契約書からどの金額を拾う?|固定料金・変動料金・追加費用の整理
契約書を開くと、こう書かれています。月額賃料100万円、共益費20万円、売上高の3%、更新料100万円、中途解約時は6か月分の違約金、敷金1,000万円——では、経理部へ「リース料」としていくらを渡せばよいのでしょうか。
結論から言えば、法務部がこれらを合計して1つの金額にする必要はありません。むしろ、合計してはいけません。新リース会計基準のリース料は、契約書に書かれた支払額の単純合計ではなく、会計基準が定める5つの構成要素で成り立っているからです。しかも変動料金は、指数やレートに連動するものと、売上や使用量に連動するものとで扱いが異なります。
法務部が整理すべきなのは、金額、算定方法、発生条件、変動条件、支払時期、そしてその対価が何に対するものかという事実です。この記事では、契約書のどこから何を拾い、どう記録して経理部へ渡すかを整理します。
なお、リース期間の判断はリース期間は契約書に書かれた年数と同じではない|更新・解約オプションの読み方で扱っています。購入オプションと解約違約金は、リース期間の判断と直接つながるため、本記事でもその接続部分を扱います。
この記事の結論
- 借手のリース料は、固定リース料、指数またはレートに応じて決まる変動リース料、残価保証に係る支払見込額、行使が合理的に確実な購入オプションの行使価額、一定の場合の解約違約金という5つで構成されます(リース会計基準第19項、第35項)。
- 契約書に書かれた支払額の単純合計ではありません。リースを構成しない部分に配分する対価は、原則として含まれません(同第19項)。
- 固定リース料は「毎月同額のもの」ではなく、変動リース料以外のものと定義されています(同第20項)。
- 変動リース料のうち借手のリース料に含まれるのは、指数またはレートに応じて決まるものです。売上連動や使用量連動は扱いが異なります。
- ただし、リース負債に含めない変動リース料も、発生時に損益に計上されます(リース適用指針第51項)。調査対象から外してよいという意味ではありません。
- 残価保証で含めるのは、保証額そのものではなく支払見込額です(同第19項(3))。
- 購入オプションの行使価額は、行使が合理的に確実な場合に含まれます。解約違約金は、リース期間に解約オプションの行使を反映している場合に含まれます。
- 法務部が行うのは、金額・算定式・条件の抽出です。会計上の分類と測定は経理部が行います。
本記事は「新リース会計基準対応|法務部の契約調査・管理実務」全15話の第9話です。
このシリーズは、新リース会計基準への対応において法務部・契約管理部門が担うことになる契約調査と契約管理の実務を、順を追って解説することを目的としています。
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シリーズ全15話の構成
| 話数 | 記事タイトル | その記事で分かること |
|---|---|---|
| 第1話 | 新リース会計基準で法務部の仕事はどう変わる?|2027年適用に向けた契約対応の全体像 | シリーズ全体像と、法務部が担う役割の範囲 |
| 第2話 | 新リース会計基準はいつから?|対象企業と2026年後半からの準備スケジュール | 適用時期・対象企業・準備工程の考え方 |
| 第3話 | リース契約でなくても対象になる?|新リース会計基準の「リースの識別」 | 契約がリースを含むかを判断する枠組み |
| 第4話 | 埋込リースとは?|業務委託・物流・IT契約に潜むリースの見つけ方 | サービス型契約に含まれるリースの探し方 |
| 第5話 | 新リース会計基準で調査すべき契約書は?|法務部の契約棚卸しの進め方 | 契約母集団の設定と棚卸しの実務手順 |
| 第6話 | 「特定された資産」とは?|専用設備・車両・サーバーを判断する基準 | 特定された資産と、供給者側の代替権の見方 |
| 第7話 | 資産の使用を支配しているのは誰か|経済的利益と使用指図権の確認方法 | 使用の支配・経済的利益・使用指図権の確認 |
| 第8話 | リース期間は契約書に書かれた年数と同じではない|更新・解約オプションの読み方 | リース期間と、更新・解約条項の読み方 |
| 第9話 | 契約書からどの金額を拾う?|固定料金・変動料金・追加費用の整理(現在の記事) | 契約書から抽出すべき料金情報の範囲 |
| 第10話 | リース部分とサービス部分をどう分ける?|複合契約の法務チェック | リース部分と非リース部分の区分の論点 |
| 第11話 | オフィス・店舗・倉庫の賃貸借契約はどう扱う?|不動産契約の調査ポイント | 不動産賃貸借契約に固有の調査ポイント |
| 第12話 | 契約変更・更新時に再判定は必要?|リース条件変更の管理実務 | 契約変更・更新時の再判定と管理実務 |
| 第13話 | 新リース会計基準対応の契約台帳|追加すべき項目と証跡管理 | 契約台帳の追加項目と証跡の残し方 |
| 第14話 | 新規契約の審査をどう変える?|新リース会計基準対応の受付票・条項・確認事項 | 新規契約審査への確認項目の組み込み方 |
| 第15話 | 新リース会計基準対応チェックリスト|法務部が適用開始までにやること | 適用開始までの最終チェックリスト |
第1章 「借手のリース料」とは何か
会計基準上の取扱い企業会計基準第34号は、「借手のリース料」を、借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払と定義し、次の5つで構成されるとしています(リース会計基準第19項、第35項)。
図解1 借手のリース料を構成する5つの要素
さらに重要な但し書きがあります。借手のリース料には、契約におけるリースを構成しない部分に配分する対価は含まれません。ただし、借手がリースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分として会計処理を行う場合を除きます(リース会計基準第19項)。この区分については第10話で扱います。
