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フリーランス法は、名前だけ見ると「フリーランスなら全員が対象」と思いがちですが、実際には法律上の定義があります。第2話では、フリーランス法の適用を判断する入口として、「誰が保護される側か」「誰が義務を負う発注者か」を、個人事業主・一人会社・副業フリーランスといった具体例を交えて整理します。この記事を読めば、ご自身・取引相手・自社の取引がフリーランス法の対象になりそうか、大まかに見当をつけられるようになります。

実務メモ
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法務実務で効くのは、知識そのものよりも"再現できる型"です。記事で読んだ確認観点・依頼文・回答メモ・マスキングを次の案件でそのまま引き出せる形に残しておくと、判断と説明の質が一段安定します。
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1. はじめに|第2話は「誰が対象か」を整理する

第1話:フリーランス法とは?では、法律の目的・全体像・基本ルールを扱いました。第2話のテーマは、その一歩手前にある「対象者の判断」です。

フリーランス法は「フリーランス」という日常用語ではなく、法律上の定義に当てはまるかどうかで適用の有無が決まります。そのため、発注企業側も「相手が対象者か」だけでなく、「自社がどの義務を負う発注者にあたるのか」を確認する必要があります。受注者・発注者の両方の属性を見るのがポイントです。

この記事の使い方 本記事は制度の全体像を整理する初心者向けの解説です。個別の取引が対象になるかどうかは、契約内容や取引の実態によって判断が分かれることがあります。最終的な判断は、公的なQ&Aの確認や、必要に応じて専門家への相談とあわせて行ってください。

2. フリーランス法でいう「フリーランス」とは

フリーランス法では、保護される側を「特定受託事業者」という言葉で表します(法第2条第1項)。日常用語の「フリーランス」と、法律上の「特定受託事業者」は、必ずしも完全に一致するわけではありません。

初心者向けにざっくり言うと、特定受託事業者とは「事業者として業務委託を受ける側で、従業員を使用しない人・法人」が中心です。個人だけでなく、一定の条件を満たす法人も対象になり得ます。

表1:一般的な「フリーランス」と法律上の「特定受託事業者」の違い
区分意味ポイント
一般的なフリーランス会社に雇われず、個人で仕事をする人、という日常用語法律上の定義とは必ずしも一致しない
特定受託事業者業務委託の相手方である事業者であって、従業員を使用しないもの(個人/一定の法人)フリーランス法で保護対象となる中心的な概念
特定受託業務従事者特定受託事業者である個人、または特定受託事業者である法人の代表者ハラスメント対策など就業環境整備の場面で重要になる
法律上の定義(要点) 公的資料によると、特定受託事業者とは「業務委託の相手方である事業者」で、
(1)個人であって従業員を使用しないもの、または
(2)法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないもの、
をいうとされています(法第2条第1項)。ここでいう「役員」には、取締役・監査役・業務を執行する社員などが含まれると整理されています。

3. 個人事業主は対象になるのか

従業員を使用せずに業務委託を受けている個人事業主は、特定受託事業者に該当しやすいといえます。実務でよくある例としては、次のような職種が挙げられます。

  • デザイナー、ライター、エンジニア、カメラマン、動画編集者、コンサルタント など

ただし、屋号があるか、開業届を出しているかだけで対象かどうかが単純に決まるわけではありません。重要なのは、事業者として業務委託を受けているか、そして従業員を使用していないかという取引・事業の実態です。

表2:個人事業主が対象になりやすいケース
ケース対象になりやすいか理由確認ポイント
一人で受託している専門職(デザイン等)対象になりやすい従業員を使わず、事業者として業務委託を受けているため従業員の有無、業務委託契約か
開業届を出していないが、継続して受託している対象になり得る開業届の有無だけで判断されるわけではないため事業としての継続性・取引実態
屋号で活動し、家族以外の従業員はいない対象になり得る屋号の有無は要件そのものではないため従業員を使用していないか
従業員を雇って事業を行っている個人対象になりにくい従業員を使用しているため、保護される側の要件を満たしにくい雇用している労働者の勤務実態

4. 一人会社は対象になるのか

「法人だから対象外」とはいえません。法人であっても、特定受託事業者に該当し得ます。公的資料では、法人のうち「一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないもの」が対象になり得ると整理されています。いわゆる一人会社がこれにあたる典型例です。

