INTRODUCTION
ChatGPTに契約書レビューを頼む人は増えています。下書きのチェックや論点の洗い出しに、十分役立つ場面が出てきました。
ところが、「この契約書をレビューして」とだけ頼むと、一般論しか返ってこないことがよくあります。契約書レビューでは、自社の立場・契約類型・取引背景を伝えないと、実務に使える指摘になりにくいのです。
AIに契約書を見てもらうときは、レビュー観点と出力形式まで指定するのがコツです。この記事では、契約書レビューでそのまま使える具体的なプロンプトを、初心者向けに紹介します。
この記事を実務で使う
読んだだけで終わると、次の案件でまたゼロから考えることになります。
社内説明の文面も、確認メモも、AIへの指示文も、毎回イチから。用途別に実務ツールを確認できます。
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この記事でわかること
POINT
ChatGPTの契約書レビューが浅くなる理由
契約書レビュー用プロンプトに入れるべき情報
リスク・修正文案・確認事項を分けて出力させる方法
発注者・受注者など、自社の立場を指定する重要性
業務委託契約・NDA・修正コメント作成で使えるプロンプト例
AIを契約書レビューに使うときの注意点
なぜ契約書レビューが「浅く」なるのか
契約条件の良し悪しは、どちらの立場に立つかで逆転します。発注者に有利な条項は、受注者には不利です。立場を伝えないままレビューを頼むと、AITは平均的・一般的な注意点しか出せません。
さらに、契約類型や取引背景を伝えないと、見るべき条項の優先順位もつきません。まずは、浅いプロンプトと実務で使いやすいプロンプトの違いを見てみましょう。
表1:浅いプロンプトと実務で使いやすいプロンプトの違い
| 項目 | 浅いプロンプト | 実務で使いやすいプロンプト |
| 目的 | 指定しない | 「締結前にリスクと修正方針を整理する」 |
| 自社の立場 | 不明 | 「当社は委託者(発注者)」 |
| 契約類型 | 不明 | 「業務委託契約」 |
| レビュー観点 | おまかせ | 「損害賠償・解除・再委託・知財・秘密保持を中心に」 |
| 出力形式 | 指定しない | 「重大・中程度・軽微に分け、表形式で」 |
| 修正文案 | 出てこない | 「主要論点は修正文案も出す」 |
| 確認事項 | 出てこない | 「相手方確認事項・社内確認事項を分ける」 |
プロンプトに入れるべき要素
難しく考える必要はありません。次の要素を埋めるだけで、レビューはぐっと実務的になります。
表2:契約書レビュー用プロンプトに入れるべき要素
| 要素 | なぜ必要か | 入力例 |
| 契約類型 | 見るべき条項が変わる | 業務委託契約、NDA、売買契約 |
| 自社の立場 | 有利・不利の判断軸が決まる | 委託者/受託者、開示者/受領者 |
| 取引の背景 | リスクの重み付けが変わる | 継続取引/単発、相手は大手 など |
| 重視する条項 | 焦点を絞れる | 損害賠償、解除、知財、秘密保持 |
| リスクの重要度 | 優先順位がつく | 重大・中程度・軽微で分類 |
| 修正文案の有無 | 成果物の形が決まる | 主要論点は修正文案も出す |
| 出力形式 | そのまま使えるか決まる | 表形式、重要度順 |
| 注意点 | 断定・暴走を防ぐ | 断定せず要確認事項として整理 |
AIに出力させると便利な項目
リスク指摘だけで終わらせず、次の項目まで出させると、そのまま実務に使えます。
表3:AIに出力させると便利な項目
| 出力項目 | 内容 | 使いどころ |
| 重大リスク | 締結前に必ず交渉・修正すべき点 | 上司・社内への報告 |
| 中程度リスク | できれば修正したい点 | 交渉カードの整理 |
| 軽微な修正点 | 表現・体裁レベル | 一括修正 |
| 相手方への確認事項 | 相手に聞くべき不明点 | 修正依頼・打合せ |
| 社内確認事項 | 事業部・経営層に確認すべき点 | 社内調整 |
| 修正文案 | 条項の具体的な書き換え案 | ドラフト作成 |
| 交渉コメント案 | 相手方に送る依頼文 | 修正依頼メール |
| 要注意条項 | 見落とされやすい条項 | 最終チェック |
契約類型ごとに指定したい観点
