INTRODUCTION
ChatGPTに質問すると、それなりの答えは返ってきます。今の生成AIは非常に優秀で、雑に聞いても一定の回答が出てきます。
ところが実務では、「内容が浅い」「一般論で終わる」「そのままでは仕事に使えない」と感じる場面が少なくありません。その原因の多くは、AIの能力不足ではなく、こちらの指示の出し方が足りていないことにあります。
プロンプトは「質問」ではなく、AIに仕事を任せるための指示書です。この記事では、浅い回答を減らすための基本と、コピーしてそのまま使える完成プロンプトを紹介します。
この記事を実務で使う
読んだだけで終わると、次の案件でまたゼロから考えることになります。
社内説明の文面も、確認メモも、AIへの指示文も、毎回イチから。用途別に実務ツールを確認できます。
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この記事でわかること
POINT
ChatGPTの回答が浅くなる理由
プロンプトを「質問」ではなく「指示書」と考える意味
良いプロンプトに入れるべき要素
初心者でも使える基本の型
契約書・メール・稟議・法令調査で使えるプロンプト例
AIを仕事で使うときの注意点
なぜ回答が「浅く」なるのか
ChatGPTは、与えられた情報の範囲で「もっともらしい一般論」を返すのが得意です。逆に言えば、前提や判断の観点を渡さないと、一般論で止まってしまうということです。
仕事の場面では、立場・状況・重視したい点によって「正しい答え」が変わります。それをこちらが伝えていなければ、AIは平均的な回答を出すしかありません。まずは、よくある指示と改善例を見比べてみましょう。
表1:浅い回答になりやすい指示と改善例
| よくある指示 | 返ってきやすい回答 | 改善した指示 |
| 「この契約書を見て」 | 一般的な注意点しか出ない | 「自社が発注者の立場で、損害賠償・解除・再委託・秘密保持を中心にリスクを整理してください」 |
| 「このメールを直して」 | 表現を少し整えるだけ | 「他部署への依頼メールです。きつい表現・曖昧な依頼を指摘し、穏当なトーンで全文を修正してください」 |
| 「この制度について教えて」 | 一般的な概要だけ | 「この業務場面で関係する条文・公的資料・実務影響に分け、要確認事項も整理してください」 |
| 「議事録にして」 | だらだらした文章 | 「決定事項・宿題(担当と期限)・主要論点に分けて、表形式でまとめてください」 |
プロンプトは「質問」ではなく「指示書」
うまくいかないプロンプトの多くは、形が「質問」になっています。「〇〇って何?」「リスクある?」といった聞き方です。これではAIに任せる仕事の中身が伝わりません。
一方で、仕事で成果につながるプロンプトは「指示書」の形をしています。目的・前提・立場・観点・成果物の形を渡すイメージです。両者の違いを整理します。
質問
「〇〇って何?」「リスクある?」
浅い回答(一般論)
→
指示書
目的前提立場観点成果物の形
実務で使える回答
表2:質問文と指示書の違い
| 観点 | 質問文としてのプロンプト | 指示書としてのプロンプト |
| 目的 | 曖昧(とりあえず聞く) | 明確(何のために使うか指定) |
| 前提条件 | 与えない | 状況・背景を伝える |
| 判断基準 | AI任せ | 重視する観点を指定する |
| 成果物の形 | 指定しない | 表・箇条書き・文面を指定する |
| 確認事項 | 出てこない | 要確認事項として整理させる |
| 注意点 | なし | 断定回避・鵜呑み防止を指示する |
良いプロンプトに入れるべき要素
指示書として書くと言っても、難しく考える必要はありません。次の要素を意識して入れるだけで、回答は実務に近づきます。
表3:プロンプトに入れるべき要素
| 要素 | 内容 | 例 |
