方に注意:上限は「景品が提供される取引のうち最も低い取引価額」を基準に考える必要があります。たとえば「購入者全員に500円相当のノベルティ」とする企画でも、対象に300円の商品が含まれていて、その商品を買った人にも景品が渡るなら、取引価額は300円(1,000円未満=上限200円)と見られ、500円の景品は上限超過になり得ます。一定額以上の購入を条件にする場合は、告知だけでなく、申込み・カートの導線でその条件が確保されているかも確認しておくと安心です。

また、来店者全員に景品を提供する場合は、取引価額の取り方に注意が必要です。消費者庁Q&Aでは、来店者にもれなく景品を提供する場合の取引価額を100円とし、提供できる景品類の最高額を200円とする例が示されています。もっとも、実質的に一定額以上の購入が条件となっている場合などは、来店と購入が同一の取引と見られる可能性があるため、企画の実態を確認する必要があります。

企画例 区分 上限確認のポイント 注意点
購入者全員にノベルティ 総付景品 取引価額の10分の2(または200円) 商品ごとに取引価額が異なる場合に注意
来店者全員に景品 総付景品 取引価額の考え方を確認 購入を条件としない場合の価額の扱い
先着100名に景品 原則として総付景品 先着順は懸賞に当たらない 偶然性で決まる場合は懸賞に
条件を満たした全員に特典 総付景品 もれなく提供なら総付 抽選要素が入ると懸賞に

一般懸賞とは何か

懸賞とは、くじ・抽選・クイズ・ゲーム・正誤・優劣などによって、景品類の提供相手や提供内容を決めるものです。このうち、共同懸賞に当たらない通常の懸賞が一般懸賞です。購入者の中から抽選、応募者の中から抽選、クイズ正解者から抽選、ゲームの成績上位者に景品を提供する場合などが該当します。

一般懸賞の上限は、最高額が取引価額の20倍(取引価額5,000円以上の場合は10万円)、総額が懸賞に係る売上予定総額の2%以内です。最高額と総額の両方を確認する必要があります。なお、抽選方法自体に細かな法律上の手続規定はありませんが、告知した抽選方法と異なる方法で当選者を決めることや、実際の当選者数が告知と異なることは、取引条件に関する不当表示(有利誤認)の問題になり得ます。また、カード合わせ(絵合わせ)の方法による懸賞は禁止されているため、ゲーム・アプリ・デジタルキャンペーンでは特に注意が必要です。

「当選者数の偽り」は景品規制ではなく表示規制(有利誤認)の問題に

注意したいのは、たとえば「抽選で100名に当たる」と告知しながら実際にはごく一部しか当選させない、当選者数や抽選方法を偽る、といったケースです。これは景品の上限額(景品規制)の問題ではなく、取引条件に関する有利誤認表示(表示規制)の問題になり得ます。有利誤認表示は、措置命令だけでなく、要件を満たせば課徴金の対象にもなり得ます。「景品企画だから最悪でも表示の差止めだけ」とは限らないため、告知どおりの運用と記録が重要です(違反時の対応は第9話で扱います)。

取引価額 景品類の最高額 景品類の総額
5,000円未満 取引価額の20倍 売上予定総額の2%以内 3,000円 → 最高60,000円
5,000円以上 10万円 売上予定総額の2%以内 5,000円・10,000円 → 最高10万円
企画例 区分 上限確認のポイント 注意点
購入者の中から抽選 一般懸賞 最高額(20倍/10万円)と総額(2%) 取引価額と売上予定総額を確認
クイズ正解者から抽選 一般懸賞 同上 正誤・抽選で決まると懸賞
ゲーム成績上位者に景品 一般懸賞 同上 優劣で決まると懸賞
アプリのデジタル抽選 一般懸賞 同上+カード合わせ禁止 絵合わせ型は禁止に当たらないか確認

共同懸賞とは何か

共同懸賞は、一定の条件の下で複数の事業者が共同して行う懸賞です。商店街、ショッピングビル、一定地域の小売業者・サービス業者、一定地域の同業者などが共同で行う企画が典型です。複数事業者が共同で行うことで過度な誘引になりにくいと考えられ、一般懸賞よりも高い上限が認められています。