契約類型によって、重点的に見るべき条項は変わります。プロンプトに「重点的に見たい一文」を足すだけで、焦点が定まります。
表4:契約類型ごとに指定したいレビュー観点
| 契約類型 | 主な確認観点 | プロンプトに入れたい一文 |
| 業務委託契約 | 業務範囲・検収・再委託・知財・損害賠償 | 「業務範囲と検収条件、知財帰属を重点的に」 |
| 秘密保持契約 | 秘密情報の定義・利用目的・存続期間・例外 | 「秘密情報の定義と存続期間、例外情報を重点的に」 |
| 売買契約 | 引渡し・検査・契約不適合責任・支払条件 | 「契約不適合責任と検査・支払条件を重点的に」 |
| 利用規約 | 免責・責任範囲・解約・変更条項・準拠法 | 「免責範囲と責任の上限、規約変更条項を重点的に」 |
| 賃貸借契約 | 賃料・更新・原状回復・中途解約・修繕 | 「原状回復の範囲と中途解約条件を重点的に」 |
契約書レビュー用・基本の型
毎回ゼロから考えるのが大変なら、まずは次の型を使ってください。空欄を埋めるだけで、レビュー依頼の形になります。
実務メモ|基本の型
あなたは企業法務担当者です。
以下の契約書について、当社の立場からレビューしてください。
契約類型:
当社の立場:
取引の概要:
契約書を確認する目的:
特に確認したい条項:
重視する観点:
許容できるリスク水準:
出力形式:
注意点:
以下の形式で整理してください。
1. 重大リスク
2. 中程度のリスク
3. 軽微な修正点
4. 相手方に確認すべき事項
5. 社内で確認すべき事項
6. 修正文案
7. 相手方へのコメント案
各項目の意味
契約類型:業務委託かNDAかで、見るべき条項が変わります。
当社の立場:委託者か受託者かで、有利・不利の判断軸が変わります。
取引の概要:取引の規模や継続性で、リスクの重みが変わります。
確認する目的:締結前の一次整理か、交渉準備かで深さが変わります。
特に確認したい条項:焦点を絞ると、指摘が具体的になります。
重視する観点:損害賠償重視か、知財重視かなどを伝えます。
許容できるリスク水準:どこまで譲歩できるかの目安を渡します。
出力形式:表・重要度順など、欲しい形を指定します。
注意点:断定回避・鵜呑み防止など、守ってほしい条件を伝えます。
そのまま使える完成プロンプト集
ここからは、コピーしてすぐ使える完成プロンプトを6つ紹介します。【 】の部分を自分の状況に書き換えて使ってください。
1プロンプト1|契約書レビューの標準プロンプト
あなたは企業法務の担当者です。以下の契約書を、当社の立場から一次レビューしてください。
目的:契約締結前に、自社にとってのリスクと修正方針を整理する。
当社の立場:当社は【委託者/受託者/売主/買主:いずれか記入】です。
契約類型:【業務委託契約/NDA/売買契約 など】
取引の概要:【取引内容・規模・継続性などを簡潔に記入】
特に確認したい条項:損害賠償、契約解除、再委託、知的財産権、秘密保持、支払条件
出力形式:以下の区分に分けて整理してください。
(1)重大リスク(締結前に必ず交渉・修正すべき点)
(2)中程度のリスク(できれば修正したい点)
(3)軽微な修正点(表現・体裁レベル)
(4)相手方に確認すべき事項
(5)社内(事業部・経営層など)で確認すべき事項
(6)主要論点の修正文案
各リスクは、該当条項・問題点・理由・修正の方向性をセットで示してください。
注意点:
・条文の解釈や最終的な法的判断は、人間(担当者・弁護士)が行う前提です。
・断定できない点や前提が不足する点は「要確認事項」として整理してください。
・契約書に書かれていない取引背景が影響しそうな場合は、その旨を指摘してください。
・「問題なし」と判断した条項も、確認した観点を簡潔に示してください。
【ここに契約書本文を貼り付け】
2プロンプト2|業務委託契約書を委託者(発注者)側でレビュー
あなたは企業法務の担当者です。以下の業務委託契約書を、当社(委託者・発注者)の立場でレビューしてください。
目的:委託者として、成果物の品質・納期・権利関係・リスク分担を確保する。
当社の立場:委託者(発注者)
取引の概要:【委託する業務の内容・期間・金額などを記入】
重点的に確認したい観点:
・業務範囲が明確か(範囲外作業の争いが起きないか)
・成果物の定義と品質基準
・納期と遅延時の取り扱い
・検収の基準・期間・不合格時の対応
