2026年施行・カスハラ義務化対応シリーズ

第1話 / 全10話・ハブ記事

カスハラ対策が全企業の義務に|2026年10月施行の改正法でやるべきこと全体像

2026年10月1日 施行 法令・制度基準日:2026年7月14日

この記事でわかること

制度の全体像、対象事業主、3要素、10項目の措置、リスク、準備工程表

2026年10月1日から、職場におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)を防止するための措置を講じることが、事業主の法律上の義務になります。根拠となるのは、2025年6月11日に公布された改正法(令和7年法律第63号)による改正後の労働施策総合推進法です。

対象は、業種や企業規模を問いません。大企業だけでなく、中小企業や小規模事業者も同じ日から義務の対象になります。中小企業だけ施行を遅らせる経過措置は設けられていません。

ここでいう対象は、労働者を雇用する事業主です。労働者を雇用していない法人や個人事業者まで、雇用管理上の措置義務の対象になるという意味ではありません。

そして、この義務は「迷惑な客を断るルールを1本作れば終わり」というものではありません。厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)は、方針の明確化、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応、悪質事案の抑止措置、プライバシー保護、不利益取扱いの防止まで、10項目の措置を必ず講じるよう求めています。方針・相談窓口・現場マニュアル・記録・研修を、一体の仕組みとして動かせる状態にする必要があります。

本記事は、シリーズ「2026年施行・カスハラ義務化対応シリーズ」全10話の第1話です。制度の全体像と、施行日までに何を準備すべきかを一気に確認できるハブ記事として構成しています。個別論点は第2話以降で詳しく扱います。

本記事の法令・制度基準日:2026年7月14日施行日:2026年10月1日
省令・指針・行政資料は今後変更され得ます。実際の対応にあたっては、厚生労働省および都道府県労働局の最新情報を必ずご確認ください。

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最初に結論:2026年10月までに最低限確認すべき7項目

  1. 経営としての方針を決める/カスハラには毅然と対応し、労働者を保護するという方針を明確にする
  2. 相談窓口と報告ルートを整える/誰に、どの経路で相談・報告するかを決めて周知する
  3. 現場の対応基準を決める/その場で管理監督者に引き継ぐ基準、断ってよい水準を明文化する
  4. 発生後の手順を作る/事実確認、被害者への配慮、再発防止の流れを標準化する
  5. 既存の規程・マニュアルを点検する/就業規則、ハラスメント防止規程、顧客対応マニュアルを棚卸しする
  6. 管理職と現場へ周知・研修する/方針と対処内容を「知っている」状態にする
  7. 施行後の点検体制を決める/相談件数、対応時間、再発事案を定期的に検証する

この7項目は、後述する「施行日までに企業が準備すべき7つの対応」に対応しています。自社の現状を照らし合わせながら読み進めてください。

カスハラ対策は2026年10月1日から義務化される

改正法の基本情報

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項目内容
改正法の正式名称労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律
法令番号令和7年法律第63号
公布日2025年(令和7年)6月11日
カスハラ防止措置義務の施行日2026年(令和8年)10月1日
(施行期日を定める政令=令和8年政令第17号)
改正される法律労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号。以下「労働施策総合推進法」)ほか
根拠となる指針事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針
(令和8年厚生労働省告示第51号/2026年2月26日告示。以下「カスハラ防止指針」)
主な条文改正後の労働施策総合推進法 第33条(雇用管理上の措置等)、第34条(国・事業主・労働者・顧客等の責務)

労働施策総合推進法は、2020年からパワーハラスメント防止措置を事業主に義務づけてきた法律です(いわゆるパワハラ防止法)。今回の改正は、その同じ枠組みの中に「顧客等からの言動」を新たに加えたものだと理解すると分かりやすくなります。以下、本記事では「改正労働施策総合推進法」と表記します。

改正の背景

これまで、カスハラ対策の根拠は、厚生労働省が公表してきた企業向けマニュアルや、東京都をはじめとする自治体の防止条例が中心でした。いずれも企業の自主的な取組を促すものであり、雇用管理上の措置を全国の事業主に義務づける法律上の規定はありませんでした。

他方で、顧客等からの著しい迷惑行為は、労働者の心身に強い負荷を与え、休職や離職につながる問題として認識が広がっています。労災の場面でも、心理的負荷による精神障害の認定基準(令和5年9月1日付け基発0901第2号)において、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」という具体的出来事が明記されています。こうした流れの中で、労働政策審議会での議論を経て、雇用管理上の措置義務として法制化されたのが今回の改正です。

重要:カスハラ行為そのものを処罰する法律ではない

ここは誤解が非常に多い点です。改正労働施策総合推進法は、カスハラを行った顧客を新たに一律に処罰する法律ではありません。この法律が求めているのは、事業主が、自社の労働者を守るために雇用管理上の措置を講じることです。

