メディアから不正疑惑の問い合わせが来たら?企業が最初にやること

  • 企業不祥事の初動対応|第10話 / 全15話
  • カテゴリー:コンプライアンス・規程対応
  • 法令・情報基準日:2026年9月5日
Legal GPT 実務ツール|用途別

無料・時短・仕組み化の3つから選ぶ

無料で試す

まず使用感を確認したい方へ

AIで時短

AI指示文づくりを軽くしたい方へ

仕組み化する

部署の対応をそろえたい方へ

迷ったら 1分診断全商品一覧

火曜15時20分、代表電話に記者からの一本

火曜日15時20分。会社の代表電話に、新聞社の記者を名乗る人物から電話が入りました。

「御社の○○工場で、検査結果の改ざんが長期間行われていたとの情報があります。工場長と品質保証部長も把握していたと聞いています。会社として事実を認識していますか。本日18時までに回答をお願いします。なお、複数の関係者への取材と資料で確認しています。」

電話を受けた総務担当者にとっては、初めて聞く話です。このとき、次の3つの対応が考えられます。

対応 担当者の発言 何が起きるか
A「そんな事実は聞いていません。たぶん違うと思います」確認前の否定が「会社は否定した」という会社見解として扱われる可能性がある
B「担当者に代わります」電話を回された社員が、準備も確認もないまま取材に応じる可能性がある
C「お問い合わせ内容を正確に確認して社内で確認しますので、質問事項と回答期限、連絡先をメールでもお送りいただけますか」回答を約束する前に、質問内容を固定し、社内確認の時間を作れる

Aは誠実に答えたつもりでも、事実確認の前に会社の立場を決めてしまっています。Bは親切に見えて、電話を受けた次の社員に判断を丸投げしています。Cは「答えない」のではなく、答えるための前提を整えています

判断の軸

メディア対応の最初の仕事は「答えること」ではない。質問を正確に受け取り、会社の確認・判断ルートへ載せることである。

本記事では、会社が把握していなかった不正疑惑について突然メディアから問い合わせが来たとき、最初の数時間で会社がどう初動体制を立ち上げるかを整理します。回答文の作り方は第11話、「ノーコメント」の是非は第12話で扱います。

【シリーズナビゲーション】企業不祥事の初動対応|全15話

記者から問い合わせが来たら、その場で答える?

結論から言うと、事実確認が終わっていない社員が、その場で会社見解を即答する必要はありませんし、すべきでもありません。まず次の6ステップの順で動きます。

ステップ やること 目的
1. 受領問い合わせを受け付け、即答しない未確認の会社見解を出さない
2. 固定記者情報・質問・期限を記録する何を聞かれたかを正確に残す
3. 共有広報・法務等へエスカレーションする会社の判断ルートへ載せる
4. 保全必要に応じて証拠保全を行う確認前に証拠が消えるのを防ぐ
5. 確認確認済み事実と未確認事項を分ける事実と推測・評価を混ぜない
6. 方針決定回答責任者・窓口・回答方針を決める一貫した対外説明にする

メディアの取材依頼と「法的な照会」は別物

最初に整理しておきたいのは、メディアからの取材依頼と、次のような照会・命令は性質が違うという点です。

  • 行政機関による法令に基づく報告徴収・立入検査
  • 警察・検察からの捜査関係事項照会等
  • 裁判所の命令等
  • 証券取引所からの照会

新聞社・テレビ局・通信社・ネットメディア等からの取材依頼は、それ自体として行政上の報告命令のような法的手続ではありません。したがって、記者から質問を受けたことだけで、行政報告と同じ形式・期限で回答する義務が生じるわけではありません(行政・警察からの問い合わせは第14話)。

一方で、「記者だから答える義務は一切ない、無視してよい」と考えるのも誤りです。メディアの問い合わせとは別のレーンで、次のような義務や要請が同時に動いていることがあるからです。

  • 上場会社の適時開示(有価証券上場規程)
  • 業法・個人情報保護法等に基づく行政報告(第9話
  • 取引先・顧客との契約上の通知義務
  • すでに公表した情報との整合性
本記事の基本姿勢

メディアへの取材対応そのものと、法令・取引所規則・契約に基づく情報開示義務は分けて考え、両方を同じ事実表の上で管理する。

最初の電話で確認する10項目

受付、総務、営業、IR、工場の事務所など、記者から最初に連絡を受ける人は選べません。電話を受けた人が最低限確認するのは次の10項目です。

  1. 媒体名・部署(例:○○新聞社会部)
  2. 記者名
  3. 連絡先(電話番号・メールアドレス)
  4. 問い合わせ日時と方法(電話・メール・訪問・SNS等)
  5. 受けた人(自分の氏名・部署)
  6. 質問事項(できるだけ発言どおり)
  7. 記者が示した事実(日時・部署・人物・取引等)
  8. 記者が持っていると述べた資料・情報の概要(「内部資料」「複数の関係者の証言」等)
  9. 回答期限(何時何分か)
  10. 記事・番組の掲載/放送予定

可能であれば、質問事項をメール等の文字でも送ってもらうよう依頼します。

注意「書面でなければ受け付けない」は避ける

硬直的な運用は勧めません。記者側の事情で電話しかできない場合もありますし、書面化を条件にすると、会社が何を聞かれたのかさえ把握できないまま記事化される可能性があります。まず口頭の質問を会社側で正確にメモし、そのうえで書面化を依頼するという順序にします。

記者本人をどう確認する?

