「新リース会計基準は2027年4月1日から」。そう聞いて社内スケジュールを引こうとしたものの、手が止まった方は多いはずです。12月決算の自社も2027年4月1日から対応するのか。そもそも自社は対象なのか。経理部からはまだ何も言われていないが、契約書の準備を始めるべきなのか。

新リース会計基準がいつから適用されるかは、会社ごとに異なります。基準が定めているのは「2027年4月1日から」ではなく「2027年4月1日以後に開始する事業年度の期首から」であり、決算期によって実際の開始時点がずれるためです。そして、すべての会社に一律に適用されるわけでもありません。

この記事では、原則適用と早期適用の時期、決算期別の実際の開始日、自社が対象かどうかの確認手順、経過措置が契約調査の設計に与える影響、そして2026年後半から適用開始までの準備工程を整理します。

新リース会計基準そのものの概要と、なぜ法務部が関係するのかについては、新リース会計基準で法務部の仕事はどう変わる?|2027年適用に向けた契約対応の全体像で解説しています。全体像から確認したい方は、そちらを先にお読みください。

この記事の結論

  • 原則適用は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首からです(リース会計基準第58項)。
  • 3月決算会社は通常2027年4月1日開始の事業年度から、12月決算会社は通常2028年1月1日開始の事業年度からになります。
  • すべての会社に一律に適用されるわけではありません。連結財務諸表と個別財務諸表に適用する会計基準、グループ内の報告方針などによって前提が変わります。
  • 法務部がまず確認すべきなのは、「自社に適用されるか」「どの事業年度から適用するか」「経理部がどの経過措置を採用する予定か」の3点です。
  • 契約調査は、この3点が固まってから適用開始日に向けて逆算するのが、手戻りの少ない進め方です。

本記事は「新リース会計基準対応|法務部の契約調査・管理実務」全15話の第2話です。

このシリーズは、新リース会計基準への対応において法務部・契約管理部門が担うことになる契約調査と契約管理の実務を、順を追って解説することを目的としています。

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シリーズ全15話の構成

話数記事タイトルその記事で分かること
第1話新リース会計基準で法務部の仕事はどう変わる?|2027年適用に向けた契約対応の全体像シリーズ全体像と、法務部が担う役割の範囲
第2話新リース会計基準はいつから?|対象企業と2026年後半からの準備スケジュール(現在の記事)適用時期・対象企業・準備工程の考え方
第3話リース契約でなくても対象になる?|新リース会計基準の「リースの識別」契約がリースを含むかを判断する枠組み
第4話埋込リースとは?|業務委託・物流・IT契約に潜むリースの見つけ方サービス型契約に含まれるリースの探し方
第5話新リース会計基準で調査すべき契約書は?|法務部の契約棚卸しの進め方契約母集団の設定と棚卸しの実務手順
第6話「特定された資産」とは?|専用設備・車両・サーバーを判断する基準特定された資産と、供給者側の代替権の見方
第7話資産の使用を支配しているのは誰か|経済的利益と使用指図権の確認方法使用の支配・経済的利益・使用指図権の確認
第8話リース期間は契約書に書かれた年数と同じではない|更新・解約オプションの読み方リース期間と、更新・解約条項の読み方
第9話契約書からどの金額を拾う?|固定料金・変動料金・追加費用の整理契約書から抽出すべき料金情報の範囲
第10話リース部分とサービス部分をどう分ける?|複合契約の法務チェックリース部分と非リース部分の区分の論点
第11話オフィス・店舗・倉庫の賃貸借契約はどう扱う?|不動産契約の調査ポイント不動産賃貸借契約に固有の調査ポイント
第12話契約変更・更新時に再判定は必要?|リース条件変更の管理実務契約変更・更新時の再判定と管理実務
第13話新リース会計基準対応の契約台帳|追加すべき項目と証跡管理契約台帳の追加項目と証跡の残し方
第14話新規契約の審査をどう変える?|新リース会計基準対応の受付票・条項・確認事項新規契約審査への確認項目の組み込み方
第15話新リース会計基準対応チェックリスト|法務部が適用開始までにやること適用開始までの最終チェックリスト