顧客の行為が暴行・脅迫・威力業務妨害などの犯罪に該当する場合は、これまでどおり刑法その他の法令の問題になります。改正法は、その手前にある「企業の体制整備」を義務づけたものだと整理してください。

改正前と義務化後の比較

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項目改正前(~2026年9月30日)2026年10月1日以降
法的な位置付けカスハラ防止を全事業主に義務づける法律上の規定はない改正労働施策総合推進法第33条第1項により、雇用管理上必要な措置を講ずることが事業主の義務となる
事業主の対応厚生労働省マニュアル等に基づく自主的取組(努力ベース)指針が定める10項目の措置を必ず講じなければならない
指針カスハラに関する法律上の指針はないカスハラ防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)が適用される
行政対応法律に基づく助言・指導・勧告・公表の直接の対象ではない報告の請求、助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合はその旨の公表の対象となり得る
紛争解決 カスハラに特化した労働施策総合推進法上の援助・調停制度はない。個別事案の内容により、個別労働関係紛争の一般的な解決制度等が利用される場合がある カスハラに関する労働者と事業主との紛争が、都道府県労働局長による紛争解決の援助および紛争調整委員会による調停の対象となる(法第35条~第38条)
企業実務への影響取組内容・水準は企業判断に委ねられる方針、相談体制、事後対応、抑止措置、プライバシー保護、不利益取扱い防止を仕組みとして整備する必要がある

カスハラ防止措置の対象となる企業

措置義務の名宛人は「事業主」です。企業規模や業種による限定はありません。労働者を雇用していれば、法人か個人事業主かを問わず、事業主として措置義務の対象となり得ます。

厚生労働省の施行通達(令和8年4月24日付け雇均発0424第2号)も、指針が挙げる10項目の措置について、企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず講じなければならないものと明記しています。中小企業だけ施行日を遅らせるような経過措置は設けられていません。パワハラ防止措置のときに中小企業へ猶予期間があったことを覚えている方は、今回は同じではない点に注意してください。

対象となる事業主・ならない場合

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区分措置義務の対象補足
大企業対象2026年10月1日から
中小企業・小規模事業者対象2026年10月1日から。施行猶予はない
労働者を雇用する個人事業主対象法人か個人かは問わない
業種限定なしBtoC/BtoBを問わない
雇用形態正社員・パート・契約社員などすべて指針上の「労働者」は、事業主が雇用する労働者のすべて
派遣労働者派遣元だけでなく派遣先も対象労働者派遣法第47条の4により、派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなされる
労働者を雇用していない事業者
(役員のみの法人、従業員のいない個人事業者等)
雇用管理上の措置義務の前提を欠く措置義務は「その雇用する労働者」を守るためのもの。ただし、取引先等の事業主の側では、指針が「望ましい取組」として、労働者以外の者(フリーランス等)への顧客等の言動についても方針を示すこと等を求めている

「対象になりやすい業種」と「法的に対象となる事業主」は別

報道等では、小売、飲食、宿泊、医療・介護、交通、金融、不動産、コールセンター、公共施設の運営受託などが「カスハラの多い業種」として挙げられます。これは発生リスクが高いとされる業種の例にすぎません。特定の業種だけが義務の対象になるわけではないことを、社内で説明する際に強調してください。

また、カスハラはBtoC企業だけの問題ではありません。指針は「顧客等」に、取引の相手方(今後取引する可能性のある者を含む)、取引先の担当者、企業間での契約締結に向けた交渉担当者、施設・サービスの利用者及びその家族、施設の近隣住民などが含まれることを明示しています。発注元の担当者が自社の営業担当者に対して行う著しい言動も、要素を満たせばカスハラとなり得ます。BtoB専業のメーカーや受託開発企業も、当然に検討が必要です。

法律上のカスハラとは何か|3つの要素

カスハラ防止指針は、職場におけるカスタマーハラスメントを次の3要素で定義しています。①から③のすべてを満たすものが、法律上のカスハラです。1つでも欠ければ該当しません。ただし、「カスハラに該当しない」ことと「企業が何もしなくてよい」ことは同じではありません(この点は後述の判断フローの注記で扱います)。

