この記事の実務版
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この記事のテーマを、チェックリスト・文例・AIプロンプト・業務ツールとして、明日の実務にそのまま落とせる形で揃えています。
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ある日、会社宛てに裁判所から封筒が届き、中に「訴状」と書かれた書類が入っていた——。初めて見ると、誰でも少し慌ててしまうものです。ですが、最初に見るべきポイントは決まっています。落ち着いて、順番に確認していけば大丈夫です。

この記事では、会社に訴状などが届いた直後に、法務担当者が何を確認し、社内でどう動くかを、初心者向けに具体的に整理します。なお、訴訟対応の全体像は第1話「訴訟対応とは何か」でまとめています。あわせてご覧ください。

この記事でわかること

  • 訴状が届いたら、まず何を記録・保管すべきか
  • 訴状・呼出状・答弁書催告状など、書類の種類と意味
  • 答弁書の提出期限や第1回口頭弁論期日の確認方法
  • 弁護士に相談する前に整理しておく資料
  • 民事裁判のデジタル化(令和8年5月施行)で確認が必要になる点

大切な前提として、訴状に書かれた相手方の主張は「相手の言い分」であって、事実として確定したものではありません。また、認否(認める・否認する)や反論の方針は弁護士の専門判断に関わります。法務担当者の初動は、独断で評価することではなく、弁護士相談に向けて情報を正確に整えることだと考えてください。


実務メモ
この記事の内容を、毎回ゼロから考えないために。
法務実務で効くのは、知識そのものよりも"再現できる型"です。記事で読んだ確認観点・依頼文・回答メモ・マスキングを次の案件でそのまま引き出せる形に残しておくと、判断と説明の質が一段安定します。
確認観点をチェックリスト化する
確認依頼文・回答文を文例に残す
相談回答・法改正対応を記録に残す
AIに入れる前の情報整理を安全に
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訴状が届いたら、まず落ち着いて確認すること

初動でつまずきやすいのが、書類そのものの「扱い方」です。後から経緯を説明するときに困らないよう、受け取った瞬間から次の点を意識します。

  • 開封日・受領日を記録する:いつ届き、いつ開封したかは、後の期限計算にも関わる重要情報です。
  • 書類一式を紛失しない:封筒も含め、届いたものはひとまとめにして保管します。
  • 封筒・送達関係の書類も保管する:送達日や宛先の情報が記載されていることがあります。
  • PDF化・スキャンしても原本は保管する:社内共有用にデータ化しても、紙の原本は手元に残します。
  • 不用意に広く転送しすぎない:機密性が高い情報です。共有範囲は意識します。
  • ただし、必要な社内共有は遅らせない:「慎重に」と「遅らせる」は別物です。期限がある以上、初動は早めに。

ワンポイント:この段階で関連する社内資料(メール・契約書など)を削除・上書きしないことも重要です。証拠の保全については第5話「訴訟ホールドとは何か」でくわしく扱います。

届いた書類の種類を確認する

裁判所から届く封筒には、複数の書類が同封されているのが一般的です。まずは「何が入っているか」を確認しましょう。代表的な書類は次のとおりです。

書類名 意味(初心者向け)
訴状(そじょう)原告(訴えた側)が、何を求め、なぜ求めるのかを書いた中心的な書類
口頭弁論期日呼出状最初の裁判の日時(第1回口頭弁論期日)を知らせる書類
答弁書催告状被告(訴えられた側)に対し、いつまでに答弁書を出すよう促す書類
証拠書類の写し(甲号証など)原告が主張の裏づけとして提出した証拠のコピー
証拠説明書各証拠が「何を、誰が作り、何を示すか」を一覧にした書類
送達関係の書類裁判所が正式に書類を届けたことに関する書類(送達場所の届出など)

この3つの関係を、簡単な図でも整理しておきます。

裁判所からの封筒(同封されることが多い書類)
訴状
=相手の請求と理由
呼出状
=最初の期日の日時
答弁書催告状
=答弁書の提出期限
会社(被告)→ 法務部が受け取り、内容と期限を確認 → 弁護士・現場・経営陣へ

