INTRODUCTION
新しい案件や相談を受けたとき、いきなり結論を出そうとするのは危険です。法務相談や新規案件では、最初から論点が明確とは限りません。
情報が足りないまま判断すると、結論を誤りやすくなります。初動で大切なのは、まず不足している情報を把握することです。
何を確認すべきかわからないときは、ChatGPTに質問リストを作らせると整理しやすくなります。事実関係・契約関係・時系列・関係者・社内ルール——確認すべき入口を見える化できます。この記事では、案件の初動で使える具体的なプロンプトを紹介します。
この記事を実務で使う
読んだだけで終わると、次の案件でまたゼロから考えることになります。
社内説明の文面も、確認メモも、AIへの指示文も、毎回イチから。用途別に実務ツールを確認できます。
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この記事でわかること
POINT
案件の初動で確認事項を洗い出す重要性
ChatGPTに質問リストを作らせるプロンプトの書き方
法務相談・契約レビュー・トラブル対応で使える確認項目
不足情報・追加資料・関係者への質問を整理する方法
何を確認すればよいかわからないときに使える完成プロンプト
AIを使って初動整理をするときの注意点
初動で確認不足になりやすい項目
初動の確認漏れは、後の判断を大きく狂わせます。まずは、抜けやすい項目を見てみましょう。
いきなり結論
情報が足りない論点が不明確
結論を誤りやすい
→
質問リスト
事実関係契約関係時系列関係者
確認すべき入口を見える化
表1:初動で確認不足になりやすい項目
| 確認不足になりやすい項目 | 不足すると起きる問題 | 確認すべきこと |
| 時系列 | 期限や対応順序を誤る | いつ、誰が、何をしたか |
| 契約関係 | 当事者や義務の所在を誤る | 契約書・注文書・覚書・利用規約の有無 |
| 関係者 | 確認先を間違える | 社内部門・相手方・委託先・顧客など |
| 事実関係 | 推測で判断してしまう | 確認済みの事実と未確認の事実 |
| 期限 | 対応が後手に回る | 通知期限・時効・契約上の期限 |
| 証拠・記録 | 後で主張できない | メール・議事録・記録の有無 |
AIに整理させたい項目
AIには、答えを出させる前に「不足情報を洗い出させる」使い方が向いています。次の項目を指定すると、初動整理がはかどります。
表2:案件初動でAIに整理させたい項目
| 整理項目 | 内容 | AIへの指示例 |
| 事実関係 | 何が起きているか | 「確認済みの事実と未確認の事実を分けて」 |
| 時系列 | 出来事の順序 | 「分かっている範囲で時系列に整理して」 |
| 関係者 | 誰が関わるか | 「関係者と、それぞれに確認すべき点を挙げて」 |
| 契約関係 | どんな契約があるか | 「確認すべき契約・書面を挙げて」 |
| 法務論点 | どんな論点がありうるか | 「想定される法務・実務論点を挙げて」 |
| 社内確認事項 | 社内で確認すべき点 | 「社内で確認すべき事項を挙げて」 |
| 相手方確認事項 | 相手に聞くべき点 | 「相手方に確認すべき事項を挙げて」 |
| 追加資料 | 必要な資料 | 「追加で必要になりそうな資料を挙げて」 |
| 判断前の保留事項 | まだ決められない点 | 「判断を保留すべき事項を挙げて」 |
表3:案件種類別の確認観点
| 案件種類 | 最初に確認したいこと | 質問リストの方向性 |
| 契約レビュー | 契約類型・当社の立場・取引背景 | 事業部へのヒアリング項目 |
| 新規取引 | 取引内容・お金の流れ・契約関係 | 関係部門と必要資料 |
| クレーム対応 | 何が・いつ・誰が | 事実確認と時系列 |
| 事故・トラブル | 事実関係・証拠・期限 | 初動対応と記録の保全 |
| 法令対応 | 業務内容・対象者・取引形態 | 関係しそうな法令分野 |
| 社内ルール相談 | 目的・対象範囲・運用部門 | 現状と影響範囲 |
| 外部委託 | 委託内容・情報の扱い・再委託 | 契約と情報管理 |
表4:AIが作った質問リストを使うときの注意点
| AIの出力 | 注意点 | 人間が補うべきこと |
| 「相手方に確認してください」 | すぐ聞くと交渉上不利になる場合がある | まず社内確認で足りるか検討する |