この定義から分かるのは、「原資産を使用する権利に関して行う支払」という限定が付いていることです。契約書に書かれているからといって、あらゆる支払が該当するわけではありません。
第2章 契約書の金額を全部足してはいけない
典型的な不動産賃貸借契約を例に考えます。
契約書に記載されている金額の例
月額賃料100万円/共益費20万円/売上高の3%/駐車場利用料5万円/清掃費8万円/中途解約違約金600万円/敷金1,000万円
この段階で法務部が「リース料は月額133万円」と計算してはいけません。それぞれの性質が異なるためです。
表1 契約書に出てくる金額と、まず確認すること
| 金額名称 | 契約上の内容 | 法務部が拾う情報 | 直ちに借手のリース料といえるか | 次の確認先 |
|---|---|---|---|---|
| 月額賃料 | 原資産の使用に対する定額の対価 | 金額、支払時期、改定条項 | 固定リース料に該当し得る | 経理部(分類の確認) |
| 共益費・管理費 | 共用部の維持管理等に対する対価 | 内訳、算定根拠、別建てか一括か | いえない。内容次第 | 第10話の区分検討 |
| 売上歩合 | 売上高に応じて変動する対価 | 売上の定義、料率、最低保証 | いえない。指数・レート連動とは異なる | 経理部(会計処理の確認) |
| 駐車場利用料 | 駐車区画の使用に対する対価 | 区画の特定、面積、台数 | 別のリースを構成する可能性がある | 経理部・第10話 |
| 清掃費・保守費 | 役務提供に対する対価 | 作業内容、頻度、単価 | いえない。役務の対価の可能性 | 第10話の区分検討 |
| 中途解約違約金 | 解約時に発生する支払 | 算定式、発生条件、上限 | いえない。リース期間の判断次第 | 第8話・経理部 |
| 敷金・保証金 | 担保的性格を有する預託金 | 金額、返還条件、償却の有無 | いえない。別の会計論点 | 経理部 |
| 更新料 | 更新時に発生する一時金 | 金額、発生条件、算定基準 | いえない。個別の検討が必要 | 経理部 |
第3章 固定リース料とは
会計基準上の取扱いここに落とし穴があります。会計基準は「借手の固定リース料」を、借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払であり、借手の変動リース料以外のものと定義しています(リース会計基準第20項)。
つまり、「毎月同じ金額であること」が要件ではありません。段階的に金額が変わる賃料も、一定期間だけ無償の契約も、変動リース料に該当しないのであれば固定リース料に含まれ得ます。「毎月同額でないから変動リース料だ」という整理は誤りです。
表2 固定的な料金を確認するポイント
| 料金の形態 | 契約書で見る箇所 | 抽出する情報 |
|---|---|---|
| 月額固定・年額固定 | 賃料条項 | 金額、支払頻度、支払日、前払/後払 |
| 段階賃料 | 賃料条項、別表 | 各期間の金額と適用開始時点 |
| 一定期間の無償(フリーレント) | 特約条項 | 無償期間、適用条件 |
| 一括前払 | 支払条項 | 金額、支払時期、返還条件 |
| 最低支払額の定め | 最低保証条項 | 最低額、算定の起点 |
| 一定時点以降の確定額 | 賃料条項、覚書 | 切替時期と切替後の金額 |
上表は契約条件を整理するための表であり、会計上の分類を確定する表ではありません。固定リース料に該当するかどうかの判断は経理部が行います。
第4章 変動リース料は3種類に分けて考える
会計基準上の取扱い「借手の変動リース料」は、借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払のうち、リース開始日後に発生する事象又は状況の変化(時の経過を除く。)により変動する部分をいい、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料とそれ以外の借手の変動リース料により構成されます(リース会計基準第21項)。
ASBJは結論の背景で、借手の変動リース料の具体的な類型として次の3つを挙げています(同BC41項)。
図解2 変動料金の3分類
- タイプA|指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料
例として、消費者物価指数の変動に連動するリース料が挙げられています。
→ 借手のリース料に含まれます(リース会計基準第19項(2)、第35項(2)) - タイプB|原資産から得られる借手の業績に連動して支払額が変動するリース料
例として、テナント等の原資産を利用することで得られた売上高の所定の割合を基礎とすると定めているようなリース料が挙げられています。 - タイプC|原資産の使用に連動して支払額が変動するリース料
例として、原資産の使用量が所定の値を超えた場合に追加のリース料が生じるようなリース料が挙げられています。
ASBJは、タイプBとタイプCについて、借手の将来の活動を通じてリース料を支払う義務を回避することができることから、リース料の支払が要求される将来の事象が生じるまでは負債の定義を満たさないとの考え方もあるためIFRS第16号ではリース負債の計上額に含められていないとしたうえで、本会計基準においてもこれらをリース負債の計上額に含めないこととした、と説明しています(同BC42項)。
「リース負債に含めない=調査不要」ではありません。
適用指針は、リース負債の計上額に含めなかった借手の変動リース料について、当該変動リース料の発生時に損益に計上するとしています(リース適用指針第51項)。発生の都度、金額を把握して計上する必要があるため、算定式、発生条件、報告方法といった契約情報は引き続き必要です。
第5章 指数・レート連動の料金
タイプAは借手のリース料に含まれるため、抽出の精度が求められます。
見落としやすい論点|市場賃料の協議見直し条項
