株主から「株主であることを証明する書類を出してください」と依頼された場合、会社は何を確認し、どのような書類を交付すればよいのでしょうか。

会社法122条には、株主が、自分について株主名簿に記載・記録された株主名簿記載事項を記載した書面の交付、または当該事項を記録した電磁的記録の提供を会社に請求できる制度があります。一般に「株主名簿記載事項証明書」などと呼ばれる書類です。

ただし、これは株主名簿全体を見る会社法125条の閲覧・謄写請求とは別制度です。また、会社法122条は請求目的や提出先の説明を請求要件とはしていません。銀行への提出目的などを確認することが実務上有用な場面はありますが、法定要件と会社独自の確認事項を区別することが重要です。

この記事では、2026年9月9日時点の会社法・会社法施行規則・商業登記規則その他の公的資料を前提に、株主名簿記載事項証明書の発行フロー、株主名簿の確認事項、電子発行、株式譲渡・名義書換との関係を整理します。株主名簿書換請求については、「株主名簿書換請求を受けたらどうするか|請求者・添付書類・社内確認の実務」もあわせてご覧ください。

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1. 株主名簿記載事項証明書とは何か

会社法122条1項は、会社法121条1号の株主が株式会社に対し、当該株主について株主名簿に記載・記録された株主名簿記載事項を記載した書面の交付、または当該事項を記録した電磁的記録の提供を請求できると定めています。

会社法122条1項(要旨)
株主は、株式会社に対し、当該株主について株主名簿に記載・記録された株主名簿記載事項を記載した書面の交付、または当該株主名簿記載事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができます。 ※ 条文の正確な文言は記事末尾のe-Gov法令検索をご確認ください。

ポイントは、会社が「この人が実体法上真正な株式所有者である」と無限定に保証する制度ではなく、現在の株主名簿にその株主について何が記載・記録されているかを示す制度だという点です。

証明する対象を正確に理解する

証明文言は「当社株主名簿に、下記のとおり記載(又は記録)されていることを証明する」などとするのが制度趣旨に沿っています。「真正な所有者であることを証明する」「当該株式について一切の権利を有することを保証する」といった、株主名簿の記載を超える表現は避けるべきです。

2. 株主名簿記載事項とは何か|会社法121条

会社法121条は、株式会社が株主名簿に記載または記録しなければならない「株主名簿記載事項」を定めています。

表1:会社法121条の株主名簿記載事項
項目 内容 実務上の確認事項
氏名・名称、住所 株主の氏名または名称および住所 住所変更、法人名称変更などが反映されているか
株式数 当該株主が有する株式の数 増資、譲渡、自己株式取得、分割・併合等が反映されているか
種類株式 種類株式発行会社では、株式の種類および種類ごとの数 普通株式・優先株式等を混同しない
取得日 株主が株式を取得した日 株主名簿上の取得日と原資料を照合する
株券番号 株券発行会社では、発行済み株券に係る番号 ただし会社法122条1~3項は株券発行会社には適用されない

したがって、会社法122条に基づく書面や電磁的記録は、基本的に株主名簿に現に記載・記録されているこれらの事項を基礎として作成します。

3. 株主名簿記載事項証明書と株主名簿閲覧請求は別制度

特に混同しやすいのが、会社法125条の株主名簿の閲覧・謄写請求です。

表2:会社法122条と125条の違い
項目 株主名簿記載事項証明書等 株主名簿の閲覧・謄写
根拠条文 会社法122条 会社法125条
対象 請求した株主本人についての株主名簿記載事項 株主名簿そのもの
主な請求権者 当該株主 株主・債権者等
請求理由の明示 122条1項には明文の要件なし 125条2項で請求理由の明示が必要
法定拒否事由 125条3項のような拒否事由は122条には規定されていない 125条3項所定の拒否事由あり
「目的を説明しなければ発行しない」は122条の要件ではない

会社法122条1項には、株主が使用目的や提出先を説明しなければならないとの要件はありません。そのため、「提出先が明確でなければ122条に基づく交付を拒否できる」「使用目的を書かせることが法定要件である」という整理は適切ではありません。

一方、金融機関の指定様式に会社が記入する場合、会社法121条の株主名簿記載事項以外の事項まで証明するよう求められた場合、依頼内容自体が曖昧な場合などには、どの書類を何のために必要としているのかを実務上確認することには意味があります。

