派遣の3年ルールとは?派遣先企業が管理すべき抵触日と期間制限
派遣の「3年ルール」は、「3年で必ず派遣社員が辞めなければならない」という単純なルールではありません。実務では、事業所単位の期間制限・個人単位の期間制限・抵触日・意見聴取・期間制限の例外を分けて管理する必要があります。抵触日を正しく管理していないと、契約更新の直前で慌てたり、期間制限違反や労働契約申込みみなし制度のリスクにつながったりします。
この記事は、シリーズ「派遣先企業のための労働者派遣法チェックリスト」の第6話です。第5話までで契約書の見方を整理しました。第6話では、派遣先企業が管理すべき3年ルール(期間制限)と抵触日を、事業所単位・個人単位を徹底して分けながら解説します。
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1. 派遣の3年ルールには2種類ある
まず押さえるべきは、3年ルールには事業所単位の期間制限(労働者派遣法40条の2)と個人単位の期間制限(同40条の3)の2つがあり、別々に適用されるという点です。
| 区分 | 事業所単位の期間制限 | 個人単位の期間制限 |
|---|---|---|
| 何を制限するか | 同一の派遣先事業所で派遣を受け入れられる期間 | 同一の派遣労働者を同一の組織単位で受け入れられる期間 |
| 原則の期間 | 原則3年 | 原則3年 |
| 管理単位 | 事業所(工場・事務所・店舗など) | 派遣労働者ごと×組織単位(いわゆる「課」など) |
| 延長できるか | 過半数労働組合等への意見聴取で3年を限度に延長可(再延長も意見聴取が必要) | 延長の手続はない |
| 派遣先が注意すべきこと | 派遣労働者が交代しても、事業所としての受入期間は継続する | 事業所単位を延長しても、同じ人を同じ組織単位で3年超は受け入れられない |
| 根拠・確認資料 | 40条の2、業務取扱要領第7 | 40条の3、業務取扱要領第7 |
事業所単位の意見聴取で派遣可能期間を延長しても、同じ派遣労働者を同じ組織単位で3年を超えて受け入れられるわけではありません。事業所単位と個人単位は別の制限で、両方をクリアして初めて受入れを継続できます。ここを取り違えると、延長したつもりが個人単位違反になります。
2. 抵触日とは何か
抵触日とは、派遣可能期間の制限に抵触することとなる「最初の日」です。「契約終了日」「最終就業日」「3年経過日」と混同しやすいので注意します。期間の最終日(末日)の翌日が抵触日になります。
| 受入開始日 | 派遣可能期間の末日(原則) | 抵触日(原則) | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月1日 | 2029年3月31日 | 2029年4月1日 | 抵触日は「受け入れられなくなる最初の日」。前日まで受入れ可 |
| 2026年10月1日 | 2029年9月30日 | 2029年10月1日 | 開始日から起算。契約満了日とは別概念 |
実際の抵触日は、契約更新の有無・期間制限の対象外となる派遣の混在・クーリングの有無などで変わります。上表はあくまで原則の考え方です。具体的な抵触日は、必ず最新の業務取扱要領・労働局資料を確認し、派遣元と突き合わせてください。事業所単位の抵触日は派遣先から派遣元へ通知する必要があります。
3. 事業所単位の期間制限
同一の派遣先事業所で労働者派遣を受け入れられる期間は原則3年です(40条の2)。延長するには、後述の意見聴取が必要です。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 同一事業所での派遣受入れは原則3年まで |
| 「事業所」の考え方 | 場所的に独立し、経営単位として一定の独立性があり、施設として一定期間継続するか等を踏まえて実態で判断(工場・事務所・店舗など) |
| 派遣労働者の交代 | 派遣労働者が入れ替わっても、事業所としての受入期間はリセットされず継続する |
| 延長 | 過半数労働組合等への意見聴取で3年を限度に延長可。再延長も改めて意見聴取が必要 |
| 個人単位との関係 | 事業所単位を延長しても、個人単位の期間制限は別途適用される |