訴状で確認すべき基本項目

訴状には、決まった項目が記載されています。まずは次の項目を「事実として何が書いてあるか」だけ淡々と拾い上げましょう。この段階では中身の当否を判断する必要はありません

確認項目 見るポイント
裁判所名どの裁判所か(地方裁判所・簡易裁判所など)、所在地
事件番号「令和○年(ワ)第○号」など。以後の連絡で必ず使う管理番号
原告訴えてきた相手は誰か(個人か法人か、取引先か)
被告自社の名称・住所が正確か、複数の被告がいないか
代理人弁護士相手に代理人が付いているか、事務所名・連絡先
請求の趣旨相手が求めている「結論」(後述)
請求の原因その結論を求める「理由・事実関係」(後述)
添付証拠どんな証拠が付いているか(契約書・メールなど)
日付訴状の作成日、提起日
書式・押印など紙かオンラインか。書式や押印の要否は提出方法で異なり得る(後述)
送達日・受領日いつ届いたか。期限計算の起点になり得る重要情報

呼出状・答弁書催告状で確認すべき期限

初動でもっとも重要なのが期限です。呼出状や答弁書催告状には、次のような期日・期限が書かれています。

確認すること なぜ重要か
第1回口頭弁論期日最初の裁判の日時。準備のスケジュールを逆算する起点
答弁書の提出期限通常、第1回期日より前に設定される。準備時間の確保に直結
提出先の裁判所どこへ提出するか。担当部・係も確認
出頭の要否出頭が必要か、ウェブ会議が利用できるか
オンライン・mints対応提出方法(紙/オンライン)に関する案内の有無(後述)

期限を弁護士に任せきりにしない
代理人弁護士に依頼する場合でも、期限の把握は会社側でも行うのが法務部の役割です。弁護士は複数案件を抱えています。社内でも期日・提出期限を管理し、進捗を確認することで、思わぬ抜けを防げます。期限の管理を含む初動全体の手順は第4話「訴訟対応の初動チェックリスト」にまとめています。

「請求の趣旨」と「請求の原因」の違い

初心者がつまずきやすいのが、この2つの違いです。シンプルに整理すると次のようになります。

  • 請求の趣旨:相手が裁判所に求めている「結論」。たとえば「被告は原告に○○円を支払え」といった部分です。
  • 請求の原因:その結論を求める「理由・事実関係」。なぜその金額を支払うべきなのか、という経緯の説明です。

かんたんな例(架空)
・請求の趣旨:「被告は原告に対し、100万円を支払え」
・請求の原因:「原告は被告に商品を納品したが、代金100万円が未払いである」
→ つまり「何を求めるか(趣旨)」と「なぜ求めるか(原因)」がセットになっています。

この2つを分けて読むと、相手が「何を・いくら・どんな理由で」求めているのかが整理できます。なお、請求の原因に書かれた事実が正しいかどうかは別問題です。事実関係の確認と、それに対する認否・反論の方針は、社内の事実調査と弁護士の判断を踏まえて決めていきます。

法務担当者が最初に作るべき確認メモ

拾い上げた情報は、1枚の「初動確認メモ」にまとめておくと、社内共有も弁護士相談もスムーズになります。次のような項目をテンプレートにしておくと便利です(保存版として社内で共有しておくのもおすすめです)。

項目 記入例・メモ
受領日届いた日・開封日
裁判所○○地方裁判所 民事第○部
事件番号令和○年(ワ)第○号
原告相手方の名称
被告自社名(表記の正確性も確認)
請求金額請求の趣旨の金額(金銭請求の場合)
期日第1回口頭弁論期日
答弁書期限提出期限の日付
関係部署どの事業部・取引に関係するか
契約名・案件名関連する契約・プロジェクト
把握している経緯現時点でわかっている事実関係
弁護士相談予定依頼先・相談日
社内報告先報告すべき責任者・役員

訴状が届いた直後に社内で共有すべき相手

訴訟は会社の費用・時間・評判に関わるため、関係者への共有が欠かせません。ただし、誰に・どこまで共有するかは、案件の性質や会社規模によって変わります。下表は一般的な例として参考にしてください。