つまり、次のように区別します。

表3:法律上の要件と実務上の確認事項
確認事項 位置付け 考え方
請求者が122条の株主か 法律上重要 122条の法定請求権者かを確認する
株券発行会社か 法律上重要 株券発行会社には122条1~3項が適用されない
代表取締役等の署名・記名押印 法律上必要 書面の場合は122条2項による
電子署名 法律上必要 電磁的記録の場合は122条3項・施行規則225条による
提出先・使用目的 実務上確認する場合あり 122条の一般的な法定請求要件ではない
社内申請番号・発行管理番号 会社独自 内部統制・証跡管理のため設定可能

株主名簿の閲覧・謄写請求については、「株主名簿の閲覧請求を受けたらどうするか|拒否できる場合と社内対応」をご覧ください。

4. 誰が会社法122条に基づいて請求できるのか

会社法122条1項は、会社法121条1号の株主について請求権を定めています。実務では、少なくとも次の区別が必要です。

株主本人による請求
株主本人から適法な代理権を与えられた代理人による請求
法人株主について、当該法人を代表・代理して請求する権限を有する者による請求
株主本人でも代理人でもない第三者からの依頼

株主本人からの請求

請求者が株主名簿に記載・記録された株主本人であることを確認します。会社法122条自体に特定の本人確認書類が列挙されているわけではありませんが、無権限者への交付を防ぐため、合理的な本人確認を行うことは実務上重要です。

代理人からの請求

代理人から請求を受けた場合には、本人確認に加え、委任状その他により代理権の範囲を確認します。

法人株主の場合

法人が株主である場合、窓口となった担当者が当該法人を代表・代理して請求する権限を有するか確認します。担当者であるというだけで当然に法定請求権者本人になるわけではありません。

親会社・兄弟会社などのグループ会社から求められた場合

単に親会社・子会社・兄弟会社・その他の関係会社であるというだけで、会社法122条上の請求権が発生するわけではありません。

関係会社が請求できるかは、例えば次のように分けて考えます。

表4:関係会社からの依頼の整理
ケース 122条上の位置付け
親会社自身が当該会社の株主である 当該親会社自身について122条1項の請求を検討
関係会社が株主本人から代理権を与えられている 代理権を確認したうえで対応
単にグループ会社である それだけでは122条上の請求権は生じない

5. 第三者提出と個人情報の取扱いを混同しない

例えば個人株主が、銀行へ提出するために自分の株主名簿記載事項証明書を会社へ請求することがあります。

この場合、まず区別すべきなのは、

会社が株主本人に、122条に基づいて自己の株主名簿記載事項を交付する行為
株主本人が受領した書類を、その後金融機関等へ提出する行為

の2段階です。

会社から株主本人への法定の交付と、その株主が受領後に第三者へ提出することを一体として「会社による第三者提供」と整理するのは適切ではありません。

第三者から会社へ直接請求された場合は別問題

金融機関、取引先、関係会社その他の第三者から会社へ直接「株主の証明書をください」と依頼された場合、その第三者は、単に提出先であるというだけでは会社法122条1項の法定請求権者ではありません。株主本人からの委任・代理権、本人の指示その他の法的根拠を確認する必要があります。

6. 書面には代表取締役等の署名または記名押印が必要

会社法122条2項は、122条1項に基づいて交付する書面について、株式会社の代表取締役が署名し、または記名押印しなければならないと定めています。

会社法122条2項
前項の書面には、株式会社の代表取締役(指名委員会等設置会社にあっては、代表執行役。次項において同じ。)が署名し、又は記名押印しなければならない。 ※ 2026年9月9日時点の現行条文。正確な条文はe-Gov法令検索をご確認ください。

したがって、会社法122条に基づく法定の書面を発行するのであれば、部長印、法務部印、担当者印、会社角印だけを押しておけば当然に122条2項を満たす、という整理はできません。

法律上必要な署名・記名押印と社内押印を分ける

会社角印や担当部署印を併用する社内運用自体はあり得ます。しかし、それらは代表取締役(指名委員会等設置会社では代表執行役)の署名・記名押印という122条2項の要件とは別に考える必要があります。