4. 個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位で受け入れられる期間は原則3年です(40条の3)。延長の手続はありません。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 同一の派遣労働者を同一の組織単位で3年を超えて受け入れることはできない |
| 「組織単位」の考え方 | いわゆる「課」などを想定。形式的な名称ではなく、業務のまとまり・指揮命令・責任体制など実態で判断 |
| 派遣元が変わっても | 派遣元が変わっても、同じ派遣労働者を同じ組織単位で受け入れ続ける場合は通算に注意 |
| 事業所単位の延長との関係 | 事業所単位を延長しても、同じ人を同じ組織単位で3年超は受け入れられない |
| 別組織単位への異動 | 実態のある異動でなければ、期間制限回避と見られ得る |
たとえば、2026年4月1日にある事業所で派遣の受入れを開始し、同じ日から「総務課」でBさんを受け入れたとします。事業所単位の抵触日は原則2029年4月1日で、意見聴取を行えばさらに延長できます。しかし個人単位では、Bさんを総務課で受け入れられるのは原則2029年3月31日まで(抵触日は2029年4月1日)です。つまり、事業所単位を延長しても、Bさんを総務課で続けるには別の対応(直接雇用への切替え、実態のある別組織単位への異動など)が必要になります。事業所の受入れは続けられても、Bさん個人については個人単位の壁が残る、という関係です。
「事業所単位の意見聴取をしたから、同じ派遣社員にあと3年いてもらえる」というのは誤解です。意見聴取が効くのは事業所単位だけ。同じ人を同じ組織単位で続けるには、個人単位の3年の壁があります。続けたい場合は、直接雇用への切替えや、実態のある別組織単位への異動などを検討します。
5. 期間制限の対象外となる派遣
次の派遣は、期間制限の対象外です(40条の2第1項各号)。ただし、「対象外=何でも無制限」ではありません。
| 例外類型 | 概要 | 派遣先が確認すべきこと | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 無期雇用の派遣労働者 | 派遣元で無期雇用されている派遣労働者 | 派遣元での無期雇用かを確認 | 有期雇用の人は対象外にならない |
| 60歳以上の派遣労働者 | 60歳以上の派遣労働者 | 年齢要件を満たすか | 受入れ後の管理は引き続き必要 |
| 有期プロジェクト業務 | 事業の開始・転換・拡大・縮小・廃止のための業務で、一定の期間内に完了するもの | プロジェクトの終期が明確か | 常態業務に使うと対象外といえない |
| 日数限定業務 | 1か月の所定労働日数が通常の労働者の半分以下で、かつ月10日以下の業務 | 日数要件を満たすか(最新要領で確認) | 要件を満たさないと対象外でない |
| 産休・育休・介護休業等の代替 | 産前産後休業・育児休業・介護休業等を取得する労働者の業務の代替 | 代替の対象・期間が要件に合うか | 本人の休業期間・本人の業務に限る |
期間制限の対象外でも、派遣契約・指揮命令・労務管理・同一労働同一賃金・契約更新などの実務管理は引き続き必要です。「無期雇用派遣だから同じ人を同じ部署で何年でもOK」と単純化しないでください。各例外の要件は、必ず最新の労働者派遣法・施行令・施行規則・業務取扱要領第7で確認してください。
6. 事業所単位の延長に必要な意見聴取手続
事業所単位の派遣可能期間を延長するには、過半数労働組合等への意見聴取が必要です(40条の2第3項・4項)。単なる形式手続ではなく、常用代替防止の観点から受入れの必要性を説明できるようにします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 相手方 | 派遣先事業所の過半数労働組合。なければ過半数代表者 |
| 過半数代表者の要件 | 管理監督者でないこと、かつ意見聴取の目的を明らかにして投票・挙手等の民主的方法で選出された者。「異議がなければ信任とみなす」消極的方法は適正と認められないおそれがある |
| 時期 | 事業所単位の抵触日の1か月前までに(40条の2第4項。実務上は、期限直前ではなく余裕をもって実施する) |
| 通知方法・事項 | 書面で通知。事業所・派遣就業の場所、延長しようとする期間 |
