採用活動と個人情報|履歴書・職務経歴書・不採用者情報の管理
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採用活動は、企業が個人情報を大量かつ継続的に取得する代表的な場面です。履歴書や職務経歴書には、氏名・住所・連絡先だけでなく、学歴、職歴、資格、志望動機が含まれ、場合によっては健康や家庭の事情に関係する情報が混ざることもあります。
そして採用活動では、個人情報保護法だけでなく、厚生労働省の公正な採用選考の考え方や、職業安定法上の求職者等の個人情報の取扱いも意識する必要があります。本記事では、採用応募者情報の取得・利用・保管・削除・外部サービス利用を、個人情報保護法の観点を中心に初心者向けに整理します。
第1話〜第10話で、個人情報保護法の全体像から漏えい初動対応までを学びました。第11話は、その応用編として採用という具体的な場面を扱います。なお、入社後の従業員情報・健康情報・退職者情報の管理は、次回第12話:従業員情報の管理で扱います。本記事は「応募者・内定者・不採用者の情報」に重点を置きます。
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まず結論|「必要な範囲で取得し、選考目的に沿って管理する」
先に結論をお伝えします。採用活動で取得する個人情報は、採用選考・連絡・入社手続などの目的に照らして必要性を説明できる範囲に絞ることが基本です。そのうえで、取得後はアクセス権限、保存期間、削除・廃棄、不採用者情報の扱いを決めておく必要があります。
| 場面 | 取得する情報 | 主なリスク | 法務・人事が見るべきポイント | 関連記事 |
|---|---|---|---|---|
| 応募受付 | 履歴書・職務経歴書・連絡先 | 過剰取得・利用目的の不明示 | 取得範囲・利用目的の明示 | 第5話 |
| 面接 | 面接評価・口頭での聴取事項 | 適性・能力に関係ない事項の把握 | 公正採用選考の観点 | 本記事 第6章 |
| 適性検査 | 検査結果 | センシティブ情報の取得 | 取得目的・管理権限 | 本記事 第7章 |
| 選考管理 | 採用管理システム上の情報 | 委託先管理・アクセス過大 | 委託・アクセス権限 | 第14話 |
| 不採用 | 不採用者情報 | 保存期間なしで放置 | 保存期間・削除ルール | 第9話 |
| 内定 | 入社手続情報 | 慎重情報の管理不足 | 従業員情報への移行 | 第12話 |
採用活動で扱う個人情報の種類
採用活動では、思いのほか多くの種類の個人情報を扱います。それぞれが個人情報・個人データ・要配慮個人情報のどれに関係し得るかを意識すると、管理の優先度が見えてきます。
| 情報の種類 | 具体例 | 注意点 | 主な管理部署 |
|---|---|---|---|
| 履歴書 | 氏名・住所・学歴・職歴・写真 | 記載内容に機微情報が混ざり得る | 人事 |
| 職務経歴書 | 職歴・実績・スキル | 前職情報の取扱い | 人事 |
| エントリーシート | 志望動機・自己PR | 設問が過剰でないか | 人事 |
| 面接評価 | 評価コメント・所見 | 本人対応・紛争で開示が問題になり得る | 人事・面接官 |
| 適性検査結果 | 性格・能力検査 | 結果の解釈・管理範囲 | 人事 |
| リファレンスチェック結果 | 第三者からの情報 | 本人同意・取得範囲 | 人事・法務 |
| 採用媒体上の応募情報 | 媒体経由の応募データ | 媒体事業者との関係 | 人事・法務 |
| 採用管理システム上のステータス | 選考状況・履歴 | 委託先・アクセス権限 | 人事・情シス |
| 内定者情報 | 入社手続関連情報 | 従業員情報への移行 | 人事 |
| 不採用者情報 | 不採用の応募者データ | 保存期間・削除 | 人事 |
| 連絡履歴 | メール・電話の記録 | 保存範囲・共有範囲 | 人事 |
これらの情報が「個人情報」「個人データ」「要配慮個人情報」のどれに当たるかは、管理の前提になります。用語の違いは第2話:個人情報・個人データ・保有個人データの違いで整理しています。