適用指針は、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料には、市場における賃料の変動を反映するように当事者間の協議をもって見直されることが契約条件で定められているリース料が含まれるとしています(リース適用指針第24項)。
つまり、明確な連動算式が書かれていなくても、「市場賃料の変動を反映して協議のうえ改定する」という趣旨の条項があれば、対象となり得ます。不動産賃貸借契約では珍しくない条項です。算式の有無だけで判断せず、賃料改定条項を必ず確認してください。
表3 指数・レート連動条項から抽出する情報
| 抽出項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 指数・レートの名称 | 消費者物価指数、金利指標、市場賃料など、参照対象を特定できるか |
| 公表主体・公表時期 | 誰が公表する数値か、いつ公表されるか |
| 基準値・基準日 | 比較の起点となる数値と時点 |
| 改定日・改定頻度 | 年1回か、隔年か、改定の効力発生日はいつか |
| 算定式 | 変動率の反映方法、係数の有無 |
| 上限・下限(キャップ・フロア) | 改定幅に制限があるか |
| 参照のタイムラグ | 直前何か月分の数値を参照するか |
| 端数処理 | 切上げ・切捨て・四捨五入の定め |
| 協議条項の有無 | 市場賃料の変動を反映する協議見直しの定めがあるか |
| 改定の通知手続 | 誰が、いつまでに、どの方法で通知するか |
ASBJ公式設例13(借手の変動リース料)の要約が参考になります。この設例では、毎年4月1日に公表される直前12か月の消費者物価指数の変動に基づいて同日より年間リース料が変更されると定められた不動産賃貸借契約が扱われています。あわせて、原資産の使用から得られる各年度の売上高の1%を翌年に追加で支払う定めも置かれており、指数連動部分と売上連動部分が1つの契約に併存する構成になっています。この2つは会計上の扱いが異なるため、法務部としても条項単位で分けて記録する必要があります。
第6章 将来の指数・レートを法務部が予測する必要はない
適用指針上の取扱い指数・レート連動の変動リース料について、適用指針は次のように定めています。
- 原則:借手は、リース開始日には、借手のリース期間にわたりリース開始日現在の指数又はレートに基づきリース料を算定する(リース適用指針第25項)。
- 選択できる方法:合理的な根拠をもって当該指数又はレートの将来の変動を見積ることができる場合、将来の変動を見積り、当該見積られた指数又はレートに基づきリース料およびリース負債を算定することを、リースごとにリース開始日に選択することができる(同第26項)。
自社の体制に応じて検討すべき事項ここで明確にしておきたいのは、この方法の選択は会計上の判断であり、法務部が決めるものではないという点です。適用指針第26項は、合理的な根拠をもって指数又はレートの将来の変動を見積ることができる場合に、将来の変動を見積る方法をリースごとにリース開始日に選択できるとしています。以下の部署分担は、会計基準が定めたものではなく、本シリーズが想定する標準的な社内実務です。
- 法務部が渡すもの:指数・レートの名称、改定日、基準時点、算定式、上限・下限、協議条項の有無、通知手続
- 経理部が担うもの:第25項と第26項のいずれによるかの選択、将来の指数・レートの見積り、リース料およびリース負債の算定
なお、指数またはレートが変動し、そのことにより今後支払うリース料に変動が生じたときには、残りの借手のリース期間にわたりリース料およびリース負債を修正する取扱いが定められています(同第48項、第49項)。改定が生じたら経理部へ連絡が届く仕組みが必要だということです。改定日と改定条件を契約台帳で管理する意義はここにあります。台帳項目の設計は契約台帳の作り方|最低限必要な項目一覧と実務で使える設計を参考にしてください。
第7章 売上歩合賃料の扱い
商業施設のテナント契約でよく見られる「月額最低100万円+売上高の3%」「売上高の5%」といった料金です。これはタイプB(業績連動)に当たり得ます。
ここで2つの誤りを避けてください。第一に、「変動だからリース料に全部含める」——含まれるのは指数・レート連動のものです。第二に、「リース負債に含まれないから調査不要」——第51項により発生時に損益計上されるため、算定式と発生条件の把握が必要です。
また、「最低保証100万円は固定、超過分だけ変動」と法務部が独断で分解しないでください。契約上の建て付けをそのまま記録し、会計上の分類は経理部に委ねます。
表4 売上連動条項から拾う情報
| 抽出項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 売上高の定義 | 何を売上とするか、税込か税抜か |
| 対象範囲 | 対象となる店舗・事業・商品の範囲 |
| 控除項目 | 返品、値引き、外商、EC売上等の扱い |
| 料率 | 一律か、売上帯ごとの段階制か |
| 最低保証額 | 最低支払額の有無と金額 |
| 上限 | 支払額の上限の定め |
| 精算周期 | 月次・四半期・年次のいずれか |
| 売上報告義務 | 報告の方法、期限、様式 |
| 監査権・確認権 | 貸手による確認の権利の有無 |
| 遡及調整 | 報告値の修正が生じた場合の取扱い |
第8章 使用量・稼働量に連動する料金
タイプC(使用量連動)は、車両の走行距離、設備の稼働時間、複合機のコピー枚数、サーバー使用量、処理件数、電力使用量、保管量、通信量など、幅広く現れます。
ASBJが挙げている例は、原資産の使用量が所定の値を超えた場合に追加のリース料が生じるようなリース料です(リース会計基準BC41項(3))。基準量と超過条件がどう定められているかが、抽出の要点になります。
表5 使用量連動料金の確認事項