第1章 新リース会計基準はいつから適用されるのか

参照する基準と現行版

適用時期を定めているのは、次の2つです。

  • 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(企業会計基準委員会(ASBJ)が2024年9月13日公表、2025年4月23日修正)
  • 企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(同日公表、2025年4月23日および2025年10月16日修正)

いずれも法律ではないため、「施行日」ではなく「適用時期」という言い方をします。社内で説明する際も、この区別があると誤解が生じにくくなります。

原則適用と早期適用

会計基準上の取扱いリース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用します。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することもできます(リース会計基準第58項)。適用指針の適用時期も、会計基準と同様です(リース適用指針第112項)。

本基準の適用により、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第16号を含む、第59項所定の旧基準等の適用は終了します。

「2027年4月1日から」と「2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から」の違い

検索でも社内会話でも「2027年4月1日から」という言い方が定着していますが、これは3月決算会社を念頭に置いた省略表現です。基準が指定しているのは日付そのものではなく、事業年度の開始時点です。

したがって、事業年度の途中である2027年4月1日に、期の中間から適用が始まるわけではありません。2027年4月1日以後に始まる最初の事業年度の期首が、その会社にとっての適用開始時点になります。3月決算以外の会社では、開始時点が2027年4月1日より後ろにずれます。

早期適用についても同じ考え方です。2025年4月1日という日付から自由に開始できるのではなく、2025年4月1日以後に開始する事業年度の期首が起点になります。

なお、ASBJは、公表から原則適用までの期間を2年半程度とし、あわせて早期適用を認めることとした理由を結論の背景で説明しています(リース会計基準BC69項)。リースの識別をはじめ、これまでとは異なる実務が求められることが、その考慮要素の一つに挙げられています。

第2章 決算期別に見る実際の適用開始日

会計基準第58項の定めを決算期にあてはめると、次のようになります。

表1 決算期別の原則適用開始日

決算期原則適用となる事業年度の開始日対象となる決算期の例早期適用が可能となる最も早い事業年度の例
3月決算2027年4月1日2028年3月期2025年4月1日開始(2026年3月期)
6月決算2027年7月1日2028年6月期2025年7月1日開始(2026年6月期)
9月決算2027年10月1日2028年9月期2025年10月1日開始(2026年9月期)
12月決算2028年1月1日2028年12月期2026年1月1日開始(2026年12月期)

ここで混同しやすいのが、「決算期」と「事業年度の開始日」です。12月決算の会社の事業年度は1月1日に始まるため、2027年4月1日以後に開始する最初の事業年度は2028年1月1日開始のものになります。結果として、3月決算会社より9か月遅れて適用が始まります。

図解1 決算期別・新リース会計基準の原則適用開始タイムライン

2027年4月から2028年1月にかけて、決算期の順に適用開始時点が並びます。

2027年4月1日3月決算会社が原則適用を開始(2028年3月期)
2027年7月1日6月決算会社が原則適用を開始(2028年6月期)
2027年10月1日9月決算会社が原則適用を開始(2028年9月期)
2028年1月1日12月決算会社が原則適用を開始(2028年12月期)

上記は、標準的な1年決算を前提とした例です。変則決算、事業年度の途中での決算期変更、設立初年度、合併等により事業年度が通常と異なる場合は、適用開始時点を個別に確認してください。

グループ会社では、親会社と子会社で決算期が異なることがあります。その場合、子会社自身の適用開始時点と、親会社の連結決算のために情報提供を求められる時期が一致しないことがあります。法務部としては、この2つの期限を分けて把握しておく必要があります。

第3章 新リース会計基準の対象企業はどこまでか

企業会計基準第34号の直接の適用対象となるかは、自社が財務諸表の作成にどの会計基準を用いるかによって確認する必要があります。上場・非上場という区分だけで一律に決まるものではなく、法務部が単独で線引きを決める領域でもありません。