| 参考資料 | 派遣受入開始時(延長時)からの派遣労働者数・無期雇用労働者数の推移等 |
| 異議への対応 | 異議があれば、抵触日の前日までに延長の理由・期間・異議への対応方針を説明 |
| 記録・保存 | 聴取の記録を作成し、抵触日から3年間保存 |
| 周知 | 事業所の労働者へ周知 |
過半数代表者が管理監督者だったり、選出目的を明らかにせず選ばれていたりすると、事実上意見聴取が行われていないものと同視され、延長が無効=期間制限違反として労働契約申込みみなし制度の対象になり得ます。特に、社内掲示等で「異議がなければ信任とみなす」という消極的な選出(サイレント承認)は、労働者の過半数の支持が能動的に示されておらず、民主的方法と認められないおそれがあります。投票・挙手・信任の意思表示など、能動的な手続で選出してください。
また、意見聴取は「抵触日の1か月前まで」の期限に間に合わなければ延長が認められません。期限を過ぎたまま抵触日以後も受け入れ続けると期間制限違反(みなし制度の対象類型の一つ)になり得ます。期限の解釈で迷わないよう、ギリギリを狙わず数か月前から着手し、正確な期限・手続は派遣元や労働局に確認してください。
7. クーリング期間の注意点
派遣の受入れをいったん終了しても、空白期間が短すぎると、期間制限がリセットされたことになりません。空白期間(クーリング期間)が一定以上ないと、前後の派遣が継続しているものとして通算されます。
| 論点 | 考え方 |
|---|---|
| 基本の考え方 | 派遣終了後の空白期間が3か月を超える場合、前後の派遣期間を通算しない扱いとなる場合がある |
| 空白が短い場合 | 空白が3か月以下の場合は、前後の派遣期間が継続しているものとして通算される可能性がある |
| 形式的な運用 | 実態として同じ業務・同じ組織で継続受入れしているのに、形式的に期間を空けるだけの運用は、期間制限回避と見られ得る |
| 確認 | 具体的な日数・要件は、必ず最新の業務取扱要領第7・行政解釈で確認する |
「3年ルールを形式的にリセットするためだけに、いったん契約を切ってまた戻す」という運用は危険です。実態が継続していれば通算され、期間制限違反と評価されるおそれがあります。クーリングの具体的な日数・取扱いは変わり得るため、断定せず最新の業務取扱要領第7で確認してください。
クーリングは、その期間に労働者派遣が行われていない(空白である)ことが前提です。たとえば空白を空けて再受入れする予定でも、再開予定日より前に「引き継ぎやアカウント設定のために前倒しで就労させた」といった場合、その空白期間に派遣就業の実態が生じてしまいます。空白とされる期間にわずかでも派遣就業の実態があれば、その期間は空白とはいえず、前後の期間が通算されるおそれがあります。結果として再受入れの初日から期間制限違反となるリスクもあるため、空白期間中は派遣就業を発生させないよう現場に周知してください(具体的な取扱いは最新の業務取扱要領第7で確認)。
8. 組織単位のすり替え・名目変更のリスク
個人単位の期間制限を回避するために、実態のない組織単位の変更をするのは危険です。組織単位は名称ではなく実態で判断されます。
| 運用 | 評価 | 確認すべき実態 |
|---|---|---|
| 「総務課」→「総務企画課」へ名称変更のみ | 危険 | 業務内容・指揮命令者・責任体制が実際に変わっているか |
| 所属表示だけ変え、業務・席・上司は同じ | 危険 | 実態が同じなら別組織単位とはいえない可能性 |
| 実態を伴う異動(業務・指揮命令・責任が変わる) | 要確認 | 異動の実態が説明できるか |
形式的な組織すり替えは、期間制限違反や、労働契約申込みみなし制度を主張されるリスクにつながり得ます。組織単位を分ける場合は、業務内容・指揮命令者・責任体制・所属組織が実際に変わっているかを確認し、説明できるようにしてください。
9. 抵触日管理の実務
抵触日は派遣元任せにせず、派遣先側でも管理します。事業所単位と個人単位を別々に管理するのがポイントです。
| 管理の観点 | 具体的な対応 |
|---|---|
| 管理する帳票 | 契約書だけでなく、派遣先管理台帳・契約台帳・更新管理表で管理する |
| 2つの抵触日を分ける | 事業所単位の抵触日と個人単位の抵触日を別々に記録する |