| 目的 | 何を達成してほしいか | 契約のリスクを締結前に洗い出す |
| 前提 | 状況や背景の情報 | 当社が発注者、相手は中小企業 |
| 立場 | 自分・自社がどの立場か | 発注者/受注者、上司/部下 |
| 重視する観点 | 特に見てほしいポイント | 損害賠償、解除、秘密保持 |
| 出力形式 | 回答の形 | 表、箇条書き、メール文面 |
| 文章のトーン | 言葉づかいの方針 | 穏当、ビジネス向け、丁寧 |
| 注意点 | 守ってほしい条件 | 断定しない、要確認事項を分ける |
業務別に見るプロンプトの使い方
業務によって、AIにさせたいことも、指示に入れるべきことも変わります。自分の仕事に近い行をまず探してみてください。
表4:業務別に見るプロンプトの使い方
| 業務 | AIにさせたいこと | 指示に入れるべきこと |
| 契約書レビュー | リスクと修正方針の整理 | 立場、契約類型、重点条項、リスクの分類 |
| 社内メール | 表現・誤解のチェック | 相手との関係、依頼内容、トーン |
| 稟議書 | 弱点・反対点の洗い出し | 承認者の目線、結論、費用対効果、リスク |
| 法令調査 | 条文・実務影響の整理 | テーマ、業務場面、一次情報確認の指示 |
| ブログ記事 | 構成・論点の整理 | 読者、悩み、結論、導線 |
| 議事録 | 決定事項・宿題の整理 | 参加者、決定事項、宿題、論点 |
初心者向け・基本の型
毎回ゼロから考えるのが大変なら、まずは次の「型」を使ってください。空欄を埋めるだけで、指示書らしいプロンプトになります。
実務メモ|基本の型
あなたは〇〇の専門家です。
以下の目的で、次の内容を確認してください。
目的:
前提:
私の立場:
重視する観点:
出力形式:
文章のトーン:
注意点:
不明な点は断定せず、「確認が必要な事項」として整理してください。
回答は、実務で使いやすいように表形式または箇条書きでまとめてください。
各項目の意味
あなたは〇〇の専門家です:AIに役割を与えると、回答の視点が定まります。
目的:何のためにこの作業をするのかを伝えます。
前提:状況・背景を伝えると、一般論になりにくくなります。
私の立場:発注者か受注者か、上司か部下かで、見るべき点が変わります。
重視する観点:特に見てほしいポイントを指定します。
出力形式:表・箇条書き・文面など、欲しい形を指定します。
文章のトーン:穏当に、丁寧に、など言葉づかいの方針を伝えます。
注意点:守ってほしい条件(断定しない、など)を伝えます。
そのまま使える完成プロンプト集
ここからは、コピーしてすぐ使える完成プロンプトを6つ紹介します。【 】の部分を自分の状況に書き換えて使ってください。
1プロンプト1|回答が浅いときの深掘りプロンプト
先ほどの回答を前提に、内容をもう一段深掘りしてください。
役割:私の実務をサポートする専門アシスタントとして回答してください。
目的:先ほどの一般論を、実務で判断・行動に使えるレベルまで具体化する。
前提:私は企業の担当者で、この内容を社内検討や上司への説明に使う予定です。
重視する観点:
・一般論ではなく、実務で実際に問題になりやすい点
・判断が分かれる論点と、その判断基準
・見落とされやすいリスク
出力形式:以下の項目に分けて、表または箇条書きで整理してください。
(1)前提として確認すべき条件
(2)主要な論点
(3)想定されるリスク
(4)判断の目安・基準
(5)次に確認すべき事項
注意点:
・断定できない点は「確認が必要な事項」として明示してください。
・不明な前提があれば、私に質問してください。
・この回答は最終判断ではなく、私が判断するための材料として作成してください。
2プロンプト2|契約書レビューの入口プロンプト
あなたは企業法務の担当者です。以下の契約書を、初回レビューの観点で確認してください。