共同懸賞の上限は、最高額が取引価額にかかわらず30万円、総額が懸賞に係る売上予定総額の3%以内です。ただし、共同懸賞に当たるには、共同実施といえる実態が必要で、単に複数社の名前を並べただけでは足りない可能性があります。費用分担、共同での告知・運営など、実際に共同で行っている実態が問われます。また、一般懸賞と共同懸賞を同時に行う場合には、両方に当選する可能性があるか、重複当選を制限しているかなどにより、提供できる景品類の合計額を調整する必要があります。単純にそれぞれの上限額を足せるわけではないため、企画設計時に個別に確認することが重要です。

区分 景品類の最高額 景品類の総額 典型例 注意点
共同懸賞 取引価額にかかわらず30万円 売上予定総額の3%以内 商店街・地域の同業者などの共同企画 共同実施の実態が必要/一般懸賞と同時実施時は調整

オープン懸賞との違い

オープン懸賞は、商品・サービスの購入や来店を条件とせず、新聞・テレビ・雑誌・ウェブサイト・SNS等で広く告知し、はがき・Web・メールなどで応募できる企画です。取引に付随しないため、景品規制は適用されません。提供できる金品等の最高額は、従来1,000万円とされていましたが、平成18年4月に規制が撤廃され、現在は具体的な上限額の定めはありません

ただし、購入者だけが応募できる、来店者だけが応募できる、購入しないと応募に必要な情報が分からない、有料会員の方が当選しやすいように見える、などの場合は、取引付随性が問題になり、オープン懸賞とは認められない可能性があります。また、オープン懸賞でも、応募条件・当選者数・抽選方法・景品内容について誤認を招く表示をすれば、表示規制(有利誤認等)の問題は残ります。

「無料だからオープン懸賞」と即断しない

金銭の支払いを求めていなくても、応募条件によっては取引付随性が問題になり、一般懸賞(上限あり)として扱われる可能性があります。たとえば、無料トライアル(お試し契約)への登録を応募条件にする、自社サービスへのログインや会員専用画面を条件にする、クイズの答えが購入した商品やパッケージを見ないと分からないといった構成は、取引につながる蓋然性などから取引付随性が認められ得ます。これらは一律に判断できるものではなく個別判断ですが、「お金を払わせていないから上限なし」と即断するのは避けたいところです。

企画例 取引付随性 景品規制の対象か 注意点
誰でも応募できるSNSキャンペーン 原則なし 対象外(オープン懸賞) 実態として購入者優遇がないか
購入者だけが応募できる あり 対象(一般懸賞等) 懸賞として上限を確認
購入しないと応募情報が分からない あり得る 対象になり得る 実質的な購入条件か確認
有料会員が当選しやすい 問題になり得る 個別判断 取引付随性を確認

値引き・キャッシュバック・ポイント還元との違い

値引きは、正常な商慣習に照らして値引きと認められる場合、原則として景品類には当たりません。キャッシュバックやポイント還元も、実態として値引きと評価される場合があります。一方で、物品景品と金銭還元を選択させるなど、同一企画で景品類の提供と併せて行う場合には、景品類に該当することがあります(消費者庁の例でも、物品かキャッシュバックを選択させる場合はいずれも景品類に該当し、総付景品規制の対象とされています)。

ポイント還元は、使途・交換対象・提供条件・現金同等性・値引きとの関係などによって検討が必要です。なお、景品規制の対象にならない場合でも、有利誤認表示、二重価格表示、特定商取引法、資金決済法などの別の規制が関係する可能性があります。

施策 景品類該当性の考え方 注意点 関連する別リスク
値引き 正常な商慣習上の値引きは原則景品類でない 名称でなく実態で判断 二重価格表示(有利誤認)
キャッシュバック 値引きと評価されれば景品類でない場合がある 物品との選択式などは景品類に 有利誤認・特商法
ポイント還元 使途・現金同等性などで判断 値引き利用か景品提供かで異なる 有利誤認・資金決済法
物品景品と金銭の選択式 いずれも景品類に該当し得る 総付景品規制の対象に 上限額の超過