7. 電子発行は「PDFをメールすればよい」わけではない

会社法122条1項は、書面だけでなく、株主名簿記載事項を記録した電磁的記録の提供も認めています。

ただし、122条3項は、電磁的記録について代表取締役が法務省令で定める署名または記名押印に代わる措置をとらなければならないとしています。

その措置を定めるのが会社法施行規則225条です。

会社法施行規則225条(要旨)
会社法122条3項に規定する署名または記名押印に代わる措置は「電子署名」とされます。電子署名とは、対象情報がその措置を行った者の作成に係るものであることを示し、かつ、情報が改変されていないか確認できる措置です。 ※ 正確な条文は記事末尾のe-Gov法令検索をご確認ください。

したがって、WordやExcelからPDFを作成し、代表者名を文字入力しただけでメール添付することが、当然に会社法122条3項・会社法施行規則225条の要件を満たすとはいえません。

表5:紙と電子で異なる法定形式
交付方法 法的な形式 注意点
紙の書面 代表取締役等の署名または記名押印 122条2項
電磁的記録 代表取締役等による電子署名 122条3項・施行規則225条
単なるPDFファイル それだけで法定要件充足とはいえない 電子署名の有無を確認

8. 株券発行会社には会社法122条1~3項が適用されない

会社法122条4項は、122条1項から3項までの規定を株券発行会社には適用しないと定めています。

会社法122条4項
前三項の規定は、株券発行会社については、適用しない。

したがって、株主名簿記載事項証明書の依頼を受けたら、早い段階で自社が株券発行会社かどうかを確認する必要があります。

「株券を見たことがない」だけで判断しない

非上場会社では、実際には株券が手元で使われていなくても、会社法上の株券発行会社であるケースがあります。現物を見たことがあるかだけで判断せず、定款、登記事項、株券発行に関する社内資料等を確認してください。

なお、株券発行会社では株式譲渡について会社法128条・130条2項・131条など独自の規律があります。このため、株券発行会社であることが判明した場合には、122条による証明書発行の問題だけでなく、株券の発行・交付状況や名義書換まで含めて個別に確認する必要があります。

9. 株式譲渡済みでも、名義書換未了なら譲受人名義で直ちに証明しない

実務で特に注意が必要なのが、「株式譲渡契約は締結済みだが、株主名簿の名義書換が完了していない」ケースです。

会社法130条1項は、株式の譲渡について、その株式を取得した者の氏名・名称および住所を株主名簿に記載・記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗できないと定めています。

また、会社法133条は株式取得者による株主名簿記載事項の記載・記録の請求について定め、原則として名簿上の株主等との共同請求を要求しています。譲渡制限株式の場合には、さらに会社法134条の適用関係も確認しなければなりません。

証明書は現在の株主名簿記載事項を記載する制度

株式譲渡契約書が存在することだけを理由に、会社が株主名簿を変更しないまま譲受人名義の「株主名簿記載事項証明書」を作成するのは適切ではありません。まず、現在の株主名簿に誰がどのように記載・記録されているか、名義書換の請求・手続が完了しているかを確認します。

名義書換未了の場合は、少なくとも次の資料・事項を確認します。

現在の株主名簿
株式譲渡契約書
株主名簿書換請求の有無・内容
会社法133条に基づく請求要件
譲渡制限株式の場合の譲渡承認手続
会社法134条の適用関係
株券発行会社の場合は株券の交付状況

株主名簿書換の実務については、第9話「株主名簿書換請求を受けたらどうするか」も参照してください。

10. 増資・自己株式・分割・併合・相続も確認する

株主名簿の最新性は、株式譲渡だけを確認すれば足りるわけではありません。

会社法132条は、株式の発行、会社自身による株式取得、自己株式処分、株式併合、株式分割などに対応して、株主名簿記載事項を記載・記録することを定めています。

そのため、証明書発行前には次のイベントが株主名簿へ正しく反映されているかを確認します。

表6:株主名簿の最新性を確認する主なイベント
イベント 主な確認ポイント
株式譲渡 名義書換が完了しているか
増資・新株発行 新株主・追加株式数・取得日が反映されているか
自己株式取得 会社による取得が株主名簿へ反映されているか
自己株式処分 処分先の株主情報・株式数が反映されているか
株式分割・併合 株式数が更新されているか
相続その他の一般承継 承継関係、名義書換、共有関係等を確認
種類株式 種類および種類ごとの数が正しいか