メディアを名乗る問い合わせが、実際には情報収集目的の第三者、詐欺、ソーシャルエンジニアリング、競合他社による探りであることもあり得ます。特に不正疑惑という「断りにくい話題」は、非公開情報を引き出す口実として使われやすい類型です。

確認方法の例は次のとおりです。

確認項目 方法
媒体の実在公式サイト・媒体ページを確認する
記者の在籍媒体の公式代表番号へ会社側から折り返し、在籍・担当を確認する
メールアドレス媒体の公式ドメインかを確認する
過去の記事署名記事等があれば参考にする

注意したいのは、個人の携帯番号からの電話やフリーメールだけで「偽物」と断定しないことです。フリーランスの記者や、外出先から連絡する記者もいます。判断に迷う場合は、「確認のため、御社の代表番号経由で折り返してもよいですか」と伝えれば足ります。

厳守どれだけ急かされても守る
  • 「すぐ答えてください」と言われても、相手方確認前に事実関係を話さない
  • 「今ここで資料を送ってください」と言われても、内部資料・個人情報・非公開情報を送らない

最初の電話で言ってはいけないこと

警告受付段階で避ける発言・行動
  • × 「そのような事実はありません」/まだ確認していない段階で否定しない。後で事実が判明すれば、会社が虚偽の否定をしたと受け取られます。
  • × 「あり得ないと思います」/社員個人の感想が、会社の回答として扱われるおそれがあります。
  • × 「○○部長に聞いてください」/疑惑の対象者本人へ、会社の準備なく取材を回すことになります。
  • × 「誰から聞いたんですか?」/いきなり情報源の探索に進まない(後述)。
  • × 「記事にしないでください」/会社の正式方針がないまま掲載中止を求めない。
  • × 内部資料をその場で送る
  • × 他の社員の氏名・個人情報を話す
  • × 「オフレコなら話します」/オフレコは記者と取材相手の間の取材慣行・約束であり、法律上の秘密保持制度として当然に機能するものではありません。範囲や解釈の食い違いも起こり得ます。
  • × 「回答しません」/回答しない・コメントを控えるといった方針は、会社として判断すべき事項です(第12話)。受付担当者が即決しない。

最初に使える「受領回答」

受付担当者に必要なのは、会社見解ではなく「受け取るための言葉」です。例えば次のような言い方があります。

「お問い合わせありがとうございます。内容を正確に確認したうえで社内で確認しますので、質問事項、回答期限、ご担当者様の連絡先をメールでもお送りいただけますでしょうか。」
「現時点では私から事実関係について回答できません。担当部署で確認いたしますので、お問い合わせ内容を承ります。」

これらは万能のテンプレートではなく、初期受領のための例です。

注意「現在調査中です」と言わない

まだ調査を開始していない段階で「調査中」と言えば、それ自体が不正確な説明になります。また、調査中であると伝えることは「会社が何らかの疑いを認識している」というメッセージにもなり得ます。受付段階では「確認します」「担当部署へつなぎます」にとどめます。

実務で使える「メディア問い合わせ受付票」

受付の内容は、次のような受付票に落とし込みます。電話メモや記憶による要約ではなく、この票を社内共有の起点にします。

メディア問い合わせ受付票 PRESS INQUIRY INTAKE SHEET/受付者がその場で記入する
A. 受付情報 記入欄
受付日時2026年 月 日 時 分
受付方法電話/メール/訪問/SNS/その他( )
受付者(氏名・部署)
媒体名・部署
記者名
電話番号
メールアドレス
本人確認状況未確認/公式代表番号で在籍確認済/公式ドメイン確認済/その他( )
B. 問い合わせ内容 記入欄
質問全文(発言どおり)
書面での質問送付依頼依頼済/受領済(受領日時: )/依頼せず(理由: )
記者が示した事実
記者が示した資料・証言の存在
記者が自ら明らかにした情報源の属性例:「元従業員」「取引先」「複数の関係者」(記者が述べた範囲のみ記載)
記事化の予定テーマ
回答期限 月 日 時 分
掲載/放送予定
C. 社内初期評価 記入欄
すでに公表されている情報
当社で把握済みの案件か把握済(案件名: )/新規
新規の不正情報として初期評価が必要か要/不要
緊急度高/中/低(理由: )
社内エスカレーション先
回答責任者
回答窓口
証拠保全の要否要検討/不要(理由: )
行政報告の要否確認確認中/該当なし/該当(根拠: )
適時開示の要否確認(上場会社)確認中/該当なし/検討要
次回連絡予定 月 日 時 分(連絡者: )

「記者が自ら明らかにした情報源の属性」の欄は、記者の側から述べた範囲だけを書く欄です。情報源の氏名を聞き出すための欄ではありません。

質問は「原文」と「社内確認項目」に分ける

メディア対応で見落とされやすいのが、質問そのものを正確に固定することです。

例えば記者から「不正を会社ぐるみで隠していたんですか?」と聞かれたとします。これを社内メモで「不正があったか確認」と短縮すると、質問に含まれていた前提が消えてしまいます。この質問には、少なくとも4つの別論点が含まれています。

質問原文 分解した社内確認項目
「不正を会社ぐるみで隠していたんですか?」① 不正(に当たり得る行為)が存在したのか
② 会社として(誰が、いつ)認識していたのか
③ 組織的な関与があったのか
④ 隠蔽に当たる行為があったのか

冒頭の記者の質問も同じです。「検査結果の改ざんが長期間」「工場長と品質保証部長も把握」「会社として認識」は、それぞれ確認方法も確認先も違います。

実務上のルールは3つです。

  • 記者からメールで質問が届いた場合は、原文をそのまま保存する
  • 電話の場合は、可能な限り具体的な発言内容を記録する(要約ではなく、言い回しを残す)
  • 社内の誰かの記憶による要約だけで、確認作業や回答案の検討を始めない

回答期限はどう扱う?