そこで本記事では、対象企業を断定的に一覧化するのではなく、自社が適用する会計基準とグループ内の報告方針を確認する手順として整理します。

最初に確認する7つの事項

自社は、どの会計基準で財務諸表を作成しているか
連結財務諸表を作成しているか
個別財務諸表には、どの会計基準を適用しているか
上場会社または上場準備会社か
親会社・グループ本社から適用方針が示されているか
会計監査を受けているか
早期適用を予定しているか

この7点は、いずれも経理部が把握している情報です。法務部が推測で答えを埋める必要はありません。

連結と個別の関係

会計基準上の取扱いリース会計基準は、連結財務諸表と個別財務諸表の会計処理を同一とする考え方で開発されています。ASBJは、連結財務諸表のみに適用すべきか両方に適用すべきかを審議したうえで、両者の会計処理は同一であるべきとする基本的な考え方を覆す事情は存在しないと判断した旨を結論の背景に記載しています(リース会計基準BC20項、BC21項)。

実務上の意味は明確です。連結決算だけの話ではないため、単体で財務諸表を作成している子会社でも、適用の有無を確認する必要があります。

確認が必要となる企業の例

自社の体制に応じて検討すべき事項次に挙げるのは、「該当すれば必ず対象」という意味ではなく、「適用の有無を確認しておくべき類型」です。

  • 日本基準を適用する上場会社
  • 日本基準を適用する上場準備会社
  • 上場会社グループの国内子会社
  • 日本基準で監査済みの財務諸表を作成している非上場会社
  • 親会社の連結決算のために、リースに関する情報の報告を求められる子会社

表2 企業区分・適用会計基準別の確認事項

企業区分・適用基準主な確認事項留意点
日本基準を適用する上場会社適用開始事業年度、早期適用の有無、経過措置の方針連結・個別の双方について確認する
上場準備会社上場申請時に求められる財務諸表の作成基準、監査対応の時期準備スケジュールが上場時期に連動する場合がある
上場会社グループの国内子会社自社の適用開始時点、親会社への報告期限、報告様式自社の適用時点と親会社への報告期限が一致しないことがある
日本基準で監査を受ける非上場会社自社が適用する会計基準、監査法人・公認会計士との協議状況上場の有無だけで対象・対象外が決まるわけではない
IFRS適用企業連結ではIFRS第16号「リース」が中心。個別財務諸表にどの基準を適用するか個別財務諸表に日本基準を適用する場合、企業会計基準第34号の適用を確認する必要がある
米国会計基準適用企業連結ではTopic 842が中心。国内子会社の個別財務諸表の作成基準グループ内での報告要請の有無を併せて確認する
中小企業会計指針・中小企業会計要領を基礎とする企業自社が拠る会計の枠組み、取引先・金融機関から求められる開示企業会計基準第34号を適用する企業と同じ前提にはならない場合がある
税務会計を中心に決算する企業今後の上場準備や親会社方針による変更予定の有無将来の方針変更に備え、契約情報の整理自体は有用な場合がある

IFRSまたは米国会計基準を適用しているグループについて、「新リース会計基準は一切関係しない」と結論づけるのは早計です。連結ではIFRS第16号やTopic 842が中心になる一方で、国内子会社が個別財務諸表を日本基準で作成する場合には、企業会計基準第34号の適用が問題になり得ます。実際、適用指針には、IFRSを連結財務諸表に適用している企業(またはその連結子会社)が個別財務諸表に本会計基準を適用する場合の経過措置が設けられています(リース適用指針第134項)。

第4章 自社が対象か確認する判断フロー

以下は、法務部が経理部へ確認を進めるための順序を整理したものです。最終的な適用判断を法務部が行うためのフローではありません。いずれの経路でも、終点は「経理部の方針に基づく行動」または「関係者への確認」になります。