11. 基準日と「現在の株主名簿」は別の問題

会社法124条は、株式会社が一定の日を基準日として、その日に株主名簿に記載・記録されている株主を一定の権利を行使できる者と定める制度を置いています。

しかし、会社法122条に基づく株主名簿記載事項証明書について、当然に「直近の株主総会基準日時点の株主」を証明するという制度ではありません。

証明書は原則として、請求対象となる株主について株主名簿に現に記載・記録されている株主名簿記載事項を基礎に作成します。

一方、「2026年6月30日現在の保有状況を証明してほしい」など過去の特定時点の任意証明を求められた場合には、それが122条に基づく現在の株主名簿記載事項の交付なのか、会社が別途行う任意証明なのかを切り分けたうえで対応する必要があります。

12. 株主名簿記載事項証明書・株主リスト・任意の保有証明を区別する

表7:似ている4つの書類・制度の違い
書類・制度 根拠 主な目的 ポイント
株主名簿記載事項証明書等 会社法122条 株主本人について株主名簿に記載・記録された事項の交付 書面は代表取締役等の署名・記名押印、電子は電子署名
株主名簿閲覧・謄写 会社法125条 株主名簿そのものの閲覧・謄写 請求理由の明示、法定拒否事由あり
登記申請時の株主リスト 商業登記規則61条2項・3項等 一定の商業登記申請の添付書面 株主名簿とは別書類。法務局提出用
任意の株式保有証明書 契約・依頼内容等による 銀行、取引先その他への任意証明 何をどの時点で証明するかを特定する

法務省も、商業登記規則61条2項・3項に基づく株主リストについて、株主名簿とは記載内容が異なるため、株主名簿を登記申請書に添付しても株主リストの添付に代えることはできないと説明しています。

13. 株主名簿記載事項証明書の基本文例

書面を作成する場合、証明対象を株主名簿の記載・記録事項に限定する文言とすることが重要です。

株主名簿記載事項証明書

当社株主名簿に、下記のとおり記載(又は記録)されていることを証明します。

1.株主の氏名又は名称:○○○○
2.住所:○○○○
3.保有株式数:○○株
4.株式の種類:普通株式
5.株式取得日:○年○月○日

以上

○年○月○日
株式会社○○○○
代表取締役 ○○ ○○ 印

文例は会社の実情に応じて調整

種類株式の有無、株主名簿上の記載内容、複数回取得の扱いその他の事情によって記載方法は変わります。また、上記は紙の書面を想定した一般的な例です。電磁的記録で提供する場合は会社法122条3項・会社法施行規則225条に基づく電子署名が必要です。

14. 発行対応は7ステップで整理する

①依頼内容の特定 122条の請求か、任意証明か、必要書類を確認
②株券発行会社か確認 定款・登記事項等を確認
③請求者・代理権確認 本人、法人担当者、代理人を確認
④名簿の最新性確認 譲渡・増資・相続・自己株式等を確認
⑤記載事項確認 氏名・住所・株式数・取得日・種類等を照合
⑥法定形式を整える 代表取締役等の署名・記名押印または電子署名
⑦発行記録保存 控え・依頼記録・確認資料を管理

①依頼内容を特定する

まず、「株主であることを証明してほしい」という依頼が、会社法122条に基づく自己の株主名簿記載事項の交付請求なのか、銀行指定書式への記入などの任意証明なのかを区別します。

ここで提出先や目的を確認する場合があっても、122条の請求について目的説明を一律の法定要件として扱わないことが重要です。

②株券発行会社か確認する

定款、登記事項、株券関係資料等で株券発行会社かを確認します。株券発行会社なら122条1~3項は適用されません。

③請求者・代理権を確認する

本人、法人株主の担当者、代理人を区別し、必要な本人確認・権限確認を行います。

④株主名簿の最新性を確認する

株式譲渡、名義書換、増資、相続、自己株式取得・処分、株式分割・併合その他の株式異動が漏れなく反映されているか確認します。

⑤記載事項を確認する

会社法121条の株主名簿記載事項と証明書案を一項目ずつ照合します。

⑥代表取締役等の署名・記名押印または電子署名を行う

紙なら会社法122条2項、電子なら同条3項・会社法施行規則225条に従って法定形式を整えます。

⑦発行記録・控えを保存する

発行履歴を残すことについて会社法122条に独立した保存義務が定められているわけではありませんが、誤発行防止、内部統制、後日の照会対応のため、会社として履歴を保存する運用が望ましいでしょう。