記者からは「17時まで」「1時間以内」「今日中」といった期限が示されることがあります。受付時には、次の点を確認します。

  • 期限は何時何分か
  • 記事の掲載時刻・番組の放送予定はいつか
  • 期限を過ぎた場合、記事にどう反映されるのか
  • 期限後に回答した場合、後から反映される余地があるか

ただし、受付担当者がその場で「17時までに必ず回答します」と約束するのは避けます。回答できるかどうか、何を回答するかは、確認と社内判断の後でなければ決められないからです。

確認に時間がかかりそうな場合は、回答内容ではなく「次回連絡時刻」を設定する方法があります。

「確認に時間を要しているため、○時までに少なくとも回答の見通しをご連絡します。」

このとき大切なのは、設定した次回連絡時刻を会社側が必ず守ることです。期限延長をどう交渉するか、質問ごとにどう回答を組み立てるかは第11話で扱います。

メディア問い合わせ自体が新しい告発になる

会社がまったく把握していなかった疑惑について、記者から具体的な日時、部署、取引、人物、メール、内部資料などを示された場合、これは広報案件であると同時に、新たな不正情報の受付でもあります。

したがって、2つのレーンを並行して動かします。

レーン 担当の中心 内容
メディア対応レーン広報記者との窓口、期限管理、対外説明の準備
不正疑惑の初動レーン法務・コンプライアンス情報の初期評価、調査開始判断、証拠保全

不正疑惑の初動レーンは、外部からの告発を受けたときと同じ流れに接続します。第1話の初期評価、第5話の調査開始判断、第6話の証拠保全です。

情報の出所で結論を決めない
  • 記者が言っているから事実だとは限らない
  • 記者の情報だから信用できない、とも言えない

情報の出所とは別に、内容の具体性・重大性・社内資料での検証可能性を評価する。これは匿名告発や退職者からの通報を評価するときと同じ考え方です。

対象者へ聞く前に証拠を保全すべき場合

例えば記者が次のように言ったとします。

「今日18時に記事を出します。御社の営業部長と取引先のチャットも確認しています。」

ここで会社が記事掲載前に営業部長へ「記者からキックバック疑惑の質問が来ています。本当ですか?」と聞けば、メールやチャットの削除、取引先への連絡、口裏合わせにつながる可能性があります。

事案によっては、次の順序にします。

STEP 1 問い合わせの受領・固定
STEP 2 必要な範囲での証拠保全 メール、チャット、ログ、契約書、社内記録等
STEP 3 客観資料の確認
STEP 4 適切なタイミングでの関係者・対象者への確認

もっとも、すべての取材問い合わせでPCを確保せよ、という意味ではありません。保全を急ぐかどうかは、記者が示した情報の具体性、事案の重大性、証拠が消える・書き換えられるリスクを見て判断します。保全の範囲の決め方(人×期間×媒体)は第6話を参照してください。

疑惑の対象者本人へすぐ聞く?

一律に「すぐ聞く」「聞かない」とは決められません。

対象者に先に伝えることで、証拠削除、関係者への連絡、口裏合わせ、取引先への連絡が生じるおそれがあります。一方で、対象者の説明を聞かなければ事実が分からない場面もあります。

基本は、先に客観資料を可能な範囲で保全・確認し、その後に適切なタイミングで対象者に確認するという順序です。ヒアリングの進め方は本記事では扱わず、第5話第6話の考え方に接続します。

誰に社内共有する?

エスカレーション先は会社ごとに異なりますが、一般的な候補は次のとおりです。

  • 広報
  • 法務
  • コンプライアンス・危機管理
  • 経営責任者
  • 内部監査
  • IR(上場会社)
  • 事業責任者
  • 外部弁護士
注意「関係部署全員へ一斉メール」はしない

問い合わせ内容そのものに、次のような情報が含まれていることがあるからです。

  • 通報者や情報提供者を推測させる情報
  • 特定の役職員に対する疑惑
  • 営業秘密
  • 上場会社の未公表の重要情報

共有はneed-to-know(知る必要がある人に、必要な範囲で)が原則です。疑惑の対象者やその指揮系統にいる人が共有先に含まれていないかも確認します。経営陣が疑われている場合は、通常の報告ルートを使わず独立したルートへ切り替えます(第7話第8話)。