BtoB・業種別ルール・公正競争規約で注意すべきこと

事業者向け(BtoB)のキャンペーンでも、取引に付随してくじなどの方法で物品を提供する場合は、提供相手が事業者でも懸賞として景品規制の対象になり得ます。一方、懸賞によらず事業者向けにもれなく提供する場合は、原則として一般的な総付景品規制は適用されません。ただし、「BtoBだから一律に対象外」と即断しないことが大切です。

また、医療用医薬品業、医療機器業、衛生検査所業など、例外的に事業者向け提供も規制対象となる業種があります。さらに、新聞業、雑誌業、不動産業、医療用医薬品業・医療機器業・衛生検査所業などには業種別景品告示があり、出版物小売業などでは公正競争規約による自主規制が設けられています。自社業界に特別ルールがないかを確認しておきましょう。

場面 一般ルール 注意すべき例外 実務対応
BtoBで懸賞 事業者向けでも懸賞は景品規制の対象になり得る 「BtoBだから対象外」と即断しない 懸賞として上限を確認
BtoBでもれなく提供 原則として一般的な総付景品規制は適用されない 医療用医薬品業等は事業者向けも規制対象 自社業種の告示を確認
業種別告示のある業界 新聞・雑誌・不動産・医療用医薬品業等 一般ルールと異なる上限・規制 業種別告示を確認
公正競争規約のある業界 業界の自主ルール 一般の景品規制と異なる場合がある 所属業界の規約を確認

キャンペーン企画の判断フロー

ここまでの流れを、企画を検討するときの判断フローとして整理します。名称ではなく実態で、上から順に確認していきます。

経済上の利益を提供するか
顧客誘引の手段か
取引に付随するか
付随なし → オープン懸賞等として整理できるか確認
取引付随性あり
懸賞か(抽選・くじ・優劣・正誤で決まるか)
懸賞でない → 総付景品(最高額:200円/取引価額の10分の2)
懸賞である → 共同懸賞に当たるか
共同懸賞でない → 一般懸賞(最高額:20倍/10万円、総額:2%)
取引価額・最高額・総額を確認(共同懸賞は最高額30万円・総額3%)
判断項目 確認する資料 NGになりやすい状態 修正・確認の方向性
景品類該当性 企画書・提供内容 値引きと景品の区別が曖昧 実態で該当性を確認
取引付随性 応募条件・対象者 「無料応募だから対象外」と即断 条件・実態を確認
懸賞か総付か 提供方法(抽選か全員か) 偶然性・優劣の有無を誤認 提供方法を確認
取引価額 対象商品の価格・条件 取引価額の取り方が不適切 取引価額の考え方を確認
最高額・総額 景品の市価・売上予定総額 上限超過・総額未確認 区分ごとの上限で確認

景品規制の広告審査チェックリスト

キャンペーン審査の実務で使えるよう、確認ポイントを整理します。第10話では表示規制と合わせた総合的なチェックリストを扱いますが、まずは景品規制の観点から確認してみてください。

チェック項目 確認する資料・画面 NGになりやすい状態 修正・確認の方向性
何を提供する企画か 企画書・提供内容 提供物の内容が不明確 提供物を特定する
経済上の利益か 提供内容 該当性の検討漏れ 物品・金券・ポイント等を確認
顧客誘引の手段か 企画目的 誘引目的の見落とし 目的・位置づけを確認
取引に付随しているか 応募条件 付随性の即断 条件・実態を確認
応募条件は何か 購入・来店・登録・DL等 条件が曖昧 応募条件を明確化
オープン懸賞として整理できるか 応募方法・対象 実質購入者優遇 取引付随性を確認
懸賞か総付か 提供方法 区分の誤り 偶然性・優劣を確認
抽選・ゲーム性があるか 提供方法 カード合わせの混入 禁止方法でないか確認
先着順か、もれなくか 提供方法 先着と抽選の混同 提供方法を確認
一般懸賞か共同懸賞か 実施主体・共同実態 名義だけの共同 共同実施の実態を確認
取引価額はいくらか 対象商品の価格 取引価額の誤り 取引価額の考え方を確認
最高額は上限内か 景品の市価・提供額 上限超過 区分ごとの最高額で確認
総額は上限内か 売上予定総額・景品総額 総額未確認(懸賞) 2%/3%で確認(総付は総額規制なし)
景品の市価評価 仕入額・市価 評価額の過小評価 市価で評価する
告知と運用の一致 告知内容・抽選記録 当選者数・方法の不一致 告知どおり運用・記録
業種別告示・規約 業種別ルール 特別ルールの見落とし 自社業界を確認
表示規制も問題ないか 告知表示 誤認を招く表示 優良誤認・有利誤認も確認
記録の保存 企画書・抽選・発送記録 記録が残っていない 事後確認できるよう保存