採用応募者情報の利用目的をどう書くか
採用活動でも、利用目的を応募者に分かりやすく示すことが重要です。何のために情報を使うかが曖昧だと、後で別目的に使えるか迷ったり、応募者の信頼を損なったりします。
| 利用目的 | 具体的な利用場面 | 注意点 | 関連記事 |
|---|---|---|---|
| 採用選考 | 書類選考・面接・評価 | 選考に必要な範囲で | 第4話 |
| 選考結果の連絡 | 合否連絡・日程調整 | 連絡先の利用範囲 | 第4話 |
| 入社手続 | 内定後の手続 | 従業員情報への移行 | 第12話 |
| 採用活動の改善 | 採用プロセスの分析 | 個人を特定した利用か | 第6話 |
| 問い合わせ対応 | 応募者からの照会対応 | 記録の保存範囲 | 第5話 |
採用目的と関係のない営業利用、別会社への提供、無関係なマーケティング利用などは、慎重に確認すべきです。たとえば、不採用者の情報を本人の想定を超えて別の用途に使うことは、目的外利用の問題につながり得ます(第6話:目的外利用とは何か参照)。
採用フォーム・応募書類で取得するときの注意点
採用フォーム、エントリーシート、履歴書、職務経歴書、応募メールは、応募者から直接個人情報を取得する場面です。利用目的の明示やプライバシーポリシーへの導線、過剰取得の防止が重要になります。
| 確認項目 | 見るべき内容 | NG例 | 改善例 |
|---|---|---|---|
| 利用目的の明示 | 応募画面で目的を示すか | 目的の記載なし | 応募画面で目的を明示 |
| ポリシー導線 | 応募者向け案内があるか | リンク所在不明 | 応募者向けプライバシー案内 |
| 取得項目 | 選考に必要な範囲か | 使わない項目も必須 | 必要項目に絞る |
| 必須・任意の区別 | 区別が分かるか | すべて必須 | 必須・任意を明示 |
| 過剰取得の防止 | 機微情報を求めていないか | 家族構成等を必須 | 選考に不要な項目は求めない |
| 保存・廃棄方針 | 社内で保存期間・削除方法を定め、必要に応じ案内に反映しているか | 保存期間も削除方法も未定 | 保存・廃棄ルールを社内で定め、必要に応じ応募者向け案内に記載 |
取得場面ごとの一般的な注意点は第5話:個人情報を取得するときの注意点で整理しています。採用フォームはその応用と考えると分かりやすいでしょう。
面接で聞いてよいこと・注意すべきこと
採用選考では、応募者の適性・能力に関係する事項を確認する必要があります。一方で、適性・能力に関係のない事項を把握することは、公正な採用選考の観点から問題になり得ます。厚生労働省は、本人に責任のない事項(本籍・出生地、家族の状況など)や、本来自由であるべき事項(思想・信条、宗教、支持政党など)の把握が、就職差別につながるおそれがあると注意を促しています。
また、職業安定法では、求職者等の個人情報を、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして収集し、収集目的の範囲内で保管・使用しなければならないとされています(職業安定法第5条の5)。個人情報保護法では利用目的を「通知または公表」すれば足りる場面が多いのに対し、採用(求職者等の個人情報)では、職安法により収集に際して目的を明らかにすることが求められる点に注意が必要です。同法の指針では、特別な職業上の必要性等がある場合を除き、社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想・信条、労働組合への加入状況などの収集は原則として認められないとされています。
| 質問・取得事項 | 問題になり得る理由 | 代替して確認すべきこと | 法務・人事の注意点 |
|---|---|---|---|
| 本籍・出生地 | 本人に責任のない事項・差別の原因となり得る | 業務遂行に必要な適性・能力 | 原則として把握を避ける |
| 家族の職業・収入・資産 | 本人に責任のない事項 | 本人の経験・スキル | 選考基準にしない |
| 住宅状況・生活環境 | 本人に責任のない事項 | 通勤可能性等は必要範囲で | 必要最小限にとどめる |