広報・法務・IR・経営の役割分担

「法務が回答文を書けばよい」「広報に任せればよい」のどちらも失敗のもとです。

部門 主な役割
法務確認済み/未確認の切り分け、法的評価、行政報告の要否、訴訟・刑事リスク、個人情報、契約、証拠保全、公益通報者保護
広報記者との窓口、質問・期限の管理、説明の分かりやすさ、発表方法、他媒体への対応、公表済み情報との整合
経営重要方針の決定、対外的な説明責任、重大案件の意思決定
IR(上場会社)適時開示の要否検討、投資家への情報提供、公表タイミングとの整合
避けるどちらも失敗
  • 法的には正しいが、質問にまったく答えていない文章
  • 広報上は分かりやすいが、未確認事実や評価を含んだ法的に危険な回答

この両方を避けるために、広報と法務は同じ事実表を見ながら作業します。次の「3列整理」と、後述の「対外説明事実マスター」がその道具です。

「確認済み/未確認/評価」を分ける

問い合わせを受けた後の事実整理は、次の形で行います。

論点 確認済み事実 未確認事項 法的・社内評価
品質検査データの変更2026年6月17日付で検査記録の数値が変更されている誰が変更したか、変更の理由、承認の有無社内規程違反・法令違反への該当性を確認中
工場長・品質保証部長の認識(現時点で確認済み事実なし)両名が変更を認識していたか、いつ認識したか評価前
変更が行われた期間2026年6月分の記録で変更を確認それ以前の期間に同様の変更があるか評価前

ポイントは、事実と評価を混ぜないことです。

「改ざん」「隠蔽」「違法」「組織ぐるみ」といった言葉は、事実ではなく評価を含んでいます。確認前にこれらの言葉を会社の説明に入れれば、後で評価が変わったときに訂正が必要になります。記者の質問に「改ざん」という言葉が入っていても、会社の確認項目は「数値の変更の有無・経緯」と置き直します。

逆に、確認済みの事実まで曖昧にしないことも同じくらい重要です。変更の事実を確認しているのに「把握していない」と説明すれば、その説明自体が後で問題になります。

回答窓口を一本化する

最初の問い合わせの後、記者が代表電話、工場、営業担当、役員、広報、社員個人のSNSなどへ同時に連絡を取ることがあります。会社側では対外回答窓口を一本化します。

窓口の一本化は、情報を隠すためではありません。目的は次の4つです。

  • 部署ごとに違う説明をしてしまう「事実の食い違い」を防ぐ
  • 未確認情報が会社の説明として拡散するのを防ぐ
  • 回答期限と次回連絡時刻を1か所で管理する
  • 誰にいつ何を伝えたかの記録を残す

一方で、「社員は記者からの電話をすべて切ること」という設計にはしません。社員に求めるのは、次の短いフローで十分です。

  1. 自分で事実関係や会社見解を回答しない
  2. 媒体名・記者名・連絡先・質問概要を記録する
  3. 指定窓口の連絡先を案内する、または窓口へつなぐ
  4. 問い合わせがあったことを社内窓口へ報告する

社員にはどう指示する?

窓口を一本化したら、関係する社員に短い指示を出します。例えば次のような文面です。

【社内連絡】報道機関からの問い合わせについて

○○に関する報道機関からの問い合わせは、広報部(担当:○○、内線○○)へ集約します。

報道機関から問い合わせを受けた場合は、ご自身で事実関係や会社としての見解を回答せず、媒体名・記者名・連絡先・質問の概要を確認のうえ、広報部へご連絡ください。

窓口を一本化するのは、確認前の情報が会社の説明として伝わることを防ぎ、正確な説明を行うためです。

なお、この連絡は、社内の内部通報窓口への相談・通報、行政機関への通報その他法令上保護される公益通報等を制限するものではありません。

避ける威圧的な指示
  • 「記者と話した社員は処分する」
  • 「本件について社内で一切話すな」
  • 「外部に情報を漏らした者は厳正に対処する」

こうした表現は、必要以上に威圧的であるだけでなく、内部通報や行政機関への通報をためらわせるおそれがあります。公益通報者保護法の枠組みでは、報道機関等への通報も一定の要件のもとで保護され得ます(法3条3号、いわゆる3号通報)。窓口一本化の目的と、通報の自由を妨げないことを、同じ文書の中で明示しておくのが安全です。

記者の情報源を探してよい?

記者が「内部関係者から聞いている」「元社員から資料提供を受けた」と言った場合、社内の最初の反応が「誰がリークした?」「情報を持ち出した社員を探せ」になりがちです。

しかし、事実確認と情報源の探索は別の作業です。疑惑が事実なら、会社が最優先で取り組むべきは事実の確認と是正であり、情報源探しではありません。

現行制度 2026年9月5日時点

現行の公益通報者保護法11条に基づく法定指針(令和3年内閣府告示第118号)は、内部公益通報対応体制の一部として、次のような措置を事業者に求めています。

  • 公益通報者を特定させる事項について、必要最小限の範囲を超えて共有する行為(範囲外共有)を防ぐ措置
  • 公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合を除き、通報者の探索を行うことを防ぐ措置

また、公益通報をしたことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています(法5条)。

改正後 2026年12月1日施行

公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和7年法律第62号)は2026年12月1日から施行され、公益通報者を特定することを目的とする行為(いわゆる公益通報者の探索)を正当な理由なく行うことを禁止する規定(改正法11条の3)が新設されます。本記事の基準日(2026年9月5日)時点では施行前です。適用対象や「正当な理由」の範囲は、改正法の条文と改訂後の法定指針・消費者庁の解説資料で確認してください。