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要素意味(かみ砕くと)判断時の主な確認事項具体例(指針が挙げる典型例)
①職場において行われる顧客等の言動であること 誰の、どこでの言動かという入口の要件。社内の上司・同僚からの言動はパワハラの問題であり、カスハラではない 行為者は顧客・取引先・施設利用者等か/労働者が業務を遂行する場所での出来事か/電話・メール・SNS等も含む 店舗での対面対応、コールセンターへの入電、取引先の事務所での打合せ、顧客の自宅での訪問サービス、SNS上への投稿
②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えた言動であること 「言動の内容」または「手段・態様」が相当性を欠くこと。厳しい意見であっても、社会通念上許容される範囲内なら該当しない 要求内容が契約内容からして相当性を欠くか/手段・態様が相当でないか/目的、経緯、業種・業態、頻度、継続性、当事者の関係性等を総合考慮 【内容】理由のない要求、契約を著しく超えるサービス要求、対応が著しく困難・不可能な要求、不当な損害賠償要求
【手段・態様】暴行・傷害、脅迫・侮辱・暴言・土下座の強要、威圧的言動、執拗な言動、居座り・不退去
③労働者の就業環境が害されること 身体的・精神的な苦痛を与えられ、就業する上で看過できない程度の支障が生じること 「平均的な労働者の感じ方」が基準/頻度・継続性は考慮するが、強い苦痛を与える態様なら1回でも該当し得る 怖くて売場に立てない、電話に出られない、集中できず能力を発揮できない状態になった、など

注意:上記の具体例は限定列挙ではありません。逆に、例に形式的に当てはまるからといって自動的にカスハラと判断されるわけでもありません。指針も、個別の事案の状況によって判断が異なり得ることを明示しています。「例に当てはまるかどうか」で機械的に処理せず、3要素に沿って検討する運用にしてください。

該当性の簡易判断フロー

STEP 1|顧客等(顧客・取引先・施設利用者等)の言動か
↓ Yes
STEP 2|労働者が業務を遂行する場所(電話・メール・SNS上を含む)での出来事か
↓ Yes
STEP 3|言動の「内容」または「手段・態様」が、社会通念上許容される範囲を超えているか
※目的・経緯・業種・頻度・継続性・当事者の関係性等を総合考慮
↓ Yes
STEP 4|その言動により、労働者の就業環境が害されているか
※平均的な労働者の感じ方を基準に判断
↓ Yes
3要素をすべて満たす → カスハラ該当性を具体的に検討し、社内手順に沿って対応
いずれかのSTEPで No → 直ちに法律上のカスハラと確定するものではない。ただし、正当な申入れとして通常対応すべき場合のほか、カスハラへ発展するおそれがある場合、安全確保が必要な場合、該当性が微妙な場合もあるため、相談・記録・上長への報告の対象から一律に除外しない。指針も、発生のおそれがある場合や該当するか否か微妙な場合を含め、広く相談に対応するよう求めている。

「職場」の範囲は思ったより広い

指針上の「職場」は、労働者が業務を遂行する場所を指します。通常勤務する店舗や事務所だけでなく、取引先の事務所、打合せに使う飲食店、顧客の自宅、出張先、社用車の中も含まれます。さらに、店舗や施設での対面のものだけでなく、電話やSNS等のインターネット上で行われるものも含まれます。

正当なクレームまで拒絶してよいわけではない

カスハラ対策で最も注意すべきなのは、この点です。指針は明確に、顧客等からの苦情のすべてがカスハラに該当するわけではなく、客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れであり、カスハラには当たらないとしています。

次のような誤解が現場に広がると、企業にとってかえってリスクになります。

  • 会社にとって不都合な指摘だから、カスハラだ
  • 口調が厳しかったから、カスハラだ
  • 返金や交換を求められたから、カスハラだ
  • 何度も連絡してきたから、カスハラだ

いずれも短絡的です。商品・サービスに実際の問題がある場合の申入れは、本来向き合うべき重要な顧客対応です。企業側の説明不足やミスが発端になっている事案も少なくありません。指針も、事業主または労働者の側の不適切な対応が言動の原因や背景となっている場合があることに留意するよう求めています。

「要求の内容」と「要求の手段・態様」を分けて評価する

実務では、この2軸で整理すると判断がぶれにくくなります。要求内容自体は妥当でも、手段・態様が社会通念上許容される範囲を超えていればカスハラとなり得ます。逆に、口調は穏やかでも、要求内容が契約を著しく超えていればカスハラとなり得ます。指針も、どちらか一方だけが範囲を超える場合でも該当し得るとしています。

障害のある顧客への合理的配慮との関係

カスハラ対策を理由に、正当な申出を排除してはいけません。障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律・平成25年法律第65号)第8条第1項は事業者による不当な差別的取扱いを禁止し、同条第2項は、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合に、負担が過重でないときは必要かつ合理的な配慮をしなければならないと定めています。

カスハラ防止指針も、不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、カスハラには当たらないと明記しています。外国人、障害のある方、高齢の方との意思疎通の困難を、安易にカスハラと評価してはなりません。顧客等との建設的対話を重ね、事案に応じて適切に対応することが求められます。