共有先 主な目的
法務責任者方針の検討、弁護士選定の判断
担当役員経営としての一報、重要判断の準備
関係部署の責任者事実確認、資料・経緯の提供
経理・財務費用見込み、引当・会計面の検討
広報・IR公表の要否や問い合わせ対応(必要な場合)
情報システム部門メール・データの保全、アクセス管理
監査役・内部監査部門ガバナンス上の把握(必要な場合)

共有にあたっては、情報の取扱範囲(誰まで知ってよいか)もあわせて整理しておきましょう。

訴状が届いた直後にやってはいけないこと

初動でやりがちな対応のうち、会社の立場を悪くしかねないものを整理します。多くは「悪意」ではなく「知らずに」起こります。

やってはいけない対応 なぜ問題か
放置する期限を過ぎ、会社に不利な扱いを受けるおそれ
期限だけ見て中身を見ない準備すべき内容を見誤る
現場に丸投げする対応の統一が取れず、期限管理も曖昧に
弁護士に書類だけ送って説明しない事実が伝わらず、検討の前提を誤る
関係資料を削除・上書きする証拠を失い、会社の信用にも関わる
相手方に不用意に連絡する不利な発言になりかねない。窓口は弁護士と相談
社内チャットで感情的なコメントその記録自体が後で問題になり得る
訴状の主張を社内で断定的に評価する事実確定前の決めつけは誤解と混乱を招く
経営陣への報告を遅らせる重要な判断のタイミングを逃す

弁護士に相談する前に整理しておく資料

弁護士相談の質は、事前にどれだけ情報を整理できているかで大きく変わります。次の資料をできる範囲で集めておきましょう。何が決め手になるかは案件によるため、まずは広めに集め、弁護士と相談しながら絞り込みます。

資料 役割
訴状・呼出状・答弁書催告状相手の請求内容と期限の把握
添付証拠(相手提出分)相手がどんな証拠を持っているかの確認
契約書権利義務・条件の確認
注文書・発注書取引内容の合意の確認
請求書金額・履行の事実関係
メール・チャット経緯・当時の認識の確認
議事録打合せでの合意・決定事項
交渉経緯紛争前後のやり取りの整理
社内稟議意思決定の経緯・前提
担当者メモ記録・補足情報
反論に使えそうな資料自社の主張を支える材料
相手方との過去トラブル背景事情の把握

資料の探し方は第6話「訴訟対応で集める資料一覧」、時系列での整理は第7話「事実経過表の作り方」で具体的に解説します。

電子化・mints時代に確認すべきこと

民事訴訟手続のデジタル化を定めた改正民事訴訟法等は、令和8年(2026年)5月21日に全面施行されました。これにより、訴えの提起や書面提出をオンラインで行えるようになり、訴訟記録も原則として電子データで管理されます。弁護士などの訴訟代理人は、原則として裁判所のシステム「mints(ミンツ)」を通じたオンライン提出が義務化されています(代理人を立てない本人訴訟では、引き続き書面での手続きも可能です)。

初動の確認という観点では、次の点に注意しておくと安心です。

  • 事件によって書式や提出方法が異なる場合がある:全面施行の前後で取扱いが変わる部分があります。
  • 旧法適用事件と新法適用事件の違い:全面施行前に提起された事件と、施行後に提起された事件で、書式・提出方法・記録の取扱いが異なることがあります。
  • mints利用の有無:相手方や自社代理人がオンラインで手続きしているか、案内を確認します。
  • 紙で届いた書類と電子記録の関係:手元の紙と、裁判所システム上の記録の対応を整理しておきます。
  • 社内でのPDF保管・原本保管・アクセス権管理:データ化しても原本を保管し、閲覧範囲を管理します。

補足:今後、2027年度中には新システム(TreeeS)の導入も予定されており、移行期は申立て方法の異なる事件が併存し得るとされています。また、民事執行・倒産・労働審判・人事訴訟・家事事件などは、令和8年5月21日時点ではオンライン申立ての対象外(令和10年6月までに順次対象化の予定)です。手続の詳細や押印・書式の要否は事件ごとに異なり得るため、最終的な判断は代理人弁護士や裁判所の公式情報で確認してください(参考リンクは記事末尾)。