修正コメントの書き方(事業部への返し方)

景品企画でも、止めるだけでなく、どの区分に当たりそうかと、上限内に収める方向性を併せて示すと、事業部は前に進みやすくなります。法務は、企画を止める係ではなく、区分と上限を確認して実施できる形に整える係でありたいところです。

相談内容・元の企画 想定される区分 法務コメント例 修正案の方向性
「購入者全員に3,000円相当のノベルティ」 総付景品 「対象商品の取引価額を教えてください。総付景品は取引価額の10分の2が上限なので、15,000円以上の取引が条件なら可能です」 取引価額に応じて景品額を調整
「購入者の中から抽選で10万円分の商品券」 一般懸賞 「取引価額が5,000円以上なら最高10万円まで可能です。あわせて、売上予定総額の2%以内(総額)も確認させてください」 最高額・総額の両方を確認
「来店者全員に景品」 総付景品 「来店者対象は取引付随性が問題になります。取引価額の考え方を確認し、上限内の景品額にしましょう」 取引価額・上限を確認
「SNSで誰でも応募できるプレゼント」 オープン懸賞の可能性 「購入・来店が条件でなければオープン懸賞として整理できる可能性があります。実質的に購入者だけが応募しやすくないか確認させてください」 取引付随性がない設計にする
「会員登録者だけが応募できる企画」 個別判断 「登録が取引につながるかで判断が変わります。無料登録の内容と、購入との関係を教えてください」 条件・実態を確認して区分
「先着100名に景品」 原則総付景品 「先着順は原則として総付景品です。取引価額の10分の2(または200円)の上限で設計しましょう」 総付の上限で設計
「商店街全体で抽選会」 共同懸賞の可能性 「共同実施の実態があれば共同懸賞として最高30万円・総額3%まで可能です。費用分担や共同運営の実態を確認させてください」 共同実施の実態を確認
「ポイント還元と景品を同時に」 個別判断 「ポイントの使途と、景品との選択関係を教えてください。選択式だと景品類に該当する場合があります」 該当性を確認し上限内に

上記のコメント例は、建設的な伝え方のサンプルです。景品規制の区分・上限・取引価額の取り方は、企画の実態や個別事案によって判断が分かれます。最終的な設計は、企画書等の資料を確認のうえ、必要に応じて専門家にも相談しながら決めるのが安全です。

景品表示法シリーズ 全10話の読み方

本シリーズは、景品表示法を「表示規制」「景品規制」「違反対応」「実務チェック」の順に体系立てて学べる構成です。第8話の景品規制は、第1話で示した2本柱のうちのもう一方であり、第9話の違反対応、第10話の広告審査チェックリストとつながります。

話数 タイトル 扱うテーマ とくに読んでほしい人
第1話 景品表示法とは?企業法務が押さえる広告表示・景品規制の基本 全体像・2本柱の理解 これから景品表示法を学ぶすべての人
第2話 優良誤認表示とは?効果・性能・品質を良く見せすぎる広告の注意点 優良誤認表示 効果・性能・品質・実績を訴求する人
第3話 有利誤認表示とは?価格・割引・無料表示で誤認を招くケースを解説 有利誤認表示 価格・割引・無料・返金の表示を扱う人
第4話 景品表示法の「表示」とはどこまで?Web広告・LP・SNS・営業資料の対象範囲 「表示」の対象範囲 どの資料を広告審査に回すか迷う人
第5話 No.1表示・満足度表示の景品表示法リスク|調査根拠と注記のチェックポイント No.1・満足度表示 ランキング・満足度・実績を訴求する人
第6話 二重価格表示・期間限定割引の注意点|通常価格・セール価格をどう見せるか 二重価格・割引表示 セールやキャンペーン価格を設計する人
第7話 ステマ規制とは?口コミ・PR投稿・インフルエンサー広告の基本 ステルスマーケティング規制 SNS・インフルエンサー・口コミを扱う人
第8話 景品規制の基本|総付景品・一般懸賞・共同懸賞の違いをわかりやすく解説 景品規制(本記事) プレゼント・懸賞・キャンペーンを企画する人
第9話 景品表示法違反が疑われたときの初動対応|広告修正・社内調査・再発防止 違反対応・初動 万一のときの対応を準備したい法務担当者
第10話 広告審査の景品表示法チェックリスト|企業法務が見るべき実務ポイント 広告審査チェックリスト 日々の広告審査を効率化したい人