| 宗教・支持政党・思想信条 | 本来自由であるべき事項 | 業務に必要な価値観の確認は慎重に | 把握を避ける |
| 労働組合・社会運動への関与 | 本来自由であるべき事項 | — | 原則として把握を避ける |
| 健康状態・病歴・障害に関する情報 | 病歴等は要配慮個人情報に該当し得る。公正採用選考上も慎重な取扱いが必要 | 業務上必要な範囲・合理的配慮の検討 | 取得目的・必要性・本人同意・アクセス権限を厳格に確認 |
ただし、何が「適性・能力に関係するか」「業務上必要か」は、職種・業務内容・法令上の要請により異なる場合があります。一律に「この質問は常にNG」と断定はできません。迷う場合は、その情報が選考にどう必要かを説明できるかを基準に、人事と法務で確認してください。「採用活動だから何を聞いてもよい」わけではない、という出発点を共有することが大切です。
要配慮個人情報・センシティブ情報への注意
採用活動では、健康情報、障害、病歴、犯罪歴、思想・信条、社会的身分など、要配慮個人情報や差別につながるおそれのある情報に接触する可能性があります。要配慮個人情報の取得には、原則としてあらかじめ本人の同意が必要とされています。
基本的な姿勢は、採用選考に必要な範囲を超えるセンシティブ情報を取得しないように設計することです。健康診断、障害者雇用、資格要件、業務上必要な確認など、取得に必要性がある場面でも、取得目的・範囲・管理権限・保存期間を厳格に整理する必要があります。
| 情報の種類 | 採用で出てくる場面 | 注意点 | 管理方法 |
|---|---|---|---|
| 健康状態・既往歴 | 業務適性・合理的配慮の検討 | 必要性のない取得を避ける | アクセスを限定し厳格管理 |
| 障害に関する情報 | 障害者雇用・配慮検討 | 必要最小限の範囲で | 取得目的を明確化 |
| 犯罪歴・前科 | 一部職種の適性確認等 | 取得の必要性・根拠を慎重に | 限定的に管理 |
| 思想・信条 | 面接での不用意な質問 | 原則として取得を避ける | 質問設計を点検 |
| 社会的身分・本籍 | 応募書類・面接 | 把握を避ける | 書式・質問を見直す |
「要配慮個人情報を取得しても、採用目的なら常に問題ない」わけではありません。取得には原則同意が必要で、かつ公正採用選考・職業安定法の観点からの制約もあります。取得する必要性が本当にあるか、必要なら目的・範囲・管理をどうするかを、事前に整理してください。
不採用者情報の保存期間・削除ルール
不採用者情報は、いつまでも保存してよいわけではありません。保存期間は、利用目的、問い合わせ対応、再応募対応、採用活動の検証、紛争対応などを踏まえて定める必要があります。個人情報保護法では保存期間が一律に定められているわけではありませんが、利用する必要がなくなった個人データは遅滞なく消去するよう努めることが求められています(法第22条。消去の努力義務)。
| 管理項目 | 決めること | 注意点 | 記録方法 |
|---|---|---|---|
| 保存期間 | いつまで保管するか | 利用目的・紛争対応を踏まえる | 保存期間表 |
| 保存の根拠 | なぜその期間か | 必要性を説明できるように | 判断メモ |
| 削除・廃棄 | いつ・誰が消すか | 運用が伴うこと | 削除・廃棄記録 |
| 再応募対応 | 再応募時の扱い | 応募者への説明 | 運用ルール |
| 問い合わせ対応 | 照会への対応 | 対応範囲の明確化 | 対応記録 |
具体的な保存年数は、会社の業務・採用実態・関連法令・紛争リスクに応じて個別に定める必要があります。本記事で「○年」と断定はできません。「利用目的に照らして必要な期間」を起点に、自社で設計してください。保存期間・削除運用の整え方は第9話:個人情報の社内管理ルールで扱います。
採用管理システム・求人媒体・転職エージェント利用時の注意点
採用活動では、採用管理システム(ATS)、求人媒体、転職エージェント、リファレンスチェックサービス、適性検査ベンダーなど、外部サービスを利用することが多くあります。これらを使う場合、委託・第三者提供・共同利用・海外保存・再委託などの論点を確認する必要があります。「採用管理システムに入れていれば自社は管理しなくてよい」とはなりません。