図解2 自社への適用確認フロー

Q1自社が財務諸表の作成に適用している会計基準は何か(日本基準/IFRS/米国基準/中小企業会計指針等)
Q2日本基準を適用しているか
→ Yes:Q3へ / No:終点D へ
Q3企業会計基準第34号を適用する方針か(経理部に確認)
→ Yes:Q4へ / 未定:終点B・C へ
Q4早期適用を選択しているか
→ Yes:早期適用の開始事業年度を確認 / No:原則適用(2027年4月1日以後開始事業年度)を前提に確認
Q5自社の事業年度の開始日はいつか(表1で適用開始時点を特定)
Q6連結グループから、別途の報告期限や報告様式が指定されているか
→ Yes:自社の適用時点とは別に、報告期限を管理する
Q7監査法人・公認会計士との協議は完了しているか
→ 未了:終点C へ

フローの終点は、次の4つのいずれかです。

  • 終点A:経理部の適用方針に基づき、契約調査の準備を開始する
  • 終点B:親会社・グループ経理へ方針を確認する
  • 終点C:監査法人・公認会計士との協議結果を待って、対象範囲を確定する
  • 終点D:現時点では企業会計基準第34号の直接適用を前提としないが、適用している別基準の取扱いと、グループ内での報告要請の有無を確認する

法務・経理・事業部がそれぞれ何を担うのかを社内で整理する際は、法務部の仕事は何をする部署か|契約審査だけではない企業法務の全体像も、役割の切り分けを説明する材料になります。

第5章 早期適用を予定する企業で法務部が確認すること

早期適用とは、原則適用時期を待たずに、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から本基準を適用することです(リース会計基準第58項ただし書き)。早期適用を選ぶかどうかは経営および経理の判断であり、本記事ではその是非を論じません。

法務部にとって重要なのは、早期適用が決まった場合、契約調査の期限が原則適用の場合より前倒しになるという一点です。したがって、次を確認してください。

  • 早期適用を正式に決定しているか、検討段階か
  • どの事業年度から適用するか
  • 連結財務諸表と個別財務諸表のそれぞれに適用する会計基準、および企業会計基準第34号の適用開始事業年度
  • 監査法人・公認会計士との協議はどこまで進んでいるか
  • 契約調査の基準日(どの時点の契約を対象とするか)
  • 過去の契約をどこまで遡って確認するか
  • 契約データの提出期限
  • 変更契約・覚書・発注書について、対象とする期間
  • 新規契約・変更契約の継続連携をいつから開始するか

早期適用の可能性がある段階では、契約母集団を確定させるより先に、これらの前提条件を書面で共有しておくほうが効率的です。前提が動くと、抽出項目も収集範囲もやり直しになるためです。

第6章 経過措置は契約調査にどう影響するか

適用指針には、適用初年度に関する複数の経過的な取扱いが定められています(リース適用指針第113項から第137項)。会計処理の詳細は法務部が判断する領域ではありませんが、どの取扱いを採用するかによって契約調査の範囲が変わり得るため、方針の確認は必要です。

法務部の作業に影響し得る代表的な取扱い

適用指針上の取扱い適用初年度は、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。ただし、適用初年度の期首より前に遡及適用した場合の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することもできます(リース適用指針第118項)。

この方法を選択する場合、リースの識別について、次の(1)と(2)のいずれか、または両方を適用することができるとされています(リース適用指針第119項)。

  • (1) 適用初年度の前連結会計年度および前事業年度の期末日において企業会計基準第13号を適用しているリース取引について、契約にリースが含まれているか否かの判断を行わずに本会計基準を適用すること
  • (2) 適用初年度の期首時点で存在する、企業会計基準第13号を適用していない契約について、当該時点で存在する事実および状況に基づいて、契約にリースが含まれているか否かを判断すること

法務実務への影響は明快です。(2)の枠組みでは、判断の基準時点が「適用初年度の期首」に置かれます。つまり、どの時点で存在する契約を集めるべきかが、経理部の方針によって決まるということです。これが決まる前に契約母集団を確定させると、収集範囲の過不足が後から判明します。

ここで注意したいのは、経過措置は会計処理上の負担を軽減するための取扱いであって、契約調査そのものを不要にするものではないという点です。とくに(2)は、これまで会計処理の対象としていなかった契約について新たに判断を行うことを前提としています。「経過措置があるから調べなくてよい」という結論にはなりません。