よくある質問(FAQ)

景品規制とは何ですか?

景品規制は、景品表示法のうち、過大な景品類の提供を規制する制度です。景品につられて商品・サービスの内容や価格を冷静に判断できなくなることを防ぐことを目的としています。景品類の提供方法に応じて、総付景品・一般懸賞・共同懸賞などに区分し、それぞれの最高額・総額の上限を確認します。景品を出すこと自体が禁止されているわけではなく、区分と上限を確認して実施すれば問題ありません。

総付景品と一般懸賞の違いは何ですか?

総付景品は、懸賞によらず、購入者全員・来店者全員・先着順などで「もれなく」提供する景品類です。最高額は取引価額1,000円未満で200円、1,000円以上で取引価額の10分の2で、総額の規制はありません。一方、一般懸賞は、抽選・くじ・クイズ・ゲームの優劣などによって提供相手や内容を決めるもので、最高額は取引価額の20倍(5,000円以上は10万円)、総額は売上予定総額の2%以内です。提供方法に偶然性・優劣があるかどうかが区分の分かれ目になります。

オープン懸賞なら景品の上限はありませんか?

オープン懸賞は、商品の購入や来店を条件とせず、誰でも応募できる企画で、取引に付随しないため景品規制は適用されません。提供できる金品等の上限額は、平成18年4月に規制が撤廃され、現在は具体的な定めがありません。ただし、実際には購入者だけが応募しやすい、購入しないと応募情報が分からない、といった場合は取引付随性が問題になり、オープン懸賞と認められないことがあります。また、応募条件や当選者数などについて誤認を招く表示をすれば、表示規制の問題は残ります。

まとめ

第8話では、景品表示法のもう一つの柱である景品規制を整理しました。要点は次のとおりです。

  • 景品規制は、過大な景品類によって消費者の自主的・合理的な選択が妨げられることを防ぐ制度
  • まず、景品類に当たるか、取引に付随しているかを確認する
  • 次に、総付景品・一般懸賞・共同懸賞・オープン懸賞のどれに近いかを分類する
  • 上限は区分ごとに異なる(総付=200円/取引価額の10分の2、一般懸賞=20倍/10万円・総額2%、共同懸賞=30万円・総額3%、オープン懸賞=上限の定めなし)
  • 景品額だけでなく、取引価額・売上予定総額・対象者・応募条件・当選者数・業種別ルールも確認する

景品規制も「キャンペーンは危ない」ではなく、「分類と上限を確認すれば実施できる」分野です。名称ではなく実態で区分を見極め、上限の範囲で設計することが、安心してキャンペーンを行う近道になります。次回の第9話では、「景品表示法違反が疑われたときの初動対応」について、広告修正・社内調査・再発防止を解説します。

Legal GPTでは、広告審査・契約審査・社内規程・法務実務の整理に役立つ情報を、初心者にもわかりやすく発信しています。景品表示法をはじめとする企業法務の実務対応を、「どこを見ればよいか」が分かる形で整理していますので、キャンペーン・景品企画の確認にもご活用ください。

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参考資料

本記事の作成にあたり、以下の公的資料を参照しました(2026年6月3日最終確認。最新の情報は各リンク先をご確認ください)。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。景品規制の該当性・区分・上限額の計算は、企画の実態・取引価額の取り方・個別の事実関係によって判断が分かれることがあります。実際のご対応にあたっては、最新の法令・告示・運用基準・業種別ルール・公正競争規約を確認のうえ、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。

読了後の実務化ガイド

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