事業主が講ずべき措置の全体像

カスハラ防止指針は、事業主が必ず講じなければならない措置を10項目挙げています。押さえていただきたいのは、「何を作るか」だけでなく「誰が担当し、どう運用するか」までが問われているという点です。施行通達も、相談窓口について「形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていること」を求めています。

必ず講じなければならない10の措置

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No.対応分野企業が整備するもの主な担当部署実務上の注意点関連記事
基本方針 カスハラには毅然と対応し労働者を保護する旨の方針/社内周知文・トップメッセージ経営企画・人事・法務 管理監督者を含む全労働者への周知・啓発が義務。顧客等への周知は「効果的」とされるが義務ではない 第4話
対処内容の明文化と周知 カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容(即時報告、一人で対応させない、録音・録画、退店要請、警察通報、本社への共有、弁護士相談等)人事・法務・現業部門 その場で直ちに対応が必要な場合を前提に定める。例は限定列挙ではない 第7話
相談窓口の設置と周知 相談窓口(担当者、制度、外部委託のいずれでも可)/窓口の周知文人事・総務 他のハラスメント相談窓口との一体的設置も可 第6話
相談対応の質の確保 相談対応マニュアル/担当者研修/関係部門との連携の仕組み人事・法務・カスタマーサービス 微妙な場合・発生のおそれがある場合も広く相談に対応する。二次被害を防ぐ 第6話
事実関係の迅速・正確な確認 相談受付票/対応記録票/証拠確認のルール人事・法務・現場管理職 行為者が他社の労働者・役員なら相手方事業主への協力要請も含まれる 第3話
被害者への配慮 担当者交代・複数対応・引離し・配置転換/メンタル面の相談対応人事・産業保健・現場管理職 継続就業が困難にならない環境整備まで含む 第3話
再発防止 方針の再周知/研修の再実施/原因・背景(商品・サービス・接客の問題)の改善人事・現業部門・品質管理 事実が確認できなかった場合も同様の措置を講ずる 第3話
悪質行為者への対処・抑止措置 特に悪質と考えられる事案への対処方針/関係部門が連携できる体制法務・カスタマーサービス・人事 カスハラ特有の措置。方針の策定・周知に加え、実行できる体制整備までが義務 第8話
プライバシー保護 相談者等のプライバシー保護手順のマニュアル化/担当者研修/保護方針の周知人事・法務 性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報も含まれる 第3話
不利益取扱いの防止 相談したこと等を理由に解雇その他不利益な取扱いをしない旨の定めと周知・啓発人事・法務 就業規則等のほか、社内報・社内ホームページ等に記載する方法も例として示されている 第5話

義務・努力義務・望ましい取組の区別

ここを混同すると、社内説明も予算取りもぶれます。法令上の義務なのか、努力義務なのか、指針が「望ましい」としているにとどまるのかを、必ず区別して整理してください。

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区分主な内容根拠実務上の扱い
義務(必ず講じる) 上表①~⑩の10項目の措置/相談等を理由とする不利益取扱いの禁止 改正労働施策総合推進法第33条第1項・第2項、カスハラ防止指針4 企業規模・職場の状況を問わず必須。未実施は行政指導・勧告・公表の対象となり得る
努力義務 他の事業主から、事実関係の確認等の措置の実施について協力を求められた場合に応じること/自社の労働者が他社の労働者に対する言動に注意を払うよう配慮すること 同法第33条第3項、第34条第2項 「努めなければならない」。取引先からの協力要請を受けた際の社内フローを決めておく
望ましい取組 顧客対応力向上のための研修/消費者心理・障害特性等の理解を深める取組/労働者・労働組合等の参画を得た運用状況の把握と見直し/業種・業態に応じた取組や業界団体との連携/自社労働者が他社労働者にカスハラを行わない旨の方針の明示/自社が雇用する労働者以外の者(他社の労働者、フリーランス等)についても同様の方針を示すこと カスハラ防止指針6、7 法的義務ではないが、実効性を高める。優先順位を決めて段階的に着手する
企業が自主的に追加できる対策 顧客への方針掲示(Webサイト・店頭ポスター)/通話録音・防犯カメラ/エスカレーション基準の数値化/対応記録のシステム化/外部専門家との連携体制 指針が「効果的」「考えられる」とする例を含む。個人情報保護法等の遵守が前提