逆に、代表者以外に役員がいる、または従業員を使用している法人は、この要件を満たさなくなります。実務では、登記簿(役員構成)だけでなく、取引開始時の確認書やアンケートで「従業員の有無」を確認・記録化する方法が考えられます。

表3:一人会社・小規模法人の対象判断
法人の状態対象になり得るか理由発注者側の確認方法
代表者1人のみ、役員・従業員なし対象になり得る「一の代表者以外に役員がなく、従業員を使用しない」要件に当てはまり得るため登記簿、取引開始時の確認書
代表者のほかに役員(取締役等)がいる対象になりにくい役員が複数いる場合は特定受託事業者の要件を満たしにくいため登記簿の役員構成
代表者1人だが、従業員を使用している対象になりにくい従業員を使用しているため確認書・アンケートで従業員の有無を確認
判断が微妙な小規模法人確認が必要役員・従業員の実態によって結論が変わり得るため公的Q&Aの確認、必要に応じて専門家相談
確認は重すぎず、記録は残す 発注先の属性確認は重要ですが、現場が回らなくなるほど複雑にする必要はありません。取引開始時に「従業員を使用していますか」「代表者以外に役員はいますか」をメールやフォームで確認し、回答を記録しておくだけでも、後の判断材料になります。

5. 従業員を使用している場合はどうなるか

これまで見てきたとおり、特定受託事業者かどうかの大きな分かれ目は「従業員を使用しているか」です。ここでいう「従業員を使用」は、単に「誰かに手伝ってもらっている」という意味ではなく、一定の雇用関係を前提に判断されます。

公的資料(解釈指針等)では、「従業員を使用」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者を雇用することと説明されています。また、次の点も示されています。

  • 短時間・短期間など、一時的に雇用される労働者は「従業員を使用」に含まれない
  • 事業に同居親族のみを使用している場合は、通常「従業員を使用」に該当しないと整理されている
  • 労働者派遣の派遣先として、上記基準にあたる派遣労働者を受け入れる場合は該当し得る
表4:「従業員を使用」の考え方
ケース従業員を使用しているといえるか考え方
週20時間以上・31日以上雇用見込みのスタッフを雇っている該当しやすい公的資料上、従業員使用の典型例とされる
短時間・短期間の単発アルバイト直ちには断定できない労働時間・雇用期間・雇用関係の実態を確認する
同居親族だけが手伝っている通常は該当しないと説明されている同居親族のみの場合は「従業員を使用」に含まれない整理
派遣労働者を一定条件で受け入れている該当し得る派遣先として基準にあたる派遣労働者を受け入れる場合も対象となることがある
外注先に再委託している直ちには従業員使用とはいえない雇用関係ではなく業務委託関係かを確認する
判断に迷ったら 「従業員を使用」にあたるかどうかは、勤務時間・雇用期間・雇用関係の実態によって変わります。微妙なケースでは、公的なQ&Aを確認したり、専門家に相談したりして、形式だけでなく実態を踏まえて判断することが必要です。

6. 副業フリーランスは対象になるのか

会社員が副業で業務委託を受ける場合、その副業の取引については、特定受託事業者に該当し得ます。本業で雇用されているという一点だけで「対象外」と判断することはできません。

ポイントは、副業先との関係で「事業者として業務委託を受けているか」です。一方で、副業先で実態として指揮命令を受けて働いているような場合には、後述する労働者性の問題が生じ得ます。

表5:副業フリーランスの対象判断
働き方対象になり得るか注意点
本業は会社員、副業で事業者として業務委託を受ける対象になり得る副業先との関係では特定受託事業者に該当し得る
副業として継続的に専門業務を受託している対象になり得る業務委託の実態があるか、従業員を使用していないかを確認
副業先で時間・場所を拘束され指揮命令を受けている労働者性の検討が必要実態が労働者なら労働関係法令が問題になり得る

7. 発注者側の区分を押さえる

フリーランス法では、受注者側だけでなく発注者側の属性も重要です。発注者は、法律上「業務委託事業者」「特定業務委託事業者」に整理され、どちらにあたるかで負う義務の範囲が変わります。