| 「法的リスクがあります」 | 具体的根拠が不明な場合がある | 条文・契約条項・事実関係を確認する |
| 「これも確認すべき」 | 重要度がフラットに並ぶ | 優先順位を人間がつける |
| 「問題なさそうです」 | 情報不足のままの判断かも | 不足情報が埋まっているか確認する |
確認事項を洗い出す基本の型
まずは次の型を使ってください。空欄を埋めるだけで、初動の確認事項が整理されます。
実務メモ|基本の型
あなたは、企業法務担当者として案件の初動整理を行う担当者です。
以下の案件について、判断前に確認すべき事項を洗い出してください。
案件の概要:
相談者・依頼部門:
当社の立場:
相手方・関係者:
現在わかっている事実:
まだ不明な点:
相談者が知りたいこと:
想定されるリスク:
期限・急ぎ度:
特に確認したい観点:
出力形式:
以下の形式で整理してください。
1. 現時点でわかっている事実
2. 不足している情報
3. 相談者に確認すべき質問
4. 社内で確認すべき事項
5. 相手方に確認すべき事項
6. 追加で確認すべき資料
7. 想定される法務・実務論点
8. 判断を保留すべき事項
9. 次に取るべき初動対応
不明な点は断定せず、「確認が必要な事項」として整理してください。
最終判断は人間が行う前提で、まずは確認事項の洗い出しをしてください。
各項目の意味
案件の概要:何の相談・案件かを簡潔に伝えます。
相談者・依頼部門:誰からの相談かで、確認先や聞き方が変わります。
当社の立場:立場で、見るべき論点が変わります。
現在わかっている事実/まだ不明な点:ここを分けることが、初動整理の核心です。
相談者が知りたいこと:相談のゴールを伝えると、確認事項が的を射ます。
期限・急ぎ度:時間軸で、優先すべき確認が変わります。
特に確認したい観点:契約・事実・リスクなど、注目したい角度を指定します。
そのまま使える完成プロンプト集
ここからは、コピーしてすぐ使える完成プロンプトを7つ紹介します。【 】の部分を自分の状況に書き換えて使ってください。
1プロンプト1|案件初動の確認事項を洗い出す標準プロンプト
あなたは、企業法務担当者として案件の初動整理を行う担当者です。以下の案件について、判断前に確認すべき事項を洗い出してください。
案件の概要:【何の相談・案件か】
相談者・依頼部門:【誰からの相談か】
当社の立場:【記入】
相手方・関係者:【分かる範囲で】
現在わかっている事実:【確認済みの事実】
まだ不明な点:【分かっていないこと】
相談者が知りたいこと:【相談の目的】
想定されるリスク:【思い当たるもの】
期限・急ぎ度:【記入】
出力形式:以下の項目に分けて整理してください。
(1)現時点でわかっている事実
(2)不足している情報
(3)相談者に確認すべき質問
(4)社内で確認すべき事項
(5)相手方に確認すべき事項(すぐ聞くべきか保留すべきかも添える)
(6)追加で確認すべき資料
(7)想定される法務・実務論点
(8)判断を保留すべき事項
(9)次に取るべき初動対応
注意点:
・不明な点は断定せず、「確認が必要な事項」として整理してください。
・未確認の事実を前提に結論を出さないでください。
・最終判断は人間が行う前提で、まずは確認事項の洗い出しをしてください。
2プロンプト2|契約レビュー前のヒアリング項目を作る
あなたは、企業法務の担当者です。これから契約書をレビューするにあたり、事業部に確認すべき事項(ヒアリング項目)を洗い出してください。
案件の概要:【どんな契約か】
当社の立場:【委託者/受託者/売主/買主 など】
分かっていること:【取引の概要など】
不明な点:【まだ分からないこと】
期限・急ぎ度:【記入】
確認したい観点:
・契約類型
・当社の立場
・取引の背景・目的
・取引金額
・契約期間
・重要な納期
・現在の交渉状況
・譲れない条件
・相手方との関係(継続/新規)
・過去取引の有無
・社内承認の状況
出力形式:
(A)事業部への質問リスト
(B)法務が確認すべき資料
(C)レビューの前提として確定しておくべき事項
(D)優先して見るべき条項
(E)現時点で不明・要確認の事項
注意点:
・不明な点は断定せず「要確認事項」として整理してください。
・最終的な契約判断は人間が行う前提です。
3プロンプト3|新規取引・新規サービス相談の確認事項を作る