施行日までに企業が準備すべき7つの対応

抽象論では現場は動きません。各ステップで「何という文書を作り、誰が承認し、どこに置くか」まで決めてください。

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ステップ具体的な作業主な成果物関連記事
1.自社のカスハラリスクを洗い出す 顧客接点の棚卸し(店頭・電話・メール・SNS・訪問・取引先窓口)/過去のクレーム事案の収集/現場ヒアリング リスクマップ/顧客接点一覧/過去事案の整理表
2.カスハラを容認しない基本方針を策定する 毅然対応と労働者保護を明記した方針の起案/経営会議での決議/社内外への表明文の作成 基本方針(社内版)/トップメッセージ/Webサイト掲載文/社内通知 第4話
3.相談窓口と報告ルートを整備する 窓口の設置(既存ハラスメント窓口との統合も可)/担当者の指名と研修/現場→管理監督者→本社の報告ルートの一本化 相談窓口規程/相談受付票/窓口周知文/担当者向け対応マニュアル 第6話
4.現場対応マニュアルとエスカレーション基準を作る 初動対応の手順化/一人で対応させない運用/対応を打ち切る基準の明文化/録音・録画の運用ルール/警察・弁護士への相談基準 顧客対応マニュアル/エスカレーションフロー/録音・証拠保存ルール/対応記録票 第7話
5.既存の就業規則・社内規程を点検する 就業規則、ハラスメント防止規程、相談窓口規程、安全衛生関係規程、顧客対応マニュアルの棚卸し/不足箇所の特定/必要に応じた改定・新設 規程点検チェックリスト/改定案/新旧対照表 第5話
6.管理職・現場担当者へ周知・研修を行う 方針と対処内容の周知/管理監督者向け研修(初動判断、被害者配慮)/現場向け研修(3要素、報告の仕方)/窓口担当者向け研修 研修資料/実施記録/理解度確認テスト 第3話
7.施行後の検証・改善方法を決める 相談件数、対応所要時間、再発事案、休職・離職の状況の記録方法を決定/点検の頻度と責任者の決定 定期点検チェックリスト/モニタリング指標/改善サイクルの運用ルール 第10話

カスハラ対策を怠った場合のリスク

まず正確に:措置義務そのものに直結する刑事罰はない

「カスハラを発生させたら罰金」「対策をしないと刑事罰」といった説明を見かけますが、正確ではありません。カスハラ防止措置義務それ自体に直結する罰金・拘禁刑などの刑事罰は設けられていません

ただし、「刑事罰がない=対応しなくてよい」という意味ではまったくありません。法律は、行政上の履行確保の仕組みを用意しています。

  • 助言・指導・勧告(法第42条第1項):厚生労働大臣または都道府県労働局長が、法の施行に関し必要があると認めるときに行う
  • 勧告に従わない旨の公表(法第42条第2項):厚生労働大臣が自ら勧告をした場合において、勧告を受けた事業主がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる
  • 報告の請求(法第45条第1項):措置義務等の施行に関し必要があると認めるときに、事業主に報告を求めることができる
  • 過料(法第51条):報告をせず、または虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処せられる

この「過料」は、行政上の秩序罰であり、刑事罰(罰金・拘禁刑)ではありません。前科にもなりません。ただし、行政の調査に協力しないこと自体には制裁がある、という構造は正確に理解しておく必要があります。

リスクの3層構造

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リスクの種類具体的な内容発生条件・留意点企業が講ずべき予防策
第1層:行政上のリスク
報告徴収・調査対応 都道府県労働局から措置の実施状況について報告を求められる 労働者からの申立て、第三者からの情報、職権等、端緒を問わず行使され得る 措置の実施状況を文書で残し、いつでも説明できる状態にする
助言・指導・勧告 不備の是正を求められる 勧告自体に強制力はないが、従わない場合の公表につながる 指摘を受けた場合の是正フローと責任者を事前に決めておく
勧告に従わない旨の公表 勧告に従わない場合、その旨を公表され得る 公表に際して事業主名等が明らかになることが想定され、報道やレピュテーションへの影響が生じ得る 勧告に至る前の段階で確実に是正する
過料 報告をせず、または虚偽の報告をした場合、20万円以下の過料 刑事罰ではなく行政上の秩序罰。措置義務違反そのものに対する罰則ではない 調査には誠実に対応し、正確な報告を行う
第2層:民事上・労務上のリスク
安全配慮義務違反・使用者責任等 労働契約法第5条の安全配慮義務違反や、使用者責任その他の民事責任として、損害賠償が問題となり得る 責任の成否は一律に決まらない。予見可能性、結果回避可能性、企業が講じた措置、発生後の対応、損害との因果関係など、個別具体的な事情によって判断される。カスハラの存在を認識しながら放置したような場合は、責任が問題となりやすい 相談を受けた事実と、それに対して講じた措置を記録に残す。放置しない
不利益取扱いの禁止違反 相談したこと等を理由とする解雇その他不利益な取扱いは法律上禁止されている(法第33条第2項) 違反は勧告・公表の対象にもなり得る。派遣労働者も対象に含まれる 不利益取扱いをしない旨を定め、周知・啓発する(義務)
労災に関する問題 心理的負荷による精神障害の認定基準に、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」が具体的出来事として明記されている 労災認定は労働基準監督署が個別に判断する。企業の民事責任とは別の問題 発生状況・対応経緯の記録を整備し、産業保健体制と連携する
休職・離職・人材流出 心身の不調による休職、離職、採用難 接客現場ほど影響が大きい 被害者への配慮措置、原職復帰支援、現場の負担分散
第3層:経営・レピュテーション上のリスク
レピュテーション低下 公表・報道、SNSでの拡散、採用への影響 「従業員を守らない会社」という評価は回復に時間がかかる 方針を対外的にも明示し、実際の運用と一致させる
取引先評価への影響 取引先のコンプライアンス評価、サプライチェーン上の要請 取引先から協力を求められた際に応じる努力義務がある(法第33条第3項) 協力要請に対応するフローを決めておく
顧客対応の属人化 ベテラン任せ・店長任せになり、基準が人によってばらつく 担当者が退職すると対応品質が一気に落ちる 対処内容とエスカレーション基準を文書化し、周知する
現場管理職への過度な負担 すべての判断が店長・課長に集中する 管理職自身の疲弊、二次被害の温床になる 本社・本部への情報共有ルート、法務部門・弁護士への相談基準を設ける