注意すべき点

ただし、記者の情報源を確認しようとする行為のすべてが公益通報者保護法違反になる、というわけではありません

  • 情報提供者が法2条1項各号の公益通報者に該当するか
  • 提供された情報が通報対象事実に関するものか
  • 通報先・保護要件を満たすか
  • 会社の行為が「探索」に当たるか、どの時点の制度が適用されるか

は、個別に確認が必要です(第3話)。

とはいえ、公益通報者に該当するか分からない段階で情報源探しを始めれば、該当した場合に取り返しがつきません。初動では情報源探索を行わず、事実確認を優先するのが実務上の基本です。営業秘密の持出しなど別の問題が疑われる場合も、公益通報との関係を法務・外部弁護士と整理したうえで、別レーンとして慎重に検討します。

個人名・懲戒情報を回答してよい?

問い合わせには「○○部長がやったのですか」「関係者を処分しましたか」といった、個人を名指しした質問が含まれることがあります。

個人名や懲戒情報を回答するかどうかは、少なくとも次の観点で検討します。

  • 事実確認が済んでいるか
  • 個人情報保護法との関係
  • プライバシー・名誉・信用への影響
  • 人事情報・懲戒情報としての取扱い(就業規則上の手続、公表基準)
  • 調査の公正性・進行中の調査への影響

個人情報保護法の報道に関する特殊な規律

個人情報保護法には、報道との関係で特別な規定があります。

  • 報道機関が報道の用に供する目的で個人情報等を取り扱う場合、個人情報取扱事業者等の義務規定は適用されません(法57条1項1号)。
  • 報道活動等の自由を確保する観点から、その活動の相手方となる個人情報取扱事業者等の一定の行為については、個人情報保護委員会による報告徴収・勧告・命令等の権限行使が制限されています(法149条2項)。個人情報保護委員会のQ&Aは、その例として、新聞社等の報道機関が報道目的で個人情報を取り扱う場合に、事業者が報道機関へ本人の同意なく個人データを提供する行為を挙げています。
注意包括的な例外として扱わない

法149条2項は委員会の権限行使を制限する規定であり、報道機関への提供について、法27条の第三者提供の規律そのものが当然に適用されなくなることを意味するものではありません。したがって、「報道機関であれば本人同意なく個人データを自由に提供できる」という包括的な例外として扱うべきではありません。また、個人情報保護法とは別に、プライバシー侵害や名誉毀損による民事責任、労務上の問題、調査への影響も残ります。

実務上は、個人名や懲戒情報等を提供する場合には、個人情報保護法上の整理に加え、プライバシー、名誉・信用、労務上の取扱い、調査への影響、公表の必要性等を個別に検討するという整理になります。受付段階や初動段階で、個人名を肯定・否定することは避けます。

※ 条文番号は2026年9月5日時点の現行法です。個人情報保護法は2026年7月に改正法が公布されており、施行後は条文番号等を改めて確認してください。

上場会社は適時開示も同時に確認する

記者から「御社のCEOが会計不正を把握していたのではないか」という問い合わせが来た場合、広報部が記者1人にだけ、会社として重要な未公表の事実を説明する、という設計は避けます。

上場会社では、メディア対応と並行して、次の論点を確認します。

  • 適時開示:有価証券上場規程に基づき、投資判断に重要な影響を与える会社情報の開示が求められる場合があります。
  • 未公表の重要情報の管理:社内・社外への情報の広がりを管理します。
  • インサイダー取引規制:新聞・テレビ・ネットメディアで報道されたというだけで、金商法166条4項の「公表」があったとは限りません。金商法が定める公表の方法は、大別すると、①所定の者により重要事実が2以上の報道機関に公開され12時間以上が経過したこと(同法施行令30条)、②TDnetによる公衆縦覧、③重要事実が記載された有価証券報告書等の公衆縦覧です。証券取引等監視委員会は、情報源が明らかでないスクープ報道は①の「公開」に当たらず、規制上「公表がされた」とはみなされないとの考え方を示しています。「記事が出たから社員が株式を売買してよい」とはならないため、記事が出た後も社内の情報管理と売買管理を続けます。
  • フェア・ディスクロージャー・ルール(金商法27条の36以下)

フェア・ディスクロージャー・ルールの正確な位置付け

FDルールは、上場会社等が未公表の重要情報を、証券会社やアナリスト、投資家など一定の情報受領者に伝達する場合に、公平な公表を求める制度です。金融庁の制度資料では、報道機関はFDルールの対象となる情報受領者の範囲外と整理されています。

したがって、「記者への情報伝達=直ちにFDルール違反」ではありません。

注意対象外=自由ではない

FDルールの対象外であることは、未公表の重要情報を記者へ自由に伝えてよいという意味ではありません。適時開示の要否、インサイダー情報の管理、公表済み情報との整合、特定の媒体にだけ説明することの妥当性は、FDルールとは別の問題として残ります。

記者から問い合わせが来たら適時開示が必要?