| 派遣元任せにしない | 派遣元からの通知だけに頼らず、派遣先側でも独自に把握する |
| 社内共有 | 人事総務・法務・現場で抵触日と方針を共有する |
| 前倒しの検討 | 少なくとも抵触日の数か月前に、更新可否・意見聴取・直接雇用・終了・人員交代などの方針を検討する |
| 手続の管理 | 派遣元への抵触日通知、契約更新時の確認、意見聴取の有無を管理する |
| 複数部署就業 | 派遣社員が複数の組織単位で就業する場合、組織単位ごとに管理する |
10. 期間制限違反のリスク
期間制限に違反すると、行政対応だけでなく、労働契約申込みみなし制度のリスクがあります。概要を押さえておきましょう。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 行政指導・是正対応 | 労働局による指導・是正の対象になり得る |
| 勧告・公表 | 悪質な場合、勧告・公表等につながり得る |
| 労働契約申込みみなし制度 | 違法派遣を受け入れた場合、派遣先が直接雇用を申し込んだものとみなされ得る制度。期間制限違反はその類型の一つ |
| 他類型との区別 | 無許可派遣・偽装請負等とは別類型。混同しない(詳細は第14話) |
労働契約申込みみなし制度は、違法派遣を受け入れた時点で派遣先が派遣労働者へ直接雇用を申し込んだものとみなされ得る制度です。期間制限違反はその対象類型の一つですが、本記事では概要にとどめます。制度の全体像と対象類型は第14話で詳しく解説します。
11. 派遣先企業向け「3年ルール」チェックリスト
派遣の3年ルールでは、契約期間だけでなく、事業所単位・個人単位の抵触日を別々に管理することが重要です。契約期間・更新時期・担当者の管理には契約台帳テンプレートを補助的に活用できます。派遣契約書上の期間・抵触日・更新条項・組織単位を見落としたくない場合は、無料ツールで条項の有無を確認することもできます。
※契約台帳テンプレートは契約管理の補助ツールであり、労働者派遣法上の「派遣先管理台帳」とは別物です。混同しないようご注意ください。
12. まとめ
派遣の3年ルールは、単に「3年で終了」と覚えるだけでは不十分です。派遣先企業は、事業所単位の期間制限・個人単位の期間制限・抵触日・意見聴取・期間制限の例外を分けて管理する必要があります。
特に、事業所単位の意見聴取で派遣可能期間を延長しても、同じ派遣労働者を同じ組織単位で3年を超えて受け入れられるわけではない点に注意してください。抵触日は、派遣元任せにせず、派遣先側でも台帳・契約管理・更新管理と連動して確認することが重要です。
第7話では、派遣先責任者の選任・役割・人数基準・実務上の管理ポイントを解説します。
- e-Gov法令検索「労働者派遣法」:https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088/
- 厚生労働省「労働者派遣事業に係る法令・指針・疑義応答集・関連情報等」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/hakenhourei.html
- 厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和8年5月14日以降)」(分割版「第5 労働者派遣契約」「第7 派遣先の講ずべき措置等」を含む):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/hakenyouryou_00003.html
- 厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00005670
- 厚生労働省・都道府県労働局「派遣先の皆様へ」:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000196406.pdf
- 労働局資料「派遣受入期間の延長(派遣先)」:https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/var/rev0/0112/9296/201611288227.pdf
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