中小企業はどこまで対応すればよいか

中小企業にも同じ義務があります。一方で、大企業と同じ規模の専用部署や24時間対応窓口を必ず設置しなければならないわけではありません。施行通達も、措置の方法については、企業の規模や職場の状況に応じ、適切と考える措置を事業主が選択できるという趣旨を示しています(指針の具体例は限定列挙ではありません)。

求められているのは、自社の規模、業種、顧客接点の性質、過去の発生状況に照らして実際に機能する体制です。形だけの窓口では、指針が求める水準を満たしません。

小規模企業の現実的な対応例

  • 既存のハラスメント相談窓口とカスハラ相談窓口を統合し、1本にする
  • 代表者、人事担当者等の社内相談先を明確にし、必要に応じて外部の社会保険労務士、弁護士その他の専門家へ相談・連携できる体制を設ける
  • 相談受付を外部専門家へ委託する場合も、社内の責任者、報告経路、事実確認、被害者への配慮および再発防止の実施主体を明確にする
  • 現場から管理監督者への報告ルートを一本化し、口頭ではなく所定の様式で残す
  • 複雑・重大な事案(暴行、脅迫、長時間の居座り、法的手続が必要な案件)のみ弁護士へエスカレーションする基準を決める
  • 業界団体が作成したマニュアルやひな形を、自社の実態に合わせて調整して使う
  • 相談受付票・対応記録票の様式を共通化し、記録の質を揃える

注意:外部専門家に相談対応を委託すること自体は、指針上も認められる方法の一つです。ただし、外部に委託したからといって事業主の措置義務がなくなるわけではありません。委託先から報告を受け、被害者への配慮や再発防止を実行するのは、あくまで事業主です。

施行前の対応スケジュール(モデル工程表)

2026年7月14日を起点とした標準的なモデルです。必要な期間は企業によって異なります。店舗数が多い企業、現場が分散している企業、既存規程の整備が遅れている企業では、より長い期間が必要になります。「この日程なら必ず間に合う」という保証ではありません。自社の状況に合わせて前倒ししてください。

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時期主な作業担当部署成果物確認ポイント
2026年7月 現状調査/責任部署・責任者の決定/顧客接点とリスクの洗い出し/既存規程・マニュアルの棚卸し 人事・法務・経営企画 リスクマップ/規程点検チェックリスト/プロジェクト体制図 プロジェクトの責任者が明確に決まっているか
2026年7月~8月 基本方針の起案/相談体制の設計(既存窓口との統合可否)/社内規程の改定方針の決定 人事・法務 基本方針(案)/相談窓口設計書/規程改定方針 10項目の義務的措置が漏れなくカバーされているか
2026年8月 現場対応マニュアルの作成/記録様式の整備/エスカレーション基準の設定/悪質事案への対処方針と関係部門連携体制の設計 法務・カスタマーサービス・現業部門 顧客対応マニュアル/相談受付票・対応記録票/エスカレーションフロー/悪質事案対処方針 現場が「その場で何をするか」を判断できる粒度になっているか
2026年8月~9月 労使手続(就業規則を変更する場合は労働者代表からの意見聴取、労働基準監督署への届出)/社内承認/Webサイト掲載準備 人事・法務・広報 規程改定版/意見書/届出書類/Web掲載文 就業規則を変更する場合、労働基準法第89条・第90条の手続を踏んでいるか
2026年9月 管理職研修/従業員研修/相談窓口担当者研修/模擬事案による運用テスト 人事・現業部門 研修資料/実施記録/運用テスト結果 報告→相談→事実確認→被害者配慮の流れが実際に動くか
2026年10月1日 運用開始 全社 方針・窓口・マニュアル・様式がすべて現場に届いているか
施行後(継続) 相談実績、対応所要時間、再発事案、休職・離職状況の点検/マニュアル・研修の改善 人事・法務・衛生委員会 定期点検レポート/改善記録 点検の頻度と責任者が決まっているか