目的:契約締結前に、自社にとってのリスクと修正方針を整理する。
私の立場:当社は【発注者/受注者:いずれか記入】の立場です。
契約類型:【業務委託契約/売買契約/秘密保持契約 など】
取引概要:【取引の内容を簡潔に記入】
重点的に見たい条項:損害賠償、契約解除、再委託、秘密保持、知的財産権、支払条件
出力形式:以下のとおり整理してください。
(1)重大リスク(締結前に必ず交渉・修正すべき点)
(2)中程度のリスク(できれば修正したい点)
(3)軽微な修正点(表現・体裁レベル)
それぞれ、該当箇所・問題点・修正の方向性を示してください。
あわせて出してほしいもの:
・主要な論点の修正文案
・相手方に確認すべき事項
・社内(事業部・経営層など)に確認すべき事項
注意点:
・条文の解釈や最終的な法的判断は、人間(担当者・弁護士)が行う前提です。
・断定できない点は「要確認事項」として整理してください。
・契約書に書かれていない事情が影響しそうな場合は、その旨を指摘してください。
【ここに契約書本文を貼り付け】
3プロンプト3|社内メールを送る前の確認プロンプト
あなたは社内コミュニケーションに詳しい、ビジネス文書のレビュー担当です。以下のメール文面を、送信前にチェックしてください。
目的:誤解・反発・不要な摩擦を避け、相手が読んで行動しやすいメールにする。
私の立場:【送信者の立場・部署を記入】
送信相手:【相手の立場・関係性を記入。例:他部署の担当者/取引先/部下】
このメールで相手にしてほしいこと:【依頼・確認・通知など】
確認してほしい観点:
・相手にきつく・高圧的に見える表現
・責任逃れや他人事に見える表現
・誤解されやすい、複数の意味に取れる表現
・指示や依頼が曖昧で、相手が動きにくい部分
・期限や条件が不明確な部分
出力形式:
(1)気になる表現と、その理由
(2)修正の方向性
(3)修正後の文面(全文)
修正後の文面は、穏当でビジネスにふさわしいトーンにしてください。
注意点:
・元の意図を変えないようにしてください。
・背景事情が不明な点は、私に質問してください。
【ここにメール文面を貼り付け】
4プロンプト4|稟議書・提案書の弱点を見つけるプロンプト
あなたは、稟議・提案を承認する側の上司および経営層の視点を持つレビュアーです。以下の文書を、承認する立場から厳しめに確認してください。
目的:提出前に、突っ込まれそうな弱点を洗い出し、通りやすくする。
私の立場:【提案者の立場・部署を記入】
提案の概要:【何を承認してほしいのかを簡潔に記入】
想定する承認者:【直属の上司/部門長/役員 など】
確認してほしい観点:
・結論(何を承認してほしいか)が冒頭で明確か
・費用対効果や必要性が、数字や根拠とともに伝わるか
・想定されるリスクと、その対応策が書かれているか
・反対・懸念が出そうな点はどこか
・説得力を補強するために追加したい資料・データ
出力形式:
(1)現状の弱点(指摘と理由)
(2)反対されそうな点と、想定される反論
(3)補強すべき資料・情報
(4)全体の修正方針
注意点:
・断定できない点は「確認が必要な事項」として整理してください。
・前提条件が不足している場合は、私に質問してください。
【ここに稟議書・提案書の内容を貼り付け】
5プロンプト5|法令調査の整理プロンプト
あなたは、法令・制度を実務目線で整理する法務リサーチの担当です。以下のテーマを、実務で使える形に整理してください。
調べたいテーマ/法令名:【例:個人情報保護法 など】
確認したい業務場面:【どんな場面で必要か。例:取引先との契約/社内手続 など】
私の立場:【企業の法務・管理部門の担当者 など】
出力形式:以下の項目に分けて整理してください。
(1)関連する条文・規定の概要
(2)参照すべき公的資料・ガイドライン・Q&Aの種類(一般的にどこを見るべきか)
(3)実務への影響(何に注意すべきか)
(4)社内対応が必要になりそうな事項