あなたは、企業法務・コンプライアンスに詳しい担当者です。以下の新規取引(または新規サービス・新規スキーム)の相談について、初動で確認すべき事項を洗い出してください。
相談の概要:【何を始めたいか】
相談者・依頼部門:【記入】
分かっていること:【取引・サービスの概要】
不明な点:【記入】
想定スケジュール:【運用開始時期など】
確認したい観点:
・取引・サービスの内容
・関係者(自社・相手方・顧客・委託先)
・お金の流れ
・契約関係(どんな契約が必要か)
・個人情報・秘密情報を扱うか
・外部委託の有無
・広告・表示が関係するか
・許認可・届出の可能性
・社内規程との関係
・運用開始時期
出力形式:
(1)確認事項
(2)確認すべき関係部門
(3)必要になりそうな資料
(4)想定される法務・コンプライアンス論点
(5)次に取るべき初動対応
注意点:
・許認可・法令の該当有無は、最終的に専門部門・専門家の確認が必要です。条文や制度の正確性が必要な点は「一次情報で確認」と明記してください。
・不明な点は断定せず「要確認事項」として整理してください。
・最終判断は人間が行う前提です。
4プロンプト4|トラブル・クレーム対応の初動確認
あなたは、トラブル対応の初動整理に詳しい企業法務の担当者です。以下のトラブル(クレーム・取引先トラブル・納品遅延・契約違反疑いなど)について、初動で確認すべき事項を洗い出してください。
トラブルの概要:【何が起きているか】
当社の立場:【記入】
現時点でわかっている事実:【確認済みの事実のみ】
まだ不明な点:【記入】
相手方からの要求:【あれば記入】
期限・急ぎ度:【記入】
確認・整理してほしい観点:
・何が起きたか
・いつ起きたか
・誰が関係しているか
・契約書・注文書・覚書の有無
・相手方からの要求内容
・こちらの対応履歴
・証拠・記録(メール・議事録など)の有無
・期限(回答期限・通知期限など)
・想定される法的リスク
・レピュテーションリスク
・初動でしてはいけないこと
出力形式:
(1)事実確認リスト(確認済み/未確認を分ける)
(2)分かる範囲での時系列整理
(3)追加で確認すべき資料・証拠
(4)相手方に回答する前に社内で整理すべき事項
(5)初動対応案(してはいけないことも含む)
注意点:
・未確認の事実を断定しないでください。
・相手方への回答・謝罪・約束は、社内確認前に行わない前提で整理してください。
・法的評価は最終的に担当者・弁護士の確認が必要です。
・最終判断は人間が行う前提です。
5プロンプト5|法令・規制が関係しそうな相談の確認事項を作る
あなたは、企業法務・コンプライアンスに詳しい担当者です。以下の業務について、「法律・規制に関係しそうだが、何を確認すべきか分からない」状態を整理してください。
業務の概要:【何をする業務か】
分かっていること:【記入】
不明な点:【記入】
確認したい観点:
・業務内容
・対象者(消費者/事業者/従業員 など)
・商品・サービスの内容
・契約形態
・金銭の流れ
・広告・表示の有無
・個人情報を扱うか
・外部委託の有無
・許認可・届出の可能性
・関係しそうな業界規制
・最新情報の確認が必要か
出力形式:
(1)確認すべき事項
(2)関係しそうな法令分野(当たりをつけるレベル)
(3)公的資料・一次情報で確認すべき点
(4)社内対応の候補
(5)専門家に相談すべき可能性のある論点
注意点:
・関係しそうな法令分野は「当たり」であり、該当の有無は一次情報(e-Govの条文、所管省庁の公表資料など)や専門家で必ず確認が必要です。
・条文番号や要件など、正確性が必要な点を断定しないでください。
・最終判断は人間が行う前提です。
6プロンプト6|上司・専門家に相談する前の質問整理
あなたは、相談前の準備を整理するのが得意な企業法務の担当者です。私が上司・外部弁護士・専門部署に相談する前に、聞くべき質問と準備すべき資料を整理してください。
相談したいテーマ:【何を相談したいか】
相談相手:【上司/外部弁護士/専門部署 など】
現時点でわかっている事実:【記入】
不明点:【記入】
自分の仮説(あれば):【記入】
判断に迷っている点:【記入】
急ぎ度:【記入】
出力形式:
(1)相談メモ(背景・経緯を簡潔に)
(2)質問リスト(優先順位つき)
(3)相談相手に判断してほしい事項
(4)添付すべき資料リスト
(5)相談前に自分で社内確認しておくべき事項