表3 経過措置について法務部が経理部に確認する事項

確認事項法務部が経理部に聞く質問契約調査への影響
適用開始年度どの事業年度から適用しますか契約収集・情報抽出の作業期限が決まる
早期適用早期適用を選択しますか準備開始時期が前倒しになるかが決まる
経過措置適用初年度にどの取扱いを採用する予定ですか調査範囲と遡及の要否が変わり得る
契約の識別旧基準でリース取引として会計処理している契約について、適用指針第119項第1号の取扱いを採用しますか旧基準上のリース取引について、新基準によるリース識別を改めて行う範囲が変わる
データ基準日どの時点で存在する契約を対象としますか収集対象の契約と、変更契約の対象期間が決まる
監査対応監査法人はどの資料・証跡を必要としていますか保存すべき資料と、判断根拠の記録方法が決まる

なお、契約がリースを含むか否かをどのような枠組みで判断するのかは、契約がリースを含むかを判断する「リースの識別」で詳しく解説します。本記事では、その判断の基準時点が経過措置の選択によって変わり得る、という点にとどめます。

第7章 2026年後半からの準備スケジュール

LegalGPTとしての推奨以下は、3月決算会社が原則適用する場合を中心モデルとした標準的な工程です。ASBJが法務部に対して示した公式の工程ではありません。6月・9月・12月決算の会社では、自社の原則適用開始時点は後ろにずれます。ただし、親会社への報告期限、グループ共通システムの導入時期、契約件数、監査対応等によっては、準備工程を同じ幅だけ後ろ倒しできるとは限りません。自社の適用開始日だけでなく、グループ内の報告期限からも逆算してください。早期適用を選択する場合は、準備工程を前倒しする必要があります。

図解3 適用開始から逆算する法務部の準備ロードマップ

期間主な作業この期間の成果物主担当例
2026年8月〜9月
前提条件の確定
  • 自社への適用の有無の確認
  • 早期適用の有無の確認
  • 経過措置の方針の確認
  • プロジェクト責任者と部門分担の決定
  • 契約書の保管場所の把握
  • 調査対象となり得る契約の仮説作成
適用方針メモ、体制表、契約保管場所の一覧経理部(方針決定)/法務部(確認・記録)
2026年10月〜12月
設計と試行
  • 契約母集団の暫定抽出
  • サンプル契約による試行
  • 抽出項目と事業部向け質問票の決定
  • 契約台帳・管理システムのギャップ確認
  • 各部門向けの説明
  • 監査対応に必要な証跡の確認
抽出項目定義、質問票、台帳改定案、暫定契約リスト法務部(設計)/経理部(要件確認)
2027年1月〜3月
本調査と仕組み化
  • 本格的な契約収集と情報抽出
  • 事業部への運用実態ヒアリング
  • 経理部へのデータ連携
  • 未回収・内容不明契約の解消
  • 新規契約審査フローの改定
  • 変更契約の報告ルール整備
契約情報一覧、運用実態の確認記録、改定後の審査フロー法務部・事業部(実施)/経理部(受領・判断)
2027年4月以降
適用開始後の運用
  • 適用開始後の新規契約の登録
  • 更新・変更・解約の継続連携
  • 判断根拠と監査証跡の保存
  • 初回運用で判明した不備の修正
  • 定期的な台帳照合
更新後の契約台帳、変更報告の記録、証跡の保存先契約管理主管部門/経理部

この工程で見落とされやすいのが、最後の「適用開始後の運用」です。契約条件が変更された場合には判断の見直しが生じ得るため、一斉調査で完了する作業ではありません。継続管理の仕組みを設計段階から織り込んでおくと、適用開始後の負荷が下がります。継続的な契約管理の考え方については、契約管理とは何か|なぜExcel管理では限界なのかを実務視点で解説が参考になります。

また、2026年10月〜12月に行う台帳のギャップ確認では、現行の台帳項目を先に棚卸ししておくと検討が速く進みます。基本項目の整理は契約台帳の作り方|最低限必要な項目一覧と実務で使える設計を、新リース会計基準への対応で追加すべき項目は新リース会計基準対応の契約台帳に追加すべき項目をご覧ください。