(5)要確認事項・不明点
注意点:
・法令や制度は改正・運用変更がありえます。最新性が重要な点は「一次情報(e-Govの条文、所管省庁の公表資料など)で必ず確認が必要」と明記してください。
・条文番号や数値など正確性が求められる箇所は、私が一次情報で確認する前提で整理してください。
・不確かな情報を断定せず、確認が必要な点はその旨を示してください。
6プロンプト6|回答をそのまま使える成果物に変えるプロンプト
先ほどの回答を、実務でそのまま使える成果物に整えてください。
目的:今の回答を、説明や共有に使える形に変換する。
使用目的:【例:上司への報告/社内共有/取引先への連絡 など】
受け手:【誰が読むか。例:経営層/他部署/取引先担当者 など】
出力形式:【次から選ぶ、または指定:表/メール文面/社内メモ/チェックリスト】
整え方の指示:
・冗長な説明や前置きは削る。
・要点を先に示し、詳細は後に置く。
・専門用語が多い場合は、受け手に合わせて補足を付ける。
・実務でそのまま使える構成にする。
残してほしいもの:
・重要な注意点
・確認が必要な事項
・判断の前提となる条件
注意点:
・元の回答の意味を変えないでください。
・不確かな点は「要確認」と明示してください。
悪い例・少し良い例・実務で使う例
同じ依頼でも、どこまで指定するかで回答は大きく変わります。3つの場面で、3段階を見比べてみましょう。
場面1:契約書レビュー
実務で使うなら当社は発注者の立場です。以下の契約書について、損害賠償・契約解除・再委託・秘密保持・知的財産権を中心に、重大リスク・中程度リスク・軽微な修正点に分けて整理してください。あわせて主要論点の修正文案と、相手方に確認すべき事項を出してください。不明点は断定せず、確認事項として整理してください。
場面2:社内メール修正
実務で使うなら他部署の担当者に作業を依頼するメールです。きつく見える表現・誤解されやすい表現・依頼が曖昧で動きにくい部分を指摘し、穏当なビジネス向けのトーンで全文を修正してください。相手にしてほしいことと期限が明確になるようにしてください。
場面3:法令調査
実務で使うなら取引先との契約手続でこの制度が関係します。関連する条文の概要、参照すべき公的資料・ガイドラインの種類、実務への影響、社内対応が必要な事項、要確認事項に分けて整理してください。条文番号や数値など正確性が必要な点は、私が一次情報で確認する前提として明示してください。
プロンプトを書くときの注意点
注意
AIの回答をそのまま鵜呑みにしない。あくまで判断の材料として扱う。
法令・制度・ガイドラインなど最新性が重要なものは、公的資料や一次情報で確認する。
契約書や機密情報を入力する場合は、自社の社内ルール・情報管理ルールに従う。
個人情報や秘密情報を不用意に入力しない。
AIは判断を助ける道具であり、最終判断は人間が行う。
プロンプトを細かくすれば必ず正解になるわけではないが、回答の方向性は大きく改善できる。
一度で完成させる必要はない。AIの回答を見ながら、追加指示で改善していけばよい。
まとめ
ChatGPTの回答が浅いと感じたとき、まず疑うべきはAIの性能ではなく、指示の出し方です。
プロンプトは質問文ではなく、AIに仕事を任せるための指示書です。目的・前提・立場・観点・出力形式を入れるだけで、回答はぐっと実務に近づきます。さらに、修正文案・確認事項・出力形式まで指定すれば、そのまま使いやすい成果物になります。
次回は、契約書レビューをChatGPTに頼むときのプロンプトを、より具体的に扱います。
「プロンプトの力」シリーズ一覧
第1話ChatGPTの回答が浅いときに見直すべきこと|プロンプトは質問ではなく指示書である
毎回ゼロからプロンプトを考えるのが大変な方へ
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