| 外部サービス | 確認項目 | リスク | 関連記事 |
|---|---|---|---|
| 採用管理システム(ATS) | 委託契約・保存先・アクセス権限 | 委託先管理不足・権限過大 | 第14話 |
| 求人媒体 | 媒体経由データの取扱い・関係 | 提供・共同利用の整理不足 | 第7話 |
| 転職エージェント | 情報の授受・利用目的 | 授受の整理不足 | 第7話 |
| 適性検査ベンダー | 委託・結果の管理 | 結果データの管理不足 | 契約条項 |
| リファレンスチェック | 本人同意・取得範囲 | 無断取得・範囲過大 | 本記事 第10章 |
外部サービスの利用は、委託・第三者提供・共同利用のどれに当たるかの整理が出発点です(第7話)。契約条項のチェックは個人情報と契約条項、SaaS・クラウドの確認は第14話をご覧ください。
リファレンスチェック・バックグラウンドチェックの注意点
リファレンスチェック(前職の関係者などへの照会)やバックグラウンドチェックでは、本人同意、取得する情報の範囲、確認先、利用目的、記録方法、保存期間に特に注意が必要です。とくに、無断で前職や関係者に問い合わせることは、プライバシー・個人情報保護・採用トラブルの観点からリスクが高い対応です。
| 確認項目 | 見るべき内容 | 注意点 | 記録方法 |
|---|---|---|---|
| 本人同意 | 同意を得ているか | 何に同意したか明確に | 同意取得記録 |
| 取得情報の範囲 | 何を確認するか | 必要な範囲に限定 | 取得項目の整理 |
| 確認先 | 誰に照会するか | 本人同意なき無断照会は、前職側の第三者提供(法27条)違反・自社側の不適正な取得につながり得る | 確認先・本人同意の記録 |
| 利用目的 | 何のために使うか | 採用選考の範囲で | 目的の明示 |
| 記録方法 | どう記録するか | 第三者情報の管理 | 記録の保管 |
| 保存期間 | いつまで保管するか | 不要時の削除 | 保存期間表 |
リファレンスチェックの個別の適法性は、職種、取得する情報、同意の内容、調査方法によって異なります。「本人に知らせなくても問題ない」と断定はできません。実施する場合は、本人同意を含め、事前に範囲と方法を整理することをおすすめします。
内定者情報と入社手続情報の管理
内定後は、採用応募者情報から従業員情報へ移行する段階です。入社手続では、住民票記載事項、マイナンバー、扶養家族情報、銀行口座、緊急連絡先など、より慎重な管理が必要な情報を取得する場合があります。
| 情報の種類 | 利用目的 | 管理上の注意 | 第12話との関係 |
|---|---|---|---|
| 住民票記載事項 | 入社手続・本人確認 | 必要範囲・保存期間 | 従業員情報として管理 |
| マイナンバー | 社会保障・税・災害対策の法定事務 | 要配慮個人情報とは別に、番号法(特定個人情報)に基づく利用目的の制限・分離管理。法定事務以外への利用は不可 | 第12話で扱う |
| 扶養家族情報 | 社会保険・税務手続 | 家族の個人情報の管理 | 第12話で扱う |
| 銀行口座 | 給与振込 | 財産情報の管理 | 第12話で扱う |
| 緊急連絡先 | 緊急時の連絡 | 第三者の個人情報の管理 | 第12話で扱う |
本記事では入口の整理にとどめます。入社後の従業員情報・健康情報・退職者情報の詳細は第12話:従業員情報の管理で扱います。なお、マイナンバーは番号法に基づく特別な管理が必要です。内定段階だからといって早期に広く取得するのではなく、番号法上の利用目的(社会保障・税等の法定事務)に照らして必要となる時点・手続で取得し、通常の採用応募者情報とは分けて管理することが重要です。
採用情報のアクセス権限と社内共有
採用応募者情報は、人事、面接官、配属予定部署、役員、外部エージェントなど複数者が閲覧することがあります。だからこそ、アクセス権限管理が重要です。「面接官には応募者情報をすべて共有してよい」とはなりません。必要な人だけが、必要な範囲で、必要な期間だけ閲覧できるようにします。