記者から質問が来たこと自体が、すべて適時開示のきっかけになるわけではありません。

ただし、次のような事情がある場合は、適時開示の要否とタイミングを急いで検討することがあります。

  • 重要な不祥事が実際に存在する可能性が高い
  • 記事の掲載が迫っている
  • 市場に重要な情報が流通する可能性がある
  • 会社がすでに一定の事実を確認している
  • 行政処分や決算・会計への影響が見込まれる

日本取引所自主規制法人の「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」は、原則④「迅速かつ的確な情報開示」として、不祥事に関する情報開示を、その必要に即し、把握の段階から再発防止策実施の段階に至るまで迅速かつ的確に行い、経緯や事案の内容、会社の見解等を丁寧に説明するなど透明性の確保に努めるという考え方を示しています。

もっとも、これは上場会社向けのプリンシプルであり、法令や上場規則そのものとは異なり、一律に拘束するものではありません。適時開示の具体的な要件や、報道・取引所からの照会があった場合の取扱いは、有価証券上場規程と東京証券取引所「会社情報適時開示ガイドブック」(2026年7月版)で確認します。

記者会見はすぐ必要?

「メディアから問い合わせが来た=すぐ記者会見」ではありません。判断材料になるのは次のような事情です。

  • 事案の重大性・社会的影響
  • 情報の確度(どこまで確認できているか)
  • 複数の媒体から問い合わせが来ているか
  • 上場会社か
  • 顧客・消費者の安全への影響
  • 説明すべき事実の量

JPXの不祥事対応プリンシプルのパブリックコメント回答では、記者会見を含む対応について、不祥事の内容等に基づき上場会社が必要な対応を判断し、適切に情報開示することが重要との考え方が示されています。重大不祥事だから記者会見が法的義務になる、という整理ではありません

初動段階で確認すべきなのは「会見を開くか」の結論よりも、「会見やプレスリリースが必要になった場合に備え、確認済み事実を整理できているか」です。

行政報告・適時開示・メディア回答をどう整合させる?

行政へ「漏えい人数は約5万人」と報告しているのに、メディアへ「規模は把握していない」と回答すれば、会社の説明全体の信用が損なわれます(行政報告は第9話)。

これは、行政へ提出した情報をすべてメディアにも開示せよ、という意味ではありません。同じ事実について、相手によって矛盾した説明をしないということです。

そのために、会社内で次の説明内容を一覧で管理します。

  • 行政報告
  • 適時開示
  • プレスリリース
  • メディアへの個別回答
  • 顧客・取引先への説明
  • 社内説明

実務で使える「対外説明事実マスター」

広報と法務が共同で使う管理表です。論点ごとに1行で管理します。

対外説明事実マスター EXTERNAL STATEMENT FACT MASTER/広報・法務が共同で更新する
事実の確認状況 記入欄
論点例:○○工場の検査記録の数値変更
確認済み事実
根拠資料
確認日
確認者
未確認事項
法的評価確認中/評価済(内容: )
説明済み内容 記入欄
行政報告済み内容(日付・報告先・内容)
適時開示済み内容(日付・内容)
顧客説明済み内容(日付・相手方・内容)
メディアへ回答済み内容(日付・媒体・内容)
回答可能範囲
次回更新予定

この表は「会社見解を1つ作って固定する」ためのものではありません。調査の進展に応じて更新し、最新の確認状況と、これまでに誰に何を説明したかを常に一致させるためのものです。更新のたびに版と日時を残しておくと、後から「いつの時点で何を把握していたか」を説明できます。

回答の3層モデル

回答の具体的な文案は第11話・第12話で扱うため、ここでは方針のレベルだけ整理します。

LEVEL A 受領回答 「確認して回答します」「担当部署で確認します」/受付担当者が使える範囲
LEVEL B 確認済み事実の回答 確認済みの事実のみを説明/回答責任者・窓口が、事実マスターに基づいて行う(事実確認・社内判断を経て)
LEVEL C 会社見解・法的評価 原因、責任、法令違反の有無、処分等/経営判断・法務確認を経て行う(十分な確認・社内意思決定を経て)

最初の電話でいきなりLEVEL Cへ進まないこと、そして受付担当者はLEVEL Aにとどまることが、この整理のポイントです。

※ この3層モデルは、LegalGPT独自の実務整理であり、法令上の分類ではありません。

問い合わせから最初の60分フロー

記者から問い合わせ
  ↓
相手方(媒体・記者)の確認
  ↓
質問・期限・掲載予定を記録(受付票)
  ↓
その場で事実回答・見解表明をしない
  ↓
広報・法務等へエスカレーション(need-to-know)
  ↓
既知の案件か? 新規の疑惑か?
  ├ 既知 → 調査チームへ接続、調査・公表状況を確認
  └ 新規 → 不正情報として初期評価を開始
  ↓
証拠散逸リスクはあるか?
  ├ YES → 必要な範囲で証拠保全(対象者への連絡より先)
  └ NO  → 次へ
  ↓
確認済み/未確認/評価を整理
  ↓
別レーンの確認:行政報告/適時開示(上場会社)/契約上の通知
  ↓
回答責任者・回答窓口を確定、社員へ指示
  ↓
記者へ次回連絡(回答の見通し・時刻)
  ↓
第11話:回答作成へ

この図は「60分以内にすべてを完了させる」という意味ではありません。証拠保全や適時開示の検討には、それ以上の時間がかかることもあります。示しているのは、最初の60分で着手すべき順番です。