| 抽出項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 計測単位 | 距離、時間、枚数、件数、容量などの単位 |
| 単価 | 単位当たりの金額、段階単価の有無 |
| 基準量(含まれる量) | 基本料金に含まれる使用量の範囲 |
| 超過条件 | どの時点から追加料金が発生するか |
| 最低使用量 | 下回った場合でも支払う定めがあるか |
| 上限 | 支払額または使用量の上限 |
| 計測方法・計測主体 | 誰がどのように計測するか |
| 検針・集計の時期 | 締日と請求サイクル |
| 精算方法 | 都度精算か、期末一括精算か |
第9章 「変動」と書かれていても実質的に固定の場合がある
注意|条項の名称だけで固定・変動を判断しない
ASBJは、借手の変動リース料には、形式上は一定の指標に連動して変動する可能性があるが実質的には支払が不可避であるもの、又は変動可能性が解消されて支払額が固定化されるものがあるとし、これらのリース料の経済実態は借手の固定リース料と変わらないことから、借手の固定リース料と同様にリース負債の計上額に含めることとなる、としています(リース会計基準BC43項)。
あわせて、該当し得る例として、リース開始日においては原資産の使用に連動するが、リース開始日後のある時点で変動可能性が解消され、残りの借手のリース期間について支払が固定化されるようなリース料等が挙げられています(同項)。
法務部としては、「変動料金」という見出しを見つけた時点で分類を確定せず、次の事実を整理してください。変動が生じる条件、変動可能性が解消される時点があるかどうか、その後の支払額が固定されるか、そして最低支払義務の有無です。経済実態が固定リース料と変わらないかどうかの評価は、経理部が行います。
第10章 残価保証
ここは誤りが起きやすい論点です。会計基準は「残価保証」を、リース終了時に、原資産の価値が契約上取り決めた保証価額に満たない場合、その不足額について貸手と関連のない者が貸手に対して支払う義務を課せられる条件と定義しています(リース会計基準第22項)。
そして借手のリース料に含まれるのは、残価保証に係る借手による支払見込額です(同第19項(3)、第35項(3))。保証額そのものではありません。
図解3 残価保証額と支払見込額の違い
残価保証額 ≠ 自動的に借手のリース料
ASBJは、審議の過程で借手が支払見込額を見積ることが困難であるとの意見を踏まえ、見積りが困難である場合に残価保証額を用いることができるとする簡便的な取扱いを設けることを検討したものの、これを設けないこととしたと説明しています(リース会計基準BC44項)。したがって「保証額をそのまま計上する」という簡便法は用意されていません。
ASBJ公式設例11(残価保証がある場合)の要約が、この違いを端的に示しています。当該設例では、契約期間終了時に借手が原資産の処分価額を5,000千円まで保証する条項が付されており、借手は残価保証による支払見込額を3,000千円と見積っています。そして借手のリース料は、月額リース料の合計60,000千円に支払見込額3,000千円を加えた63,000千円として算定されています。保証額の5,000千円ではありません。
表6 残価保証条項から拾う情報
| 抽出項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 保証額・保証価額 | 契約上取り決めた金額 |
| 保証の対象 | どの資産について、どの範囲で保証するか |
| 算定方法 | 処分価額との差額の算定方法 |
| 査定の主体・方法 | 誰がどのように価値を査定するか |
| 返却条件 | 返却時に求められる状態 |
| 通常損耗・過剰損耗の区分 | 負担の分かれ目となる基準 |
| 免責事由 | 保証義務が生じない場合の定め |
| 修繕・原状回復義務 | 残価保証との関係 |
| 上限 | 支払義務の上限額 |
| 精算時期 | いつ支払義務が確定するか |
第11章 購入オプション
借手のリース料に含まれるのは、借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額です(リース会計基準第19項(4)、第35項(4))。
ASBJは、IFRS第16号では購入オプションが実質的にリース期間を延長する最終的なオプションと考えられるため借手のリース期間を延長するオプションと同じ方法でリース負債に含めるべきであるとされていることを踏まえ、借手のリース期間の判断と整合的に、行使が合理的に確実である購入オプションの行使価額をリース負債に含めていると説明しています(同BC45項)。
したがって、購入オプションが契約に存在するというだけでは含まれません。「割安だから必ず含める」という整理も適切ではありません。「合理的に確実」の考え方はリース期間は契約書に書かれた年数と同じではない|更新・解約オプションの読み方で解説しています。
表7 購入オプション条項から拾う情報
| 抽出項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 行使価額 | 金額または算定方法 |
| 行使可能時期 | 期間終了時か、中途でも可能か |
| 通知期限・手続 | いつまでに、どの方法で意思表示するか |
| 自動移転か選択か | 所有権が自動的に移転する定めか、選択権か |
| 行使条件 | 行使に付された条件の有無 |
| 市場価額との比較材料 | 比較に使える資料が入手できるか |
| 失権・違約条項 | 権利を失う場合の定め |
| 過去の行使実績 | 同種契約での行使の有無 |
第12章 解約違約金
借手のリース料に含まれるのは、リースの解約に対する違約金の借手による支払額であり、借手のリース期間に借手による解約オプションの行使を反映している場合に限られます(リース会計基準第19項(5)、第35項(5))。