就業規則については、常時10人以上の労働者を使用する事業場での作成・変更、労働者代表からの意見聴取、労働基準監督署への届出という手続が労働基準法上定められています。カスハラ対応としてどこをどう直すかは、第5話で詳しく扱います。

カスハラ義務化についてよくある質問

Q1.従業員が1人しかいない会社も対象ですか

労働者を雇用している以上、事業主として措置義務の対象となります。企業規模による除外はありません。ただし、措置義務は「その雇用する労働者」を守るためのものですから、労働者を雇用していない場合(役員のみの法人、従業員のいない個人事業者など)は、措置義務の前提を欠くことになります。

Q2.中小企業には施行猶予がありますか

ありません。2026年10月1日から、大企業・中小企業を問わず同時に義務化されます。パワハラ防止措置のときに中小企業へ猶予期間が設けられた例がありますが、今回は同様の経過措置は設けられていません。

Q3.カスハラ対策をしないと罰金が科されますか

措置義務違反そのものに直結する刑事罰(罰金・拘禁刑)は設けられていません。ただし、報告の請求、助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合にはその旨を公表され得ます。また、行政から求められた報告をせず、または虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料(行政上の秩序罰であり刑事罰ではありません)の対象となります。

Q4.就業規則の改定は必須ですか

すべての企業に一律に「就業規則へカスハラ条項を追加する法的義務」が直接課されているわけではありません。施行通達も、信用失墜行為や服務規律違反に対する懲戒規定等の既存の規定で必要な措置を講ずることが可能な場合には、必ずしも就業規則等を改正する必要はないとしています。一方、「相談したこと等を理由に不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発する」ことは義務です。まず既存の規程を点検し、必要に応じて改定・新設してください(第5話で詳解)。

Q5.既存のパワハラ相談窓口と統合できますか

できます。指針も、他のハラスメントの相談窓口と一体的に設置することが考えられる旨を明示しています。ただしカスハラには「その場で直ちに対応が必要な場合が多い」という特徴があります。窓口を統合する場合でも、現場から管理監督者への即時報告ルートは別途確保してください(第6話で詳解)。

Q6.顧客からの厳しい苦情はすべてカスハラですか

いいえ。指針は、客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われた苦情は「正当な申入れ」であり、カスハラには当たらないと明記しています。要求内容の妥当性だけでなく、言動の手段・態様、頻度、継続時間、被害の程度、当事者間の関係などを総合的に評価する必要があります(第2話で詳解)。

Q7.顧客対応を録音してもよいですか

指針は、対処内容の例として「顧客等とのやり取りを録音・録画すること」を挙げています。その際、個人情報保護法等を遵守し、顧客等の個人情報を適切に取り扱うことが前提とされ、施行通達では、目的を伝えたうえで通話を録音する方法や、「防犯カメラ作動中」と掲示したうえで撮影する方法が遵守例として示されています。もっとも、これらはあくまで例であり、業種・設置場所・取得する情報によって検討事項が変わります。運用設計は第7話を参照し、必要に応じて専門家にご相談ください。

Q8.カスハラを理由に取引やサービス提供を断れますか

指針は、特に悪質と考えられる事案への対処の例として、警告文の発出、法令の制限内において商品の販売・サービスの提供等をしないこと、出入禁止、仮処分命令の申立て、警察への通報を挙げています。ただし、業法によりサービス提供の義務等が定められている場合や、サービスの途絶が顧客等の生命・心身の健康に重大な影響を及ぼす場合には、その趣旨に留意した対応が必要です。事案ごとの検討が必要な論点ですので、第8話を参照してください。

Q9.BtoB企業も対象ですか

対象です。指針上の「顧客等」には、取引の相手方、取引先の担当者、契約締結に向けた交渉を行う際の担当者が明示的に含まれています。発注元の担当者が受注側の営業担当者に対して社会通念上許容される範囲を超えた言動を行い、就業環境が害される場合は、カスハラの問題になり得ます。BtoB専業の企業も、方針・相談体制・対処基準の整備が必要です。