注意点:
・不明な点は断定せず「要確認」として残してください。
・相談相手の時間を尊重し、質問は要点を絞ってください。
・最終判断は相談相手・人間が行う前提です。
7プロンプト7|相談内容を時系列で整理する
あなたは、複雑な相談を時系列で整理するのが得意な担当者です。以下の散らかった相談内容を、時系列で整理してください。
相談内容(メモのまま貼り付け可):【記入】
当社の立場:【記入】
整理してほしい観点:
・いつ
・誰が
・何をしたか
・どの資料に記録があるか
・どの事実が未確認か
・どの時点で判断が必要か
・期限・時効・通知期限の有無
出力形式:
(1)時系列表(日付/出来事/関係者/根拠資料/確認状況)
(2)確認済みの事実
(3)未確認の事実
(4)追加で確認すべき資料
(5)次に取るべき対応
注意点:
・日付や事実が不明な点は、推測せず「不明・要確認」と明記してください。
・未確認の事実を確定事項として扱わないでください。
・最終判断は人間が行う前提です。
悪い例・少し良い例・実務で使う例
同じ案件でも、どこまで指定するかで質問リストの質が変わります。3つの場面で見比べてみましょう。
場面1:契約レビュー前の確認事項
少し良い例この契約案件の確認事項をリストにしてください。
実務で使うならあなたは企業法務担当者です。これから業務委託契約をレビューします。当社は委託者です。事業部に確認すべきヒアリング項目、法務が確認すべき資料、レビューの前提として確定すべき事項、優先して見る条項を整理してください。不明点は要確認事項として扱ってください。
場面2:トラブル対応の初動確認
少し良い例このトラブルの確認事項を出してください。
実務で使うならあなたはトラブル対応に詳しい法務担当者です。以下の納品遅延の件について、確認済みの事実と未確認の事実を分け、分かる範囲で時系列に整理し、追加で確認すべき資料・証拠、相手方に回答する前に社内で整理すべき事項、初動でしてはいけないことを整理してください。未確認の事実は断定しないでください。
場面3:外部弁護士へ相談する前の質問整理
実務で使うなら以下のテーマで外部弁護士に相談します。背景を簡潔にまとめた相談メモ、優先順位つきの質問リスト、弁護士に判断してほしい事項、添付すべき資料リスト、相談前に自分で社内確認しておくべき事項を整理してください。不明点は要確認として残してください。
質問リスト作成でAIを使うときの注意点
注意
AIが作った質問リストを、そのまま相手方に送らない。
まず社内で確認できることと、相手方に聞くべきことを分ける。
交渉上不利になる質問を、不用意に相手方へ出さない。
未確認の事実を前提に判断しない。
法令・裁判例・規制など、正確性が必要な事項は一次情報や専門家の確認が必要。
契約書・個人情報・秘密情報・トラブル情報をAIへ入力する場合は、社内ルールに従う。
AIは確認事項の洗い出しには役立つが、重要度や優先順位は人間が判断する。
質問リストは「判断の代わり」ではなく、「判断前の準備」である。
まとめ
新しい案件では、すぐに結論を出す前に、確認事項を整理することが重要です。情報が足りないまま判断すると、結論を誤りやすくなります。
ChatGPTを使うと、不足情報・質問リスト・追加資料・初動対応を見える化しやすくなります。プロンプトでは、案件概要・当社の立場・現時点でわかっている事実・不明点・期限を指定することが重要です。
ただし、AIの質問リストはあくまで補助です。実際に誰に何を聞くか、優先順位はどうかは、人間が判断してください。
次回は、法令調査をChatGPTに頼むときに、条文・公的資料・実務影響を整理させるプロンプトを扱います。
「プロンプトの力」シリーズ一覧
第7話何を確認すればよいかわからない案件で使うプロンプト|AIに質問リストを作らせる方法
契約レビュー・初動整理・社内相談などで使えるプロンプトを持っておきたい方へ
新しい案件では、すぐに結論を出す前に、確認事項を整理することが重要です。Legal GPTでは、契約レビュー、稟議、法改正対応、社内説明など、法務・管理部門の実務で使いやすいプロンプト集を用意しています。毎回ゼロから確認項目を考えるのが大変な方は、自分の業務に近いプロンプトから試してみてください。
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