| 閲覧者 | 閲覧範囲 | 注意点 | 管理方法 |
|---|---|---|---|
| 人事・採用担当 | 選考に必要な範囲 | 担当者を限定 | 権限管理 |
| 面接官 | 面接に必要な範囲 | 全情報の共有は避ける | 閲覧範囲の限定 |
| 配属予定部署 | 必要に応じた範囲 | 共有の必要性を確認 | 都度の判断 |
| 役員 | 判断に必要な範囲 | 過大な共有を避ける | 権限管理 |
| 外部エージェント | 業務に必要な範囲 | 委託・提供の整理 | 契約・権限管理 |
面接評価や不採用理由の記載内容にも注意が必要です。これらは、本人対応や紛争対応の場面で問題になり得るため、事実と評価を区別し、不適切な表現を避けることが望まれます。アクセス権限の設計は第8話・第9話もご覧ください。
採用情報の漏えい・誤送信を防ぐ実務対応
採用活動では、応募者情報のメール誤送信、添付ファイル誤送付、採用管理システムの権限設定ミス、共有リンクの誤設定、不採用通知の宛先ミスなどが起きやすい傾向があります。応募者情報の漏えいは、本人の権利利益への影響が大きくなり得るため、予防策が重要です。
| 場面 | リスク | 防止策 | 事故時対応 |
|---|---|---|---|
| 合否連絡メール | 宛先ミス・BCC漏れ | 宛先確認・BCC運用 | 削除依頼・記録 |
| 応募書類の添付 | 誤添付・誤送付 | 添付ファイル制限・確認 | 回収依頼・記録 |
| 採用管理システム | 権限設定ミス | 権限設定の確認 | 設定修正・記録 |
| 共有リンク | 誤設定・放置 | 共有リンク制限 | 停止・記録 |
| 面接官への共有 | 過大な共有 | 面接官への教育・範囲限定 | 共有範囲の見直し |
| ダウンロード | 持ち出し・拡散 | ダウンロード制限 | 状況確認・記録 |
| 保存場所 | 分散保存 | 保存場所の統一 | 整理・記録 |
万一、漏えい・誤送信が起きた場合の初動対応は第10話:漏えい等が起きたときの初動対応、報告義務の詳細は速報・確報の報告義務をご覧ください。
採用活動では、応募者向け案内・採用フォーム確認・面接質問チェック・不採用者情報の保存削除ルール・採用管理システム確認・漏えい時対応などを文書化して整理する必要があります。「採用応募者情報チェックリスト」「面接質問確認表」「不採用者情報保存・削除ルール」「採用管理システム確認メモ」といったたたき台づくりを効率化したい法務・人事・情シス担当者の方には、個人情報保護法対応AIプロンプト集が補助ツールとして役立ちます(最終的な内容の確認・判断は担当者ご自身で行ってください)。
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採用活動で法務・人事が確認すべき質問
新しい採用施策やフォームの相談を受けたら、次の質問で論点を洗い出します。設計段階で確認しておくと、後からの手戻りを防げます。
| 質問 | 確認意図 | 問題になりやすい回答 | 次に見る論点 |
|---|---|---|---|
| どの応募者情報を取得しますか | 取得範囲 | 「念のため広く」 | 採用選考目的との関連性・過剰取得防止 |
| その情報は採用選考に必要ですか | 必要性 | 「あれば便利」 | 選考との関連性 |
| 利用目的を応募者にどう表示していますか | 利用目的の明示 | 「特にしていない」 | 通知・公表(第4話) |
| 応募フォームの必須項目は適切ですか | 過剰取得の防止 | 「全部必須」 | 必須・任意の区別 |
| 面接で聞く質問は適性・能力に関係していますか | 公正採用選考 | 「家庭環境も聞く」 | 把握を避けるべき事項 |
| 要配慮個人情報を取得する可能性はありますか | センシティブ情報 | 「健康状態を聞く」 | 取得の必要性・同意 |
| 採用管理システムや外部ベンダーを使いますか | 外部サービス | 「クラウドATS」 | 委託先管理(第14話) |