初動チェックリスト

  • 媒体名・記者名を確認した
  • 連絡先を確認した
  • 記者本人を合理的な方法で確認した
  • 質問を原文ベースで記録した
  • 回答期限を確認した
  • 掲載/放送予定を確認した
  • 質問を書面でも送ってもらうよう依頼した
  • 受付担当者は事実を即答しなかった
  • 広報・法務へ共有した
  • 新規の不正情報かどうかを確認した
  • 証拠保全の要否を確認した
  • 対象者へ連絡する前に証拠散逸リスクを確認した
  • 確認済み/未確認を分けた
  • 行政報告の要否を確認した
  • 上場会社の場合、適時開示の要否を確認した
  • 通報者・情報源の探索を安易に始めていない
  • 回答窓口を一本化した
  • 従業員向けの取材対応指示を共有した
  • 次回連絡時刻を管理している
  • すべてのやり取りを記録している

やってはいけない10のメディア初動

NG 理由
× 代表電話の担当者が「そのような事実はない」と否定する確認前の否定が会社見解になり、後で事実が判明したときに説明の信用を失う
× 記者を疑惑の対象者本人へ直接つなぐ準備のない取材対応に加え、対象者に疑惑の存在が伝わり、証拠散逸のおそれが生じる
× 質問を正確に記録せず、社内で要約する質問の前提が抜け落ち、的外れな確認や回答につながる
× 回答期限を確認しない会社の確認が終わる前に、回答なしとして記事化される可能性がある
× 本人確認なしに内部資料を送る情報漏えいやソーシャルエンジニアリングの被害につながる
× 最初に情報源探しを始める事実確認が遅れるうえ、公益通報者保護との関係で問題となり得る
× 対象者へ先に問い合わせ、証拠保全を後回しにするメール・チャット等の削除や口裏合わせを招くおそれがある
× 広報・法務・IRが別々の事実を回答する説明の食い違いが、それ自体として新たな問題になる
× 「オフレコなら」と未公表情報を話すオフレコは法的な秘密保持制度ではなく、情報管理として機能する保証がない
× 上場会社なのにメディア対応だけ行い、適時開示を検討しない特定の媒体にだけ説明する状態となり、市場への開示判断が遅れる

3つのケースで考える

CASE A 架空事例|会社が知らなかった品質不正
記者から「○○工場の検査データ改ざんについて取材しています」と問い合わせ。会社にとっては初耳。
  • 受付票で質問・期限・記者情報を固定する
  • 広報と法務・コンプライアンスへ限定的に共有する
  • 記者が示した情報を、新規の不正情報として初期評価する(第1話第5話
  • 検査記録・システムログ等の散逸リスクを確認し、必要な範囲で保全する(第6話
  • 品質部門等へ、疑惑対象者を経由しない形で限定的に確認する
  • 回答窓口を一本化し、工場にも問い合わせ対応を指示する
  • 製品の安全性や業法上の報告が問題になるかを別レーンで確認する

ポイント:これは広報案件であると同時に、新しい不正情報の受付でもある。

CASE B 架空事例|すでに調査中の案件
社内では匿名通報を受けて調査を進めている。そこへ記者から同じ内容の質問が来た。
  • 記者に対して、通報の存在や通報者を推測させる情報を不用意に伝えない
  • 調査チームへ問い合わせを共有し、調査・証拠保全の進捗を確認する
  • すでに行政報告や公表をしている場合は、その内容と矛盾しないよう事実マスターを更新する
  • 調査中の事実のうち、どこまで回答するかを回答責任者が判断する

ポイント:「調査中」と答えるか、何を答えるかの具体的な判断は第12話で扱う。初動では、通報者情報の管理と説明の整合を優先する。

CASE C 架空事例|上場会社・会計不正疑惑
記者から「CFOが粉飾を指示したと聞いています。17時に公開予定です」と問い合わせ。
  • 広報・法務・IRと、適切な経営・監査のルートを直ちに起動する
  • CFOが疑惑の対象であるため、CFOやその指揮系統を通常の報告ルートから外し、監査役等・社外取締役等を含む独立したルートを検討する(第8話
  • 会計・経理データの保全を検討する
  • 適時開示の要否とタイミングを並行して検討する
  • 社内の売買管理・未公表情報の管理を確認する

ポイント:記者1人への選択的な説明で済ませず、市場への開示判断を同時に進める。

よくある質問(FAQ)

Q1.記者から電話が来たら、その場で答えなければなりませんか?

A.その場で答える必要はありません。メディアからの取材依頼は、行政の報告命令のような法的手続とは性質が異なります。受付担当者は事実関係や会社見解を即答せず、質問・期限・連絡先を確認して社内の担当部署へつなぎます。ただし、上場会社の適時開示や行政報告など、取材とは別の義務が並行して問題になる場合があるため、「答えなくてよいので放置する」という扱いにはしません。

Q2.記者には質問をメールで送ってもらうべきですか?

A.可能であれば依頼するのが望ましいです。質問の内容を正確に固定でき、社内確認の精度が上がります。ただし、書面での送付を受付の絶対条件にするのは勧めません。まず口頭の質問を会社側で正確に記録し、そのうえで書面化を依頼します。

Q3.記者が「今日中に記事を出す」と言ったらどうしますか?

A.掲載時刻と回答期限を具体的に確認し、直ちに広報・法務等へエスカレーションします。受付担当者が回答時刻を約束することは避け、必要に応じて回答責任者から「○時までに回答の見通しを連絡する」といった次回連絡時刻を設定します。期限の交渉や回答文の作り方は第11話で扱います。

Q4.会社が知らなかった疑惑を記者から聞いた場合はどうしますか?