・再委託の可否と管理
・知的財産権の帰属(成果物・既存権利)
・秘密保持の範囲
・個人情報の取扱い(該当する場合)
・損害賠償の範囲・上限
・契約解除の事由
・反社会的勢力の排除
・契約終了後の処理(データ返還・廃棄など)
出力形式:表形式で、次の列を出してください。
条項名/リスク内容/重要度(重大・中・軽微)/理由/修正文案/確認事項
注意点:
・最終的な法的判断は人間が行う前提です。
・断定できない点は「要確認事項」として整理してください。
・委託者に過度に有利な修正は、相手方が受け入れにくい点も補足してください。
【ここに業務委託契約書本文を貼り付け】
3プロンプト3|業務委託契約書を受託者(受注者)側でレビュー
あなたは企業法務の担当者です。以下の業務委託契約書を、当社(受託者・受注者)の立場でレビューしてください。
目的:受託者として、過度な負担・無限定な責任・不利な権利関係を避ける。
当社の立場:受託者(受注者)
取引の概要:【受託する業務の内容・期間・金額などを記入】
重点的に確認したい観点:
・業務範囲が広すぎないか、際限なく拡大しないか
・成果物責任が重すぎないか(保証範囲が過大でないか)
・無償対応や追加作業が発生しやすい構造になっていないか
・検収条件が不明確・主観的でないか
・損害賠償が無限定(上限なし)になっていないか
・契約解除が相手方に一方的に有利でないか
・知的財産権の帰属が過度に不利でないか
・再委託制限が実務に合っているか
・支払条件(支払時期・サイト・相殺など)に問題がないか
出力形式:次の項目に分けて整理してください。
(1)受託者側のリスク・懸念点(条項名と理由を明記)
(2)優先度(重大・中・軽微)
(3)修正方針
(4)修正文案
(5)相手方への交渉コメント案
注意点:
・最終的な法的判断は人間が行う前提です。
・断定できない点は「要確認事項」として整理してください。
・交渉余地は相手との力関係で変わるため、その旨も補足してください。
【ここに業務委託契約書本文を貼り付け】
4プロンプト4|秘密保持契約書(NDA)を情報開示者側でレビュー
あなたは企業法務の担当者です。以下の秘密保持契約書(NDA)を、当社(情報開示者)の立場でレビューしてください。
目的:開示する情報が適切に保護され、目的外利用や漏えいを防げるか確認する。
当社の立場:情報開示者
取引の概要:【何のために、どんな情報を開示するのかを記入】
重点的に確認したい観点:
・秘密情報の定義が十分か(口頭情報・成果物を含むか)
・利用目的が限定されているか
・複製・持出しの制限
・第三者開示の制限
・役職員・委託先へ開示する場合の管理義務
・契約終了時の返還・廃棄
・秘密保持義務の存続期間
・例外情報(公知情報など)の範囲が広すぎないか
・差止め・損害賠償の規定
・目的外利用の禁止が明確か
出力形式:次の項目に分けて整理してください。
(1)開示者側に不利な点(条項名と理由)
(2)重要度(重大・中・軽微)
(3)修正すべき点と修正文案
(4)相手方への説明コメント案
注意点:
・最終的な法的判断は人間が行う前提です。
・断定できない点は「要確認事項」として整理してください。
・受領者側にも配慮した、受け入れられやすい表現も併記してください。
【ここにNDA本文を貼り付け】
5プロンプト5|相手方への修正依頼コメントを作る
あなたは、取引関係に配慮できる企業法務の担当者です。以下のレビュー結果(または修正したい条項)をもとに、相手方に送る修正依頼コメント案を作成してください。
目的:法務的な懸念を相手に伝えつつ、取引関係を壊さない依頼文にする。
当社の立場:【委託者/受託者 など】
前提:相手方とは【継続取引/新規取引 など】の関係です。
作成方針:
・強すぎる・高圧的な表現を避ける。
・修正してほしい理由を簡潔に説明する。
・代替案がある場合は提示する。
・全体としてビジネス文書として自然なトーンにする。
出力形式:
(A)表形式で、次の列を出す。
条項番号/現状の問題点/修正依頼内容/理由/相手方に送るコメント案(そのまま使える文面)
(B)表の後に、メール本文としてまとめた依頼文(あいさつ・趣旨・依頼事項・結び)も作成する。
注意点:
・最終的な判断・送信は人間が行う前提です。
・断定できない点は社内で「要確認」として残してください。