| 不採用者情報の保存期間は決まっていますか | 保存期間 | 「決めていない」 | 保存・削除ルール |
| 誰が応募者情報を閲覧できますか | アクセス範囲 | 「関係者全員」 | アクセス権限 |
| 漏えい・誤送信時の連絡ルートはありますか | 初動体制 | 「特にない」 | 漏えい初動(第10話) |
採用活動の個人情報管理チェックリスト
採用活動の個人情報管理を点検するための簡易チェックリストです。チェックが付かない項目があれば、それが優先課題になります。
| チェック項目 | 確認内容 | 未対応の場合のリスク | 主な担当部署 |
|---|---|---|---|
| 採用利用目的を明示している | 応募者に目的を示しているか | 説明不足・信頼低下 | 人事・法務 |
| 応募者向け案内がある | プライバシー案内の有無 | 取得時の説明不足 | 法務・人事 |
| 取得項目を必要な範囲に絞っている | 過剰取得の有無 | 不要情報の管理負担 | 人事 |
| 面接質問のルールを整備している | 把握を避けるべき事項の整理 | 就職差別のおそれ | 人事・法務 |
| センシティブ情報の取得を制限している | 要配慮情報の取扱い | 不適切な取得 | 人事・法務 |
| 採用管理システムの契約・設定を確認している | 委託・第三者提供・クラウド利用の整理、保存先、再委託、権限を確認 | 外部サービス利用の整理不足・権限過大・削除漏れ | 法務・情シス |
| 面接官のアクセス権限を管理している | 閲覧範囲の限定 | 過大な共有 | 情シス・人事 |
| 不採用者情報の保存期間を決めている | 保存・削除ルール | 放置・長期保管 | 人事・法務 |
| 削除・廃棄記録を残している | 削除運用の記録 | 説明できない | 人事 |
| 漏えい時の初動フローがある | 事故対応の準備 | 初動の遅れ | 法務・情シス |
よくある誤解と正しい理解
採用活動の個人情報をめぐる代表的な誤解を整理します。
| よくある誤解 | 正しい理解 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 採用だから応募者に何を聞いてもよい | 適性・能力に関係ない事項の把握は問題になり得る | 公正採用選考・職安法を意識 |
| 応募者が書いた情報は自由に使える | 採用選考等の目的の範囲で使う | 別目的利用は慎重に(第6話) |
| 不採用者情報はずっと保存してよい | 不要になれば消去するよう努める(法22条) | 保存期間を定める |
| 履歴書は紙だから個人情報管理の対象外 | 紙の応募書類も管理対象 | 施錠・廃棄ルールを整える |
| 採用管理システムに入れていれば自社は管理しなくてよい | SaaS・クラウドでも自社の管理責任は残る。委託・第三者提供・提供に当たらない整理のいずれに近いかは契約内容・取扱実態で確認 | 契約・保存先・再委託・権限・削除を確認(第14話) |
| 面接官には応募者情報をすべて共有してよい | 必要な範囲に限定する | 閲覧範囲を管理する |
| リファレンスチェックは本人に言わなくてよい | 本人同意・範囲の整理が必要。無断照会は前職側の第三者提供違反・自社側の不適正取得になり得る | 本人の事前同意を得て行う |
| 採用情報は入社前なので従業員情報ほど重要ではない | 応募者の権利利益への影響は大きい | 同等の慎重さで管理する |
このシリーズでの次の学び方
採用応募者情報の管理を押さえたら、次は入社後の従業員情報へ進みます。第12話では、人事評価・健康情報・退職者情報の管理を、第13話では営業まわりを、第14話ではSaaS・クラウド利用時のチェックを、第15話では全体をチェックリストとして整理します。
| 話数 | タイトル | 主なテーマ | リンク |
|---|---|---|---|
| 第1話 | 個人情報保護法とは?企業法務担当者が最初に押さえる基本 | 全体像・最初に押さえる考え方 | 記事を読む |
| 第2話 | 個人情報・個人データ・保有個人データの違い | 混同しやすい用語の整理 | 記事を読む |