A.メディア対応と並行して、新たな不正情報として初期評価を始めます。記者の情報だから正しい、あるいは信用できない、と出所で決めず、具体性・重大性・社内資料での検証可能性を確認します。証拠が消えるおそれがある場合は、対象者に確認する前に必要な範囲で証拠を保全します。

Q5.記者に情報源を聞いてもよいですか?

A.記者が自ら明らかにした範囲(「元従業員」「取引先」等)を記録することは差し支えありませんが、情報源の特定を目的に問いただすことは避けるべきです。取材源の秘匿は報道の基本的な考え方であり、聞いても答えは得られないのが通常です。また、社内で情報源探しを始めると、情報提供者が公益通報者に該当する場合に公益通報者保護法上の問題となり得ます(2026年12月1日以降は改正法11条の3の探索禁止規定も施行されます)。初動では事実確認を優先します。

Q6.上場会社は、記者への回答と同時に適時開示する必要がありますか?

A.記者から問い合わせが来たことだけで、必ず適時開示が必要になるわけではありません。ただし、重要な不祥事の存在を会社が一定程度確認している、記事の掲載が迫っている、業績や行政処分への影響が見込まれるといった場合には、適時開示の要否とタイミングを急いで検討します。報道機関はFDルールの情報受領者の対象外ですが、それを理由に記者にだけ未公表の重要情報を説明してよいことにはなりません。

Q7.「オフレコなら」と話しても大丈夫ですか?

A.勧められません。オフレコは記者と取材相手との間の取材慣行・約束であり、法律上の秘密保持制度として当然に機能するものではありません。どこまでが報道されないのか、解釈が食い違うこともあります。会社として回答していない未確認情報や未公表情報を、オフレコを条件に話すことは避けます。

まとめ|最初の仕事は「答えること」ではなく「正しく受け取ること」

メディアから不正疑惑の問い合わせを受けた瞬間に、会社がやるべきことは即答ではありません。

まとめ
  • 受領:受付担当者は事実を否定も肯定もせず、受け取る
  • 固定:記者情報・質問原文・期限・掲載予定を記録する
  • 共有:広報・法務等へ、need-to-knowで共有する
  • 保全:新規の疑惑で散逸リスクがあれば、対象者に聞く前に保全する
  • 確認:確認済み事実・未確認事項・評価を分ける
  • 方針決定:回答責任者と窓口を一本化し、行政報告・適時開示と整合させる

記者を敵として扱う必要はありません。取材を妨げる必要もありません。会社に求められているのは、確認した事実に基づいて、一貫した説明ができる状態を最短で作ることです。その準備が整ってはじめて、回答文の作成に進めます。

NEXT/次の記事 第11話 / 全15話

記者から質問状が届いたら?回答期限・事実確認・回答文の作り方

初動体制を整えたら、次は実際の回答です。質問状への回答期限の扱い、質問ごとの事実確認、回答文の組み立て方を解説します。

第11話「記者から質問状が届いたら?回答期限・事実確認・回答文の作り方」を読む

参考資料・一次資料

※ 法令・情報基準日:2026年9月5日

上場会社の不祥事対応・適時開示

  • 日本取引所自主規制法人「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」(2016年2月24日)および同プリンシプル策定に係るパブリックコメントの結果
  • 株式会社東京証券取引所「有価証券上場規程」
  • 株式会社東京証券取引所「会社情報適時開示ガイドブック」(2026年7月版)
  • 日本取引所グループ「適時開示が求められる会社情報」
    https://www.jpx.co.jp/equities/listing/disclosure/info/index.html

フェア・ディスクロージャー・ルール/インサイダー取引規制

  • 金融商品取引法(27条の36以下、166条)、金融商品取引法施行令(30条)(e-Gov法令検索)
  • 金融庁「金融商品取引法第27条の36の規定に関する留意事項について(フェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン)」
  • 金融庁「フェア・ディスクロージャー・ルールの導入」(制度資料。報道機関・取引先を対象外と整理)
  • 証券取引等監視委員会「市場へのメッセージ(平成31年4月11日)」(インサイダー取引規制における「公表」の整理)

公益通報者保護制度(現行制度/2026年9月5日時点)

  • 公益通報者保護法(e-Gov法令検索)
  • 公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年内閣府告示第118号)
  • 消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説」

公益通報者保護制度(2026年12月1日以降)

  • 公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和7年法律第62号)
  • 消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要」(改正概要、改正後の法定指針等)

個人情報保護

  • 個人情報の保護に関する法律(57条、149条)(e-Gov法令検索)
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」および「同ガイドラインに関するQ&A」(Q11-5「個人情報保護法の適用除外とはどのような制度ですか」)
    https://www.ppc.go.jp/personalinfo/faq/APPI_QA/
  • 個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(2026年7月17日公布。基準日時点で主要部分は未施行)

関連記事(本シリーズ)

免責

本記事は2026年9月5日時点の法令・公表資料に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については、弁護士等の専門家にご相談ください。

読了後の実務化ガイド

この記事の確認観点を、実務の型に変える。

読んだ内容を、確認メモ・文例・AI指示文に落とせます。

A無料で試す

すべての商品を見る