  • 業務委託事業者:特定受託事業者(フリーランス)に業務委託をする事業者。従業員使用の有無は問いません。フリーランス自身がさらに別のフリーランスに委託する場合も含まれ得ます。
  • 特定業務委託事業者:業務委託事業者のうち、(1)個人であって従業員を使用するもの、または(2)法人であって2人以上の役員がいる、もしくは従業員を使用するもの。
表6:発注者側の区分と義務のイメージ
区分初心者向けの意味主に問題になる義務
業務委託事業者フリーランスに業務委託をする事業者(従業員使用の有無を問わない)取引条件の明示 など
特定業務委託事業者業務委託事業者のうち、従業員を使用する個人、または2人以上の役員がいる・従業員を使用する法人など取引条件の明示に加え、報酬支払期日、禁止行為、募集情報の的確表示、ハラスメント対策、育児・介護等への配慮、中途解除等の事前予告など、より広い義務が問題になる
第2話では大枠まで ここでは「発注者の区分によって義務の範囲が変わる」という大枠を押さえれば十分です。各義務の具体的な内容(明示すべき項目、60日以内の支払、7つの禁止行為など)は、第4話以降で順に解説します。

図解:フリーランス法の対象判断の基本

対象判断のおおまかな流れ
発注者(発注事業者)
業務委託(仕事を依頼)
受注者
受注者は「事業者」か?
↓ Yes
従業員を使用していないか?
(法人は代表者以外に役員もいないか)
↓ Yes
特定受託事業者に該当し得る
※実態が労働者の場合は労働関係法令が問題になり得る

8. 発注企業が取引開始時に確認すべきこと

対象判断には、相手方の属性確認が欠かせません。これは法務だけの仕事ではなく、現場部署・購買・経理・人事も関係します。一方で、確認項目を重くしすぎると現場が回らなくなるため、シンプルで記録に残せる確認を目指すのが現実的です。

表7:発注企業が取引開始時に確認したい項目
確認項目確認する理由確認方法の例担当部門の例
相手方が個人か法人か対象判断の出発点になる契約書、登記簿、確認書購買・各事業部
従業員を使用しているか特定受託事業者の要件に関わる取引開始時アンケート購買・法務
代表者以外の役員がいるか法人の対象判断に関わる登記簿の役員構成法務
業務委託契約か雇用契約か適用される法律が変わる契約書、契約形態の確認法務・人事
発注内容が成果物型か役務提供型か取引内容の整理に役立つ仕様書、発注書各事業部
継続取引か単発取引か一部の義務は期間要件に関わる契約期間、発注履歴購買・経理
募集経由か個別依頼か募集情報の的確表示に関わり得る募集媒体、応募経路人事・広報
支払サイト報酬支払期日のルールに関わる支払条件、請求フロー経理・財務
ハラスメント相談窓口の案内要否就業環境整備の対応に関わる相談体制の有無人事・コンプライアンス

9. 対象判断でよくある誤解

対象者の判断では、初心者が誤解しやすいポイントが多くあります。代表的なものを整理します。

表8:フリーランス法の対象者についてよくある誤解
誤解実際の考え方実務上の注意点
個人事業主なら必ず対象になる従業員を使用している個人など、要件を満たさない場合もある従業員の有無を確認する
法人なら対象外である一の代表者以外に役員がなく従業員を使用しない法人は対象になり得る一人会社は要注意
開業届を出していなければ対象外である開業届の有無だけで決まるわけではない事業としての実態を見る
副業会社員は対象外である副業取引では特定受託事業者に該当し得る副業先との関係で判断する
外注先にスタッフが少しでもいれば対象外「従業員を使用」は一定の雇用関係を前提に判断される時間・期間・雇用関係の実態を確認
業務委託契約書があれば労働法は関係ない実態が労働者であれば労働関係法令が問題になり得る契約名称ではなく実態で判断される
発注者が小規模なら義務はない取引条件の明示などは広く求められ、属性により義務の範囲が変わる「小規模だから無関係」とはいえない
相手が対象者か分からなければ確認しなくてよい確認しなければ適用判断ができない取引開始時の確認・記録化が有効