【ここにレビュー結果または修正したい条項を貼り付け】
6プロンプト6|レビュー結果を社内説明用に要約する
あなたは、事業部にもわかりやすく説明できる企業法務の担当者です。以下の契約書レビュー結果を、社内向けに要約してください。
目的:上司・営業担当・事業部が、契約を進めるか判断できるようにする。
読み手:【上司/営業担当/事業部 など】
当社の立場:【委託者/受託者 など】
作成方針:
・法務用語を使いすぎず、必要なら簡単な言葉に置き換える。
・重要なリスクだけに絞る(細かい表現修正は省略可)。
・事業部が判断しやすい言葉でまとめる。
・「法務としての推奨方針」を明確に示す。
出力形式:次の項目に分けて整理してください。
(1)結論(このまま進めてよいか/修正交渉が必要か)
(2)重要リスク(3〜5点に絞る)
(3)法務としての対応方針
(4)事業部に確認したいこと
(5)相手方への依頼事項
注意点:
・最終判断は事業部・経営層が行う前提です。
・断定できない点は「要確認」として残してください。
【ここに契約書レビュー結果を貼り付け】
悪い例・少し良い例・実務で使う例
同じ依頼でも、どこまで指定するかで回答は大きく変わります。業務委託契約の例で見てみましょう。
少し良い例当社は委託者です。業務委託契約書のリスクを指摘してください。
実務で使うなら上の「完成プロンプト2」のように、契約類型・自社の立場・重点条項・出力形式・修正文案・確認事項まで指定します。ここまで指定すると、リスクが重要度別に整理され、修正文案や確認事項までセットで返ってきます。
特に指定したい5つの観点
自社の立場:発注者か受注者か、貸主か借主か。立場で「良い条件」は逆転します。
契約類型:業務委託契約、売買契約、NDA、利用規約など。類型で見る条項が変わります。
重視するリスク:損害賠償、解除、知財、秘密保持、再委託、個人情報など、特に気になる点を伝えます。
出力形式:表形式、重要度順、修正文案付き、確認事項付きなど、欲しい形を指定します。
どこまでAIにさせるか:一次レビュー、論点整理、修正文案作成、コメント案作成、社内説明案作成など、役割を決めます。
AIを契約書レビューに使うときの注意点
注意
契約書には秘密情報・個人情報が含まれることがあるため、AIに入力してよいか、社内ルール・情報管理ルール・秘密保持義務を必ず確認する。
契約書レビューをAIだけで完結させない。AIはあくまでレビューの補助。
AIの回答は誤ることがある。指摘の有無や内容を鵜呑みにしない。
法令・裁判例・業界規制など、最新性や正確性が必要な事項は、一次情報や専門家による確認が必要。
契約条件の妥当性は、法的リスクだけでなく、取引背景・交渉力・事業上の重要性によっても変わる。
AIが「問題ない」と言っても、本当に問題ないとは限らない。
不明点や前提不足がある場合は、断定せず「確認事項」として扱う。
最終的な法的判断は、人間(担当者・弁護士)が行う。
まとめ
ChatGPTに契約書レビューを頼むときは、「レビューして」だけでは足りません。
契約類型・自社の立場・重視する観点・出力形式を指定すると、回答は実務に近づきます。さらに、リスク・修正文案・相手方確認事項・社内確認事項を分けて出力させると、そのまま使いやすくなります。
ただし、AIの回答はあくまで補助です。最終判断は人間が行い、秘密情報の入力可否は社内ルールで確認してください。
次回は、契約書を読んで「何か変だ」と思ったときに、その違和感を論点に変えるプロンプトを扱います。
「プロンプトの力」シリーズ一覧
第2話ChatGPTに契約書レビューを頼むときのプロンプト|リスク・修正文案・確認事項をまとめて出させる方法
契約書レビュー用のプロンプトを毎回ゼロから考えるのが大変な方へ
契約書レビューでChatGPTを使う場合、毎回ゼロから指示を考えるよりも、契約類型や確認観点に応じたプロンプトの「型」を持っておくと便利です。Legal GPTでは、契約書レビューで確認したいリスク、修正文案、相手方への確認事項などを整理するための実務向けプロンプト集を用意しています。契約書レビューにAIを取り入れたい方は、まずは契約書AIレビュー用のプロンプトから試してみてください。
契約書AIレビュー プロンプト集を見る
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