15. 発行履歴で管理しておきたい事項

表8:発行履歴の管理例
管理項目 位置付け 管理目的
請求受付日 実務上推奨 処理履歴の特定
請求者 実務上推奨 本人・代理人の区別
証明対象株主 実務上推奨 誰について交付したか確認
代理権確認資料 該当時推奨 無権限者への交付防止
発行日・発行部数 実務上推奨 重複発行・原本管理
紙・電子の別 実務上推奨 法定形式確認
署名・記名押印/電子署名 法定形式に関係 122条2項・3項の確認
証明書控え 実務上推奨 後日の検証
提出先・用途 必要に応じ会社独自 任意証明等の依頼内容管理。122条の法定要件ではない

16. 株主名簿記載事項証明書でよくあるミス

表9:よくあるミスと防止策
ミス 問題点 防止策
株主名簿全体を渡してしまう 122条の自己の記載事項の交付と125条の閲覧・謄写を混同 制度を切り分ける
使用目的を書かなければ発行しないとする 122条にない要件を追加している 法定要件と任意確認を区別
グループ会社だから交付する グループ関係だけでは122条の請求権は生じない 株主本人か代理人か確認
第三者からの依頼にそのまま応じる 第三者は当然には122条の請求権者ではない 委任・代理権等を確認
株主本人への交付と、その後の銀行提出を一体の第三者提供と扱う 法的主体・行為が混同される 会社から本人への交付と本人から第三者への提出を区別
株式譲渡契約だけを見て譲受人名義で証明する 株主名簿の現状・名義書換を無視 130条・133条・134条と名簿を確認
角印や担当者印だけで発行する 122条2項の形式を満たさない可能性 代表取締役等の署名・記名押印
PDFをメール送付すれば電子発行完了と考える 122条3項・施行規則225条の電子署名を欠く 法定要件を満たす電子署名を利用
株券発行会社かを確認しない 122条4項の適用除外を見落とす 定款・登記事項等を確認
「真正な株式所有者である」と広く保証する 株主名簿記載事項を超えた証明になる 「株主名簿に記載・記録されている」と限定

17. 株主名簿記載事項証明書発行チェックリスト

表10:実務チェックリスト
確認項目 完了 位置付け・注意点
依頼が会社法122条の請求か、任意証明かを特定した 最初に制度を切り分ける
株券発行会社か確認した 122条4項
請求者が株主本人であることを確認した 122条の請求権者確認
代理人の場合、代理権を確認した 委任状等
法人株主の場合、担当者・代理人の権限を確認した 法人株主本人と担当者を区別
株式譲渡の有無を確認した 名義書換未了に注意
株主名簿の名義書換状況を確認した 130条・133条等
譲渡制限株式の場合、承認関係を確認した 134条等
増資・新株発行を確認した 株式数・取得日
相続その他一般承継の有無を確認した 承継資料・名義書換を確認
自己株式取得・処分を確認した 132条
株式分割・併合を確認した 132条2項・3項
種類株式の有無を確認した 種類・種類ごとの数
過去の株式発行履歴を確認した 名簿の最新性確認
氏名・名称、住所を確認した 121条1号
株式数を確認した 121条2号
取得日を確認した 121条3号
紙発行の場合、代表取締役等の署名・記名押印を手配した 122条2項
電子発行の場合、代表取締役等の電子署名を確認した 122条3項・施行規則225条
証明文言を株主名簿記載事項の証明に限定した 過度な権利保証を避ける
発行履歴・控えを保存した 実務上推奨
「法律上必須」と「実務上推奨」を区別する

例えば、代表取締役等の署名・記名押印や電子署名は会社法122条2項・3項に直接根拠があります。一方、社内申請書の作成、提出先の記録、発行管理番号の付番、控えの保存方法などは、会社法122条が直接定める要件ではなく、会社の内部統制・情報管理として定める事項です。社内マニュアルではこの違いを明示しておくと、法定要件の過剰化を防げます。

まとめ

株主名簿記載事項証明書は、株主本人について株主名簿に記載・記録された株主名簿記載事項を記載する書面等です(会社法122条)。
会社法122条は、株主名簿全体の閲覧・謄写を定める会社法125条とは別制度です。
会社法122条1項には、提出先や使用目的の説明は明文の請求要件として定められていません。
第三者や単なる関係会社は、それだけで122条上の請求権者になるわけではありません。代理請求なら代理権を確認します。
紙の書面には代表取締役(指名委員会等設置会社では代表執行役)の署名または記名押印が必要です。
電磁的記録の場合は、会社法122条3項・会社法施行規則225条に基づく電子署名が必要で、単なるPDFメール送信で当然に足りるわけではありません。
会社法122条1~3項は株券発行会社には適用されません
株式譲渡済みでも名義書換未了の場合、契約書だけを根拠に譲受人名義の証明書を直ちに発行せず、会社法130条・133条・134条と現在の株主名簿を確認します。
証明文言は「当社株主名簿に記載・記録されていることを証明する」とし、真正な株式所有者であることを無限定に保証する表現は避けます。