10. フリーランス本人が確認しておきたいこと

フリーランス本人にとっても、自分が保護される側にあたるのかを把握しておくことは大切です。次の自己チェックを参考にしてください。

表9:フリーランス本人の自己チェック
確認項目見るポイント残しておきたい資料
自分が特定受託事業者に該当し得るか事業者として業務委託を受けているか契約書、発注書
自分が従業員を使用しているか週20時間以上・31日以上雇用見込みの人を雇っていないか雇用契約、勤務記録
取引相手が事業者か消費者からの依頼ではなく事業者間の取引か発注元の情報
業務委託として仕事を受けているか雇用ではなく業務委託か契約書、依頼メール
実態として労働者に近い働き方になっていないか時間・場所の拘束、指揮命令の有無業務指示の記録
条件をメールや書面で残しているか金額・納期・支払期日などの合意記録メール、チャットのログ
労働者性という論点 契約の名称が「業務委託」であっても、働き方の実態が労働者と判断される場合には、フリーランス法ではなく労働基準法などの労働関係法令が適用される可能性があります。「業務委託契約書があるから労働法は関係ない」とはいえない点に注意が必要です。

11. このシリーズで次に読むべき記事

第2話で「誰が対象か」をつかんだら、次は第3話:業務委託なら全部対象?フリーランス法が適用される取引・されない取引で取引の範囲を確認しましょう。第4話以降では、取引条件の明示、報酬支払期日、禁止行為など、具体的な義務を順に扱います。

  1. 第1話:フリーランス法とは?初心者向けに目的・対象・基本ルールをわかりやすく解説
  2. 第2話:フリーランス法の対象者とは?「フリーランス」と「発注事業者」の考え方(この記事)
  3. 第3話:業務委託なら全部対象?フリーランス法が適用される取引・されない取引
  4. 第4話:取引条件の明示義務とは?発注時に書くべき項目をわかりやすく解説
  5. 第5話:フリーランスへの報酬支払ルール|支払期日・遅延・未払いの注意点
  6. 第6話:フリーランス法の禁止行為7つ|受領拒否・報酬減額・買いたたきとは
  7. 第7話:「買いたたき」とは何か?フリーランス法で問題になる報酬交渉の境界線
  8. 第8話:やり直し・追加作業はどこまで頼める?フリーランス法と仕様変更の注意点
  9. 第9話:募集情報の的確表示とは?フリーランス募集でNGになりやすい表現
  10. 第10話:フリーランスへのハラスメント対策|発注企業が整備すべき相談体制
  11. 第11話:育児・介護との両立配慮とは?フリーランス法で発注者に求められる対応
  12. 第12話:契約解除・中途解約の注意点|フリーランス法の事前予告と理由開示
  13. 第13話:下請法・独占禁止法・労働法との違い|フリーランス法だけ見ればよいのか
  14. 第14話:フリーランス法違反が疑われたら?相談先・申出・社内対応の流れ
  15. 第15話:フリーランス法対応チェックリスト|発注前・発注時・終了時に確認すべきこと

12. まとめ

  • フリーランス法では、日常用語の「フリーランス」ではなく、法律上の「特定受託事業者」に当たるかどうかが重要です。
  • 従業員を使用しない個人事業主だけでなく、一の代表者以外に役員がなく従業員を使用しない一人会社も対象になり得ます。
  • 会社員の副業でも、その副業取引では特定受託事業者に該当し得ます。
  • 発注者側は「業務委託事業者」「特定業務委託事業者」に整理され、属性によって義務の範囲が変わります。
  • 契約書の形式だけでなく、従業員使用の有無・業務委託の実態・労働者性もあわせて確認する必要があります。
  • 個別の事案では判断が分かれることがあるため、迷う場合は公的Q&Aの確認や専門家への相談もご検討ください。

次回は、第3話で「フリーランス法が適用される取引・されない取引」を解説します。

フリーランス取引の対象判断を、発注フローに組み込みたい方へ

フリーランス法対応では、契約書の修正だけでなく、取引開始時に相手方の属性(個人か法人か、従業員を使用しているか等)を確認することが重要になります。個人事業主、一人会社、副業フリーランスなど、現場では判断に迷うケースが少なくありません。

Legal GPTでは、企業法務・契約実務に役立つ記事や実務ツールを提供しています。まずは関連する基礎記事から確認してみてください。

参考情報

本記事は、以下の公的資料に基づいて制度の全体像を整理しています(いずれも公開情報。最新の内容や詳細は各官庁の公式サイトをご確認ください)。

公正取引委員会
「フリーランス法特設サイト」/「フリーランス法Q&A」
中小企業庁
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」
厚生労働省
「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務委託を行う事業者の方等へ」
内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 Q&A」「同法の考え方(解釈指針)」等のパンフレット・リーフレット

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律相談ではありません。具体的な取引・契約への対応は、契約内容や取引実態に応じて、必要に応じて専門家にご相談ください。

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