契約母集団の設定と収集の具体的な手順は、法務部が行う契約棚卸しの具体的な進め方で扱います。

第8章 適用開始までに遅れやすいポイント

表4 遅れる原因・起きる問題・予防策

遅れる原因起きる問題予防策
自社が対象かの確認が曖昧なまま調査を始める調査範囲が定まらず、作業の一部が無駄になる経理部から適用方針を文書またはメールで受け取ってから着手する
経過措置の方針が決まる前に対象契約を確定する基準日や遡及範囲が変わり、収集をやり直すことになる方針確認までは母集団を「暫定」と位置づけ、確定させない
法務部の契約台帳だけで全契約を把握できると考える事業部・購買部・総務が個別保管する契約が漏れる着手時に部門横断で保管場所を調査し、一覧化する
変更契約・覚書・発注書が集まらない原契約だけでは契約条件を確定できず、判断が保留になる収集依頼時に、原契約と付随文書をセットで指定する
事業部への説明が遅れるヒアリングの回答が遅れ、後工程が押す抽出項目が固まった段階で、目的と依頼内容を先に共有する
契約書の確認と運用実態の確認を別々に進める契約書と実態の食い違いが後から判明し、再確認が発生する契約情報の抽出と質問票の回答を、同じ契約単位で突き合わせる
新規契約・変更契約の継続管理を後回しにする調査完了後に締結された契約が把握されず、情報が古くなる本調査と並行して、審査フローと変更報告ルールを改定する
監査証跡の要件を後から確認する判断の根拠資料が残っておらず、再作成が必要になる調査設計の段階で、必要な証跡と保存先を経理部と決めておく

第9章 法務部が経理部に最初に確認する質問

そのまま社内メールや打合せメモに転記して使えるよう、質問と確認理由をセットで整理しました。

表5 法務部から経理部への質問リスト

#質問確認する理由
1自社は企業会計基準第34号を適用しますか企業会計基準第34号への直接対応として法務部に求められる作業範囲を確認するため。直接適用しない場合も、親会社へのグループ報告の要否を別途確認する
2連結財務諸表と個別財務諸表には、それぞれどの会計基準を適用していますか。企業会計基準第34号の適用開始事業年度は同じですか連結ではIFRS、個別では日本基準を適用する場合など、財務諸表ごとに前提が異なることがあるため
3適用開始事業年度はいつですかすべての作業期限の起点になるため
4早期適用を選択しますか準備開始時期が前倒しになるかが決まるため
5経過措置はどの取扱いを採用する予定ですか遡及適用の方法、リース識別の基準時点、旧基準で処理済みの契約を改めて識別する範囲に影響するため
6契約調査の基準日はいつですかどの時点で存在する契約を集めるかが決まるため
7調査対象とする契約の範囲はどこまでですか契約母集団を暫定で設定する際の前提になるため
8法務部に求める抽出項目は何ですか契約情報の抽出フォーマットを設計するため
9事業部への運用実態の確認は、どの部署が行いますかヒアリングの主体と質問票の作成責任を明確にするため
10契約データの提出期限はいつですか収集と抽出の工程を逆算して組むため
11監査法人が必要とする証跡は何ですか保存すべき資料と記録方法を、作業前に決めるため
12新規契約・変更契約の継続連携は、いつから開始しますか審査フローと変更報告ルールの改定時期を決めるため

第10章 適用開始前に法務部が確認するチェックリスト

適用開始直前に使う網羅的なチェックリストは、適用開始までに法務部が確認する対応チェックリストで改めて整理します。

まとめ

新リース会計基準の適用開始時点は、会社の決算期によって異なります。原則適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度の期首からであり、3月決算会社と12月決算会社では9か月の差が生じます。

また、すべての会社に一律に適用されるわけではありません。適用の有無や対応範囲は、連結財務諸表と個別財務諸表に適用する会計基準、グループ内の報告方針、監査の状況によって変わります。法務部が単独で線引きを決める領域ではないため、まず経理部に確認してください。