株主名簿は、株式譲渡だけでなく、増資、自己株式取得・処分、株式分割・併合、相続などによって内容が変動します。証明書発行を単なる「押印事務」にせず、株主名簿の正確性を確認する機会として運用することが重要です。

このシリーズで扱うテーマ(全15話)

表11:株主名簿管理で忘れがちな会社法実務15選
話数 記事タイトル 主なテーマ
第1話 株主名簿とは何か|登記簿を見ても株主が分からない理由 株主名簿の基礎・登記簿との違い
第2話 株主名簿の記載事項とは|氏名・住所・株式数・取得日をどう管理するか 記載事項の管理実務
第3話 株主名簿が古い会社はどう整備するか|過去の譲渡・増資・自己株式を確認する手順 名簿の再整備
第4話 株主名簿と役員選任|誰の議決権で取締役・監査役を選ぶのか 役員選任と議決権
第5話 株主総会の招集通知は誰に送るのか|株主名簿と基準日の関係 招集通知と基準日
第6話 議決権数はどう確認するか|株主名簿・発行済株式数・自己株式の見方 議決権数の確認
第7話 株式譲渡後に株主名簿を書き換えないとどうなるか 名義書換と対抗要件
第8話 譲渡制限株式と株主名簿|承認決議と名義書換の順番を整理 譲渡制限株式
第9話 株主名簿書換請求を受けたらどうするか|請求者・添付書類・社内確認の実務 書換請求への対応
第10話 株主名簿記載事項証明書とは|株主から証明書を求められた場合の対応(本記事) 記載事項証明書
第11話 借入時に株式を担保にする場合の株主名簿|登録株式質権者とは何か 株式質権の基礎
第12話 株式質権を設定したら議決権・配当はどうなるか|株主と質権者の関係 質権と議決権・配当
第13話 登録株式質権者への通知・配当対応|株主名簿管理で忘れがちな担保実務 質権者への通知・配当
第14話 株主名簿の閲覧請求を受けたらどうするか|拒否できる場合と社内対応 閲覧・謄写請求
第15話 株主名簿管理チェックリスト|役員・法務・総務が毎年確認すべきこと 年次チェックリスト

◀ 前回(第9話):株主名簿書換請求を受けた場合の確認手順は、第9話「株主名簿書換請求を受けたらどうするか|請求者・添付書類・社内確認の実務」もあわせてご確認ください。

▶ 次回(第11話):株式を担保にする場合の株主名簿と登録株式質権者については、第11話「借入時に株式を担保にする場合の株主名簿|登録株式質権者とは何か」をご確認ください。

株主総会・役員変更・取締役会議事録などの会社法実務については、Legal GPTのコーポレート法務関連記事もあわせてご確認ください。

参考情報・一次資料

本記事は、2026年9月9日時点の以下の法令・公的資料を確認して作成しています。個別案件では、最新の法令本文、定款、株式取扱規程、株主名簿、株式譲渡契約書、譲渡承認資料、議事録、登記事項その他の原資料を確認してください。

e-Gov法令検索「会社法」
参照条文:第121条、第122条、第124条、第125条、第126条、第127条~第134条ほか
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
e-Gov法令検索「会社法施行規則」
参照規定:第22条、第225条ほか
https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012
e-Gov法令検索「商業登記規則」
株主リストについて第61条第2項・第3項等を参照
https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
法務省「『株主リスト』が登記の添付書面となりました」
株主総会決議・株主全員の同意等を要する一定の登記申請における株主リストの取扱い
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00095.html
法務省「株主リストに関するよくあるご質問」
株主名簿と登記申請時の株主リストが別書類であることなどを確認
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00103.html

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な対応では、会社の機関設計、定款、株式取扱規程、株券発行会社該当性、株主名簿の内容、株式譲渡・名義書換・相続等の経緯を確認し、必要に応じて弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。

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