ASBJは、借手が行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間を借手のリース期間に加えることとしているため、借手のリース期間に借手による解約オプションの行使が反映されている場合には、リースの解約に対する違約金の借手による支払額を借手のリース料に含めることとした、と説明しています(同BC46項)。
図解4 解約違約金がリース料に含まれるかの判断構造
「違約金条項があるからリース料に含める」という処理は誤りです。リース期間の判断と必ずセットで扱ってください。
表8 解約違約金条項から拾う情報
| 抽出項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 解約可能日 | いつから解約できるか |
| 通知期限 | 何か月前までに通知が必要か |
| 違約金の額 | 定額か、算定式か |
| 残存期間との連動 | 残りの期間に応じて変動するか |
| 上限 | 違約金の上限の定め |
| 減額・免除条件 | 減免が認められる場合 |
| 原状回復義務との関係 | 違約金とは別に負担が生じるか |
| 解約権者 | 借手・貸手のいずれの権利か(第8話参照) |
第13章 管理費・共益費・保守費はどうするか
賃料と共益費、管理費、清掃費、警備費、保守費、光熱費などが一括で請求される契約は珍しくありません。これらをどう扱うか——名称だけでは決められません。
前提として、借手のリース料には契約におけるリースを構成しない部分に配分する対価は含まれません。ただし、借手がリースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分として会計処理を行う場合を除きます(リース会計基準第19項)。
原則としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分は分けて会計処理しますが、借手には一定の単位ごとに、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分を分けずに合わせて会計処理する選択肢があります(リース会計基準第28項、第29項)。具体的な選択単位や対価配分は第10話で扱います。法務部が料金名称だけを見て「共益費は非リースだから除外」と決めることは避けてください。
表9 サービス料金を含む契約で確認する情報
| 抽出項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 料金の名称 | 契約上どの名称で定められているか |
| 対価の内容 | 何に対する対価か(役務か、資産の使用か) |
| 別建てか一括か | 金額が区分表示されているか |
| 単価・算定根拠 | 面積按分、実費、定額などの算定方法 |
| 内訳資料の有無 | 見積書、料金表、請求書の内訳 |
| 値引き・調整 | 一括契約による値引きの有無 |
| 変更条件 | 料金改定の手続と条件 |
| 提供者 | 貸手が提供するか、第三者が提供するか |
リースを構成する部分と構成しない部分をどう区分し、対価をどう配分するかは、リース部分とサービス部分をどう分ける?|複合契約の法務チェックで扱います。本記事では、単純合計ができないという認識と、配分に必要な資料を集めるところまでです。
第14章 敷金・保証金・預託金などはどう扱うか
初心者が最も混同しやすい領域です。「契約書に書かれた支払額であること」と「借手のリース料の5要素に該当すること」は別だという整理から始めてください。
敷金や建設協力金などの差入預託保証金については、適用指針に別途の定めが置かれており(リース適用指針第29項から第36項)、借地権の設定に係る権利金等についても別の定めがあります(同第27項)。これらは第19項の5要素に当然に含まれるわけではありません。ただし、契約調査の段階では抽出しておくべき関連金額です。
表10 リース料とは別に抽出しておく関連金額
| 項目 | 契約上の性質 | 法務部が拾う情報 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 敷金 | 賃料等の担保として預託する金銭 | 金額、返還条件、償却の有無 | 返還される部分と返還されない部分を区別して記録する |
| 保証金・預託金 | 将来返還される預託金 | 金額、返還時期、利息の有無 | 返還スケジュールが必要になる場合がある |
| 建設協力金 | 建物建設資金として預託する金銭 | 金額、返済条件、利率、据置期間 | 適用指針に別途の定めがある |
| 権利金・礼金 | 返還されない一時金 | 金額、支払時期、性質 | 借地権の権利金等には別の定めがある |
| 仲介手数料 | 第三者に対する支払 | 金額、支払先 | 貸手に対する支払ではない点を記録する |
| 更新料 | 更新時に支払う一時金 | 金額、発生条件、算定基準 | 更新の取扱いと併せて経理部へ渡す |
これらの会計処理の詳細は本記事の範囲外です。法務部としては「借手のリース料とは別項目として記録し、経理部へ渡す」ところまでを担ってください。
第15章 フリーレント・段階賃料・値引き
「最初の6か月は賃料無料」「1年目100万円、2年目110万円」といった料金設計は、実務で頻繁に登場します。これらを見落とすと、料金情報として不完全になります。
表11 料金スケジュールから拾う事項
| 抽出項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 期間ごとの金額 | 各期間の金額を漏れなく記録しているか |
| 適用開始・切替時点 | いつから金額が変わるか |
| 無償期間(フリーレント) | 期間の長さ、条件、途中解約時の扱い |
| 値引き・キャッシュバック | 金額、条件、受領時期 |
| 貸手からの各種インセンティブ | 内容と金額(使用権資産の計上額に関係し得る) |
| 支払時期 | 前払か後払か、支払日 |
| 改定日 | 賃料改定の効力発生日 |