確認すべき最初の3点は、「自社に適用されるか」「どの事業年度から適用するか」「経過措置はどの取扱いを採用する予定か」です。この3点が固まれば、適用開始時点から逆算して契約調査と継続管理の工程を組めます。3月決算会社であれば、2026年後半から着手することに合理性があります。

次の作業は、集めた契約について「その契約がリースを含むのか」をどう判断するのか、その枠組みを理解することです。

よくある質問(FAQ)

新リース会計基準はいつから適用されますか

企業会計基準第34号は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用します(同基準第58項)。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することもできます。「2027年4月1日から一斉に適用される」という意味ではなく、その日以後に始まる最初の事業年度の期首が起点になるため、実際の開始時点は決算期によって異なります。

12月決算の会社も2027年4月1日から適用されますか

異なります。12月決算の会社の事業年度は1月1日に始まるため、2027年4月1日以後に開始する最初の事業年度は、通常2028年1月1日開始の事業年度(2028年12月期)になります。3月決算の会社と比べると、適用開始時点はおよそ9か月後になります。なお、変則決算や決算期変更がある場合は、自社の事業年度の開始日を基準に個別に確認してください。

新リース会計基準は上場会社だけが対象ですか

上場会社だけが対象というわけではありません。企業会計基準第34号は、日本基準で財務諸表を作成し同基準を適用する企業が対象となるため、上場・非上場という区分だけで対象かどうかが決まるものではありません。また、この基準は連結財務諸表と個別財務諸表の会計処理を同一とする考え方で開発されているため、単体で財務諸表を作成している会社でも確認が必要です。自社に適用されるかは、経理部および監査法人・公認会計士に確認してください。

非上場会社も対応が必要ですか

必要になる場合があります。日本基準で監査済みの財務諸表を作成している非上場会社や、上場会社グループの国内子会社では、適用の有無を確認しておく必要があります。一方で、中小企業会計指針や中小企業会計要領、税務会計を基礎として決算を行っている企業では、同じ前提にならない場合があります。自社がどの会計の枠組みに拠っているかを、まず経理部に確認することをおすすめします。

IFRSを適用している会社も対象ですか

連結財務諸表にIFRSを適用している場合、リースについてはIFRS第16号が中心になります。ただし、それだけで検討が終わるとは限りません。国内子会社が個別財務諸表を日本基準で作成している場合には、企業会計基準第34号の適用が問題になり得ます。実際、適用指針には、IFRSを連結財務諸表に適用している企業またはその連結子会社が、個別財務諸表に本会計基準を適用する場合の経過措置が設けられています(リース適用指針第134項)。グループ内の各社について、個別財務諸表の作成基準を確認してください。

早期適用していない会社は2026年中に準備する必要がありますか

必要な着手時期は、決算期と契約件数、既存の契約管理体制によって異なります。3月決算の会社が原則適用する場合、適用開始は2027年4月1日開始の事業年度からとなるため、契約の収集、抽出項目の設計、事業部への確認、継続管理の仕組みづくりに要する期間を逆算すると、2026年後半から着手することに合理性があります。一方、12月決算の会社では自社の原則適用開始時点は後ろにずれますが、親会社への報告期限やグループ共通の対応工程によっては、準備を同じ期間だけ後ろ倒しできるとは限りません。まずは経理部の検討状況を確認したうえで、自社に必要な準備期間を見積もってください。

主な参照資料

※2024年に公表された概要資料・解説動画資料は、公表時点の内容を解説したものです。その後の修正を反映した取扱いについては、ASBJ会計基準検索システムに掲載された現行の会計基準・適用指針本文を優先してください。

本記事は2026年8月4日時点で公表されている資料に基づいています。自社への適用の有無、適用開始事業年度、経過措置の採用については、経理部門および監査法人・公認会計士にご確認ください。

次回予告

第3話では、契約がリースを含むか否かをどのような枠組みで判断するのかを解説します。契約の名称ではなく、特定された資産があるか、その資産の使用を支配する権利が移転しているかという観点から、法務担当者が契約書のどこを見るべきかを整理します。

リース契約でなくても対象になる?|新リース会計基準の「リースの識別」

読了後の実務化ガイド

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