Q10.派遣社員や委託先スタッフが被害を受けた場合はどうしますか

派遣労働者については、労働者派遣法第47条の4により派遣先も雇用する事業主とみなされるため、派遣先も自社の労働者と同様に措置を講ずる必要があります。相談したこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されます。委託先スタッフやフリーランスなど自社が雇用する労働者以外の者については、指針が「望ましい取組」として、同様の方針を示すこと、相談があった場合に適切に対応するよう努めることを求めています。契約形態によって整理が変わるため、個別の検討が必要です。

シリーズ全10話の案内

話数タイトルこの記事で分かること
第1話 カスハラ対策が全企業の義務に|2026年10月施行の改正法でやるべきこと全体像(本記事) 制度の全体像、対象事業主、3要素、10項目の措置、リスク、準備工程表
第2話 どこからがカスハラか|正当なクレームとの線引きを3要件で判断する 3要素の当てはめ、正当な申入れとの区別、合理的配慮との関係、判断の考慮要素
第3話 指針が求める措置の中身|方針明確化・相談体制・事後対応をどう整えるか 指針が定める10項目の措置の具体的な作り込み方、認められる例
第4話 カスハラ対応基本方針の作り方|社内外への表明文をひな形付きで解説 基本方針の記載事項、社内周知文、Webサイト掲載文のひな形
第5話 就業規則・社内規程はどこを直すか|カスハラ義務化対応の改定ポイント 既存規程の点検方法、改定要否の判断、労使手続と届出
第6話 カスハラ相談窓口をどう作るか|既存のハラスメント窓口と一本化する方法 窓口の設計、担当者の指名と研修、二次被害の防止、記録様式
第7話 現場が迷わないカスハラ対応マニュアルの作り方|初動・エスカレーション・記録 初動対応、エスカレーション基準、録音・証拠保存、対応記録の実務
第8話 それでも止まらない相手への法的対応|取引拒絶・出入禁止・警察対応の実務 警告文、販売・サービス提供の停止、出入禁止、仮処分、警察通報の判断基準
第9話 同時施行の求職者等セクハラ対策も忘れずに|関連する法改正・条例への対応 改正男女雇用機会均等法による求職者等セクハラ対策、自治体のカスハラ防止条例
第10話 2026年10月までにやることリスト|カスハラ義務化対応の工程表と総まとめ チェックリスト形式の総まとめ、成果物一覧、施行後の点検方法

なお、2026年10月1日には、改正男女雇用機会均等法に基づく求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策も同時に義務化されます(指針は令和8年厚生労働省告示第52号)。採用活動を行う企業は、カスハラ対策と並行して準備が必要です。詳細は第9話で扱います。

まとめ

  • 2026年10月1日から、労働者を雇用するすべての対象事業主に、カスハラ防止のための雇用管理上の措置が求められます。中小企業に施行猶予はありません。
  • 方針を掲げるだけでは足りません。相談、初動、事実確認、被害者保護、悪質事案への対処、記録、再発防止までを、実際に運用できる体制として整える必要があります。
  • 顧客等からの苦情のすべてがカスハラではありません。正当な申入れを排除しない設計にすることが、労働者保護と適切な顧客対応を両立させる前提です。
  • 中小企業も、自社の規模・業態に応じた実効的な対応を施行日までに整える必要があります。既存のハラスメント窓口との統合など、現実的な方法から着手できます。
  • まずは、現状調査と責任部署の決定から始めてください。ここが決まらないと、その後の工程はすべて止まります。

本記事は2026年7月14日時点の法令・指針・行政資料に基づいて作成しています。省令、指針、行政資料は今後変更され得ますので、実際の対応にあたっては厚生労働省および都道府県労働局の最新情報を確認してください。個別の事案については、弁護士、社会保険労務士、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)等への相談もご検討ください。

カスハラ対応の実務書式づくりを効率化する

「何から整備すればよいか分からない」「相談受付や事実確認の書式を一から作るのが重い」「現場から上長への報告を標準化したい」「対応記録を確実に残したい」「エスカレーションの判断を属人化させたくない」「社内方針やマニュアルのたたき台が欲しい」——カスハラ対応の準備では、こうした場面で作業が止まりがちです。

カスハラ対応プロンプト集|顧客対応記録・従業員保護・上長報告・エスカレーションの実務テンプレート

顧客対応記録、従業員保護、上長報告、エスカレーション判断といった実務場面ごとに、たたき台を作成するためのプロンプトをまとめた実務ツールです。ゼロから書き起こす手間を減らし、自社の実態に合わせて調整する作業に集中できます。

法令対応を補助するためのツールです。これだけで法令対応が完了するものではなく、専門家への相談に代わるものでもありません。作成した文書は、必ず自社の実態と最新の法令・指針に照らして確認してください。

カスハラ対応プロンプト集を見る

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参考資料

このほか、労働契約法第5条、労働基準法第89条・第90条、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第8条、労働者派遣法第47条の4、個人情報保護法の各規定を参照しています。

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