段階賃料の一部の金額だけを記録しないでください。「月額100万円」とだけ台帳に入力すると、2年目以降の金額が失われます。期間と金額をセットで記録するのが原則です。
第16章 追加料金・追加費用をどう整理するか
超過利用料、時間外利用料、追加台数・追加面積・追加容量の料金、追加保守、追加サービス、延長利用料——契約書の後半や別紙に散らばっていることが多い項目です。
「追加費用」という名称だけで分類しないでください。確認すべきは、それが何に対する対価かという点です。
図解5 追加料金の確認フロー
├ 原資産の使用に対するもの → 変動リース料の類型を確認
├ 役務の提供に対するもの → リースを構成しない部分の可能性(第10話)
├ 使用量に連動するもの → タイプCとして条件を記録
└ 原資産の追加を伴うもの → 契約変更の可能性(第12話)
原資産を追加する場合は、リースの契約条件の変更に該当し得ます。詳細は契約変更・更新時の再判定と管理実務で扱います。
第17章 法務部が作る「料金情報シート」
LegalGPTとしての推奨契約1件ごとに埋めるシートです。Yes/Noを数えて分類を決める表ではありません。経理部が第19項・第35項に即して判断するための事実を、抜けなく集めるための道具です。
表12 リース料金情報の抽出シート
| 分類 | 項目 | 拾う情報(金額・算定式・発生条件・支払時期・変更条件) | 主な証拠資料 | 経理部へ確認する事項 |
|---|---|---|---|---|
| 基本料金 | 基本固定料金/支払頻度/支払日/前払・後払 | 金額、頻度、支払日、前払後払の別 | 賃料条項、請求書 | 固定リース料としての取扱い |
| 料金設計 | 段階料金/フリーレント/値引き/インセンティブ | 各期間の金額、無償期間、値引条件 | 賃料表、特約条項 | 使用権資産の計上額への影響 |
| 指数・レート | 指数連動/レート連動/市場賃料見直し/改定基準日/改定算式/上限・下限 | 指数名、基準値、基準日、算式、キャップ | 賃料改定条項 | 第25項・第26項のいずれによるか |
| 業績・使用量連動 | 売上歩合/使用量連動/最低保証/超過料金 | 売上定義、料率、単価、基準量、最低額 | 歩合条項、料金表 | リース負債に含めるかの判断 |
| オプション等 | 残価保証/購入オプション/解約違約金 | 保証額、行使価額、違約金算定式、行使条件 | 該当条項、覚書 | 支払見込額、合理的に確実の評価 |
| 役務対価 | 共益費/管理費/保守費/清掃・警備費/光熱費 | 名称、内容、算定根拠、別建てか一括か | 料金内訳、見積書 | リース部分と非リース部分の区分 |
| 一時金 | 敷金・保証金/建設協力金/権利金・礼金/更新料/その他一時金 | 金額、返還条件、支払時期 | 該当条項、精算書 | リース料とは別の会計論点の有無 |
| 税金等 | 消費税/固定資産税相当額等 | 契約上の負担者と算定方法 | 該当条項 | 取扱いの確認 |
| 管理情報 | 金額不明項目/付随資料/契約変更履歴 | 未確定事項、資料の所在、変更の内容と時期 | 照会記録、覚書 | 未確定事項が判断に与える影響 |
第18章 法務部と経理部の役割分担
自社の体制に応じて検討すべき事項以下は、ASBJが部署別に定めたものではなく、本シリーズが想定する標準的な社内実務です。実際の分担は自社の会計方針と社内分掌に従ってください。
- 法務部・契約管理部門:金額、算定式、支払条件、変動条件、参照する指数・レート、改定日、オプション条項、違約金条項、サービス料金の内訳、付随資料を整理する
- 事業部・購買部:実際の利用量、売上連動に必要な情報、追加利用の実態、運用変更、見積書、発注条件を提供する
- 経理部:借手のリース料に含める範囲の判断、変動リース料の会計処理、残価保証の支払見込額の見積り、「合理的に確実」の評価、リース部分と非リース部分への対価配分、現在価値の算定、リース負債および使用権資産の計上、監査対応を担う
この線引きで重要なのは、法務部が契約上の金額情報を整理することと、会計基準上の「借手のリース料」の範囲・合計額を最終決定することを区別することです。法務部は「契約上の月額賃料は100万円」「売上歩合は3%」といった金額・算定式・条件を整理して提供し、どの項目を借手のリース料に含め、最終的にいくらとするかは経理部が判断します。
第19章 料金情報の抽出で起こりやすい誤り
表13 よくある誤りと正しい対応
| よくある誤り | なぜ誤りか | 正しい対応 |
|---|---|---|
| 契約書の支払額を全部リース料とする | 借手のリース料は第19項の5要素で構成され、非リース部分の対価は原則含まれない | 項目ごとに性質を確認して記録する |
| 毎月同額のものだけが固定リース料である | 第20項は「変動リース料以外のもの」と定義している | 段階賃料等も含めて条件を整理する |
| 変動料金はすべて同じ扱いである | 指数・レート連動とそれ以外で扱いが異なる | BC41項の3類型で分けて記録する |
| 売上歩合を固定リース料に含める | 業績連動は指数・レート連動とは異なる類型 | 条項単位で分けて記録する |
| 使用量課金を指数連動として扱う | 使用量連動は別の類型 | 基準量と超過条件を記録する |
| 売上・使用量連動は調査不要と考える | リース負債に含めない場合も発生時に損益計上される(適用指針第51項) | 算定式と発生条件を把握する |
| 市場賃料の協議見直し条項を見落とす | 適用指針第24項により指数・レート連動に含まれ得る | 賃料改定条項を必ず確認する |
| 「変動」と書かれていれば必ず変動リース料と扱う | 実質的に支払が不可避なものや固定化されるものがある(BC43項) | 変動が解消する時点の有無を確認する |
| 残価保証額の全額を自動的に含める | 含めるのは支払見込額であり、簡便法は設けられていない(BC44項) | 保証額と条件を整理し、見積りは経理部に委ねる |