よくある誤解

  • 訴状が届いた=すぐ負ける、ではありません。これは手続の始まりであり、これから主張と証拠を出し合う段階です。
  • 「第1回期日は形式的だから何もしなくてよい」とは限りません。答弁書の準備など、事前にやるべきことがあります。
  • 「答弁書は法務担当者が自力で出せばよい」とは限りません。認否や反論の方針は弁護士の専門判断に関わります。詳しくは第3話「答弁書とは何か」で扱います。
  • 「訴状だけ見れば全体像がわかる」とは限りません。社内の事実確認や資料の突き合わせが欠かせません。
  • 相手方の主張は「言い分」であり、事実として確定したものではありません。
  • 和解を考えることは「負け」ではありません。費用・時間・リスクを踏まえた合理的な経営判断のひとつです。

第2話のまとめ

  • 訴状が届いたら、まず書類の種類・期限・当事者・請求内容を確認します。
  • 受領日と答弁書の提出期限は必ず記録・管理します。期限は弁護士任せにしません。
  • 関連する証拠・資料を削除・上書きしないこと。
  • 独断で評価せず、弁護士相談に向けて事実と資料を整理します。
  • 役割分担の考え方は第12話「弁護士との役割分担」もあわせてどうぞ。

次回・第3話「答弁書とは何か|提出期限・認否・初回期日までの実務対応」では、初動の次のステップとなる「答弁書」について、提出期限や認否の考え方を具体的に解説します。

初動の「整理」を、もっとスムーズに

訴状が届いた直後は、事実関係・期限・証拠・社内報告を素早く整理することが重要です。Legal GPTでは、法務実務に役立つテンプレート・プロンプト・実務支援ツールをご用意しています。これらは訴訟対応そのものを代替するものではなく、社内整理や検討メモの作成を補助する位置づけです。最終的な法的判断は、必ず弁護士にご相談ください。

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シリーズ全20話のリンク一覧

「法務担当者のための訴訟対応実務20選」の全記事です。気になるテーマからお読みいただけます。保存版としてブックマークをどうぞ。

タイトル
第1話訴訟対応とは何か|会社の法務担当者が知っておくべき全体像
第2話訴状が届いたら最初に確認すること|訴状・呼出状・答弁書催告状の見方(この記事)
第3話答弁書とは何か|提出期限・認否・初回期日までの実務対応
第4話訴訟対応の初動チェックリスト|社内共有・弁護士相談・期限管理
第5話訴訟ホールドとは何か|メール・チャット・資料を削除しないための対応
第6話訴訟対応で集める資料一覧|契約書・メール・請求書・議事録の探し方
第7話事実経過表の作り方|訴訟対応で時系列を整理する方法
第8話争点整理とは何か|相手の主張・こちらの反論・証拠を対応させる
第9話証拠説明書とは何か|書証番号・作成者・立証趣旨の基本
第10話準備書面とは何か|弁護士ドラフトを法務が確認するときの見方
第11話認否とは何か|訴訟対応で「認める・否認する・不知」をどう確認するか
第12話弁護士との役割分担|法務・現場・経営陣は何を担当するか
第13話訴訟費用・弁護士費用の社内説明|予算・稟議・見通しのまとめ方
第14話訴訟中の社内報告書の作り方|経営会議・取締役会への報告ポイント
第15話和解協議の進め方|金額・条件・社内承認で見るべきポイント
第16話和解条項の読み方|清算条項・守秘義務・不履行時対応の基本
第17話尋問対応の基本|証人候補・陳述書・想定問答をどう準備するか
第18話判決が出た後の対応|控訴・支払・会計処理・社内説明
第19話こちらから訴えるときの準備|請求原因・証拠・回収可能性の検討
第20話訴訟対応チェックリスト|法務担当者が保存しておきたい実務一覧

参考情報

本記事は一般的な解説です。手続・期限・書式・デジタル化の運用は事件や時期によって異なり得るため、実際の対応にあたっては最新の公式情報をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。

※本記事は企業の法務担当者向けの一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。個別の判断は弁護士にご相談ください。

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01
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