| 第3話 | 個人情報取扱事業者とは?中小企業・スタートアップも対象になるのか | 対象事業者性の入口 | 記事を読む |
| 第4話 | 利用目的の特定・通知・公表 | ポリシーの前に押さえる基本 | 記事を読む |
| 第5話 | 個人情報を取得するときの注意点 | フォーム・名刺・問い合わせ対応 | 記事を読む |
| 第6話 | 目的外利用とは何か | 別目的で使うリスク | 記事を読む |
| 第7話 | 第三者提供・委託・共同利用の違い | 外部提供で迷う基本 | 記事を読む |
| 第8話 | 安全管理措置とは? | 組織的・人的・物理的・技術的措置 | 記事を読む |
| 第9話 | 個人情報の社内管理ルール | アクセス権限・持ち出し・保存期間 | 記事を読む |
| 第10話 | 漏えい等が起きたときの初動対応 | まず社内で何を確認するか | 記事を読む |
| 第11話 | 採用活動と個人情報 | 履歴書・職務経歴書・不採用者情報(本記事) | 本記事 |
| 第12話 | 従業員情報の管理 | 人事評価・健康情報・退職者情報 | 記事を読む |
| 第13話 | 営業リスト・名刺情報・メール配信 | 営業まわりの個人情報保護法チェック | 記事を読む |
| 第14話 | SaaS・クラウドサービス利用時のチェック | 契約前に見るべき項目 | 記事を読む |
| 第15話 | 個人情報保護法対応チェックリスト | 企業法務担当者の保存版 | 記事を読む |
まとめ|必要な範囲で取得し、選考目的に沿って管理する
採用活動では、応募者から多くの個人情報を取得します。だからこそ、取得項目・利用目的・保存期間・アクセス権限・外部サービス利用を一体で確認することが重要です。とくに、採用選考に必要な範囲を超える情報や、差別につながるおそれのある情報の取得には注意が必要です。これは個人情報保護法だけでなく、公正な採用選考や職業安定法の観点からも求められます。
見落としやすいのが、不採用者情報の保存・削除と採用管理システムの委託先管理です。「採用だから何を聞いてもよい」わけではなく、「外部システムに入れたから自社は無関係」でもありません。応募者の権利利益への影響は大きいため、入社後の従業員情報と同等の慎重さで管理しましょう。
次回・第12話では、「従業員情報の管理|人事評価・健康情報・退職者情報の注意点」を解説します。入社後に扱う、より機微な情報の管理を整理します。
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法等」
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/ - 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/ - 厚生労働省「公正な採用選考の基本」
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/basic.html - 厚生労働省・労働局「求職者等の個人情報の取扱いについて」
https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_shoukai/hourei_seido/_00004.html - e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057 - e-Gov法令検索「職業安定法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141
※ 本記事は2026年6月時点の現行法・個人情報保護委員会・厚生労働省の公的資料をもとに、企業法務実務の一般的な整理として解説したものです。面接質問の可否や情報取得の適法性は、職種・業務内容・法令上の要請等により異なるため、実務対応にあたっては最新の法令・指針をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
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