| 購入オプションがあれば行使価額を含める | 行使が合理的に確実である場合に限られる | 行使条件と価額を整理する |
| 解約違約金があれば必ず含める | リース期間に解約オプションの行使を反映している場合に限られる | 第8話のリース期間判断と接続する |
| 共益費は必ずリース料に含む/必ず含まない | 名称ではなく対価の内容と会計方針による | 内訳と算定根拠を整理し、区分は第10話・経理部へ |
| 敷金・保証金をリース料として合計する | 別の会計論点があり得る | 別項目として記録する |
| フリーレントや段階賃料を記録しない | 料金スケジュールが不完全になる | 期間と金額をセットで記録する |
| 最低保証+歩合の最低額だけを記録する | 歩合部分の条件が失われる | 契約上の建て付けをそのまま記録する |
| 追加料金をすべてリース料とする | 何に対する対価かによって扱いが異なる | 対価の内容を確認して分けて記録する |
| 法務部が現在価値を計算する | 測定は会計上の判断であり経理部の領域 | 金額・算式・条件の抽出に徹する |
| 契約変更後も旧料金情報を使い続ける | 改定や変更で条件が動く | 改定日を管理し、変更時に経理部へ連携する |
第20章 法務部向けチェックリスト
まとめ
借手のリース料は、契約書に記載された支払額の単純合計ではありません。固定リース料、指数またはレートに応じて決まる変動リース料、残価保証に係る支払見込額、行使が合理的に確実な購入オプションの行使価額、一定の場合の解約違約金という5つの構成要素があり、リースを構成しない部分に配分する対価は原則として含まれません。
固定と変動は名称で分けられません。固定リース料は「変動リース料以外のもの」と定義されています。変動料金も一括りにはできず、指数・レート連動、業績連動、使用量連動で扱いが異なります。ただし、リース負債に含めない変動リース料も発生時に損益計上されるため、調査対象から外すことはできません。
残価保証は保証額ではなく支払見込額、購入オプションは行使が合理的に確実な場合、解約違約金はリース期間の判断と連動——いずれも「条項があるから含める」という処理はできません。そして管理費や保守費が混在する契約では、そもそも単純合計ができません。
法務部が担うのは、金額、算定式、発生条件、支払時期、対価の内容を正確に抽出することです。会計上の分類と測定は経理部が行います。次は、リース部分とサービス部分をどう区分するかという論点に進みます。
よくある質問(FAQ)
借手のリース料とは何ですか
企業会計基準第34号は、借手のリース料を、借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払とし、固定リース料、指数またはレートに応じて決まる変動リース料、残価保証に係る借手による支払見込額、借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額、リースの解約に対する違約金の借手による支払額(借手のリース期間に借手による解約オプションの行使を反映している場合)の5つで構成されるとしています。なお、契約におけるリースを構成しない部分に配分する対価は、原則として含まれません。
契約書に書かれた支払額は全部リース料ですか
すべてが該当するわけではありません。借手のリース料は「原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払」に限られ、かつ5つの構成要素で定められているためです。共益費や保守費のように役務の提供に対する対価が含まれている場合や、敷金・保証金のように別の会計論点があるものも含まれます。契約書の金額を合計するのではなく、項目ごとに金額、算定方法、発生条件、対価の内容を整理して経理部へ渡してください。
売上歩合賃料は借手のリース料に含まれますか
借手のリース料に含まれる変動リース料は、指数またはレートに応じて決まるものです。売上高に連動するリース料は、ASBJが挙げる変動リース料の類型のうち原資産から得られる借手の業績に連動するものに当たり得るため、扱いが異なります。ただし、リース負債の計上額に含めなかった借手の変動リース料は当該変動リース料の発生時に損益に計上するとされているため、調査が不要になるわけではありません。売上の定義、料率、最低保証、精算方法などを整理してください。
CPIや市場賃料に連動する賃料はどう扱いますか
消費者物価指数の変動に連動するリース料は、指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料の例として挙げられており、借手のリース料に含まれます。また適用指針は、市場における賃料の変動を反映するように当事者間の協議をもって見直されることが契約条件で定められているリース料も、指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料に含まれるとしています。明確な算式がなくても対象となり得るため、賃料改定条項を必ず確認してください。リース開始日現在の指数またはレートを用いるのが原則ですが、合理的な根拠をもって将来変動を見積ることができる場合には、適用指針第26項により、その見積りを用いる方法をリースごとにリース開始日に選択できます。この会計上の選択は経理部が判断します。
残価保証額は全額リース料に含まれますか
含まれるのは残価保証額そのものではなく、残価保証に係る借手による支払見込額です。ASBJは、見積りが困難である場合に残価保証額を用いることができるとする簡便的な取扱いを設けることを検討したものの、設けないこととしたと説明しています。ASBJの公式設例でも、保証価額が5,000千円とされている一方で、借手のリース料に含められているのは支払見込額として見積られた3,000千円です。法務部は保証額、算定方法、査定条件、免責事由などを整理し、支払見込額の見積りは経理部に委ねてください。
購入オプションの行使価額は必ず含まれますか
必ず含まれるわけではありません。含まれるのは、借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額です。ASBJは、購入オプションが実質的にリース期間を延長する最終的なオプションと考えられることを踏まえ、借手のリース期間の判断と整合的に取り扱うと説明しています。契約にオプションが存在するというだけでは含まれず、行使価額が割安であることのみをもって判断することもできません。行使価額、行使可能時期、通知期限、行使条件を整理して経理部へ渡してください。
解約違約金はリース料に含まれますか
常に含まれるわけではありません。含まれるのは、借手のリース期間に借手による解約オプションの行使を反映している場合における、リースの解約に対する違約金の借手による支払額です。したがって、違約金条項が存在するというだけでリース料に含めることはできません。まず借手のリース期間の判断を確認し、その結果と接続させて整理する必要があります。法務部は解約可能日、通知期限、違約金の算定式、上限、減免条件を抽出してください。
共益費や保守費はリース料ですか
名称だけでは決まりません。借手のリース料には契約におけるリースを構成しない部分に配分する対価は原則として含まれませんが、借手がリースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを分けずに合わせてリースを構成する部分として会計処理を行う場合には、その限りではありません。つまり会計方針の選択があり得ます。法務部としては、料金の名称、対価の内容、別建てか一括か、算定根拠、内訳資料の有無を整理し、区分と配分の判断は経理部に委ねてください。
法務部がリース料を計算するのですか
本シリーズでは、借手のリース料に含める範囲の判断、変動リース料の会計処理、残価保証の支払見込額の見積り、対価の配分、現在価値の算定は経理部が担うものと位置づけています。法務部が担うのは、契約書と付随資料から金額、算定式、発生条件、支払時期、変更条件を正確に抽出し、未確定の項目を明示して提供することです。金額が確定していない条項についても、算定式や条件をそのまま記録して渡してください。
主な参照資料
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企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」
公表主体:企業会計基準委員会(ASBJ)/公表日:2024年9月13日(2025年4月23日修正)
公式ページ:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」全文(ASBJ 会計基準検索システム)
本文で参照した主な項番号:第19項、第20項、第21項、第22項、第35項、BC40項、BC41項、BC42項、BC43項、BC44項、BC45項、BC46項 -
企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」
公表主体:企業会計基準委員会(ASBJ)/公表日:2024年9月13日(2025年4月23日・2025年10月16日修正)
公式ページ:企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」全文(ASBJ 会計基準検索システム)
本文で参照した主な項番号:第24項、第25項、第26項、第27項、第29項から第36項、第48項、第49項、第51項 -
企業会計基準適用指針第33号 設例(設例11・設例13)
公表主体:企業会計基準委員会(ASBJ)/公表日:2024年9月13日
公式資料:企業会計基準適用指針第33号 設例(ASBJ公式PDF)
本文で要約した設例:設例11(残価保証がある場合)、設例13(借手の変動リース料) -
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表
公表主体:企業会計基準委員会(ASBJ)/公表日:2024年9月13日
公式ページ:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表(ASBJ 公式サイト) -
企業会計基準適用指針 一覧(公表日・修正日の確認用)
公表主体:企業会計基準委員会(ASBJ)/最終確認日:2026年8月9日
公式ページ:企業会計基準適用指針 一覧(ASBJ 公式サイト)
※本文中の設例は、ASBJ公式設例の前提条件と結論を要約したものです。適用指針は、設例に示されている会計処理について、具体的な会計処理や開示の実務を行うための手掛かりを与えるための例示であり、各企業のリースの実情等に応じて例示されていない会計処理も適当と判断される場合があることに留意する必要があるとしています。実際の判断にあたっては公式設例を直接ご確認ください。
※設例PDFは2024年9月13日公表版です。本記事では、2026年8月9日時点でASBJ公式サイトに掲載されている当該設例を参照しています。適用指針本文については、2025年10月16日までの修正を反映した現行版を優先しています。
本記事は2026年8月9日時点で公表されている資料に基づいています。個別の契約においてどの金額が借手のリース料に含まれるかの判断は、契約条件と会計方針により異なります。会計基準上の最終的な判断については、経理部門および監査法人・公認会計士にご確認ください。
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次回予告
第10話では、本記事で保留にした論点を扱います。リースを含む契約について、リースを構成する部分とリースを構成しない部分をどう区分するのか、対価をどう配分するのか、そして分けずに合わせて処理する選択がどのような場合に問題になるのかを、法務部の確認事項として整理します。
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